※本記事は、SEMITEC株式会社の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. SEMITECってどんな会社?
温度センサを中心とした各種センサの製造・販売をグローバルに展開する電子部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1950年に創業し、1958年に前身となる石塚電子として設立されました。1990年代から香港、台湾、米国などに販売・生産拠点を相次いで設立して海外展開を加速し、2011年に現在のSEMITECに商号を変更して同年に上場を果たしました。近年もベトナムやインドに拠点を設立し、グローバル体制を強化しています。
従業員数は連結で3522名、単体で234名です。筆頭株主は法人株主である石塚興産で、第2位には代表取締役社長の石塚大助氏、第3位には個人株主の石塚二朗氏が名を連ねており、創業家や経営陣による安定的な保有比率が高い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石塚興産 | 29.46% |
| 石塚大助 | 6.68% |
| 石塚二朗 | 6.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石塚大助氏が務めており、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石塚大助 | 代表取締役社長執行役員 | 2001年にサンコーシヤ入社後、2005年同社入社。技術本部長、生産本部長、車載事業本部長、副社長などを歴任。2019年に代表取締役社長に就任し、2024年より現職。 |
| 石塚淳也 | 常務取締役(生産総括)執行役員 | 1993年瀬戸電子入社、2004年同社入社。海外法人のトップ、生産本部長、経営企画本部長、代表取締役社長などを歴任。2025年より中国事業本部長を兼務し現職。 |
| 高橋克司 | 常務取締役(営業総括)執行役員 | 1984年加賀電子入社、2004年同社入社。中国・南アジア事業本部長などアジア地域を統括し、複数の海外子会社トップを兼務。2026年よりグローバル営業支援本部長として現職。 |
| 李旭 | 取締役執行役員北米事業本部長 | 1998年UNIDUS入社。2000年韓国法人に入社し、上海や台湾などの中華圏拠点のトップを歴任。2022年より欧米事業を統括し、2024年より現職。 |
| 十文字裕司 | 取締役執行役員ワールドテクノロジーセンター長 | 1989年大泉製作所入社。中国法人の副総経理を経て2014年同社入社。技術本部部長、技術本部長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 柳田健充 | 取締役執行役員革新推進室長 | 1987年同社入社。生産統括本部工場長、フィリピンや中国の生産法人トップを歴任。品質保証本部長や生産本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 榎本博基 | 取締役執行役員R・and推進本部長 | 1995年同社入社。経営企画部長、技術本部応用開発部長、営業統括本部長などを歴任。2021年より生体センシング事業化推進本部長を務め、2024年より現職。 |
| 小島一浩 | 取締役執行役員管理本部長 | 1996年第一勧業銀行入行。証券会社を経て2012年に同社入社。経営企画室長やフィリピン法人社長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 須川直輔 | 取締役(監査等委員) | 1983年三菱銀行入行。2013年三浦印刷取締役を経て2017年同社入社。管理本部長、内部監査室長を歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、佐瀬正俊氏(弁護士・法律事務所マネジメントパートナー)、青田広幸氏(元パナソニック副社長)、平田浩介氏(元証券会社マネージング・ディレクター)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中華圏」「その他アジア」「北米」の報告セグメントにおいて事業を展開しています。
■日本
国内および欧州地域を対象に、温度センサをはじめとする各種センサの販売を展開しています。主にOA機器、家電・住設、自動車、産業機器などの用途向けに製品を供給しており、自動車や産業機器向けのニーズにきめ細かく対応しています。
製品の販売を通じた収益を主なモデルとしています。同セグメントの事業運営は、親会社であるSEMITECを中心に担っており、国内の製造および研究開発拠点の機能と連携しながら顧客に対する販売活動を進めています。
■中華圏
中国および東南アジア地域を対象とした販売および生産事業を展開しています。家電・住設やOA機器用途をはじめとする現地メーカーや進出企業に対し、同社グループのセンサ製品を供給し、中華圏特有の需要に対応しています。
センサ製品の販売益を中心とした収益モデルです。同セグメントの運営は、香港、上海、台湾にある販売子会社のほか、韶関や深圳にある製造・販売子会社など、複数の現地法人が担っており、地域密着型の事業展開を行っています。
■その他アジア
韓国、インド、および東南アジア地域を対象に、センサの製造および販売事業を展開しています。韓国系企業の自動車用途や家電用途など、各国の多様な顧客ニーズに応じた各種センサをグローバルに供給しています。
製造機能と連携した製品の販売による収益モデルを構築しています。韓国、フィリピン、タイ、ベトナム、インドにそれぞれ設立された現地子会社が運営を担い、生産拠点の複数化による供給体制の強靭化にも貢献しています。
■北米
北米地域を対象に、医療機器向けや産業機器向けのセンサ販売を展開しています。特に血糖値測定器向けなど、高精度な温度管理が求められる医療分野のニーズに応える製品群を主力として市場を開拓しています。
現地顧客への製品販売を主な収益源としています。同セグメントの運営は米国にある子会社が担っており、医療用途をはじめとする特定市場のターゲット顧客に対する営業活動を通じて安定的な収益確保を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね右肩上がりの成長を続け、当期は255億円と過去最高を更新しています。一方で経常利益は30億円台後半から40億円台で推移しており、当期は原材料費や人件費の高騰が影響して減益となり、利益率は14.2%に低下しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 211億円 | 232億円 | 227億円 | 253億円 | 255億円 |
| 経常利益 | 35億円 | 42億円 | 39億円 | 41億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 16.5% | 18.1% | 17.1% | 16.0% | 14.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 32億円 | 21億円 | 31億円 | 27億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は自動車や医療用途が好調に推移し前期比で微増となりました。しかし、原材料価格の高騰や人件費の増加が原価を圧迫して売上総利益が減少し、研究開発費などの増加も加わって営業利益は減益となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 253億円 | 255億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.6% | 37.6% |
| 営業利益 | 39億円 | 35億円 |
| 営業利益率(%) | 15.5% | 13.9% |
販売費及び一般管理費(当期60億円)のうち、給料が16億円(構成比26%)、研究開発費が12億円(同19%)、賞与が4億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
中華圏は顧客の需要減や在庫調整により減収となりましたが、中国子会社売却によるコスト削減等で増益を確保しました。北米は医療用途の販売数量増により増収増益となり、その他アジアも自動車用途が牽引し増収でしたが内部販売価格の引き下げにより減益となっています。日本は研究開発費の増加等で赤字幅が拡大しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 54億円 | 55億円 | -4億円 | -6億円 | -10.4% |
| 中華圏 | 91億円 | 86億円 | 14億円 | 15億円 | 17.2% |
| その他アジア | 68億円 | 71億円 | 19億円 | 17億円 | 24.2% |
| 北米 | 40億円 | 43億円 | 9億円 | 10億円 | 24.4% |
| 連結(合計) | 253億円 | 255億円 | 38億円 | 37億円 | 13.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も77.4%と市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 52億円 | 29億円 |
| 投資CF | -15億円 | -22億円 |
| 財務CF | -18億円 | -36億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社会に必要とされ続ける存在価値の追求」「人の記憶に残る独特で面白い企業」「新しいもの世にないものに執着」「見えないものを追い求める」をパーパスとして掲げています。また、創業当時からの基本理念として「誰よりも先に新しいものを生み出す」「いつも先の時代を見つめる」「柔軟で斬新な考えを持ち続ける」を据えており、新しいセンサの創造を目指しています。
■(2) 企業文化
従来のセンサにとらわれず、センサに求められるニーズを常に深堀し、新しい製品の開発・製品化に努める姿勢を重視しています。また、世界各国の独特なニーズを汲み取り、「真のグローバル企業」を目指す文化が根付いています。さらに「グループ行動規範」を制定し、法令遵守と統一された倫理観のもとで行動することを全従業員に求めています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として「営業利益金額」を主要な経営指標に設定しています。また、投下資本に対してどれだけ効率的に利益を生み出しているかを測る指標としてROIC(投下資本利益率)を採用しており、9%以上を目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画のもと、ターゲット顧客への営業・開発戦力の集中や、重要製品の生産拠点の複数化を進めています。海外事業の現地化や自動化・新工法・AIによるコスト改善を図り、供給体制の強靭化を推進しています。また、薄膜サーミスタ技術の応用開発とビジネスモデル構築による収益化、社外との連携を活用した成長加速、社会の困りごとに先回りした開発体制の強化を重点施策として取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員に必要なスキルを習得させ能力を最大限に発揮させるため、多彩な教育研修制度を設け、自律的なキャリアアップを支援しています。努力や成果に応じ、キャリアプランや報酬等の処遇に反映することでモチベーションを向上させる人事制度を構築しています。また、真のグローバル企業化に向け、現地国籍の責任者採用や登用を促進し、多様な人材が活躍できる環境作りを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 12.3年 | 6,937,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 41.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 72.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外生産・海外販売への依存リスク
同社グループは中国および東南アジアの現地法人で生産の7割以上を行っており、海外売上高の比率も8割を超えています。各国特有の経済状況や法規制、税制の変化による租税リスクのほか、急激な人件費の高騰や電力不足などが生じた場合、事業遂行に問題が発生するリスクがあります。
■(2) 自動車向け製品への高い販売依存
EVやHEV車のバッテリー・モーターなど、自動車用途向けの製品売上割合が高くなっています。そのため、自動車メーカー各社の業績動向や生産調整の影響を直接受ける傾向があり、自動車業界における技術革新によって同社製品が使用されなくなった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 競合環境と価格競争の激化
同社の製造・販売する各種センサは、販売先からの厳しい値下げ要求や同業者との価格競争に晒されています。特に近年は台湾や中国などの電子部品メーカーによる低価格製品の台頭により競争が激化しており、価格競争力の維持や製品の優位性が保てなくなった場合、収益性が低下するリスクを抱えています。
■(4) 為替相場の変動による影響
海外での生産および販売比重が非常に高いため、売上や費用、資産、負債を含む現地通貨建ての項目は為替相場の影響を強く受けます。為替感応度として1円の変動が売上高で年額約1億円、営業利益で年額約2,000万円の影響を与えると試算されており、為替レートの大幅な変動が業績に影響する可能性があります。



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