※本記事は、OCHIホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. OCHIホールディングスってどんな会社?
1955年創業の老舗建材商社を中核とする持株会社です。建材卸売を軸に、加工や工事、環境事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1955年に福岡市で創業した越智商店(現・越智産業)を起源とします。2010年に単独株式移転により持株会社として設立され、福岡証券取引所に上場しました。2013年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌2014年には市場第一部へ指定替えとなりました。2023年にスタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は1,716名、単体では40名です。筆頭株主は代表取締役社長の越智通広氏で、第2位はオチワークサービス株式会社、第3位は公益財団法人広智奨学会です。上位株主には創業家関連や取引先企業、従業員持株会などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 越 智 通 広 | 21.91% |
| オチワークサービス株式会社 | 8.41% |
| 公益財団法人広智奨学会 | 3.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長執行役員は越智通広氏です。社外取締役比率は63.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 越 智 通 広 | 代表取締役社長執行役員 | 福岡銀行を経て越智産業入社。同社取締役経理部長などを歴任し、1991年より同社社長。2010年よりOCHIホールディングス代表取締役社長。 |
| 越 智 通 信 | 取締役執行役員営業本部長兼加工事業部長 | エッソ石油(現ENEOS)を経て越智産業入社。同社取締役などを経て、2024年4月より現職。越智産業取締役常務執行役員を兼任。 |
| 田 中 翔 基 | 取締役執行役員物流・情報システム本部長兼情報システム部長 | 三菱電機を経て同社入社。経営企画部長などを経て、2024年4月より現職。越智産業取締役物流統括管理者などを兼任。 |
| 谷 川 満 | 取締役執行役員管理本部長兼人事部長 | 伊藤忠建材常務取締役などを経て同社入社。経営企画部長などを経て、2023年11月より現職。越智産業取締役人事グループ長を兼任。 |
社外取締役は、中垣一史(元全教研社長)、松永秀(元伊藤忠商事九州支社企画開発部長)、具島三佳(QBキャピタルシニアアソシエイト)、松本英治(元福岡銀行監査部長)、久留和夫(公認会計士)、濵田弥亜(公認会計士・税理士)、小森蘭子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建材事業」「環境アメニティ事業」「加工事業」「エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 建材事業
住宅関連資材全般を取り扱うコア事業です。主に国内の建材メーカーや商社から仕入れた商品を、建材・材木販売店、ハウスメーカー、ゼネコン、工務店、ホームセンター等へ販売しています。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は、中核事業会社である越智産業のほか、ホームコア、トーソー、ソーケン、アイ・ビルドなどが担っています。
■(2) 環境アメニティ事業
快適な住環境を創造するための商品を扱っています。業務用や家庭用の空調機器、暖房機器などを国内メーカー等から仕入れ、販売しています。
収益は、機器の販売および設置工事等による代金です。運営は主に、北海道を基盤とする松井や、東北地方の太陽産業が行っています。
■(3) 加工事業
木造住宅の構造躯体(骨組み)の加工組立販売を行っています。建材販売にとどまらず、プレカット加工機能を持つことで他社との差別化を図っています。
収益は、加工済み構造躯体の販売代金です。運営は、西日本フレーミング、ヨドプレ、愛媛プレカットなどが行っています。
■(4) エンジニアリング事業
建設・工事関連の事業です。商業施設や公共事業の土木工事、内装工事、土木構造物の診断・調査、不動産賃貸・管理を行っています。また、高齢者専用賃貸住宅等の介護事業も含みます。
収益は、工事請負代金や不動産賃貸料、介護サービス料などです。運営は、DS TOKAI、アイエムテック、弓田建設などが担っています。
■(5) その他
上記セグメントに含まれない事業として、産業資材の販売や労働者派遣事業を行っています。
収益は、資材販売代金や派遣料などです。運営は、太平商工やヒット・イールが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は1,000億円台で安定的に推移しており、直近5期では増加傾向にあります。M&Aなどの効果により事業規模は拡大していますが、利益面では2022年3月期をピークに減少傾向が見られます。特に直近では、住宅市場の冷え込み等の影響を受け、利益率が低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,018億円 | 1,119億円 | 1,156億円 | 1,134億円 | 1,171億円 |
| 経常利益 | 22億円 | 35億円 | 35億円 | 27億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 3.2% | 3.1% | 2.4% | 1.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 35億円 | 25億円 | 21億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は減少しました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、人件費や物流費などのコスト増が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,134億円 | 1,171億円 |
| 売上総利益 | 156億円 | 163億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.7% | 13.9% |
| 営業利益 | 22億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が52億円(構成比35%)、その他が54億円(同36%)を占めています。また、販売運賃は21億円(同14%)となっています。
■(3) セグメント収益
建材事業はM&A効果もあり増収となりましたが、利益率は低下傾向です。環境アメニティ事業は減収増益、加工事業は住宅着工減の影響で減収減益となりました。エンジニアリング事業は新規子会社化により大幅増収となった一方、M&A関連費用等により減益となりました。その他事業は増収増益でした。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建材事業 | 697億円 | 725億円 | 8億円 | 8億円 | 1.2% |
| 環境アメニティ事業 | 178億円 | 175億円 | 3億円 | 3億円 | 1.8% |
| 加工事業 | 145億円 | 139億円 | 9億円 | 6億円 | 4.6% |
| エンジニアリング事業 | 83億円 | 95億円 | 8億円 | 4億円 | 4.7% |
| その他 | 31億円 | 36億円 | 1億円 | 1億円 | 3.4% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -7億円 | -9億円 | -% |
| 連結(合計) | 1,134億円 | 1,171億円 | 22億円 | 15億円 | 1.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金を、設備投資やM&Aなどの投資活動に回しつつ、借入金の返済などの財務活動を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 34億円 | 19億円 |
| 投資CF | -15億円 | -12億円 |
| 財務CF | -13億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「住生活に関するビジネスを基軸として、生活文化の向上と地球環境の保全に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、事業ポートフォリオを拡大し、「安全安心でサステナブルな(持続可能な)社会を創造する」というパーパスの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、持続的な成長と企業価値向上を目指し、社会環境の変化に適応する柔軟な姿勢を持っています。脱炭素社会の実現などサステナビリティへの取り組みを重視し、コンプライアンス経営やガバナンス強化を通じて、安定成長を支える経営基盤の確立に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的成長に向けた事業ポートフォリオの変革、成長分野への注力、経営基盤の確立を基本方針としています。具体的な数値目標としては、中長期的な株主価値向上のため、株主資本配当率(DOE)2.8%程度または連結配当性向30%程度のいずれか高い方を選択する方針を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
住宅需要の変化に影響を受けにくい体質を作るため、非住建分野の売上拡大やM&Aによる事業規模拡大を推進しています。建材事業では脱炭素商材の拡販やリフォーム需要の取り込み、加工事業では非住宅市場の開拓を進めています。また、エンジニアリング事業では工事ネットワークの構築、その他事業ではEV化を見据えた転換を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な働き方の推進、女性活躍推進、エンゲージメント向上、次世代リーダー育成を方針としています。テレワークや時差出勤などライフスタイルに合わせた環境づくりや、育児中の社員への支援、有期雇用社員の正社員転換などを進めています。また、エンゲージメントサーベイを実施し、その結果に基づいた施策を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 54.2歳 | 6.8年 | 8,161,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
※勤続年数は、ホールディングス設立に伴う転籍前の勤続年数を通算しています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 66.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 45.5% |
※上記は主要な連結子会社である越智産業株式会社の実績です。女性管理職比率の法定開示数値はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性割合(28.7%)、係長級の役職者に占める女性割合(15.7%)などです(越智産業株式会社の実績)。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 住宅市場の動向に関するリスク
建材および加工事業は住宅市場の影響を強く受けます。景気低迷や政策変更、資材価格高騰等により住宅需要が減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、非住宅分野やリフォーム需要の開拓を進めています。
■(2) 取引先に対する信用リスク
取引先の多くは中小規模の建材店や工務店であり、景気後退時に貸倒れが発生するリスクがあります。貸倒引当金の計上を超えて損失が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社はグループ全体での与信管理を徹底しています。
■(3) 企業買収等に関するリスク
M&Aによる事業拡大を進めていますが、市況変化や不測の事態により当初の投資効果が得られず、買収した企業の価値が低下した場合、減損損失の発生等により業績に影響を及ぼす可能性があります。事前調査や慎重な検討によりリスク回避に努めています。



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