AGS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AGS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する総合情報サービス企業です。システムコンサルティングから開発、運用、アウトソーシングまでを一貫して提供しています。直近の連結業績は、売上高249億円(前期比12.5%増)、経常利益19.0億円(同47.7%増)と増収増益を達成しています。


※本記事は、AGS株式会社 の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AGSってどんな会社?


銀行系システム会社を母体とし、システム開発と運用を一体で提供する独立系の総合情報サービス企業です。

(1) 会社概要


1971年に協和銀行(現りそな銀行)および埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)の計算センターとして設立された2社を前身とし、1995年の合併を経て現在の基盤が形成されました。2004年にりそなグループから独立して商号をAGSに変更し、2011年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。その後、2014年に市場第一部へ指定替えとなり、2025年には子会社のAGSシステムアドバイザリーを吸収合併するなど、体制強化を進めています。

同社グループの従業員数は連結1,069名、単体801名です。筆頭株主はAGS社員持株会であり、第2位には不動産事業を展開する大栄不動産、第3位には倉庫・運送業を営む富士倉庫運輸が名を連ねています。

氏名 持株比率
AGS社員持株会 10.89%
大栄不動産 8.55%
富士倉庫運輸 6.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長兼社長執行役員は中野真治氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
中野 真治 代表取締役社長兼社長執行役員 埼玉銀行入行。埼玉りそな銀行代表取締役兼専務執行役員などを経て、2022年AGS入社。2023年6月より現職。
及川 和裕 取締役兼常務執行役員 1987年入社。企画部長、執行役員企画部担当などを経て、2017年6月より現職。企画管理本部長等を担当。
野澤 幸治 取締役兼常務執行役員 1990年入社。執行役員法人事業本部長、AGSビジネスコンピューター取締役などを経て、2023年6月より現職。事業推進本部長等を担当。
石原 清彦 取締役兼執行役員 1993年入社。企画部長、執行役員企画管理本部副本部長などを経て、2023年6月より現職。企画部、経理部、経営戦略室等を担当。


社外取締役は、川本英利(元クラリオン代表取締役社長)、伊豆隆義(弁護士)、田野井優美(田野井製作所代表取締役社長)、井上理津子(元りそなビジネスサービス執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報処理サービス」、「ソフトウエア開発」、「その他情報サービス」および「システム機器販売」事業を展開しています。

(1) 情報処理サービス


データセンターを基盤に、大型汎用機による受託計算サービスや、データ入力・印刷・デリバリ等の周辺業務、インターネットデータセンター(iDC)サービス、クラウドサービス、BPOサービスを提供しています。金融機関や公共団体、一般企業など幅広い顧客のシステム運用や業務効率化を支援しています。

収益は、顧客からの計算受託料、データセンター利用料、アウトソーシングサービス料などから構成されます。運営は主にAGS、AGSビジネスコンピューター、AGSプロサービスが行っており、24時間365日の監視体制による安全なサービス提供に努めています。

(2) ソフトウエア開発


金融機関、公共団体、一般法人向けに、情報戦略策定支援等のコンサルティングからアプリケーションソフトの受託開発、ネットワークの設計・構築までをトータルに提供しています。長年の実績とエンジニアリング経験を活かし、高品質なソリューションを提供しています。

収益は、顧客からのシステム開発受託料やコンサルティング料などから得ています。運営は主にAGSおよびAGSビジネスコンピューターが担当しており、独自の開発標準「INDESTA」を用いた品質管理を行っています。

(3) その他情報サービス


ITコンサルティング、システムパッケージ商品の販売・導入支援、インフラ・セキュリティに関するコンサルティング、パブリッククラウド運用支援、各種保守サービスなどを提供しています。顧客のIT化を迅速かつスムーズに実現するためのソリューション群です。

収益は、コンサルティング料、パッケージ商品販売代金、保守サービス料などから構成されます。運営はAGS、AGSビジネスコンピューター、AGSプロサービスに加え、ITコンサルティング等を担うAGSシステムアドバイザリー(2025年4月にAGSが吸収合併)が行っています。

(4) システム機器販売


独立系のマルチベンダーとして、特定のメーカーに依存せず、顧客のニーズに最適なコンピュータ機器の選定・販売や、関連する周辺機器・備品、コンピュータ帳票の販売を行っています。

収益は、顧客への機器およびサプライ品の販売代金から得ています。運営は主にAGSおよびAGSビジネスコンピューターが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第26期の209億円から第30期の249億円へと着実に増加傾向にあります。利益面でも、経常利益は第26期の8億円から第30期には19億円へと大幅に伸長しており、利益率も3.7%から7.6%へと改善が進んでいます。当期利益についても同様に増加トレンドを描いており、増収増益基調が継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 209億円 212億円 211億円 221億円 249億円
経常利益 8億円 10億円 9億円 13億円 19億円
利益率(%) 3.7% 4.6% 4.3% 5.8% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 7億円 9億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は24.2%から24.8%へと上昇しました。営業利益についても大幅な増益となっており、営業利益率は5.8%から7.4%へと改善しています。全体として収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 221億円 249億円
売上総利益 54億円 62億円
売上総利益率(%) 24.2% 24.8%
営業利益 13億円 18億円
営業利益率(%) 5.8% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が15億円(構成比35%)、賞与が7億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は全てのセグメントで増収となりました。特に主力の情報処理サービスと成長著しいソフトウエア開発が業績を牽引しています。ソフトウエア開発では大型案件の増加により大幅な増収増益を達成し、利益率も高い水準を示しています。システム機器販売も増収となり、利益率が大きく改善しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報処理サービス 116億円 120億円 19億円 19億円 16.1%
ソフトウエア開発 56億円 74億円 8億円 12億円 16.3%
その他情報サービス 32億円 36億円 5億円 5億円 15.3%
システム機器販売 17億円 20億円 0.2億円 1億円 5.4%
連結(合計) 221億円 249億円 13億円 18億円 7.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金を、設備投資や株主還元、借入返済に充当しており、財務体質は健全です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 7億円
投資CF -6億円 -6億円
財務CF -12億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様とともに未来を創造し、ITで夢のある社会づくりに貢献します」を企業理念として掲げています。この理念のもと、ソフトウエア開発と運用が一体となった柔軟でスピーディーなITソリューションを提供し、顧客に満足感のあるサービスを届ける総合情報サービス企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Keep On Changing ~事業を通じて社会課題を解決し、変革し続ける~」という姿勢を重視しています。また、社員の健康を重要な経営資源と捉える「AGSグループ健康経営宣言」を制定し、社員一人ひとりが自律的に健康活動に取り組み、心身ともに充実して活躍できる「最も働きやすく働きがいのある会社」を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は長期経営ビジョンの実現に向け、経営計画「Keep On Changing」を推進しています。2025年度から始まる第二期中期経営計画では持続的な成長と企業価値向上を目指し、以下の計数目標を掲げています。

* 2027年度計画:売上高275.0億円、営業利益23.0億円、営業利益率8%、ROE 9%程度
* 2030年度計画:売上高300.0億円、営業利益28.0億円、営業利益率9%、ROE 9.5%~10%程度

(4) 成長戦略と重点施策


「クラウド時代においてもお客様から選ばれ続けるITパートナー」を目指し、クラウド・インフラセキュリティビジネスの推進、コアビジネスの深化、人事戦略の推進、経営効率化の4つを重点施策としています。具体的には、クラウドサービスの組み合わせによる課題解決支援、基幹システム更改の遂行、高速開発ツールや生成AIの活用、戦略的な人材育成・採用などを進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営計画の実現に向けて「人事戦略」を策定し、経営人材・IT人材の中長期的な育成・確保を図っています。具体的には、「人材成長戦略」として経営幹部育成や技術者の資格取得支援、「中期的採用/多様な人材活用戦略」として即戦力採用や女性活躍推進、「エンゲージメント重視戦略」として働きがいのある環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.9歳 20.3年 6,609,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.3%
男女賃金差異(正規雇用) 85.7%
男女賃金差異(非正規) 30.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(40.9%)、クラウド・インフラ関連の資格取得者数(788名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客情報等漏洩の影響


データセンタービジネスやシステム構築等の業務において、個人情報を含む多数の情報資産を扱っています。情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や信用の毀損により、特に金融・公共分野での業務受託に深刻な影響を及ぼし、業績が悪化する可能性があります。これに対し、ISMSやプライバシーマークの取得、情報セキュリティ対策の徹底などによりリスク回避を図っています。

(2) ソフトウエア開発プロジェクト管理及び品質


SIビジネスの中核であるソフトウエア開発において、システムの不具合発生や開発段階での大幅な仕様変更による工数増加などが生じた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。このため、専管部署による品質チェックやプロジェクト進捗管理、独自の開発標準「INDESTA」の適用により、品質保証とプロジェクトマネジメントの強化に努めています。

(3) データセンターの業務継続における障害等


データセンターにおいて、自然災害や設備不具合、サイバー攻撃等により業務継続が困難になった場合、損害賠償や信用失墜により業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は強固な地盤への立地、免震構造、自家発電装置などの設備対策に加え、各種認証の取得やBCP策定による対応体制の整備を行っています。

(4) 特定の販売先への依存


りそなホールディングス及びその連結子会社(りそなグループ)への売上割合が高く(当期30.3%)、契約の終了や不利な変更があった場合、業績に影響が出る可能性があります。同社は、IT技術力やグループ力を活かした新規事業推進やアライアンス強化により、新規顧客を開拓し、特定の取引先への依存度を下げる取り組みを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。