※本記事は、SOMPOホールディングス株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. SOMPOホールディングスってどんな会社?
国内の損害保険・生命保険に加え、海外保険や介護事業などを幅広く展開する保険持株会社です。
■(1) 会社概要
2010年4月に持株会社として設立され、同時に上場を果たしました。2014年9月に損保ジャパン日本興亜ホールディングスに商号を変更した後、2015年12月にはワタミの介護(後のSOMPOケアネクスト)を連結子会社化し、介護事業へ本格参入しました。2016年10月に現在のSOMPOホールディングスへ商号変更し、2026年2月にはAspen Insurance Holdings Limitedを買収して海外事業をさらに強化しています。
現在の従業員数は連結で55,702名、単体で497名となっています。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務等を行う国内の信託銀行であり、第3位には海外の金融機関が名を連ねるなど、機関投資家を中心とした株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.32% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.84% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 3.41% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表者はグループCEO代表執行役社長の奥村幹夫氏が務めており、社外取締役比率は61.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 奥村幹夫 | 取締役 グループCEO代表執行役社長 | 1989年安田火災海上保険入社。SOMPOケア代表取締役社長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 原伸一 | 取締役 グループCHRO代表執行役副社長 | 1988年安田火災海上保険入社。当社執行役常務等を経て、2025年4月より現職。 |
| 田尻克至 | グループCFO代表執行役副社長 | 1990年安田火災海上保険入社。当社執行役員常務等を経て、2026年4月より現職。 |
| 濵田昌宏 | 取締役 執行役 | 1988年安田火災海上保険入社。当社グループCFO等を経て、2026年4月より現職。 |
| 川内雄次 | 取締役 | 1988年安田火災海上保険入社。当社執行役員常務 グループCEO補佐等を経て、2025年6月より現職。 |
| 今邨忍 | 取締役 | 1995年安田火災海上保険入社。当社リスク管理部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、スコット・トレバー・デイヴィス(立教大学教授)、遠藤功(元ローランド・ベルガー社長)、東和浩(元りそなホールディングス社長)、柴田美鈴(NS綜合法律事務所パートナー)、名和高司(一橋ビジネススクール客員教授)、山田メユミ(アイスタイル取締役)、和賀昌之(元三菱ケミカル社長)、梶川融(太陽有限責任監査法人会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内損害保険事業」「海外保険事業」「国内生命保険事業」「介護事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内損害保険事業
日本国内において損害保険の引受業務、資産運用業務およびそれらに関連する業務を提供しています。個人から法人まで幅広い顧客を対象に、自然災害などの様々なリスクに備えるための商品やサービスを展開しています。
主な収益源は、顧客からの保険料収入や資産運用収益です。事業の運営は、主に損害保険ジャパンやSOMPOダイレクト損害保険が行っています。
■海外保険事業
米州、欧州、アジア太平洋など広範な地域で、コマーシャルおよびコンシューマー分野の損害保険ならびに再保険を展開しています。グローバル市場において専門性の高いリスクソリューションを提供しています。
主な収益源は、海外の個人や法人、保険会社などからの保険料収入です。運営は主にSompo International Holdings Ltd.やAspen Insurance Holdings Limitedなどが行っています。
■国内生命保険事業
日本国内において、生命保険の引受業務および資産運用業務を提供しています。保険本来の役割と健康を支える機能を組み合わせた商品を通じ、予測・予防から保険、予後・介護に至るまで連続的な価値を提供しています。
主な収益源は、個人や法人の顧客からの保険料収入です。事業の運営は、主にSOMPOひまわり生命保険が行っています。
■介護事業
高齢化に伴い需要が拡大するなか、在宅介護から施設介護までのフルラインナップのサービスを提供するオペレーター事業や、コンサルティング等のソリューション事業、ウェルビーイング事業を展開しています。
主な収益源は、介護施設入居者等からの介護サービス利用料や福祉用具販売代金などです。事業の運営は、主にSOMPOケアやエヌ・デーソフトウェアが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ全体の経営管理を行う保険持株会社事業のほか、デジタル関連事業、アセットマネジメント事業、確定拠出年金事業、ヘルスケア事業などを展開しています。
主な収益源は、グループ会社からの経営管理料や各サービスの提供に伴う手数料などです。運営はSOMPOホールディングスのほか、SOMPO Light Vortexなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績は、売上高にあたる保険収益が着実に拡大しています。利益面でも、自然災害の影響などによる一時的な減益を経たのち、主力事業の収支改善や資産運用収益の増加により大幅な回復を見せています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 48,368億円 | 50,655億円 | 53,729億円 |
| 税引前利益 | 6,145億円 | 3,303億円 | 8,432億円 |
| 利益率(%) | 12.7% | 6.5% | 15.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5,297億円 | 2,431億円 | 6,401億円 |
■(2) 損益計算書
売上高にあたる保険収益は前期比で着実に成長しています。保険ビジネスの特性上、通常の売上総利益や営業利益の項目はありませんが、トップラインの堅調な拡大が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 50,655億円 | 53,729億円 |
販売費及び一般管理費(単体)のうち、業務委託費が77億円(構成比30%)、給与が65億円(同25%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての事業セグメントで増収を達成しています。特に主力である国内損害保険事業および海外保険事業においては、保険料の見直しや自然災害の減少、運用益の増加などにより大幅な増益を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内損害保険事業 | 26,345億円 | 27,306億円 | 583億円 | 2,681億円 | 9.8% |
| 海外保険事業 | 22,277億円 | 24,412億円 | 1,778億円 | 2,945億円 | 12.1% |
| 国内生命保険事業 | 2,547億円 | 2,587億円 | 299億円 | 686億円 | 26.5% |
| 介護事業 | 1,814億円 | 1,862億円 | 53億円 | 80億円 | 4.3% |
| その他 | 660億円 | 696億円 | △276億円 | 13億円 | 1.9% |
| 調整額 | △781億円 | △848億円 | △6億円 | △4億円 | - |
| 連結(合計) | 52,862億円 | 56,015億円 | 2,431億円 | 6,401億円 | 11.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5,730億円 | 7,064億円 |
| 投資CF | △2,722億円 | △2,329億円 |
| 財務CF | △4,817億円 | △4,127億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も27.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「SOMPOのパーパス」として「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を掲げています。保険だけにとどまらないサービスを提供し、未来を切り拓いていくという想いが込められています。また、今後10年で目指す姿として、グループビジョン「未来の可能性を解き放つ」を新設し、シナジーの最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
コーポレートカルチャーの変革を目指し、「誠実」「自律」「多様性」を「SOMPOの価値観」として定めています。これらを判断・行動の拠り所とし、社員が声をあげられ、多様な意見が受け入れられる文化の醸成を推進しています。また、この価値観を起点とした「グループ共通コンピテンシー」を採用や評価基準に反映させています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画(2024年度~2026年度)において、2026年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 修正連結ROE:11%程度
* 修正EPS成長率:年率+19%程度
* 修正連結利益:5,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の金融・保険の枠組みを超え、社会課題の解決そのものを事業の核に据える戦略を推進しています。損害保険事業では国内外の連携強化によるリスク管理の高度化や資産運用の効率化を図り、ウェルビーイング事業では「健康・介護・老後資金」の不安を解消するサービスを有機的に連携させ、顧客生涯価値の最大化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働きやすさ」「社員と組織の成長」「働きがい」の向上を目指し、大規模な人材投資を行う「SOMPO人材ファンド」を設立しています。「AI」と「英語」をグループ共通の必須スキルと定め、社員の自律的な学びやキャリア形成を支援するジョブ型人事制度の導入やタレントマネジメントシステムの構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 12.5年 | 12,595,575円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.4% |
| 男性育児休業取得率 | 86.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 13.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(50.5%)、エンゲージメントスコア(国内:3.60pt)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サイバーセキュリティ
サイバー攻撃により情報システムの停止や重大な情報漏えい、サプライチェーンの寸断等が発生するリスクがあります。これに対し、グループ横断でサイバーリスク管理態勢を整備し、日々の監視強化やシステムの総点検を行うことで、対応能力の継続的な向上を図っています。
■(2) コンプライアンスリスク
各事業に適用される国内外の法規制への違反や不祥事の発生により、社会的信頼や信用が失墜するリスクがあります。内部統制システムの実効性向上や内部通報制度の運用を通じて、未然防止と早期発見に努め、健全な企業風土の定着に取り組んでいます。
■(3) 人的資本リスク
「働きやすさ」「社員と組織の成長」「働きがい」が実現できず、優秀な人材の確保や定着が困難になることで、企業競争力が低下するリスクがあります。これに対し、自律的なキャリア形成支援や、多様な人材が活躍できるインクルーシブな環境整備を推進しています。



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