※本記事は、ENEOSホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ENEOSホールディングスってどんな会社?
エネルギー事業の持株会社です。石油精製販売で国内首位のシェアを持ち、天然ガス開発や金属事業など幅広く展開しています。
■(1) 会社概要
2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合によりJXホールディングスが設立されました。2017年に東燃ゼネラル石油と経営統合しJXTGホールディングスへ、2020年に現商号へ変更しました。2025年には中核子会社であったJX金属が上場し、持分法適用会社へ移行しています。
同グループの連結従業員数は約34,200名、単体では約1,300名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行です。第3位には外国法人の資産管理を行う常任代理人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 18.66% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.36% |
| STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234 | 2.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性4名の計10名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長執行役員は宮田知秀氏が務めています。社外取締役比率は70.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮田 知秀 | 代表取締役社長執行役員 | 1990年東燃入社。東燃ゼネラル石油取締役、JXTGエネルギー取締役常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 田中 聡一郎 | 代表取締役副社長執行役員CFO | 1987年日本石油入社。JXTGエネルギー執行役員、同社常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 塩田 智夫 | 取締役常勤監査等委員 | 1988年日本石油入社。JXTGエネルギー執行役員、ENEOS社長付などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、工藤泰三(元日本郵船会長)、冨田哲郎(元東日本旅客鉄道会長)、岡俊子(元アビームM&Aコンサルティング社長)、川﨑博子(元NTTドコモ常勤監査等委員)、栃木真由美(元S&Pグローバル・レーティング・ジャパン執行役員)、菅野博之(元最高裁判所判事)、豊田明子(元PwCアドバイザリーパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「石油製品ほか」「石油・天然ガス開発」「機能材」「電気」「再生可能エネルギー」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 石油製品ほか
ガソリン、灯油、軽油などの燃料油や、石油化学製品、ガス、水素などの製造・販売を行っています。国内に複数の製油所・製造所を有し、サービスステーションを通じて一般消費者や産業向けに製品を供給しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主にENEOS株式会社が行っています。また、米国子会社等を通じた石油製品のトレーディング事業も含まれています。
■(2) 石油・天然ガス開発
世界各地において、原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行っています。また、CCS(二酸化炭素回収・貯留)やCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)を中心とした環境対応型事業も推進しています。
収益は、生産した原油や天然ガスの販売により得ています。運営は、ENEOS Xplora株式会社が中心となって行っています。
■(3) 機能材
自動車タイヤ向け合成ゴムや、電気自動車(EV)向け二次電池材料、高機能化学品などの製造・販売を行っています。高機能・高付加価値製品の開発に注力しています。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は、株式会社ENEOSマテリアルが行っています。
■(4) 電気
火力発電所の運営による電力の供給や、電力の卸売・小売販売を行っています。また、都市ガス事業やVPP(仮想発電所)事業にも取り組んでいます。
収益は、電力およびガスの利用料として顧客から受け取ります。運営は、ENEOS Power株式会社が行っています。
■(5) 再生可能エネルギー
太陽光、陸上風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電所の開発・運営を行っています。洋上風力発電の開発も推進しています。
収益は、発電した電力の販売により得ています。運営は、ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社が行っています。
■(6) その他
道路舗装、土木・建築工事、不動産賃貸、資金調達などのグループ共通業務を行っています。
収益は、工事請負代金や賃貸料などとして受け取ります。運営は、株式会社NIPPOやENEOS不動産株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は原油価格の変動等により増減していますが、直近では12兆円規模を維持しています。利益面では、在庫評価の影響や減損損失の計上等により変動が見られますが、当期はJX金属の上場に伴う売却益等により、最終黒字を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 7兆6,580億円 | 10兆9,218億円 | 15兆0,166億円 | 12兆3,446億円 | 12兆3,225億円 |
| 税引前利益 | 2,309億円 | 7,718億円 | 2,574億円 | 3,679億円 | 882億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 7.1% | 1.7% | 3.0% | 0.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,140億円 | 5,371億円 | 1,438億円 | 2,881億円 | 2,261億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上収益は横ばいですが、営業利益は減少しています。これは、石油製品のマージン縮小や製油所のトラブル等が影響したほか、前年に計上された一時的な利益の剥落などが要因です。一方、売上総利益率は一定水準を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 12兆3,446億円 | 12兆3,225億円 |
| 売上総利益 | 1兆1,630億円 | 1兆1,038億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.4% | 9.0% |
| 営業利益 | 3,814億円 | 1,061億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が36億円(構成比0.4%)、租税公課が38億円(同0.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
石油製品ほかセグメントは減益となりましたが、石油・天然ガス開発や機能材などは比較的堅調に推移しました。JX金属の持分法適用会社化に伴い、金属事業は非継続事業に分類され、セグメント情報からは除外されています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石油製品ほか | 11兆0,732億円 | 10兆9,797億円 | 2,618億円 | -507億円 | -0.5% |
| 石油・天然ガス開発 | 2,049億円 | 2,428億円 | 915億円 | 874億円 | 36.0% |
| 機能材 | 3,067億円 | 3,470億円 | 72億円 | 177億円 | 5.1% |
| 電気 | 2,667億円 | 3,199億円 | -64億円 | 210億円 | 6.6% |
| 再生可能エネルギー | 418億円 | 440億円 | -118億円 | -169億円 | -38.4% |
| その他 | 4,920億円 | 5,025億円 | 512億円 | 504億円 | 10.0% |
| 調整額 | -408億円 | -1,135億円 | -121億円 | -28億円 | - |
| 連結(合計) | 12兆3,446億円 | 12兆3,225億円 | 3,814億円 | 1,061億円 | 0.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「改善型」です。本業の営業活動によるキャッシュ・フローはプラスであり、JX金属株式の一部売却などにより投資活動によるキャッシュ・フローもプラスとなりました。これらの資金を用いて有利子負債の削減や株主還元を進めています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10,103億円 | 5,768億円 |
| 投資CF | -2,410億円 | 1,308億円 |
| 財務CF | -3,310億円 | -6,304億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「地球の力を、社会の力に、そして人々の暮らしの力に。エネルギー・資源・素材における創造と革新を通じて、社会の発展と活力ある未来づくりに貢献します」というグループ理念を掲げています。また、「今日のあたり前」を支え、「明日のあたり前」をリードすることを新たな決意としています。
■(2) 企業文化
「安全・環境・健康」を最優先の価値観とし、高い倫理観を持って行動することを重視しています。また、困難な課題に挑戦し、変革を恐れず、常に新しい価値を創造し続ける姿勢を大切にしています。顧客本位の視点に立ち、誠実さと信頼を基盤とした企業活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
第4次中期経営計画(2025年度〜2027年度)において、2027年度の財務目標として以下の数値を掲げています。
* ROE:10%以上
* ROIC:6%以上
* 当期利益(在庫影響除き):3,200億円
* 営業利益(在庫影響除き):5,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「筋肉質な経営体質への転換」と「ポートフォリオ再編」を2本柱としています。徹底的な「見える化」とAI活用による業務効率化・組織スリム化を進めるとともに、早期収益化が見込める事業や低炭素事業へリソースを集中させます。また、人的資本経営にも注力し、次世代リーダーの育成やジョブ型タレントマネジメントを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「適所適材を基本とする効果的な制度の具現・実行」と「安心して誇りを持って働ける企業文化づくり」を柱としています。経営戦略と連動した人材配置や、次世代リーダーの早期選抜・育成を行うとともに、健康経営やダイバーシティ&インクルージョンを推進し、エンゲージメントの高い組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 17.4年 | 10,686,238円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※当社及びENEOS Power株式会社における「男性労働者の育児休業取得率」及び「労働者の男女の賃金の差異」は、出向元のENEOS株式会社で算出しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、重大労災件数(1件)、TRIR(2.24)、LTIR(0.64)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 財務リスク管理 ③市場リスク
原油、石油製品、銅などの商品価格や為替レートの変動リスクがあります。原油価格や石油製品市況の変動はマージンに影響を与え、外貨建取引や資産負債は為替変動の影響を受けます。これらに対し、デリバティブ等を用いたヘッジを行っていますが、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 環境規制に関するリスク
国内外の広範な環境規制の適用を受けており、規制強化に伴う環境浄化費用の増加や、環境汚染が生じた場合の賠償金支払い、操業停止などのリスクがあります。これらは財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 気候変動に関するリスク
脱炭素社会への移行に伴い、石油製品需要の減少や炭素税等のコスト増加が見込まれます。また、異常気象による操業への影響や物理的被害のリスクもあります。カーボンニュートラルへの対応を進めていますが、想定以上の急速な変化は業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 操業に関するリスク
火災、爆発、自然災害、労働争議、事故等による操業停止リスクがあります。これらが発生した場合、生産・販売活動に支障を来し、損害を被る可能性があります。保険等でカバーできない損害が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。



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