※本記事は、大研医器株式会社 の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大研医器ってどんな会社?
麻酔関連・感染防止関連の医療機器を主力とする研究開発型メーカーです。医療現場のニーズを直接聞き、独創的な製品開発を行う点が特徴です。
■(1) 会社概要
同社は1968年に大阪市で設立されました。1990年には主力製品となる医療用吸引器「フィットフィックス」を開発・販売し、事業の基盤を築きました。2009年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌2010年には同市場第一部に指定されました。その後、市場区分の見直しを経て、2023年10月にスタンダード市場へ移行しています。
同社(単体)の従業員数は180名です。大株主については、筆頭株主は社長の山田圭一氏、第2位は創業家の山田満氏、第3位は副社長の山田雅之氏であり、創業家および経営陣が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山田圭一 | 19.01% |
| 山田満 | 13.92% |
| 山田雅之 | 10.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は山田圭一氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田圭一 | 代表取締役社長兼商品開発研究所長 | 1982年入社。取締役、常務、専務を経て2004年より社長。開発本部長や技術本部長を兼任し、2025年4月より現職。 |
| 山田雅之 | 取締役副社長兼経営管理本部長 | 1982年入社。取締役、常務、専務を経て2019年より副社長。営業本部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、大工舎宏(アットストリーム代表取締役)、稲垣喜三(日本医科大学特命教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「吸引器関連」「注入器関連」「電動ポンプ関連」「手洗い設備関連」および「その他」事業を展開しています。
■吸引器関連
病院内感染防止関連の製品として、手術室や病棟で使用される非電動式の真空吸引器を提供しています。主な製品には、手術室等で使用される凝固剤一体型の密閉容器「フィットフィックス」や、病棟で使用される「キューインポット」があります。
製品の製造販売による収益を同社が得ています。
■注入器関連
麻酔関連の製品として、手術後の疼痛緩和などのために局所麻酔剤や鎮痛剤を持続的に投与する加圧式医薬品注入器を提供しています。主な製品には「シリンジェクター」や、マイクロポンプを用いた「クーデックエイミーPCA」などがあります。
製品の製造販売による収益を同社が得ています。
■電動ポンプ関連
麻酔関連の製品として、極めて微量の薬液を精密に制御して投与する医用電気機器を提供しています。主な製品には「シリンジポンプ」や「輸液ポンプ」があり、手術室や集中治療室などで使用されます。
製品の製造販売による収益を同社が得ています。
■手洗い設備関連
医療従事者の衛生的な手洗いに使用される設備装置等を提供しています。主な製品には、無菌水または殺菌水を供給する手洗い装置「ステリキープⅡ」や、滅菌済みのディスポーザブルタオル「ワイペル」があります。
製品の製造販売による収益を同社が得ています。
■その他
上記製品群に含まれない製品として、保温性を高めた不織布オイフ「ブレスウォーム」や、胸部外科手術で使用される「気管支ブロッカーチューブ」などを提供しています。
製品の製造販売による収益を同社が得ています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は過去5期間を通じて一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。利益面では、2023年3月期に一時的な減少が見られたものの、その後は回復し、直近2期間は経常利益率が15%前後の高水準で推移しており、高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 85億円 | 91億円 | 98億円 | 100億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 12億円 | 11億円 | 15億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 12.2% | 13.5% | 11.5% | 14.9% | 15.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 8億円 | 7億円 | 10億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益が増加しており、利益率も41%台へと改善しています。営業利益も増益を確保しており、利益率は15%を超える水準となっています。売上拡大とコストコントロールにより、本業の収益力が着実に強化されていることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 98億円 | 100億円 |
| 売上総利益 | 40億円 | 41億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.8% | 41.2% |
| 営業利益 | 14億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 14.8% | 15.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が6億円(構成比24%)、研究開発費が3億円(同13%)、荷造運賃が3億円(同13%)を占めています。売上原価については、材料費が47億円で当期総製造費用の82%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の吸引器関連が売上の約6割を占め、前期比で増加しています。注入器関連も新製品の販売好調により伸長しました。一方、電動ポンプ関連や手洗い設備関連は売上が減少しており、主力製品への集中と新製品による成長が業績を牽引する構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 吸引器関連 | 62億円 | 64億円 |
| 注入器関連 | 21億円 | 22億円 |
| 電動ポンプ関連 | 3億円 | 2億円 |
| 手洗い設備関連 | 7億円 | 6億円 |
| その他 | 5億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 98億円 | 100億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大研医器は、医療現場のニーズに応える製品開発と販売推進により、トップメーカーとしての地位確保と新市場開拓を進めています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の計上はあったものの、税金の支払い等により前期比で減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資への支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いと借入金の返済等により、前期比で大きく減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 11億円 |
| 投資CF | -2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -12億円 | -7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「我々は現在の医療を見つめ明日の医療の創造を通して社会に貢献します。」という企業理念を掲げています。この理念の下、医療現場と協力して新しい医療機器の開発と需要の創造に努めるとともに、一人ひとりが挑戦的に仕事にあたり、全人格的な成長を通じて企業の発展を目指すことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社の製品ブランド名「クーデック(COOPDECH)」は「クーデターバイテクノロジー」を意味する造語であり、独創的な技術でドラスティックな医療革命を目指す姿勢を表しています。安易に時流に乗らず、常に新しい可能性に挑戦し続け、他社がやらない人類の生命に関わる価値の高い仕事を製品開発を通じて実現することを目指す文化があります。また、「現場第一主義」を貫いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、本業の収益性を測る指標として売上高総利益率と売上高経常利益率を重視しています。新製品開発においてはターゲットとする売上高総利益率を一律に定め、研究開発費等の将来投資を抑えることなく、会社全体として以下の数値を念頭に置いた経営戦略を検討しています。
* 売上高経常利益率:20%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存のトップライン製品のシェア向上を図りつつ、海外市場での拡販や新領域への進出を可能にする新製品の研究開発を進めています。特に、医療現場の潜在ニーズを捉えた独創的な製品開発に注力しています。
* マイクロポンプ関連製品(クーデックエイミーPCA等)の早期開発・上市と新市場開拓
* 欧州への展開を最優先とした海外販売体制の強化(MDR認証取得の推進)
* 生産活動の最適化によるサプライチェーンの高度化と製造コストの低減
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は社員を重要な経営資源と位置づけ、個の力を強化することで企業価値の向上を目指しています。部下育成を上長の重要責務とし、OJTや計画的な人事異動、研修制度の構築を行っています。また、心身の健康保持やハラスメント禁止、有給休暇の時間単位取得制度など、働きやすい職場環境の整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 13.0年 | 6,533,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.8% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 35.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 57.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 37.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(64.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品開発の進度に係るリスク
同社は新技術や新製品の研究開発に投資していますが、環境変化等により開発対応に遅れが生じ、十分な成果が得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、開発テーマの選択と集中の慎重な検討、開発プロセスの見直し等により、開発リソースの有効活用に努めています。
■(2) 製品の販売価格引下げに伴うリスク
医療費抑制政策による償還価格の低下や、医療機関の共同購買による価格下落圧力等により、販売価格が低下する傾向にあります。原価低減等の効果が限定的であった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、独創性の高い製品開発や次世代製品への反映を進めることで対応を図っています。
■(3) 特定製品への依存に係るリスク
主力の吸引器関連製品の売上が全体の約64%を占めており、特定製品への依存度が高い状況です。過度な価格競争による単価下落等が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、新製品ラインナップの拡充や海外販売の拡大を進めることで収益構造の改善を図っています。



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