レスター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

レスター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するエレクトロニクス商社です。半導体や電子部品の販売を行うデバイス事業と、再エネや植物工場等のシステム事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、M&A効果等により売上高が増加し増収となりましたが、為替変動の影響等で営業利益と経常利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社レスター の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. レスターってどんな会社?


国内外の半導体・電子部品販売やEMS、再エネ事業などを展開する「エレクトロニクスの情報プラットフォーマー」です。

(1) 会社概要


同社は2009年にユーエスシーと共信テクノソニックの経営統合によりUKCホールディングスとして設立されました。2019年にバイテックホールディングスと経営統合し、商号をレスターホールディングスへ変更しました。2022年に東証プライム市場へ移行し、2024年4月には事業会社へ移行して現商号となりました。直近では2024年9月にPCIホールディングスを子会社化しています。

同社グループの従業員数は連結4,483名、単体1,021名です。筆頭株主はその他の関係会社であるケイエムエフで、第2位は退職給付信託口のみずほ信託銀行、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
ケイエムエフ 23.04%
みずほ信託銀行株式会社 退職給付信託 ソニーグループ口 再信託受託者 日本カストディ銀行 10.49%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長CEOは今野邦廣氏、代表取締役社長COOは林眞一氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
今野 邦廣 代表取締役会長CEO 1987年バイテック(現バイテックホールディングス)設立。同社社長、会長を経て、2019年4月より同社代表取締役会長兼CEO。2025年6月より現職。
林 眞一 代表取締役社長COO 1988年松下電器産業(現パナソニック)入社。パナソニックくらしアプライアンス社副社長等を経て、2025年6月より現職。
今野 宏晃 取締役専務執行役員 1997年朝日火災海上保険入社。バイテック執行役員、レスターコミュニケーションズ社長等を経て、2025年6月より現職。
柴田 真裕 取締役常務執行役員 1995年ユーエスシー(同社)入社。香港現地法人総経理、レスターエレクトロニクス専務執行役員等を経て、2025年6月より現職。
二島 進 取締役執行役員 1990年川鉄リース入社。バイテック入社後、同社財務部部長、経営企画部部長等を歴任。2025年6月より現職。
戸川 清 取締役執行役員 1971年日立化成工業入社。同社執行役専務等を経て、同社社外取締役等を歴任後、2025年1月より業務執行取締役に就任し、2025年6月より現職。
鈴木 俊幸 取締役(常勤監査等委員) 1987年バイテック入社。同社専務取締役、レスターエレクトロニクス取締役常務執行役員等を経て、2023年6月より現職。
今野 剛実 取締役(常勤監査等委員) 1996年加賀電子入社。PTT(現レスターサプライチェーンソリューション)入社、同社事業開発室室長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、尹晋赫(元Samsung Electronics副社長)、手塚仙夫(公認会計士)、伊達玲子(元ダイワ精機社長)、笠野さち子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デバイスBU」、「システムBU」、「IT&SIerBU」および「その他」事業を展開しています。

**デバイスBU**
半導体や電子部品の販売、システム提案、技術サポート、LSI設計開発等を行うデバイス事業と、電子機器の実装受託製造を行うEMS事業で構成されています。国内外のセットメーカー等を主な顧客としています。

収益は、半導体・電子部品の販売代金や、サプライチェーンマネジメント業務の受託、電子機器の製造受託による対価から得ています。運営は主に同社、PALTEK、レスターエンベデッドソリューションズ、レスターサプライチェーンソリューション、CU TECH CORPORATIONが行っています。

**システムBU**
映像・音響・通信ソリューションの提案やキャッシュレス端末の開発等を行うシステムソリューション事業と、再エネ運営管理や新電力、植物工場運営を行うエコソリューション事業で構成されています。放送局、官公庁、一般企業等を顧客とします。

収益は、システム機器の販売・保守、電力の供給、植物工場産野菜の販売等から得ています。運営は主に同社、バイテックベジタブルファクトリーが行っています。

**IT&SIerBU**
ソフトウェア開発、産業用PCの設計・製造、半導体設計・テスト等の情報サービスを提供しています。自動車、産業機器、金融等の幅広い分野の企業を顧客としています。

収益は、ソフトウェア開発やシステム構築、製品販売の対価から得ています。運営は主にPCIホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は3,238億円から5,610億円へと大幅に拡大しており、連続的な増収傾向にあります。経常利益も増加傾向にありましたが、直近2期では微減または横ばいで推移しています。当期純利益は、2022年3月期以降は黒字を維持し、直近では過去最高益を更新しています。利益率は1%台後半から2%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,238億円 3,996億円 4,871億円 5,125億円 5,610億円
経常利益 57億円 67億円 120億円 97億円 96億円
利益率(%) 1.8% 1.7% 2.5% 1.9% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 60億円 71億円 70億円 75億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しましたが、売上原価も増加し、売上総利益率はほぼ横ばいの8.5%で推移しています。販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減益となり、営業利益率は3.1%から2.5%へと低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,125億円 5,610億円
売上総利益 453億円 477億円
売上総利益率(%) 8.8% 8.5%
営業利益 159億円 142億円
営業利益率(%) 3.1% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が119億円(構成比35%)、荷造運賃が28億円(同8%)を占めています。売上原価には棚卸資産評価損80百万円が含まれています。

(3) セグメント収益


デバイスBUはM&A効果や民生向け需要により増収となりましたが、円高影響や産業機器市場の低迷により減益となりました。システムBUはエコソリューション事業の電力販売拡大等で増収となりましたが、利益面では競争激化等により減益となりました。新たに連結したIT&SIerBUが収益に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
デバイスBU 4,719億円 5,051億円 125億円 112億円 2.2%
システムBU 406億円 428億円 53億円 42億円 9.8%
IT&SIerBU - 131億円 - 5億円 3.6%
調整額 -5億円 -7億円 -19億円 -17億円 -
連結(合計) 5,125億円 5,610億円 159億円 142億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、効率的なコスト管理と収益性の高い事業への資源配分を推進しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益と棚卸資産の減少により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得収入があったものの、有形固定資産や投資有価証券の取得支出により使用超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れや社債発行による収入があったものの、短期借入金の減少、自己株式の取得、借入金の返済、配当金の支払いなどにより、大幅に使用超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 157億円 202億円
投資CF -66億円 1億円
財務CF -30億円 -161億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「情報と技術で、新しい価値、サービスを創造・提供し、社会の発展に貢献します」という経営理念を掲げています。この理念のもと、課題を解決する「エレクトロニクスの情報プラットフォーマー」を目指し、グループの融合と各事業の最適化、共創ビジネスの展開や新規事業の拡大を進めています。

(2) 企業文化


同社は「レスターグループ行動規範」を定めており、法令、定款、規程、企業倫理を遵守した行動を徹底しています。人権の尊重、公正な人事制度の運用、安全衛生に配慮した労働環境の整備を掲げ、個人の基本的人権と多様性を尊重する姿勢を明確にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表しています。4つのビジネスユニット体制の確立を目指し、事業拡大と収益力の向上に取り組んでいます。財務規律の維持や、DOE(株主資本配当率)4%以上などの株主還元目標も掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「エレクトロニクスの情報プラットフォーマー」を目指し、事業間シナジーの追求、外部パートナーとの共創、M&Aや資本提携による事業拡大を推進しています。デバイス事業ではクロスセルやグローバル展開、システム事業では新ビジネスモデルへの挑戦やPPA事業拡大、新設のIT&SIer事業では技術リソース強化と上流プロセスへの展開に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財こそが当社の価値創造の源泉」と考え、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進しています。階層別研修や専門性特化研修、課題対応型研修を実施し、多様で優秀な人財が活躍できる環境整備に努めています。女性管理職比率向上や柔軟な働き方支援、障がい者雇用なども積極的に進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.2歳 12.0年 7,315,475円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 70.6%
男女賃金差異(正規) 73.8%
男女賃金差異(非正規) 58.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職(6%)、外国籍人財採用(23名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合についてのリスク


同社グループが属するエレクトロニクス業界は、市場の成熟化や新興企業の参入、技術革新等により競争が激化しています。価格競争や技術対応の遅れが業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は業務効率化や技術力向上による高付加価値化を目指しています。

(2) 海外進出に伴うリスク


海外各国・地域での事業展開において、政治・経済状況の変化、法規制、テロ・戦争、感染症等の社会的混乱、債権回収リスクなどが業績に影響を与える可能性があります。同社は現地専門家やパートナーとの連携によりリスクマネジメントを図っています。

(3) 金融市場の変動リスク


グローバル展開に伴う外貨の取り扱いや借入金があるため、為替変動や金利上昇が業績に影響を及ぼす可能性があります。為替差損益の縮小、在庫削減や資金効率運用による借入金抑制などでリスク軽減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。