※本記事は、株式会社ソケッツの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ソケッツってどんな会社?
ソケッツは、音楽や映像などの感性メタデータベースを構築し、AIを活用したレコメンドサービスなどを提供しています。
■(1) 会社概要
2000年にメディアソケットとして設立され、2001年に音楽データベース活用サービスを開始しました。2007年に現在のソケッツに社名を変更し、2009年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしています。近年は、音楽や映像分野の感性メタデータを活用したAIサービスを拡充しています。
現在の従業員数は単体で53名です。筆頭株主は創業社長の浦部浩司氏で、第2位には資本業務提携関係にあるカルチュア・コンビニエンス・クラブが名を連ねています。また、第3位には事業会社のフェイスが続いており、エンターテイメント企業との連携がうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 浦部 浩司 | 23.99% |
| カルチュア・コンビニエンス・クラブ | 9.82% |
| フェイス | 5.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長の浦部浩司氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦部 浩司 | 代表取締役社長 | 1992年日本合同ファイナンス(現ジャフコ)入社。1999年ビジュアルコミュニケーション執行役員を経て、2000年ソケッツを設立し代表取締役社長に就任。 |
| 豊田 将平 | 取締役 | 2019年筑波大学大学院修了後、ソケッツ入社。開発本部などを経て、2026年4月にコンテンツ・データサービスグループのリーダーとなり、同年6月より現職。 |
社外取締役は、鵜飼幸弘(テクノロジーハブ代表取締役)、町田修一(元電通エンタテインメント室長)です。
2. 事業内容
同社は「単一セグメント」として事業を展開しています。
■データ関連サービス
音楽、映像、書籍などのエンターテイメントから、美容や食品など生活全般に関わる独自の「感性メタデータベース」を開発しています。これを基に、レコメンドサービス、パーソナライズサービス、検索サービス、データ分析サービスなどを通信会社やEコマース会社、音楽レーベル、放送局などに提供しています。
収益モデルは、月額従量制や月額固定制を中心とした「ライセンス」、初期および追加の「開発」、年間契約に基づく「運用」の3つから構成されています。運営はソケッツ単体で行っており、LINE MUSICや楽天グループ、NTTドコモなどの大手インターネットサービスや通信事業者に技術とデータを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5年間で継続的な増加傾向にあり、堅調な成長を示しています。一方、利益面では先行投資負担などにより赤字が続いていましたが、ライセンス型ビジネスモデルへの転換が奏功し、直近の期では経常利益および当期純利益が黒字に転換しました。収益性の改善が明確に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8.7億円 | 9.9億円 | 10.2億円 | 10.4億円 | 10.6億円 |
| 経常利益 | -1.0億円 | -0.3億円 | -0.8億円 | -0.8億円 | 0.6億円 |
| 利益率(%) | -11.6% | -3.0% | -7.7% | -7.7% | 5.2% |
| 当期純利益 | -1.5億円 | -0.3億円 | -1.0億円 | -1.4億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
直近の期は前期と比較して増収となり、売上総利益率も改善しています。これは収益性の高いライセンス収入の増加によるもので、営業利益も大幅に改善し黒字化を達成しました。事業モデルの転換が利益率の向上に寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.4億円 | 10.6億円 |
| 売上総利益 | 4.8億円 | 5.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.8% | 50.0% |
| 営業利益 | -0.8億円 | 0.5億円 |
| 営業利益率(%) | -7.4% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、賃金給料及び諸手当が1.3億円(構成比26%)、支払手数料が0.9億円(同18%)、研究開発費が0.5億円(同10%)を占めています。また、売上原価においては経費が2.8億円(構成比52%)、労務費が2.6億円(同48%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス別の売上構成を見ると、主力のデータライセンスなどのサービス提供が安定した基盤となっています。直近の期では、新たなエンターテイメント体験の創出に向けた受託開発事業が伸びており、全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| サービス提供 | 9.3億円 | 9.3億円 |
| 受託開発 | 1.0億円 | 1.3億円 |
| 連結(合計) | 10.4億円 | 10.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。本業からの収入と敷金回収などの投資活動による収入を、株主還元(配当や自己株式取得)などの財務活動に進める改善局面となっています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.5億円 | 1.2億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -0.1億円 | -0.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人の気持ちをつなぐ」ことをミッションとし、感性AIを活用してクリエイティブなエンターテイメントやライフスタイルの誕生に貢献することをパーパス(存在意義)として掲げています。データを通じて多様な想像力や感性を科学し、人々の日常にセレンディピティ(偶然の幸せな出会い)を生み出すことで、心が豊かになる社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
多様性と自主性に富む人材の採用と育成を重視し、成長への環境づくりに努める文化があります。全役職員を対象としたクレド(行動規範)の浸透や教育研修を通じて、新しいテクノロジーの可能性を信じ、常にユーザー視点と顧客価値を大切にする姿勢が共有されています。社員一人ひとりが挑戦し、企業と共に成長することが重んじられています。
■(3) 経営計画・目標
中短期的な経営指標として、社会により深く役立ち独自性が高い事業の証として「売上総利益率60%以上」を目標としています。また、持続的な成長に向けて「年間売上成長率20%以上」を掲げています。これらを達成するため、ライセンス型モデルの売上構成比や新規ライセンス提供数などを重要なKPIとして管理しています。
* 売上総利益率60%以上
* 年間売上成長率20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
独自の感性メタデータと生成AIを組み合わせた「エンターテイメント×感性マーケティング」事業の強化を推進します。具体的には、日本のIP(知的財産)の発掘や世界への流通支援、企業ブランドの想いを生活者につなぐ感性ターゲティング広告「Trig’s」の展開などを進め、単なるシステム提供からIPコンテンツを創発・増幅する企業への転換を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
専門スキルを持つスペシャリストを積極的に採用し、リファラル制度や各種学会を通じた採用活動を展開しています。社内外の研修や資格取得支援を整備して自己啓発を推奨し、技術者や営業などのメンバーが一体となって目標に取り組むことで相互理解と成長を促しています。時差勤務やリモートワークなど、柔軟な働き方の実現にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 9.0年 | 6,968,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は関連する法律の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネットに関する技術およびサービスの変化
インターネット関連技術や顧客ニーズの変化は速く、独自性の高いサービスに向けた研究開発を進めています。しかし、技術革新への対応遅れや優秀な人材の確保が遅れた場合、サービスが陳腐化して競争力が低下し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 生成AIの進展
世界的に各種生成AIの開発が進んでおり、これがデータサービス分野に大きな影響を与えることが見込まれます。これに対し同社は独自の感性メタデータや感性AIの開発を強化し、日本ならではの感性・感情の解釈を強みとして生成AIとの連携を進めていく方針です。
■(3) システム障害・通信トラブルについて
サービスの多くはクラウドサーバー等を利用して提供されており、24時間監視やセキュリティ対策を行っています。しかし、自然災害やサイバー攻撃、過剰アクセス等でシステムが停止した場合、顧客へのサービス提供に支障をきたし、損害賠償等を請求されるリスクがあります。



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