※本記事は、大研医器株式会社の有価証券報告書(第58期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大研医器ってどんな会社?
大研医器は、医療現場のニーズに応える麻酔・感染防止関連の独自製品を提供する医療機器メーカーです。
■(1) 会社概要
1968年11月に医療器具製造販売を目的に設立されました。1990年に医療用吸引器「フィットフィックス」、1997年に携帯型注入器「シリンジェクター」を開発・販売し事業を拡大しました。2009年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2023年よりスタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は単体で185名です。株主構成を見ると、筆頭株主は取締役会長の山田圭一氏であり、第2位は創業家とみられる山田満氏、第3位には代表取締役社長の山田雅之氏が名を連ねており、経営陣を中心とした安定した資本基盤を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山田 圭一 | 19.01% |
| 山田 満 | 13.92% |
| 山田 雅之 | 10.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は山田雅之氏が務めています。取締役4名中2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田 雅之 | 代表取締役社長 | 1982年同社に入社し、営業本部長や開発担当などを歴任。2019年に取締役副社長となり、2026年より現職。 |
| 山田 圭一 | 取締役会長 | 1982年同社に入社し、2004年に代表取締役社長に就任。開発・技術部門を牽引し、2026年より現職。 |
社外取締役は、大工舎宏(元アットストリーム代表取締役)、稲垣喜三(元鳥取大学医学部附属病院副院長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「吸引器関連」「注入器関連」「電動ポンプ関連」「手洗い設備関連」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 吸引器関連
手術室や集中治療室等で使用する非電動式の真空吸引器を提供しています。血液や体液を吸引し、感染予防の観点からプラスチック製の使い捨て容器に置き換わっており、「フィットフィックス」や病棟用の「キューインポット」が主力製品です。
医療機関に対する製品販売が主な収益源です。医療現場での感染対策ニーズに応える消耗品として、継続的な購入が見込まれるビジネスモデルです。事業の企画開発から製造販売までの運営は同社が一貫して行っています。
■(2) 注入器関連
主に手術後の痛みを軽減するため、局所麻酔剤や鎮痛剤を微量・持続的に投与する加圧式医薬品注入器を提供しています。電気を使用せず軽量な「シリンジェクター」やマイクロポンプを活用した「エイミー」などを展開しています。
急性期病院や在宅医療等に向けた医療機器の販売が主な収益源となります。患者自身の操作による鎮痛コントロール装置などの高付加価値製品も提供しており、運営は同社が単独で行っています。
■(3) その他事業(電動ポンプ・手洗い設備等)
微量の薬液を持続投与する電動シリンジポンプや輸液ポンプ、医療従事者向けの無菌水供給装置や使い捨てタオルなどの手洗い設備を展開しています。また、手術用の保温オイフや分離肺換気用チューブも提供しています。
これらの製品群も医療機関への機器および消耗品の販売により収益を得ています。手術室や集中治療室を中心とした医療現場の多様なニーズを汲み取り、独自の技術で製品化しており、運営は同社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は主力製品の堅調な販売により直近5期間で継続的な成長を見せ、100億円を突破しています。経常利益率も11%〜15%台と高い水準を維持していますが、直近では原材料費等のコスト上昇を受け、やや利益率が低下する傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 91億円 | 98億円 | 100億円 | 103億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 | 15億円 | 15億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 13.5% | 11.5% | 14.9% | 15.2% | 12.4% |
| 当期純利益 | 8億円 | 7億円 | 10億円 | 11億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、為替の影響や材料コストの上昇により売上総利益は減少しました。また、将来の成長に向けた人的投資や研究開発投資を継続したため、営業利益も減益となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 103億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 40億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.2% | 38.4% |
| 営業利益 | 15億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 15.2% | 12.4% |
販売費及び一般管理費(27億円)のうち、従業員給料手当が7億円(構成比25%)、研究開発費が4億円(同14%)、荷造運賃が3億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である吸引器関連は、手術件数の回復や病棟向け製品の拡販により順調に売上を伸ばしました。注入器関連も、新製品であるマイクロポンプ搭載製品の市場浸透が進み、順調な成長を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 吸引器関連 | 64億円 | 65億円 |
| 注入器関連 | 22億円 | 23億円 |
| 電動ポンプ関連 | 2億円 | 2億円 |
| 手洗い設備関連 | 6億円 | 7億円 |
| その他 | 5億円 | 6億円 |
| 合計 | 100億円 | 103億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金で投資と借入返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 6億円 |
| 投資CF | -2億円 | -3億円 |
| 財務CF | -7億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「我々は現在の医療を見つめ明日の医療の創造を通して社会に貢献します。」という企業理念を掲げています。医療現場と協力して新しい医療機器の開発と需要の創造に努め、一人ひとりが不可能を可能にできるよう挑戦的に仕事にあたり、全人格的な成長を通して企業の発展に尽力することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社の製品ブランド名である「クーデック(COOPDECH)」は、「クーデターバイテクノロジー」を意味する造語です。この言葉には、安易に時流に乗るのではなく、独創的な技術で医療革命を目指すという強い意志が込められています。人がやらない価値の高い仕事に挑戦し続ける文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、医療機器の製造・販売が事業の大半を占めることから、本業の収益性を計る指標として「売上高総利益率」と「売上高経常利益率」を重視しています。成長に向けた研究開発投資等を維持しつつ、会社全体として売上高経常利益率20%の達成を念頭に置いた経営戦略を推進しています。
* 売上高経常利益率 20%
■(4) 成長戦略と重点施策
「マイクロポンプ関連製品」を中長期的な成長エンジンと位置づけ、早期の市場投入と拡販を進めています。また、国内への依存度を下げるため、欧州市場などをターゲットとした海外販売の強化を推進しています。同時に、インフレや為替変動に備えたサプライチェーンの高度化や、優秀な人材の確保と育成にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員を重要な経営資源と位置づけ、「個の力」を強化することで企業競争力の向上を目指しています。上長による日常業務を通じたOJTを人材育成の柱とし、中長期的な視点での教育やジョブローテーションを実施しています。また、時間単位の有給休暇取得制度の導入など、長く働きやすい環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.9歳 | 12.7年 | 6,465,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | 28.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 37.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 77.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新技術や新製品の開発の遅れ
同社は新技術の開発に向けて積極的な投資を行っていますが、環境変化等により現場ニーズに適合する製品の開発が遅延した場合、競争力の低下につながる恐れがあります。同社は開発テーマの選択と集中、フェーズごとの確認機能を強化し、リスクの低減に努めています。
■(2) 医療費抑制策による販売価格の下落
国の医療費抑制政策により、医療機関の購買価格の引き下げ圧力が強まっています。これに伴い、製品の販売単価が下落した場合、収益性を圧迫する可能性があります。同社は、現場ニーズを汲み取った独創性の高い製品を提供することで、価格競争からの脱却を図っています。
■(3) 吸引器関連製品への売上依存
主力である「フィットフィックス」を中心とした吸引器関連製品の売上比率が6割を超えており、当該製品群での激しい価格競争が生じた場合、業績に直接的な影響を及ぼすリスクがあります。同社は、新領域であるマイクロポンプ関連製品の拡販や海外展開を推進し、収益基盤の分散化を進めています。



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