※本記事は、株式会社ソケッツ の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ソケッツってどんな会社?
エンターテイメントに特化した独自データベースを強みに、レコメンドや検索等のデータサービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年6月、携帯電話向け通信アプリケーション開発を目的にメディアソケットとして設立されました。2001年に音楽データベース活用サービスを開始し、2006年にはKDDIと資本提携を行っています。2007年に現在の社名へ変更し、2009年に東証マザーズへ上場しました。その後、2013年にはカルチュア・コンビニエンス・クラブと資本業務提携を行うなど、データサービスの拡充を進めています。
現在は単体で57名の従業員を抱える体制です。筆頭株主は創業社長の浦部浩司氏で、第2位にはレンタル店TSUTAYAなどを展開する事業会社、同率第2位に大手通信事業者が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 浦部 浩司 | 26.97% |
| カルチュア・コンビニエンス・クラブ | 9.78% |
| KDDI | 9.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は浦部浩司氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦部 浩司 | 代表取締役社長 | 1992年日本合同ファイナンス(現ジャフコ)入社。1999年ビジュアルコミュニケーション執行役員を経て、2000年6月に同社を設立し代表取締役に就任。設立以来、現職。 |
社外取締役は、鵜飼幸弘(テクノロジーハブ代表取締役)、町田修一(元電通ミュージック・アンド・エンタテインメント代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メディアビジネス」を単一の報告セグメントとして事業を展開しています。
■データベース関連サービス
音楽・映像・書籍などのエンターテイメント情報や、美容・食品などのライフスタイル情報を体系化したデータベースを開発し、通信会社やEC事業者、配信サービス会社等へ提供しています。具体的には、利用者の好みに合った作品を提案する「レコメンドサービス」、個人の嗜好に合わせる「パーソナライズサービス」、感性メタデータを活用した「データアナリティクスサービス」などを展開しています。
主な収益は、データベースやシステムの利用量・利用者数に応じた「ライセンス収入」(月額従量制や固定制)、サービスの導入に伴う「開発収入」、システムの「運用収入」から成ります。運営はソケッツが行っており、KDDI、楽天グループ、LINE MUSICなどが主要な提供先となっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は10億円前後で推移していますが、利益面では損失計上が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9.9億円 | 8.7億円 | 9.9億円 | 10.2億円 | 10.4億円 |
| 経常利益 | -0.2億円 | -1.0億円 | -0.3億円 | -0.8億円 | -0.8億円 |
| 利益率(%) | -1.6% | -11.6% | -3.0% | -7.7% | -7.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.5億円 | -1.5億円 | -0.3億円 | -1.0億円 | -1.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において売上高は微増しましたが、営業赤字が継続しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.2億円 | 10.4億円 |
| 売上総利益 | 4.7億円 | 4.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.0% | 45.8% |
| 営業利益 | -0.8億円 | -0.8億円 |
| 営業利益率(%) | -7.8% | -7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び諸手当が1.7億円(構成比30%)、支払手数料が0.9億円(同17%)、研究開発費が0.7億円(同13%)を占めています。売上原価においては、経費が3.3億円(構成比58%)、労務費が2.8億円(同49%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス別の販売実績を見るとメディアビジネスが売上の大半を占めており、前期比で微増しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| メディアビジネス | 10.2億円 | 10.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.1億円 | -1.5億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | -0.1億円 | -0.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のためマイナスで市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人の気持ちをつなぐ」ことをミッションとしています。エンターテイメントやライフスタイル全般のデータベースおよび感性メタデータを活用した「感性AI」を開発し、人々の想像力を広げ、クリエイターや企業とファンをつなぐことで、心豊かな社会の実現と平和に貢献することをパーパス(存在意義)として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、全役職員を対象とした「クレド(行動規範)」を通じて企業文化の熟成を図っています。新しいテクノロジーの可能性を信じて研究開発を重視しつつ、常にユーザー視点に立ち、多様性と自主性に富む人材が成長できる環境づくりに努めています。従業員、取引先、株主と共に成長し、思いやりと多様性に溢れる社会への貢献を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、独自性が高く社会に役立つ事業の指標として、中期的に以下の数値目標を掲げています。
* 売上総利益率:60%以上
* 売上成長率:年間20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、独自の感性メタデータと感性AIの技術を磨き、エンターテイメント市場の発展と感性マーケティング市場の開拓を進める方針です。生成AIとの連携強化により情報の信頼性を担保しつつ、エンターテイメント分野だけでなく、美容や食などのライフスタイル分野へもデータ活用を広げていきます。
* ライセンス型ビジネスモデルへの転換推進
* 独自の感性ターゲティング広告サービス「Trig’s」の拡大
* IP(知的財産)の発掘から流通までを支援するデータサービスの展開
* 研究開発およびデータ開発への継続的な投資(売上の25%を目処)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を最も重要な経営資源と位置づけ、優秀な社員の継続的な雇用と育成に注力しています。独自の技術開発力を維持・強化するため、新入社員から管理職まで段階に応じた教育・研修制度を充実させるとともに、技術交流会や資格取得奨励金制度などを通じて、社員のスキルアップやモチベーション向上を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 7.8年 | 6,649,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新と市場変化への対応
同社は変化の速いインターネット関連技術に基づき事業を展開しており、独自の「感性AI」技術等の開発に注力しています。しかし、研究開発の遅れや顧客ニーズの見誤り等により、技術革新のスピードに適切に対応できない場合、サービスの陳腐化により競争力が低下する可能性があります。
■(2) 生成AIの進展による影響
生成AIの技術進化は急速であり、データサービス分野にも大きな影響を与える可能性があります。同社は独自の感性メタデータと生成AIの連携強化を進めていますが、予想を超える技術進化や競争激化が進んだ場合、事業環境に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の役員への依存
創業者である代表取締役社長の浦部浩司氏は、事業の立案や実行等において多大な役割を果たしています。権限委譲や業務分掌により依存度の低下を進めていますが、同氏が業務を継続困難となった場合、事業展開や経営成績に影響を与える可能性があります。



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