※本記事は、株式会社バイタルケーエスケー・ホールディングス の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年07月09日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バイタルケーエスケー・ホールディングスってどんな会社?
医薬品卸売事業を主力とし、東北・新潟エリアと近畿エリアを地盤とする持株会社です。地域のヘルスケアを支えるインフラ機能を担っています。
■(1) 会社概要
2009年、バイタルネットとケーエスケーの株式移転により共同持株会社として設立されました。2014年にはオオノを子会社化し薬局事業を強化したほか、ファイネスを持分法適用関連会社化しました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、2024年にはアローメディカルを連結子会社化しています。
連結従業員数は3,756名、単体では52名です。筆頭株主は合同会社MHで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も同様に信託銀行となっており、機関投資家による保有比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同会社MH | 10.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口) | 8.01% |
| ㈱日本カストディ銀行(信託口) | 3.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長は村井 泰介氏です。社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村井 泰介 | 代表取締役社長 | 1987年サンエス(現バイタルネット)入社。同社取締役副社長等を経て、2015年同社代表取締役社長。2019年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役社長兼CEO兼CIO兼経営企画担当。 |
| 岡本 総一郎 | 代表取締役副社長 | 1993年協進(現ケーエスケー)入社。同社代表取締役社長等を経て、2022年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役副社長。2025年よりケーエスケー取締役会長。 |
| 一條 武 | 代表取締役副社長 | 1985年サンエス(現バイタルネット)入社。同社代表取締役社長等を経て、2023年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役副社長渉外・薬局事業担当。 |
| 井口 順之 | 取締役 | 1990年ダイゴ(現ケーエスケー)入社。同社取締役管理本部長兼人事部長等を経て、2021年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス取締役。2025年よりケーエスケー代表取締役社長。 |
| 鈴木 三尚 | 取締役 | 2008年バイタルネット入社。同社取締役兼常務執行役員営業本部長等を経て、2023年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス取締役。2024年よりバイタルネット代表取締役副社長。 |
| 鈴木 宏一郎 | 取締役 | 2000年ニチエー(現バイタルネット)入社。同社取締役兼常務執行役員営業本部長等を経て、2023年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス取締役事業開発担当。 |
| 喜多 勇夫 | 取締役 | 1989年太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。ケーエスケー取締役等を経て、2023年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス取締役経理財務担当。2025年よりケーエスケー代表取締役。 |
| 松井 秀太郎 | 取締役 | 1985年松井薬品(現ファイネス)入社。1998年フレット(現ファイネス)代表取締役社長。2014年よりファイネス代表取締役社長。2015年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス取締役。 |
| 継田 雅美 | 取締役 | 1987年新潟市民病院薬剤部。2016年新潟薬科大学薬学部教授。2023年同大学医療技術学部臨床検査学科教授。同年よりバイタルケーエスケー・ホールディングス取締役。 |
| 西巻 孝 | 取締役 監査等委員 | 1984年兵庫薬販(現ケーエスケー)入社。同社執行役員総務部長等を経て、2024年よりケーエスケー常勤監査役、バイタルケーエスケー・ホールディングス取締役監査等委員。 |
社外取締役は、小野木 喜惠子(元日本郵便常務執行役員)、桂 淳(オンコロジービジネスコンサルティング代表)、継田 雅美(新潟薬科大学教授)、高橋 誠也(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品卸売事業」、「薬局事業」、「動物用医薬品卸売事業」および「その他」事業を展開しています。
■医薬品卸売事業
病院、診療所、調剤薬局などの医療機関に対して、医療用医薬品、検査試薬、医療機器、医療材料などの販売を行っています。グループの売上高の大部分を占める主力事業であり、東北・新潟エリアと近畿エリアを主要な商圏としています。
収益は、医療機関等への商品販売による対価です。運営は主に、連結子会社である株式会社バイタルネットと株式会社ケーエスケーが行っており、関連会社の株式会社ファイネスも事業を展開しています。
■薬局事業
一般消費者や患者に対して、保険調剤や一般用医薬品、医療機器、健康食品などの販売を行っています。地域医療の一翼を担う「かかりつけ薬局」としての機能を強化しています。
収益は、調剤報酬(技術料等)や商品販売による対価です。運営は、株式会社オオノ、株式会社グッドネイバー、株式会社健康堂薬局、有限会社天王保健調剤センターなどの連結子会社が行っています。
■動物用医薬品卸売事業
動物病院や畜産農家、飼料販売店などに対して、動物用医薬品、ペットフード、サプリメント、飼料添加物などの販売を行っています。コンパニオンアニマル(ペット)向けと産業動物(畜産)向けの双方を取り扱っています。
収益は、顧客への商品販売による対価です。運営は主に、株式会社アグロジャパンとアローメディカル株式会社が行っています。
■その他事業
上記報告セグメントに含まれない事業として、医薬品等の小売業、農薬等の卸売業、運送業、介護サービス業、医療機関に対するコンサルティング業、損害保険代理業、不動産斡旋業、駐車場業などを行っています。
収益は、各サービスの利用者や取引先からの利用料や販売代金、手数料などです。運営は、株式会社医療経営研究所、株式会社バイタルグリーン、株式会社バイタルケア、株式会社バイタルエクスプレス、大伸通商株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は5000億円台後半から6000億円台へと緩やかな増加傾向にあります。利益面では、2021年3月期は低水準でしたが、翌期以降は経常利益で50億円〜70億円の水準を維持しています。当期純利益も安定的に推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,385億円 | 5,788億円 | 5,813億円 | 5,875億円 | 6,004億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 58億円 | 60億円 | 66億円 | 70億円 |
| 利益率(%) | 0.1% | 1.0% | 1.0% | 1.1% | 1.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 41億円 | 44億円 | 79億円 | 66億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益は若干増加し、営業利益率も同水準を維持しています。全体として、増収に伴い利益額も増加する安定した業績推移となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,875億円 | 6,004億円 |
| 売上総利益 | 483億円 | 492億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.2% | 8.2% |
| 営業利益 | 56億円 | 57億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 1.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与・手当が198億円(構成比46%)、荷造費・運賃配送費が48億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで前期比増収となりました。主力の医薬品卸売事業が増収増益となり全体を牽引しています。薬局事業と動物用医薬品卸売事業は増収ながら減益となりました。その他事業は赤字幅が縮小しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医薬品卸売事業 | 5,529億円 | 5,646億円 | 49億円 | 52億円 | 0.9% |
| 薬局事業 | 191億円 | 196億円 | 3億円 | 3億円 | 1.3% |
| 動物用医薬品卸売事業 | 110億円 | 116億円 | 4億円 | 3億円 | 2.7% |
| その他 | 45億円 | 46億円 | -1億円 | -1億円 | -1.7% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | 1億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 5,875億円 | 6,004億円 | 56億円 | 57億円 | 1.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる一方、投資活動によるキャッシュ・フローはプラス(資産売却等による収入超過)、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナス(借入返済や配当支払い等)となっており、事業検討型の傾向を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 236億円 | -80億円 |
| 投資CF | -18億円 | 35億円 |
| 財務CF | -58億円 | -65億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「人々が安心して健康に暮らせるよう、地域のヘルスケアを支える」ことをパーパス(存在意義)として掲げています。このパーパスの実現に向けて、経営のスピードアップ、市場開拓の強化、IT技術と医薬品流通技術の融合・進化、シナジー発揮による収益力向上に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同グループは、長期ビジョン2035として「垣根を越えて 薬の先へ “つなぐ”ことで医療の未来を革新する」を掲げています。既存の枠組みにとらわれず、新たな価値を創造し、医療の未来に貢献しようとする姿勢を重視しています。また、地域に根差したネットワークを活かし、有事の際にも安定供給を果たす責任感を持っています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2027」において、2028年3月期を最終年度とする数値目標を設定しています。資本コストを意識した経営を推進し、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。
* 売上高:6,600億円
* コア営業利益率:1.15%以上
* 調整後ROE:8.0%以上
* 一株当たり利益:167円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2027」では、「次代を見据えたビジネスモデルの革新―フェーズ2-」をビジョンに掲げ、以下の3つの重点施策を推進します。
1. **事業ポートフォリオ・マネジメント**: ROICとCAGRによる事業評価を行い、投資や撤退の判断を実行します。医薬品卸売事業ではDX活用による効率化や高付加価値化、製薬事業への新規参入などを進めます。
2. **財務戦略と資本政策**: 最適資本構成を意識し、成長投資と株主還元のバランスをとったキャッシュ配分を行います。
3. **グループ経営体制の強化**: ガバナンス体制とサステナビリティへの取り組みを強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同グループは、多様な価値観を持つ人材の専門性と独自性を活かし、社会に貢献できる人材を育成することを方針としています。具体的には、実践的な研修によるスキル向上、次世代リーダーの育成、通年採用やキャリア採用など採用活動の多様化、メンタリング研修や部門間交流の促進などに取り組んでいます。社員個々が能力を発揮し、働きがいを感じられる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 5.9年 | 6,124,070円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.4% |
| 男性育児休業取得率 | 15.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療保険制度改革および薬価基準改定
政府による医療保険制度改革や、定期的に実施される薬価基準改定により、医薬品の販売価格が引き下げられる可能性があります。これらの制度変更は、同グループの売上高や利益に直接的な影響を与えるリスクがあります。
■(2) 医薬品メーカーの価格政策
医薬品卸売事業の利益は、売買差益とメーカーからの割戻金・販売報奨金で構成されています。メーカーの営業戦略変更により、これらの条件が見直される可能性があります。同グループは随時交渉を行っていますが、メーカーの方針変更は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 納入価格に関するリスク
医薬品卸業界では価格競争が発生しやすく、競合他社の戦略により市場価格が低下する可能性があります。価格対応を迫られた場合や、対応できずに販売品目が減少した場合には、同グループの業績に悪影響を与える可能性があります。適正価格での納入維持に努めています。



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