SOMPOホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SOMPOホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の保険持株会社です。国内損害保険事業、海外保険事業、国内生命保険事業、介護事業等を展開しています。当連結会計年度の業績は、海外保険事業における増収などが寄与し、保険収益は前期比で増収となりましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社SOMPOホールディングスの有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. SOMPOホールディングスってどんな会社?


損害保険、生命保険、介護、デジタル事業などを展開するSOMPOグループの持株会社です。

(1) 会社概要


2010年に損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が経営統合し、NKSJホールディングスとして設立されました。2014年に損保ジャパン日本興亜ホールディングスへ、2016年に現商号へ変更しました。2017年に海外事業を統括するSompo International Holdings Ltd.を設立、2023年にはエヌ・デーソフトウェアを完全子会社化し介護事業を強化しています。

連結従業員数は54,106人、単体従業員数は467人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は外国法人のGOVERNMENT OF NORWAYとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.75%
日本カストディ銀行(信託口) 6.66%
GOVERNMENT OF NORWAY 2.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表執行役社長は奥村幹夫氏です。社外取締役比率は約62%です。

氏名 役職 主な経歴
奥村幹夫 取締役 グループCEO代表執行役社長 1989年安田火災海上保険入社。SOMPOケア社長、当社グループCOOなどを経て、2024年4月より現職。
濵田昌宏 取締役 グループCFO代表執行役副社長 1988年安田火災海上保険入社。当社グループCSO兼グループCIOなどを経て、2025年4月より現職。
原伸一 取締役 グループCHRO代表執行役副社長 1988年安田火災海上保険入社。当社グループCHRO執行役専務などを経て、2025年4月より現職。
川内雄次 取締役 1988年安田火災海上保険入社。当社執行役員常務などを経て、2025年6月より現職。
今邨忍 取締役 1995年安田火災海上保険入社。当社リスク管理部長、損害保険ジャパン取締役(常勤監査等委員)を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、スコット・トレバー・デイヴィス(立教大学教授)、遠藤功(元ローランド・ベルガー社長)、東和浩(元りそなHD会長)、柴田美鈴(弁護士・監査委員長)、名和高司(一橋ビジネススクール客員教授)、山田メユミ(アイスタイル取締役・報酬委員長)、和賀昌之(元三菱ケミカル社長)、梶川融(太陽有限責任監査法人会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内損害保険事業」「海外保険事業」「国内生命保険事業」「介護事業」および「その他」事業を展開しています。

国内損害保険事業


国内市場において、火災保険、海上保険、傷害保険、自動車保険などの損害保険商品の引受および資産運用を行っています。個人および法人顧客に対し、多様なリスクに対応する保険商品を提供しています。

保険料収入や資産運用収益が主な収益源です。運営は主に損害保険ジャパンやSOMPOダイレクト損害保険などが行っています。

海外保険事業


北米、欧州、南米、アジア、中東などの海外市場において、保険引受業務および資産運用業務を展開しています。コマーシャルおよびコンシューマーの顧客に対し、プロパティ、カジュアリティ、スペシャリティ保険および再保険などを提供しています。

保険料収入や資産運用収益が主な収益源です。運営は主にSompo International Holdings Ltd.を中心とした海外現地法人が行っています。

国内生命保険事業


国内市場において、医療保険、がん保険、収入保障保険などの生命保険商品の引受および資産運用を行っています。「健康応援企業」として、保険本来の機能(Insurance)に健康応援機能(Healthcare)を組み合わせた価値を提供しています。

保険料収入や資産運用収益が主な収益源です。運営は主にSOMPOひまわり生命保険が行っています。

介護事業


高齢者向けの介護サービス(施設介護、在宅介護など)および介護周辺サービスの提供を行っています。また、介護事業者向けにソフトウェア等のプラットフォーム事業も展開しています。

利用者からの介護サービス利用料やソフトウェアの利用料などが主な収益源です。運営は主にSOMPOケアやエヌ・デーソフトウェアが行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、延長保証事業、デジタル関連事業、アセットマネジメント事業、確定拠出年金事業などを展開しています。

サービスの提供対価や運用報酬などが収益源です。運営はSOMPOワランティ、SOMPO Light Vortex、SOMPOアセットマネジメント、損保ジャパンDC証券などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年3月期は、税引前利益、当期利益ともに前期を下回りました。国内損害保険事業において前年度に好調だった資産運用等の「金融損益」が大幅な減益(前期の反動減)となったことが重く響き、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比54.1%減の2,431億円と、全体として「増収・大幅減益」となったのが特徴です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
保険収益 4兆8,368億円5兆0,655億円
税引前利益 6,145億円 3,303億円
利益率(%) 12.7%6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 5,297億円 2,431億円

(2) 損益計算書

保険収益(売上高に相当)は、海外保険事業での増収や為替の影響などにより前期比4.7%増の5兆655億円となりました。一方、本業の儲けを示す保険サービス損益は、海外での自然災害の増加等による費用の増加が影響し、13.5%減の3,042億円へと悪化しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
保険収益(売上高相当) 4兆8,368億円 5兆655億円
保険サービス損益(粗利相当) 3,516億円 3,042億円
保険サービス損益率(%) 7.3% 6.0%

(3) セグメント収益


当期は、海外保険事業において保険料収入の増加等により増収となりましたが、利益面では自然災害の影響等により減益となりました。国内損害保険事業も増収となりましたが、資産運用損益の減益等により利益は減少しました。国内生命保険事業、介護事業も前期比で減益または横ばいの結果となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内損害保険事業 25,857億円 26,345億円 1,925億円 583億円 2.2%
海外保険事業 20,522億円 22,277億円 2,604億円 1,778億円 8.0%
国内生命保険事業 2,485億円 2,547億円 757億円 299億円 11.7%
介護事業 1,759億円 1,814億円 64億円 53億円 2.9%
その他 655億円 660億円 -55億円 -276億円 -
調整額 -768億円 -781億円 2億円 -6億円 -
連結(合計) 50,509億円 52,862億円 5,297億円 2,431億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済や株主還元も進めている健全型です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6,343億円 5,730億円
投資CF -6,401億円 -2,722億円
財務CF -1,126億円 -4,817億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は18.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「SOMPOのパーパス」として、「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を掲げています。保険だけにとどまらないサービスを提供し、社会課題の解決に取り組み、未来を切り拓いていくという想いが込められています。

(2) 企業文化


グループの全ての役員・社員が大切にしたいものの根幹として、「誠実」「自律」「多様性」を「SOMPOの価値観」として定めています。これらを起点に日々の期待行動を「グループ共通コンピテンシー」として定義し、役員選任や評価の基準に反映することで、企業風土の変革と浸透を図っています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から3年間の中期経営計画をスタートさせており、「レジリエンスのさらなる向上」と「つなぐ・つながる」の実現を目指しています。経営数値目標として、以下を掲げています。

* 修正連結ROE:13~15%
* 修正EPS成長率:年率+12%超

(4) 成長戦略と重点施策


「SOMPO P&C(損害保険事業)」と「SOMPOウェルビーイング」の2つのビジネス領域に事業を集約し、成長を加速させます。P&Cではグローバルな規模拡大と収益性向上を、ウェルビーイングでは健康・介護・老後資金の課題解決を目指します。また、生成AIの業務実装やデータ利活用へ積極的に投資し、業務変革を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「SOMPOのパーパス」実現に向け、社員一人ひとりが「MYパーパス」を追求できる環境を整備しています。「コーポレートカルチャー変革」「グループ人材強化」「人事制度の進化と人材基盤の拡充」を重点戦略とし、300億円規模の人材ファンドによる投資拡大や、ジョブ型人事制度の導入、グループ横断の公募制度などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 13.5年 12,183,576円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.6%
男女賃金差異(正規雇用) 74.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 100.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(14.3%)、女性部店長比率(20.7%)、女性管理職比率(26.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の悪化・転換


異業種からの新規参入やデジタル技術の進展への対応が遅れることで、競争力や収益基盤が低下する可能性があります。また、シェアリング経済の拡大や人口減少による市場縮小、技術革新による事故減少に伴う保険ニーズの減少などが、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) マクロ経済環境の大幅な変化


世界経済の減速による収入減少や、急激なインフレ進行による事業コストおよび支払保険金の増加が懸念されます。コスト増を価格転嫁できない場合や、金融資産の価値が下落した場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 地政学リスク


地政学的緊張の高まりによる制裁や重大事象の発生が、金融資産の価値下落や支払保険金の増大、事業の中断などを引き起こし、グループ経営に波及的な悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。