AGS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AGS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するAGSは、システムコンサルティングから運用保守までを担う総合情報サービス企業です。データセンターを基盤とした情報処理やソフトウエア開発を主力とし、幅広い顧客のニーズに応えています。直近の業績は全事業が堅調に推移し、売上高と各段階利益で増収増益を達成しました。


※本記事は、AGS株式会社 の有価証券報告書(第31期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AGSってどんな会社?


同社は、データセンターを基盤とした情報処理やソフトウエア開発など総合情報サービスを展開しています。

(1) 会社概要


同社は1971年に設立された埼玉銀行および協和銀行向けの計算サービス会社を源流とします。1995年の合併を経て、2004年にりそなグループから独立し現在のAGSへ商号変更しました。2011年に東京証券取引所に上場を果たし、2025年には関係会社の吸収合併を行うなど、経営基盤の強化を継続しています。

同社グループの従業員数は連結で1109名、単体で846名です。大株主の構成は、筆頭株主がAGS社員持株会となっており、第2位は大栄不動産、第3位は富士倉庫運輸と事業会社が続きます。長年にわたり築かれた強固な事業基盤を背景に、安定した株主構成のもとで事業運営が行われています。

氏名 持株比率
AGS社員持株会 10.32%
大栄不動産 8.57%
富士倉庫運輸 6.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は中野真治氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
中野 真治 代表取締役社長兼社長執行役員 1985年埼玉銀行入社。埼玉りそな銀行常務執行役員、りそな銀行専務執行役員等を歴任。埼玉りそな銀行代表取締役兼専務執行役員を経て、2022年同社入社。2024年より現職。
及川 和裕 取締役兼専務執行役員企画管理本部長兼人事部担当兼総務部担当 1987年昭和コンピュータシステム(現同社)入社。企画部長、執行役員等を経て、2019年より企画管理本部長。2025年取締役兼専務執行役員企画管理本部長兼人事部担当兼総務部担当に就任し現職。
野澤 幸治 取締役兼常務執行役員事業推進本部長兼公共事業本部担当 1990年サイギンコンピューターサービス(現同社)入社。人事部長、営業統括部長等を経て2017年執行役員法人事業本部長。2019年事業推進本部長に就任し、2026年より現職。
石原 清彦 取締役兼常務執行役員企画管理本部副本部長兼企画部担当兼経理部担当兼経営戦略室担当 1993年あさひ銀総合システム(現同社)入社。人事部長、企画部長等を経て、2020年執行役員企画管理本部副本部長。2023年取締役兼執行役員となり、2025年より現職。


社外取締役は、伊豆隆義(東京グリーン法律事務所)、田野井優美(田野井製作所代表取締役社長)、井上理津子(元りそなビジネスサービス執行役員)、飯島寛(元埼玉県副知事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報処理サービス」、「ソフトウエア開発」、「その他情報サービス」、「システム機器販売」の事業を展開しています。

情報処理サービス


データセンターを基盤とした受託計算サービスと、IDCサービスやクラウドサービス、BPOサービスを提供しています。金融機関向け運用業務や一般法人向けの案件を中心に、安全かつ確実なシステム運用を24時間365日体制で支援しています。

顧客からの受託計算手数料やシステム利用料、クラウドサービス利用料が主な収益源です。事業の運営は同社ならびにAGSビジネスコンピューター、AGSプロサービスが行っています。

ソフトウエア開発


金融機関、公共団体、一般法人など幅広い顧客に対し、情報戦略策定支援やアプリケーション受託開発、ネットワーク構築を提供しています。独自の開発標準を策定し、専任部門のチェックによる高品質な開発を行っているのが特徴です。

顧客からのシステム開発の受託費用やコンサルティング料が主な収益源となります。事業の運営は主に同社およびAGSビジネスコンピューターが担っています。

その他情報サービス


システムパッケージ商品の販売や導入支援、ITインフラやセキュリティに関するコンサルティング、パブリッククラウドの運用支援などを提供しています。顧客のIT化を迅速に実現するためのソリューションをトータルで提供します。

パッケージソフトの販売代金や導入支援料、各種保守サービス料などが主な収益源です。事業の運営は同社、AGSビジネスコンピューター、AGSプロサービスの各社が行っています。

システム機器販売


独立系マルチベンダーとして特定のメーカーに依存せず、顧客のニーズに最適なコンピュータ機器や周辺機器の選定と販売を行っています。また、関連する備品やコンピュータ帳票の販売なども手掛けています。

機器の販売代金やサプライ品の販売代金が直接的な収益源となります。事業の運営は同社およびAGSビジネスコンピューターによって行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

直近5期間の業績は、右肩上がりの成長を継続しています。デジタルトランスフォーメーションの需要拡大や基幹システム刷新の波を背景に、ソフトウエア開発をはじめとする各セグメントが堅調に推移しています。継続的な増収とあわせて利益率の改善も進んでおり、収益性の高い事業体質への変革が着実に成果を上げていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 212億円 211億円 221億円 249億円 286億円
経常利益 10億円 9億円 13億円 19億円 25億円
利益率(%) 4.6% 4.3% 5.8% 7.6% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 7億円 9億円 14億円 19億円


直近2期間の比較では、売上規模の拡大と同時に原価管理の徹底や生産性の向上が進み、売上総利益率が上昇しています。また、積極的な事業展開に伴い販管費は増加しているものの、増収効果がそれを上回り、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 249億円 286億円
売上総利益 62億円 73億円
売上総利益率(%) 24.8% 25.5%
営業利益 18億円 24億円
営業利益率(%) 7.4% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が16億円(構成比34%)、賞与が9億円(同18%)を占めています。また、情報サービス事業の総製造費用においては、外注費が55億円(同36%)、労務費が47億円(同31%)を占めており、システム開発等に伴う人材関連コストが原価の中心となっています。

セグメント別の売上高を見ると、全事業で前年を上回る実績を計上しています。特にソフトウエア開発は、一般法人向けの案件や自治体向けの案件増加が大きく寄与し、大幅な増収を牽引しました。また、情報処理サービスにおいてもクラウドサービス案件などが堅調に推移し、安定した収益基盤として機能しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報処理サービス 120億円 121億円
ソフトウエア開発 74億円 101億円
その他情報サービス 36億円 40億円
システム機器販売 20億円 23億円
連結(合計) 249億円 286億円

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 22億円
投資CF -6億円 -4億円
財務CF -10億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.2%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

同社は、「お客様とともに未来を創造し、ITで夢のある社会づくりに貢献します」を企業理念に掲げています。多様な情報化ニーズに応えるべく、ソフトウエア開発と運用が一体となった柔軟でスピーディーなITソリューションを基盤とした総合情報サービス企業として、顧客に満足感のあるサービスを提供することを使命として経営に努めています。

同社は、「IT事業を通じて社会課題の解決に取り組み、夢のある未来の創造に貢献する企業」を目指す姿として掲げています。顧客から選ばれ続けるITパートナーであるために、弛まぬ努力と変革を続けるという中長期的なビジョンのもと、持続的な成長に向けて社会規範に則した誠実かつ公正な事業運営を重視する文化を醸成しています。

同社は、2025年度から開始した第二期中期経営計画において、「持続的に成長可能な経営基盤の構築」に向けた計数目標を設定しています。収益マネジメントの強化や業務改革を推進し、以下の達成を目指しています。

* 売上高:300.0億円
* 営業利益:28.0億円
* 営業利益率:9%
* ROE:11%程度

同社は、「クラウド時代においてもお客様から選ばれ続けるITパートナーとなる」ことを目指し、以下の重点施策を推進しています。

* クラウド・インフラセキュリティビジネスの推進
* コアビジネスの深化(高速開発ツールや生成AIの活用)
* 人事戦略の推進(人材の育成・採用・配置の戦略的展開)
* 経営効率化の推進(業務改革や組織の最適化)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

同社は、経営計画の実現に向けて「人材成長の加速」をコンセプトに置き、将来の経営人材やIT技術者の育成を進めています。また、多様・多才な人材が集い協働できる組織を実現するため、キャリア採用の拡大や女性リーダー候補の育成に取り組んでいます。従業員一人ひとりが事業への貢献と自身の成長を実感し、いきいきと働ける環境整備を推進しています。

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.3歳 19.4年 6,887,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女の賃金差異(全労働者) 64.9%
男女の賃金差異(正規雇用) 86.0%
男女の賃金差異(非正規) 36.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、クラウド・インフラ関連の中上級レベル資格取得者数(累計292名)、キャリア採用比率(39.7%)、エンゲージメントサーベイ結果(3.5)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客情報等漏洩の影響
データセンタービジネスやアウトソーシングサービスにおいて、多くの個人情報や顧客情報を預かっているため、情報漏洩や紛失が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はISMSやプライバシーマークを取得し、厳重な情報資産管理を実施してリスク回避を図っています。

(2) ソフトウエア開発の品質とプロジェクト管理
SIビジネスの中核であるソフトウエア開発において、システムに不備や不具合が発生した場合、あるいは開発段階で仕様変更による作業工数の大幅な増加などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は専管部署による品質チェックや独自の統合開発標準の構築を通じて、プロジェクトマネジメントの強化に取り組んでいます。

(3) 特定の販売先への依存
同社は過去の経緯から、りそなグループに対する売上割合が高く、2026年3月期の売上高に占める同グループの割合は28.6%となっています。経営方針の変更等により契約が終了した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新規事業の推進やアライアンス強化によって新規取引先を開拓し、特定の顧客に過度に依存しない営業基盤の再構築を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。