バイタルケーエスケー・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バイタルケーエスケー・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バイタルケーエスケー・ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、医薬品卸売事業を主力に薬局、動物用医薬品卸売、製薬事業などを展開しています。直近の業績は、抗がん剤やワクチン等の販売に注力したことで増収となり、営業外収益等の増加も寄与し経常利益および当期純利益ともに増益を達成しました。


※本記事は、株式会社バイタルケーエスケー・ホールディングスの有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バイタルケーエスケー・ホールディングスってどんな会社?


バイタルケーエスケー・ホールディングスは、東北や近畿を地盤に医療用医薬品の卸売などを展開する持株会社です。

(1) 会社概要


2009年にバイタルネットとケーエスケーの経営統合により共同持株会社として設立され、東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後、薬局事業を担うオオノや健康堂薬局を子会社化し、動物用医薬品卸売や介護レンタル事業など関連領域へ多角化を推進しています。2025年には製薬事業へ参入しました。

従業員数は連結で3,871名、単体で52名です。大株主については、筆頭株主は合同会社MHで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関となっています。

氏名 持株比率
合同会社MH 10.09%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.92%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 2.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は村井泰介氏が務めており、社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
村井 泰介 代表取締役社長 1987年サンエス(現バイタルネット)入社。営業本部長等を経て、2006年バイタルネット取締役副社長。2009年同社取締役、2015年より同社代表取締役社長に就任。
一條 武 代表取締役副社長 1985年サンエス(現バイタルネット)入社。営業本部長等を経て、2010年同社取締役、2015年同社代表取締役社長。2023年より同社代表取締役副社長。
井口 順之 代表取締役副社長 1990年ダイゴ(現ケーエスケー)入社。管理本部長等を経て2025年同社代表取締役社長、バイタルネット取締役。2025年より同社代表取締役副社長。
鈴木 三尚 取締役 2008年バイタルネット入社。営業本部長等を経て、2020年同社取締役兼常務執行役員。2023年同社取締役副社長。2025年より同社取締役コーポレートコミュニケーション等担当。
鈴木 宏一郎 取締役 2000年ニチエー(現バイタルネット)入社。新潟営業部長等を経て、2017年同社取締役兼執行役員。2024年同社取締役兼常務執行役員。2025年より同社取締役営業・仕入担当。
喜多 勇夫 取締役 1989年太陽神戸銀行入行。三井住友銀行堺エリア支店長を経て、2021年同社執行役員経理財務部長。2023年より同社取締役。2025年ケーエスケー代表取締役。
髙橋 喜春 取締役監査等委員 1986年サンエス(現バイタルネット)入社。財務部長等を経て、2009年同社経営企画部長兼経理財務部長。2024年バイタルネット監査役。2025年より同社取締役監査等委員。


社外取締役は、小野木喜惠子(元日本郵便常務執行役員東北支社長)、桂淳(メディカルインキュベータジャパン取締役社長兼CEO)、継田雅美(新潟薬科大学教授)、西谷剛史(日本CGA代表取締役)、岩田摩美子(弁護士・デンコードー社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品卸売事業」「薬局事業」「動物用医薬品卸売事業」「製薬事業」および「介護レンタルその他事業」を展開しています。

医薬品卸売事業

病院や開業医、薬局等の医療機関に対して、医療用医薬品、診断薬、医療機器、医療材料などの販売を行っています。東北・新潟および近畿エリアを中心とする地域密着型の事業展開が特徴です。

医療機関への医薬品等の卸売による販売代金が主な収益源です。運営は主にバイタルネットが東北・新潟地域を、ケーエスケーが近畿地域を担当してサービスを提供しています。

薬局事業

一般消費者や患者に対して、処方箋に基づく調剤業務や、医薬品、医療機器、衛生材料などの販売を行っています。地域医療の拠点として、主にかかりつけ薬局の機能を提供しています。

患者からの調剤報酬や薬学管理料、医薬品の販売代金が収益源です。オオノやグッドネイバー、健康堂薬局、天王保健調剤センターなどの子会社が各地域で薬局を運営しています。

動物用医薬品卸売事業

官公庁や農業共済組合、農場、牧場、動物病院などに対して、動物用医薬品や飼料などの販売を行っています。東日本エリアを中心に事業を展開し、動物の健康維持をサポートしています。

各取引先への動物用医薬品や飼料等の販売代金が収益源です。運営はアグロジャパンおよびアローメディカルの2社が主体となって事業を担当しています。

製薬事業

欧米で承認済みでありながら日本国内では未承認となっている有望な新薬等の導入支援や、国内における医薬品の研究開発、製造、販売などを行っています。

国内での承認取得後に、開発した医薬品を医薬品卸売業者へ販売することによる代金が収益源となります。本事業は新たに設立されたメドリープファーマが運営を担当しています。

介護レンタルその他事業

介護用品やリハビリ用品の販売およびレンタル事業、農薬等の卸売、運送業、スポーツ関連施設運営、医療機関へのコンサルティング事業など、医療周辺領域の多角的なサービスを提供しています。

介護用品のレンタル料や販売代金、業務受託手数料などが収益源です。たんぽぽや八千代ケアサポート、医療経営研究所など複数の子会社がそれぞれの事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が緩やかながらも着実に成長を続けています。経常利益についても毎年増益を達成しており、利益率も徐々に改善傾向にあります。当期利益は特別損益の影響により一時的に変動があるものの、本業である医薬品卸売事業の堅調な推移を背景に、安定した収益基盤を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5788億円 5813億円 5875億円 6004億円 6105億円
経常利益 58億円 60億円 66億円 70億円 78億円
利益率(%) 1.0% 1.0% 1.1% 1.2% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 41億円 44億円 79億円 66億円 47億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方で、物価高騰等による物流費や電算費の増加、さらに新規事業である製薬事業の研究開発費の計上が影響し、営業利益および営業利益率は低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6004億円 6105億円
売上総利益 492億円 496億円
売上総利益率(%) 8.2% 8.1%
営業利益 57億円 40億円
営業利益率(%) 0.9% 0.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与・手当が197億円(構成比44%)、荷造費・運賃配送費が50億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の医薬品卸売事業は、抗がん剤やインフルエンザワクチン等の販売に注力し増収を牽引しました。薬局事業は調剤技術料収入等の増大により堅調に推移しています。動物用医薬品卸売事業や介護レンタルその他事業もM&Aによる子会社化等の効果もあり、各セグメントで増収を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医薬品卸売事業 5646億円 5729億円
薬局事業 196億円 200億円
動物用医薬品卸売事業 116億円 126億円
製薬事業 - -
介護レンタルその他事業 46億円 50億円
連結(合計) 6004億円 6105億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を設備投資などの投資活動や、配当金の支払いおよび借入金の返済といった財務活動に充当する「健全型」のパターンを示しています。安定した本業のキャッシュ創出力を背景に、健全な財務運営が行われています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -80億円 48億円
投資CF 35億円 -11億円
財務CF -65億円 -44億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人々が安心して健康に暮らせるよう、地域のヘルスケアを支える」ことをパーパス(存在意義)として掲げています。このパーパスの実現に向けて、医薬品卸売の枠を超え、経営のスピードアップや市場開拓の強化、長年培った医薬品流通技術とIT技術の融合・進化に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、地域社会の健康維持に貢献する「地域密着経営」を重要視しています。医療制度や技術の変化を先読みし、「知の探索」と「知の深化」を実行できる多様な価値観を持つ人材の育成に注力しており、誠実かつ公正な事業活動を通じて、地域におけるヘルスケアの課題解決に挑戦し続ける文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2027」において、グループの持続的な成長と企業価値向上を目指す定量目標を設定しています。2028年3月期の達成目標は以下の通りです。

・売上高:6,600億円
・コア営業利益率:1.15%以上
・調整後ROE:8.0%以上
・一株当たり利益:167円以上

(4) 成長戦略と重点施策


資本コストを意識したグループ経営を推進し、「次代を見据えたビジネスモデルの革新」を図るための重点施策を実行しています。既存事業の収益力強化に加え、製薬事業などへの積極的な成長投資により事業ポートフォリオを最適化し、最適な資本構成の実現とガバナンス体制の強化を進めます。

・事業ポートフォリオ・マネジメントによる各事業の評価・モニタリング
・財務健全性と資本効率を両立するバランスシート管理
・持続可能な社会の実現と成長に繋げるグループ経営体制の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「従業員一人ひとりの資質」こそが価値創造の原動力であると位置づけ、事業戦略と組織戦略を両輪に経営を推進しています。採用チャネルの多様化に加え、階層別・選抜型育成や次世代リーダーの育成、各領域の専門性を持つスペシャリストの育成を強化し、多様な人材が主体的に活躍できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.3歳 6.1年 6,234,677円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 57.9%
男女賃金差異(全労働者) 55.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 72.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(16.6%)、男性労働者の育児休業取得率(53.3%)、労働者の男女の賃金の差異(全労働者)(67.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療保険制度改革および薬価基準改定に関するリスク

主力取扱商品である医療用医薬品の価格は公定の薬価基準に依存しており、毎年の薬価改定や医療保険制度の改革が実施されることで、商品の販売価格が引き下げられ、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 医薬品メーカーの価格政策に関するリスク

売上総利益を構成する割戻金や販売報奨金は、製薬メーカーの価格政策や営業戦略の変更により随時見直されます。メーカーの方針変更に伴いこれらの条件が変更された場合、同社グループの収益性が低下するリスクがあります。

(3) 特有の取引慣行に関するリスク

医薬品卸売業界では、納入価格が未決定のまま医療機関等へ納入し、後から価格交渉を行う慣行があります。適正価格での販売に向けた交渉が長期化した場合、予想価格と決定価格の乖離が業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。