日本ドライケミカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ドライケミカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ドライケミカルは東京証券取引所スタンダード市場に上場する総合防災企業です。各種防災設備の設計、施工、保守点検をはじめ、消火器や消防自動車、自動火災報知設備の製造・販売を手掛けています。直近の連結業績は、大型案件の進捗や機器類の販売好調により売上高と利益がともに拡大し、順調な増収増益を達成しています。


※本記事は、日本ドライケミカル株式会社の有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ドライケミカルってどんな会社?


同社は総合防災企業として、各種防災設備の設計・施工から消火器や消防自動車の製造・販売まで幅広い事業を展開しています。

(1) 会社概要


1955年に粉末消火器などの製造・販売を主業として設立されました。1971年に千葉工場を開設し、1991年に東証第二部へ上場しました。その後、2012年に初田製作所、2014年に沖電気工業、2016年に綜合警備保障(現ALSOK)と資本業務提携を締結し、事業基盤と提携関係を強化してきました。

現在の従業員数は連結で1,195名、単体で807名です。筆頭株主は事業提携先であるALSOKで、第2位は取引先持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。資本業務提携先との関係を維持・強化しながら、防災事業の領域を広げています。

氏名 持株比率
ALSOK 16.41%
日本ドライケミカル取引先持株会 6.33%
日本カストディ銀行(信託口) 6.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は亀井正文氏が務めています。取締役7名のうち2名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
亀井 正文 代表取締役社長 1981年藤和不動産(現三菱地所レジデンス)入社。ソニーケミカル等を経て2010年同社入社。管理本部長等を歴任し、2023年常務取締役就任。2024年より現職。
柄澤 秀樹 取締役 1990年山一證券入社。1993年同社入社。プラント防災営業部長、プラント防災事業本部長などを歴任。2024年に執行役員事業統括本部副本部長を経て、同年より現職。
粕谷 知久 取締役 1993年同社入社。建築防災営業部長、消装東京支店長、建築防災事業本部長などを歴任。2024年に執行役員事業統括本部建築防災事業部長に就任し、2026年より現職。
松尾 登志紀 取締役 1993年同社入社。社長室長、法人営業部長、名古屋支店長、営業企画部長などを歴任。2025年に執行役員管理本部長に就任し、2026年より現職。
平林 学 取締役 1999年綜合警備保障(現ALSOK)入社。ALSOK-TW東日本取締役、ALSOK大阪南支社長、大阪支社営業副部門長などを歴任。2025年より現職。


社外取締役は、清威人氏(エイムネクスト代表取締役社長)、金太浩氏(エンワールド・ジャパン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「防災設備事業」「メンテナンス事業」「商品事業」の3つの営業種目で事業を展開しています。

(1) 防災設備事業


一般建築物、プラント、船舶向けの各種防災設備の設計・施工、および各種消防自動車の製造・販売を行っています。高層ビルや再開発物件のほか、発電所や化学プラント、船舶のエンジン室等に最適な消火設備を納入しています。

収益源は、顧客からの設備設計・施工代金や消防自動車の販売代金です。同社が主体となって各種防災設備の設計・施工を行うほか、自社工場において各種防災設備の容器や自動火災報知設備の受信機等の製造を行っています。

(2) メンテナンス事業


消防法等の関係法令で義務付けられている各種防災設備の保守点検業務と、それに伴う修繕および改修工事を提供しています。自社で納入した設備だけでなく、あらゆる既存防災設備を対象としています。

収益源は、建物所有者などから受け取る定期的な保守点検費用や修理・改修工事の代金です。建物の維持管理のためのリニューアル提案も行い、運営は主に同社および子会社の北海道ドライケミカルが担当しています。

(3) 商品事業


各種消火器の製造・販売、各種防災用品の仕入・販売、各種防災設備の小型工事を提供しています。アルミ製容器を用いた環境配慮型の消火器や自動火災報知設備機器、防災グッズなどを主に取り扱っています。

収益源は、販売代理店などを通じた各種消火器や防災用品の販売代金、および小型工事の請負代金です。製品は主に自社工場で生産しており、運営は同社および子会社の北海道ドライケミカルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、利益面でも大幅な増益傾向が確認できます。特に直近では利益率が大きく改善しており、収益力の向上が顕著に表れています。大型案件の進捗や機器類の販売好調が業績拡大を牽引しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 448億円 502億円 559億円 557億円 605億円
経常利益 28億円 40億円 52億円 58億円 82億円
利益率(%) 6.2% 7.9% 9.3% 10.4% 13.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 25億円 33億円 40億円 51億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。利益率も前年を上回る水準で推移しており、採算性の良い工事案件の受注や販売の増加が収益性の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 557億円 605億円
売上総利益 148億円 173億円
売上総利益率(%) 26.6% 28.6%
営業利益 61億円 80億円
営業利益率(%) 11.0% 13.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が32億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が12億円(同13%)を占めています。売上原価においては、防災設備事業などの工事に伴う外注費や材料費が大きなウェイトを占めています。

(3) セグメント収益


各事業の売上高を見ると、防災設備事業は大型案件の工事進捗等により増収となっています。メンテナンス事業は改修・補修工事の進捗等によりほぼ前年並みを維持し、商品事業は機器類の販売および小型工事案件の引き合いが好調で増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
防災設備事業 334億円 368億円
メンテナンス事業 102億円 101億円
商品事業 121億円 136億円
連結(合計) 557億円 605億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ利益を元に借入金の返済や設備投資を手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 89億円 34億円
投資CF -10億円 -7億円
財務CF -34億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.5%で市場平均(製造業平均57.5%)をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創ろう ゆたかで安心な未来を テクノロジーで」をパーパス(存在意義)として掲げています。消火・防災のプロフェッショナルとして社会に安心と安全を提供し続け、社会の変化に適応した新しい発想とテクノロジーで消火・防災を科学し、防災の未来をエンジニアリング力で創っていくことを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループは、次世代の消火・防災へつなぐ自律型人材の育成に情熱を持って取り組むことをミッションの一つに掲げています。すべてのステークホルダーに対する社会的責任を果たし、環境に配慮した社会インフラを構築するという使命感のもと、グループ一丸となって持続的な企業価値の向上に努める企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な会社の経営戦略として「NDCビジョン2035」を掲げ、2026年3月期からの5年間を中期経営計画「変革と成長2030」の期間と位置付けています。持続的な成長を実現するための経営基盤強化と高付加価値・成長領域への事業拡大を方針としています。

* 事業利益:80億円(2030年3月期)
* EBITDAマージン:12%以上
* ROE:12%以上の維持

(4) 成長戦略と重点施策


建築防災のコア市場におけるトップポジション確立を目指し、データセンターや半導体関連、大規模再開発案件の受注を推進します。また、プラント事業領域の拡大や、高付加価値なメンテナンス事業の拡充、独自の自社開発製品の拡販に注力します。火災を未然に防ぐ「火災予防」の分野にも注力し、新たなソリューションを開発していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


職種と専門性から目指すべき人材ポートフォリオを明確にし、事業の高付加価値化を実現する人材の拡充に向けて人事制度の構築を推進しています。スキルマネジメントシステムの導入や人員配置の最適化を図るとともに、採用チャネルの多様化と研修体制の強化により、従業員の自律性を尊重し働きがいを追求する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 12.4年 7,235,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 27.3%
男女賃金差異(全労働者) 66.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 46.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動や建設投資動向の影響


同社グループの売上高の多くは防災設備事業が占めており、設備投資動向や大規模再開発計画、商業施設の着工数に左右されます。建設需要の縮小や設備投資計画の延期、建設資材価格および労務費などの急激な上昇が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制の変更


防災設備事業や商品事業では、消防法などの関連法令によって防災設備の設置や保守点検が義務付けられています。今後、社会情勢の変化に伴い法令の改正や新たな法規制が設けられた場合、投資計画や事業計画の大幅な変更を余儀なくされ、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 原材料・部品の調達


原材料や部品の調達において、いくつかの主要な原材料は特定の供給元に依存しています。供給元の操業停止などにより必要な原材料が調達できなくなった場合や、資材価格の上昇分を販売価格へ転嫁することが困難な場合には、生産活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 外注先と人材の確保


工事の施工やメンテナンスにおいて、施工管理以外の実務は基本的に外注しています。工事案件の急増により外注先を十分に確保できない場合や、製品開発・施工管理を担う有能な人材が確保できない場合、これまで培ってきた技術の伝承が滞り、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。