※本記事は、日本ドライケミカル株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本ドライケミカルってどんな会社?
消火設備、消防自動車、火災報知設備等を製造・販売する総合防災企業です。日本初の粉末消火器を開発したパイオニアです。
■(1) 会社概要
1955年に設立され、粉末消火器および設備の製造販売を開始しました。1991年に東証二部、1995年に一部へ上場しましたが、2000年に米国タイコグループの傘下となり上場廃止しました。その後、独立系企業として2011年に東証二部へ再上場し、2013年に一部指定、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。
同グループは連結従業員1,157名、単体788名の体制です。大株主は、筆頭株主が警備サービス大手の綜合警備保障(ALSOK)で、続いて取引先持株会、資産管理業務を行う信託銀行などが名を連ねています。ALSOKとは資本業務提携を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 綜合警備保障 | 16.41% |
| 日本ドライケミカル取引先持株会 | 6.32% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は亀井 正文氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 亀井 正文 | 代表取締役社長 | 藤和不動産、ソニーケミカル等を経て2010年同社入社。管理本部長、経理財務部長等を歴任し、2024年3月より現職。 |
| 浅田 裕沖 | 常務取締役 | 1991年同社入社。営業本部長、製造本部長等を歴任し、2024年5月より事業統括本部長。 |
| 松岡 猛 | 取締役 | 1974年同社入社。メンテナンス事業本部長などを経て、2024年5月より事業統括本部副本部長(建築・プラント防災事業管掌)。 |
| 柄澤 秀樹 | 取締役 | 1993年同社入社。プラント防災事業本部長等を経て、2025年6月より事業統括本部副本部長(営業企画、機器・メンテナンス事業管掌)。 |
| 山内 良介 | 取締役 | 綜合警備保障出身。同社支社長等を経て2021年同社取締役就任。2024年5月より事業統括本部副本部長(営業開発管掌)。 |
社外取締役は、南波 幸雄(元ソニー情報技術部統括部長)、清 威人(エイムネクスト代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「防災設備事業」「メンテナンス事業」「商品事業」を展開しています。
■(1) 防災設備事業
オフィスビルやプラント、船舶などに設置する各種防災設備の設計・施工、および消防自動車の製造・販売を行っています。特に建築防災ではスプリンクラーやガス系消火設備、プラントでは泡消火設備など、施設の特性に合わせたシステムを提供します。
収益は、顧客である建設会社や施主、地方自治体等から受け取る工事代金や車両販売代金から成ります。運営は主に日本ドライケミカルが行い、一部製造を子会社や協力会社が担っています。
■(2) メンテナンス事業
納入した各種防災設備の保守点検、およびそれに伴う修繕・改修工事を行っています。消防法で義務付けられた定期点検を実施するほか、設備の経年劣化に対応したリニューアル提案なども手掛けます。
収益は、建物所有者や管理者から受け取る保守点検料や修繕工事代金です。運営は日本ドライケミカルのほか、北海道ドライケミカル、日本ドライメンテナンスが行っています。
■(3) 商品事業
消火器や防災用品の製造・販売、および防災設備の小型工事を行っています。主力製品であるアルミ製容器を使用した粉末消火器は、軽量でリサイクル性に優れています。その他、自動火災報知設備機器や避難器具なども扱います。
収益は、主に販売代理店や顧客からの製品販売代金および工事代金です。運営は日本ドライケミカルおよび北海道ドライケミカルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、直近では550億円規模で安定しています。利益面では、経常利益率が7%〜10%台で推移しており、収益性が向上しています。当期純利益も増益基調を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 431億円 | 448億円 | 502億円 | 559億円 | 557億円 |
| 経常利益 | 32億円 | 28億円 | 40億円 | 52億円 | 58億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 6.2% | 7.9% | 9.3% | 10.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 17億円 | 23億円 | 30億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばいでしたが、売上総利益率が改善し、営業利益率は11.0%へ上昇しました。コストコントロールや採算性の良い案件への注力が奏功し、増益を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 559億円 | 557億円 |
| 売上総利益 | 130億円 | 148億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.2% | 26.6% |
| 営業利益 | 48億円 | 61億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 11.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が30億円(構成比35.0%)、賞与引当金繰入額が10億円(同11.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
防災設備事業は大型案件の端境期等の影響で減収となりましたが、メンテナンス事業は改修工事等が堅調で増収となりました。商品事業も機器販売や小型工事が増加し増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 防災設備事業 | 350億円 | 334億円 |
| メンテナンス事業 | 92億円 | 102億円 |
| 商品事業 | 117億円 | 121億円 |
| 連結(合計) | 559億円 | 557億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 89億円 |
| 投資CF | -3億円 | -10億円 |
| 財務CF | 1億円 | -34億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「創ろう ゆたかで安心な未来を テクノロジーで」をパーパスとして掲げています。消火・防災のプロフェッショナルとして社会に安心と安全を提供し続けること、新しい発想とテクノロジーで防災を科学し、エンジニアリング力で未来を創ることを目指しています。
■(2) 企業文化
社会の変化に適応したテクノロジーの活用と、次世代へつなぐ自律型人財の育成に情熱を持って取り組む姿勢を重視しています。また、環境への配慮を最優先とし、リサイクル性の高い製品開発や環境負荷の低い消火薬剤の研究など、持続可能な社会への貢献を意識した企業活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「変革と成長2030」を策定し、2026年3月期から2030年3月期を変革実現ステージと位置付けています。2030年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 事業利益:75億円
* EBITDAマージン:12%以上
* ROE:12%以上の維持
■(4) 成長戦略と重点施策
「火災予防」分野への注力や、データセンター・半導体関連など成長領域への事業拡大を掲げています。研究開発体制を強化し、センシング技術と消火技術を融合させた新ソリューションの開発や、環境配慮型製品の拡充を進めます。また、IT/DX推進による業務効率化や、千葉・福島工場の整備拡充による生産性向上にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材育成を最重要課題と位置付け、階層別・職種別教育を通じて専門性と技術力を高める方針です。目指すべき人財ポートフォリオを明確化し、人的資本投資を進めています。また、健康経営を推進し、フレックスタイム制や在宅勤務制度の整備など、働きやすい環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.1歳 | 11.8年 | 7,228,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 22.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 73.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 53.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動リスク
防災事業は法規制や買い替え需要により一定の安定性がありますが、想定を上回る経済情勢の変化や建設需要・設備投資の縮小、資材価格や労務費の急激な上昇が生じた場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 防災設備事業への依存
売上高の約6割を防災設備事業が占めています。同事業は設備投資動向や大規模再開発計画、着工数等に左右されるため、これらの変化や工事の進捗遅れ、想定外の追加費用発生などがあった場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 四半期業績の偏重
工事進行基準を適用しているものの、工事完了時に収益認識する案件もあり、工事の進捗や完了のタイミングによって四半期ごとの業績が変動する傾向があります。特定の時期に業績が偏重し、場合によっては四半期業績が営業損失となる可能性があります。



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