SEMITEC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SEMITEC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はスタンダード市場に上場し、温度センサをはじめとする各種センサの製造・販売を主力事業としています。直近の決算では、自動車や医療機器向けなどの需要を取り込み、売上高253億円(前期比11.7%増)、営業利益39億円(同9.6%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、SEMITEC株式会社 の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SEMITECってどんな会社?


温度センサを中心とした高精度なセンサを開発・製造し、自動車や医療、家電など幅広い分野に提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は、1958年にバリスタの製造を目的として石塚電子を設立しました。1992年には半導体薄膜技術を用いた薄膜センサの製造を開始し、事業を拡大しました。2011年に現社名であるSEMITECへ商号を変更し、同年6月にJASDAQ(スタンダード)へ上場しました。2022年4月には、東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社の従業員数は連結で3,842名、単体で219名です。大株主構成については、筆頭株主は石塚興産で、第2位は同社代表取締役社長の石塚大助氏、第3位は個人株主の石塚二朗氏となっており、創業家およびその関連会社や個人が上位を占めています。

氏名 持株比率
石塚興産 26.56%
石塚大助 6.02%
石塚二朗 5.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 執行役員は石塚大助氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石塚 大助 取締役社長(代表取締役)執行役員 2005年同社入社。生産本部長、技術本部長などを経て、2019年より現職。
石塚 淳也 常務取締役(生産総括)執行役員 2004年同社入社。生産本部長、代表取締役社長などを経て、2024年より現職。
高橋 克司 常務取締役(営業総括)執行役員 2004年同社入社。南アジア事業本部長などを経て、2025年より現職。
李 旭 取締役執行役員北米事業本部長 2000年SEMITEC KOREA入社。中国事業本部長などを経て、2024年より現職。
十文字 裕司 取締役執行役員ワールドテクノロジーセンター長 2014年同社入社。技術本部長などを経て、2021年より現職。
柳田 健充 取締役執行役員中国事業本部本部長 1987年同社入社。生産本部長、営業統括本部長などを経て、2025年より現職。
榎本 博基 取締役執行役員R・and推進本部長 1995年同社入社。営業統括本部長などを経て、2024年より現職。
小島 一浩 取締役執行役員管理本部長 2012年同社入社。経営企画室長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、佐瀬正俊(弁護士)、青田広幸(元パナソニック常務執行役員)、平田浩介(元三菱UFJモルガン・スタンレー証券MD)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中華圏」「その他アジア」「北米」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内および欧州市場向けに、温度センサ等の各種センサ製品を提供しています。主な顧客は自動車メーカーやOA機器メーカーなどで、自動車のバッテリー用センサや複写機向け製品などが取り扱われています。

収益は、顧客への製品販売による対価として得ています。運営は主にSEMITECが担っており、欧州においてはSEMITEC Europe GmbHが販売活動を行っています。

(2) 中華圏


中国および東南アジア地域(中華圏経由)向けにセンサ製品を提供しています。OA機器用や産業機器用のセンサ需要が高く、プリンタ向けや電子タバコ向けなどの製品を販売しています。

収益は製品販売により顧客から対価を受け取ります。運営は、SEMITEC(HONG KONG)、石塚国際貿易(上海)、SEMITEC TAIWAN、石塚感応電子(韶関)、石塚感応電子(深圳)などの現地法人が行っています。

(3) その他アジア


韓国、インドおよび東南アジア地域向けに事業を展開しています。家電や自動車関連の顧客が多く、特にハイブリッド車(HEV)向けやエアコン、冷蔵庫向けのセンサ製品が好調です。

収益は製品販売によって得ています。運営は、SEMITEC KOREA、SEMITEC ELECTRONICS PHILIPPINES、Thai Semitec、SEMITEC ELECTRONICS VIETNAM、SEMITEC ELECTRONICS INDIAなどが担当しています。

(4) 北米


北米市場向けにセンサ製品の販売を行っています。特に医療機器分野に強みを持ち、血糖値測定器などに使用されるセンサ製品を提供しています。その他、自動車関連の需要にも対応しています。

収益は製品の販売対価として受け取ります。運営は、現地の販売子会社であるSEMITEC USAが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大傾向にあり、直近5期間で着実な成長を見せています。利益面でも、経常利益や当期純利益は高い水準を維持しており、特に直近の2025年3月期は大幅な増益となりました。利益率も安定して10%台後半を推移しており、収益性の高さがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 179億円 211億円 232億円 227億円 253億円
経常利益 28億円 35億円 42億円 39億円 41億円
利益率(%) 15.4% 16.5% 18.1% 17.1% 16.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 24億円 13億円 11億円 33億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は38%台で安定的に推移しており、高い収益性を維持しています。営業利益も売上高の伸びに合わせて増加しており、コストコントロールが適切に行われていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 227億円 253億円
売上総利益 87億円 98億円
売上総利益率(%) 38.5% 38.6%
営業利益 36億円 39億円
営業利益率(%) 15.8% 15.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が21億円(構成比36%)、給料が15億円(同25%)を占めています。また、研究開発費は10億円(同17%)となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高が増加しました。「日本」では自動車・OA機器関連が回復し、「中華圏」ではOA機器や産業機器の需要が増加しました。「その他アジア」は家電やHEV向けが好調で大幅な増収となり、「北米」も医療関連が堅調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 50億円 54億円
中華圏 82億円 91億円
その他アジア 57億円 68億円
北米 37億円 40億円
連結(合計) 227億円 253億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、その範囲内で投資活動と財務活動(借入返済等)を行っていることから、健全型と判定されます。本業で稼いだ資金を成長投資や負債削減に充てる安定的な財務運営が行われています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 37億円 52億円
投資CF -6億円 -15億円
財務CF -17億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「誰よりも先に新しいものを生み出す」「いつも先の時代を見つめる」「柔軟で斬新な考えを持ち続ける」を基本理念としています。温度センサを中心とした多種多様なセンサの開発・製造・販売を通じて、従来の枠にとらわれず、市場ニーズを深掘りし、新しい製品の開発と製品化に努めています。

(2) 企業文化


同社はパーパスとして「社会に必要とされ続ける存在価値の追求」「人の記憶に残る独特で面白い企業」「新しいもの世にないものに執着」「見えないものを追い求める」を掲げています。世界各国の独特なニーズを汲み取り、新しいセンサを創造する「真のグローバル企業」を目指す文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、営業利益金額を主要な経営指標として重視しています。中長期的な目標として、以下の数値を掲げています。

* 2027年3月期 営業利益:50億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は自動車・医療市場を重点市場と位置づけ、新製品開発による拡販を目指しています。また、インド市場への販売力強化や、次世代製品への研究開発投資、生産拠点の再編・自動化によるコスト改善を推進しています。経営基盤強化のため、千葉工場刷新やDX推進などの戦略投資も実行していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「真のグローバル企業」への進化を目指し、現地国籍の責任者採用・登用を促進しています。人材育成では、必要なスキル習得や自律的なキャリアアップを支援する研修制度を設け、成果に応じた処遇によりモチベーション向上を図っています。性別や年齢に関係なく活躍できる「働きやすさ・働きがい」のある環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.7歳 12.5年 6,657,000円


※平均年間給与は、臨時従業員を除いています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職全体(連結)に占める女性の管理職割合 36.3%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 46.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 59.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 58.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業展開と拠点設立に関するリスク


同社グループは「消費地生産」と「適地生産」を基本方針とし、海外での生産・販売拠点の展開を進めています。適切な候補地が見つからない場合や、拠点設立費用が想定以上に膨らんだ場合、同グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済状況とメーカー生産動向の影響


同社の業績は、顧客であるメーカーの生産動向の影響を受けます。世界的な経済情勢の変化などにより、メーカーの生産量が変動した場合、センサ需要の増減を通じて、同グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 競合状況と価格競争


同社製品は、顧客からの値下げ要請や、台湾・中国などの競合メーカーとの価格競争に晒されています。コストダウンや差別化製品の供給に努めていますが、価格競争力を維持できなくなった場合や、競合製品の品質向上により優位性が失われた場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(4) 自動車市場への販売依存度


同社はEV・HEV車のバッテリー・モーター向けなど、自動車関連製品の売上比率が高くなっています。そのため、自動車メーカー各社の業績動向や、技術革新により同社製品が採用されなくなった場合、同グループの経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。