※本記事は、トモニホールディングス株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. トモニホールディングスってどんな会社?
同社は徳島大正銀行と香川銀行を中核とする広域金融グループで、銀行業務やリース、カード等のサービスを提供しています。
■(1) 会社概要
2010年に徳島銀行と香川銀行の経営統合により設立され、東証一部に上場しました。2016年に大正銀行を完全子会社化し、2020年に徳島銀行が大正銀行を吸収合併して徳島大正銀行が誕生しました。2025年にはとくぎんトモニリンクアップを設立し、広域ネットワークを強化しています。
従業員数は連結で2184名、単体で33名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行、第3位には従業員持株会が名を連ねており、安定した資本基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.63% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.28% |
| トモニホールディングス従業員持株会 | 3.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長兼CEOは中村武氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村武 | 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者) | 日本銀行に入行し、高松支店長や業務局長、文書局長を歴任。同社代表取締役専務を経て、2018年より現職。 |
| 板東豊彦 | 代表取締役副社長 | 徳島銀行(現徳島大正銀行)に入行し、総合企画本部長兼審査本部長などを歴任。徳島大正銀行代表取締役頭取および同社代表取締役副社長として現職。 |
| 有木浩 | 代表取締役副社長 | 香川銀行に入行し、営業本部長や企画本部長を歴任。香川銀行取締役頭取および同社代表取締役副社長として現職。 |
| 藤井仁三 | 常務取締役経営企画部長 | 第一勧業銀行(現みずほ銀行)を経て徳島銀行(現徳島大正銀行)に入行。企画部長などを歴任し、2017年より現職。 |
| 喜岡均 | 常務取締役リスク・コンプライアンス部長 | 日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)を経て香川銀行に入行。融資本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 金岡紀嘉 | 常務取締役監査部長 | 香川銀行に入行し、本店営業部長や管理本部長兼営業店検査室長などを歴任。2025年より現職。 |
| 長尾純 | 取締役グループ戦略部長兼地域商社的金融機能担当 | 徳島銀行(現徳島大正銀行)に入行し、本店営業部長や審査一部長などを歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、井上佳昭(元大阪ガス執行役員)、多田人志(元四国財務局管財部長)、富家佐也加(弁護士)、武田真由美(公認会計士・税理士)、吉澤康代(香川大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「その他」事業を展開しています。
■銀行業
徳島大正銀行および香川銀行を通じ、本店や支店等において預金、貸出、内国・外国為替、有価証券投資などの基幹業務を行っています。多様化する顧客のニーズに即応し、地域経済を支える総合的な金融サービスを提供しています。
収益源は、事業資金や消費性ローンなどの貸出金利息や、為替や各種サービス提供に伴う手数料などです。運営は主に徳島大正銀行および香川銀行が行っています。
■その他
リース業務、クレジットカード業務、ベンチャーキャピタル業務、GX・地方創生関連業務など、銀行業務を補完・拡張する周辺金融サービスを展開しています。地域商社的機能も担い、広域的な課題解決を支援しています。
収益源は、リース料、クレジットカードの手数料、投資先からのリターンなど多岐にわたります。運営はトモニリース、トモニカード、とくぎんトモニリンクアップなどの子会社各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、貸出金利息や役務取引等収益の堅調な推移により、経常収益は毎期連続して増加しています。これに伴い経常利益も右肩上がりで拡大しており、収益力の高さがうかがえます。利益率は緩やかな低下傾向にあるものの、着実な増益基調を維持しており、安定した成長を続けていることが分かります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 682億円 | 777億円 | 878億円 | 951億円 | 1048億円 |
| 経常利益 | 191億円 | 207億円 | 215億円 | 234億円 | 244億円 |
| 利益率(%) | 28.0% | 26.6% | 24.5% | 24.6% | 23.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 14億円 | 18億円 | 46億円 | 55億円 |
■(2) 損益計算書
直近2年間の損益状況を見ると、営業収益は前期の54億円から当期は63億円へと順調に拡大しています。これに伴い営業利益も46億円から55億円へと増加しており、営業利益率は87.3%と極めて高い水準を記録しています。効率的な事業運営による強固な収益基盤が確立されていることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 54億円 | 63億円 |
| 営業利益 | 46億円 | 55億円 |
| 営業利益率(%) | 85.2% | 87.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・手当が3.9億円(構成比50.1%)、役員報酬が1.3億円(同16.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
サービス別の収益状況を見ると、主力の貸出業務が全体の過半を占めており、前期から大きく伸長して収益拡大を牽引しています。また、有価証券投資業務は堅調に推移し、リース業務やその他サービスも着実に増収を達成しています。多様な金融サービスがバランスよく収益に貢献していることが分かります。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 貸出業務 | 516億円 | 602億円 |
| 有価証券投資業務 | 218億円 | 201億円 |
| リース業務 | 53億円 | 59億円 |
| その他 | 164億円 | 186億円 |
| 連結(合計) | 951億円 | 1048億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良な状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1182億円 | 175億円 |
| 投資CF | -682億円 | -358億円 |
| 財務CF | -31億円 | -57億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も5.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
グループ経営理念として「お客さま第一主義」「お客さまとともに成長」「信頼と安心の経営」を掲げています。お客さま第一主義の経営を徹底し、ニーズに応じた最良の金融サービスを提供するとともに、地域において持続的安定的な金融仲介機能を発揮し、信頼され安心して末長くつきあえる存在になることを目指しています。
■(2) 企業文化
環境・社会問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題について、地域金融グループとしての役割や特性を活かして積極的・能動的に取り組む価値観を重視しています。社員一人ひとりの成長を組織の成長につなげ、全てのステークホルダーとともに持続可能な地域社会の実現を目指す姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
「第6次経営計画~ さあ “トモニ”進もう 次のステージへ ~」を策定し、10年後の目指す姿である「やっぱり“トモニ”を選んでよかったと言われる広域金融グループ」の実現に向けた深化のフェーズとしています。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:205億円
* ROE:6.5%以上
* 自己資本比率:9.5%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
「サステナビリティ戦略」「営業戦略」「人財戦略」「オペレーション戦略」「ガバナンス戦略」の5つの基本戦略に基づく具体的施策に取り組んでいます。適正な貸出スプレッドの確保や戦略的なリスクアセットの伸長による持続可能な営業基盤の構築、DX・AI活用による業務構造改革を進めています。提案型営業や非対面チャネルの最適化を図り、高付加価値サービスへのシフトを推進することで、資本コストや株価を意識した経営と企業価値向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員一人ひとりの成長を組織の成長につなげ、各組織の成長をグループ全体の成長に、お客さまの成長を地域の成長につなげる」という方針を掲げています。従業員を成長に向けた価値創造の源泉である「人的資本」と位置づけ、多様性と専門性を両立した人的資本経営の実現を目指し、働きがいのある職場環境の整備や実践的な学びの場を提供して人財の育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 54.3歳 | 31.6年 | 9,452,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.1% |
| 男性育児休業取得率 | 93.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 64.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 63.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスクによる与信関連費用の増加
貸出金が資産の約70%を占めており、景気動向等により貸出先の業況が悪化し不良債権が増加した場合、多額の貸倒償却や引当負担が生じる可能性があります。また、債務不履行時の貸出先支援等により与信関連費用が増加し、業績や財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 金利・為替等の市場リスク
貸出金や有価証券を中心とした資金運用と、預金等による資金調達との金利差を主な収益源としているため、金利変動によるミスマッチが収益にマイナスに作用する可能性があります。また、為替相場の変動や株価、債券価格の下落により、保有有価証券に評価損が発生するリスクがあります。
■(3) 自己資本比率規制に係るリスク
銀行持株会社として連結自己資本比率を国内基準の4%以上に維持することが求められています。不良債権処理に伴う与信関連費用の増加や、有価証券の評価損等によって自己資本比率が基準を下回った場合、金融庁から業務の停止等を含む命令を受けるリスクが存在します。



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