川田テクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

川田テクノロジーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する鉄構・土木・建築・ソリューション事業を展開する建設・エンジニアリング企業グループです。橋梁事業を中核としつつ、ロボットやソフトウエア等の新分野も育成しています。直近の業績は、大型工事の進捗や設計変更獲得により、売上高・各段階利益ともに前期を上回り、増収増益を達成しました。


※本記事は、川田テクノロジーズ株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 川田テクノロジーズってどんな会社?


橋梁や鉄骨などのインフラ整備を中核に、ロボットやソフトウエア開発も手掛けるエンジニアリング企業です。

(1) 会社概要


1922年に川田鉄工所として創業し、1952年に川田工業へ商号変更しました。1972年に東京・大阪証券取引所市場第一部へ指定され、橋梁・鉄骨事業を拡大しました。2009年に株式移転により持株会社である川田テクノロジーズを設立し上場しました。2013年にはロボティクス事業を分社化し、多角化を推進しています。

同社の連結従業員数は2,376名、単体では94名です。筆頭株主は信託銀行ですが、第3位には主要取引銀行である三菱UFJ銀行が名を連ねています。また、創業家出身の役員や関連会社、社員持株会も上位株主に含まれており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 14.68%
株式会社日本カストディ銀行 4.74%
株式会社三菱UFJ銀行 4.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名、計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は川田忠裕氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
川田 忠裕 取締役社長代表取締役 1985年川田工業入社。同社取締役航空事業部長、代表取締役社長を経て2009年より現職。カワダロボティクス取締役会長を兼任。
渡邉  敏 常務取締役経営企画・財務・総務・IR・コンプライアンス・法務・ICT担当 1983年川田工業入社。同社常務取締役などを経て2011年より同社常務取締役、2023年より現職。川田工業代表取締役副社長を兼任。
川田 琢哉 取締役非常勤 1991年川田工業入社。川田建設取締役経理部長、佐藤工業取締役などを経て2012年川田建設代表取締役社長。2017年より現職。
宮田 謙作 取締役経理部長兼 経営管理部長兼 サステナビリティ推進室長 1979年北陸銀行入行。2011年同社入社。経理部長などを経て2020年取締役就任。2024年より現職。川田工業特別顧問を兼任。
岡田 敏成 取締役(監査等委員)常勤 1981年川田工業入社。同社鋼構造事業部管理部管理・業務担当部長代理、常勤監査役を経て2016年同社監査役。2022年より現職。


社外取締役は、山川隆久(弁護士)、高桑幸一(元北陸電力常勤監査役)、麦野英順(元北陸銀行代表取締役会長)、福地啓子(元金沢国税局長)、勝野めぐみ(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄構」「土木」「建築」「ソリューション」および「その他」事業を展開しています。

鉄構事業


鋼製橋梁(鋼橋)および建築鉄骨の設計・製作・架設据付を行っています。また、鋼材製品の販売も手掛けています。社会インフラの整備や大型建築物の建設に貢献する中核事業です。

収益は、国や地方自治体、民間企業からの工事請負代金や製品販売代金から得ています。運営は主に川田工業株式会社が行っており、鋼材の仕入等は富士前鋼業株式会社が担っています。

土木事業


PC(プレストレスト・コンクリート)橋梁やプレビーム橋梁の設計・製作・架設据付、および橋梁保全工事の請負を行っています。新設工事だけでなく、既存インフラの更新・保全も重要な領域です。

収益は、官公庁や高速道路会社等からの工事請負代金が中心です。運営は川田建設株式会社が行っており、専門的な技術力を活かした事業展開を図っています。

建築事業


一般建築および国内におけるシステム建築の設計・工事請負を行っています。システム建築技術を活用した工場や倉庫などの建設を得意としています。

収益は、民間企業等からの建築工事請負代金から得ています。運営は川田工業株式会社が行っており、鉄構事業で培った技術とのシナジーを発揮しています。

ソリューション事業


ソフトウエアの開発・販売、システム機器の販売、橋梁等の構造解析および設計・製図を行っています。また、次世代型産業用ロボットの製造・販売も手掛けています。

収益は、ソフトウエアのライセンス料や販売代金、ロボット製品の販売代金等から得ています。運営は、川田テクノシステム株式会社がソフトウエア関連を、カワダロボティクス株式会社がロボット関連を担当しています。

その他事業


橋梁付属物の販売、航空機使用事業、建設工事の請負ならびに企画・設計・監理・コンサルティングなどを行っています。

収益は、製品販売代金や航空運送サービスの対価等から得ています。運営は、株式会社橋梁メンテナンス、東邦航空株式会社、新中央航空株式会社、佐藤工業株式会社(持分法適用関連会社)などがそれぞれの専門分野で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、直近5期間で増収基調を維持しています。利益面でも、経常利益や当期純利益が増加傾向にあり、特に直近期においては大幅な増益を達成しました。利益率も向上しており、収益性が高まっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,155億円 1,038億円 1,181億円 1,291億円 1,329億円
経常利益 80億円 77億円 63億円 105億円 126億円
利益率(%) 7.0% 7.4% 5.3% 8.2% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 63億円 52億円 42億円 75億円 111億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しました。営業利益についても増益となっており、本業の収益力が向上していることがわかります。利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,291億円 1,329億円
売上総利益 201億円 217億円
売上総利益率(%) 15.6% 16.4%
営業利益 87億円 97億円
営業利益率(%) 6.8% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が43億円(構成比36%)、賞与引当金繰入額が8億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


鉄構セグメントが売上・利益ともに最大規模であり、グループの業績を牽引しています。土木セグメントも増収ですが、利益は減少しました。ソリューションセグメントは増益となり、高収益体質を示しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鉄構 608億円 621億円 46億円 63億円 10.1%
土木 350億円 383億円 29億円 21億円 5.5%
建築 176億円 155億円 16億円 14億円 9.3%
ソリューション 72億円 76億円 29億円 30億円 39.3%
その他 85億円 95億円 -4億円 -2億円 -
調整額 - - 2億円 3億円 -
連結(合計) 1,291億円 1,329億円 87億円 97億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

川田テクノロジーズは、営業活動によるキャッシュ・フローで資金が増加しました。これは主に未払消費税等の増加によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローでは、有形固定資産の取得により資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、借入金の返済により資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 133億円 98億円
投資CF -26億円 -30億円
財務CF -103億円 -87億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「安心で快適な生活環境の創造」を経営理念として掲げています。安全で高い品質の社会インフラやサービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「八方よし」の精神に基づき、全てのステークホルダーから信頼され続ける企業となるべく努力しています。誠実・公正で透明性のある企業活動と、社員一人ひとりの高い倫理観に基づいた行動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「第3次中期経営計画(2023年度~2025年度)」を策定し、最終年度までの3か年累計での数値目標を設定しています。計画2年目までの実績を踏まえ、一部目標を上方修正しています。

* 売上高(3か年累計):3,910億円以上
* 営業利益(3か年累計):261億円以上
* ROE(最終年度):8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「基幹事業の持続的成長」「成長事業の拡大・創出」「サステナビリティ経営の推進」「資本効率経営への転換」の4つを基本方針としています。100年培った技術を軸にビッグプロジェクトへの参画や橋梁保全市場への対応を強化するとともに、成長分野への資源投入や新規事業創出を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「安心で快適な生活環境の創造」の実現には社員が最も重要な財産であるとし、社員の成長と幸福感を尊重しています。経営理念に共感する多様な人材を採用し、技術の伝承と専門性の向上、変革を推進できる人材の育成に努めています。また、グループ内外の交流促進や、多様性と包摂性を備えた職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 15.7年 7,515,982円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.9%
男性育児休業取得率 94.4%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用) 80.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 42.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場リスク


鉄構事業の鋼橋や土木事業のPC橋梁は公共事業への依存度が高く、国の政策や財政状況により発注量が減少する可能性があります。また、民間発注の鉄骨や建築事業も景気動向の影響を受けやすく、建設市場の縮小が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 収益変動リスク


基幹事業である橋梁、鉄骨、建築事業は請負契約後の工事期間中に原材料費や労務費が上昇するリスクがあります。コスト増加分を請負金額に転嫁できない場合、採算性が悪化する可能性があります。また、部品調達の遅延等が生産計画に影響するリスクもあります。

(3) 事故によるリスク


工場製作や現場施工において事故が発生した場合、直接的な損害や補償費用の発生に加え、指名停止処分や社会的信用の失墜により、その後の受注活動や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 担い手不足によるリスク


建設業界全体で就労人口の減少が進む中、人材の確保・育成が困難となった場合や、時間外労働の上限規制への対応が遅れた場合、施工能力の低下やコスト増加を招き、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。