※本記事は、チムニー株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. チムニーってどんな会社?
飲食事業と特定の施設内における食堂受託事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2009年にエフ・ディーとして設立され、旧チムニーを子会社化後、2010年に合併して現在の社名となりました。2012年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2013年にはやまやの公開買付により同社の傘下に入りました。その後も業態開発や事業譲受を進め、居酒屋業態を中心に店舗網を拡大しています。
現在の従業員数は連結で659名、単体で613名です。大株主については、酒販事業を展開し同社の親会社でもあるやまやが過半数の株式を保有する筆頭株主となっています。第2位はアサヒビール、第3位は麒麟麦酒と、取引関係のある事業会社が名を連ねており、強固な協力体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| やまや | 50.53% |
| アサヒビール | 9.12% |
| 麒麟麦酒 | 5.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役会長は山内英靖氏、代表取締役社長は茨田篤司氏が務めています。取締役12名のうち、社外取締役の比率は16.7%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山内英靖 | 代表取締役会長 | 1985年やまや入社。同社取締役営業部長等を経て、2006年同社代表取締役社長兼社長執行役員に就任。2014年チムニー取締役に就任し、2016年より現職。2020年よりやまや代表取締役会長を兼任。 |
| 茨田篤司 | 代表取締役社長 | 1989年住友銀行(現三井住友銀行)入行。新宿法人営業第一部長等を経て、2022年チムニー顧問に就任。同年より現職。マルシェや関連会社の取締役も兼任。 |
| 水上貴史 | 取締役商品戦略担当 | 1993年やまや入社。九州営業部長等を経て、2015年チムニー出向。2019年チムニー入社し取締役執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 根本博史 | 取締役営業統括担当 | 1996年旧チムニー入社。執行役員人事総務本部長、取締役常務執行役員直営統括部長等を経て、2023年より現職。めっちゃ魚が好き取締役等も兼任。 |
| 伊藤浩之 | 取締役店舗開発兼事業開発担当 | 1995年テンアライド入社。2004年旧チムニー入社。東日本直営事業本部長、取締役常務執行役員新事業推進担当等を経て、2024年より現職。 |
| 寺脇剛 | 取締役管理担当兼IR・サステナビリティ推進担当 | 2004年マイカルカンテボーレ入社。2008年旧チムニー入社。FC事業部長、取締役常務執行役員FC事業部長等を経て、2023年より現職。 |
| 阿部真琴 | 取締役財経担当 | 1998年監査法人トーマツ入所。2002年公認会計士登録。2013年チムニー入社。財経部長、取締役執行役員財経担当等を経て、2025年より現職。 |
| 糠塚紀久夫 | 取締役 | 1997年やまや入社。同社執行役員商品部長等を経て、2021年チムニー取締役に就任。やまや商流代表取締役社長等も兼任。 |
| 田原口裕基 | 取締役 | 1994年やまや入社。同社経理部部長等を経て、2014年同社執行役員経理部長に就任。2017年よりチムニー取締役を務める。 |
| 大竹聡 | 取締役 | 1996年やまや入社。同社取締役執行役員商品部長等を経て、2022年チムニー取締役に就任。やまや執行役員店舗開発部長も兼任。 |
社外取締役は、大関均(元太陽有限責任監査法人パートナー)、長山恒正(元アサヒビール常務執行役員法人営業本部本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」「コントラクト事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 飲食事業
「はなの舞」や「さかなや道場」などのブランドで、居酒屋を中心とした直営店舗やフランチャイズ店舗(FC店)の運営を行っています。店舗への商品供給やFC店の管理も担っており、豊洲市場の買参権を活用して調達した鮮魚や契約農家からの農産物など、鮮度の高い食材を全国の店舗に納品できる物流網を整備しています。
直営店における顧客からの飲食代金に加え、FCオーナーからのロイヤリティや食材の販売代金を主な収益源としています。安定収益が見込める直営店をFCオーナーに継承する制度も導入し、両者が収益を上げる仕組みを構築しています。事業の運営は同社のほか、紅フーズコーポレーション、めっちゃ魚が好きなどが担っています。
■(2) コントラクト事業
特定の施設内における食堂受託事業を展開しています。具体的には、防衛省や法務省が所管する全国の厚生施設内などで、飲食の提供を中心とした店舗運営を行っています。特定の顧客層に対して安定的な食事提供サービスを担う事業です。
施設からの業務受託に伴う運営収入や、施設利用者への飲食提供を通じた代金を収益源としています。この事業は、同社が直営店舗として運営を担っています。
■(3) その他
飲食事業およびコントラクト事業に含まれない事業として、主に通信販売業を展開しています。自社のリソースを活用し、店舗以外のチャネルを通じて顧客に商品を提供する事業領域です。
通信販売を通じた商品販売代金を収益源としています。この事業の運営は同社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は新型コロナウイルス感染症の影響から脱却し、回復基調が続いており、直近では264億円に達しています。一方、経常利益や当期純利益は、2024年3月期に黒字転換を果たしたものの、人件費や原材料価格、光熱費等の各種コスト増加の影響を受け、直近の2期間では連続して減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 101億円 | 202億円 | 257億円 | 262億円 | 264億円 |
| 経常利益 | 33億円 | -16億円 | 14億円 | 11億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 32.2% | -8.1% | 5.6% | 4.0% | 2.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | -19億円 | 8億円 | 10億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益は前年並みの水準を維持していますが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は半減しています。利益率も低下傾向にあり、コスト上昇に対する価格改定や効率化の取り組みが課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 262億円 | 264億円 |
| 売上総利益 | 180億円 | 181億円 |
| 売上総利益率(%) | 68.7% | 68.7% |
| 営業利益 | 9億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、パートやアルバイトへの支払いである雑給が41億円(構成比23%)、社員の給料及び手当が31億円(同17%)、店舗等の賃借料が29億円(同16%)を占めており、人件費と店舗関連費用が大きなウェイトを占めています。
■(3) セグメント収益
飲食事業は既存店のブラッシュアップや新規出店、各種フェアの開催により、客単価の上昇と売上高の微増に寄与しました。一方、コントラクト事業は店舗の入れ替わり等により微減となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 飲食事業 | 244億円 | 247億円 |
| コントラクト事業 | 18億円 | 17億円 |
| 連結(合計) | 262億円 | 264億円 |
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 14億円 |
| 投資CF | -7億円 | -13億円 |
| 財務CF | -13億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「心」と「食」と「飲」を通じて地域社会に「出会い」「語らい」「憩い」と「癒し」のサービスを提供し、世界中のお客様から「ありがとう」と言われる企業になることを企業理念に掲げています。QSCA(品質、サービス、清潔さ、雰囲気)の継続的な向上を通じて企業価値を拡大し、すべてのステークホルダーから信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
目の前のお客様を大切にし、価値あるものを提供するため、一次産業(生産)から三次産業(店舗販売)までを一貫して自社展開する六次産業化への取り組みを重視しています。また、スローガンとして「変える勇気、変わる覚悟。全員で創る地域一番店」を掲げ、従業員が心身ともに安心して働くことができる働き甲斐のある組織風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
居酒屋業界における厳しい経営環境が続くなか、当面は新型コロナウイルスの影響で悪化した純資産額を改善し、人件費や物価の上昇局面においても安定的に利益を計上できる体制を構築することを最優先目標としています。財務基盤の健全化を果たしたうえで、持続的な成長と企業価値向上に向けた各種指標を新たに策定していく方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
「店舗収益向上戦略」「専門業態の拡大と新規出店・業態転換」「多様な人財の活躍」に注力しています。既存店のブラッシュアップやDXの活用による業務効率化を進め、接近接客で地域一番店を目指すほか、圧倒的な鮮度にこだわる「さかな酒場 魚星」の拡大や食事需要を取り込む店舗開発を推進しています。また、M&Aによる事業領域の拡大も検討しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「店舗を創る主役は、人である」という考えのもと、従業員を価値創造の源泉と位置づけています。トップダウン型から現場の主体的なアクションを促す「対話型マネジメント」への転換を図り、自律型組織の構築を進めています。また、多様な人材が互いに高め合う「共育」をコンセプトに、外国籍社員や女性の活躍を推進し、現場力の強化とエンゲージメント向上に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 9.9年 | 5,025,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 89.6% |
また、同社は「事業等のリスク」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、パート・アルバイト比率(約70.7%)、外国籍人材比率(約7.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食材・資材の調達と食の安全性
天候不順、自然災害、世界情勢や為替・原油価格の変動などにより、食材や資材の安定的確保が困難になるリスクや原材料価格が高騰するリスクがあります。また、厳格な品質管理を行っていますが、食中毒などの事故や安全性が疑われる事象が発生した場合、信用低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。
■(2) 人財の確保および育成
業績拡大には優秀な人材の確保と教育を通じたレベルアップが不可欠です。しかし、労働市場の競争激化などにより必要な人材が集まらない場合や、育成が一定レベルに達せず店舗を適切に管理できる人材が不足した場合には、出店計画や店舗運営、サービス品質に支障をきたす恐れがあります。
■(3) 加盟店(フランチャイズ)の動向
FCオーナーの突発的な事故などによりロイヤリティや食材仕入代金などの債権が回収できなくなるリスクがあります。また、居酒屋業界の市場縮小やFC店舗の業績悪化によって加盟店舗数が急減した場合には、同社グループ全体の収益が減少し、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。