※本記事は、ディジタルメディアプロフェッショナルの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ディジタルメディアプロフェッショナルってどんな会社?
グラフィックスやAI向けの半導体IPコア開発とLSI製品の販売を主力とするファブレス企業です。
■(1) 会社概要
同社は2002年に3Dグラフィックス市場への参入を目指し設立されました。2006年に組み込み機器向けグラフィックスIPコアの販売を開始し、2011年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。その後、2014年にレスター、2019年にヤマハ発動機とそれぞれ業務資本提携を結び、近年はAI領域やロボティクス・セーフティ分野への展開を強化しています。
現在の従業員数は単体で48名です。筆頭株主は事業会社のヤマハ発動機で、第2位は同じく提携先のレスター、第3位は同社創業者の山本達夫氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヤマハ発動機 | 10.17% |
| レスター | 9.06% |
| 山本達夫 | 2.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長CEOは山本達夫氏が務めています。全取締役5名のうち、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本達夫 | 代表取締役会長兼社長CEO | 1977年日本ユニバック入社、米国IBM Director、Sega of America Vice President等を経て、2004年同社代表取締役社長兼CEOに就任。2023年4月より現職。 |
| 大澤剛 | 代表取締役専務 企画管理管掌 | 1985年石油資源開発入社、アイワ等を経て2016年UKCホールディングスグループ執行役員。2019年同社入社、2023年4月より現職。 |
| 梅田宗敬 | 取締役テクノロジー製品事業部長 | 2000年図研入社、インベンチュア等を経て2012年同社入社。2014年営業部長、2016年取締役セールス&マーケティング部長を経て、2023年4月より現職。 |
社外取締役は、岡本伸一(元ソニー)、飯田実(ヤマハ発動機フェロー)です。
2. 事業内容
同社グループは、IPコアライセンス、製品、プロフェッショナルサービスの各事業を展開しています。
■(1) IPコアライセンス事業
半導体メーカーや製品に組み込む最終製品メーカー等に対し、高精細な画像を描画するためのハードウエアIPやソフトウエアIPを提供しています。
収益は、製品開発段階で生じるライセンス収入と、製品の出荷数量等に応じて継続的に発生するランニングロイヤリティ収入やクラウドサービスのサブスクリプション収入から得ています。事業の運営は同社が担当しています。
■(2) 製品事業
同社のグラフィックスIPコアが組み込まれたLSI製品やAI半導体を、主にアミューズメント機器やAI搭載機器向けに提供しています。また、ドローン向けカメラモジュールや協働ロボット向け画像認識システムの仕入・販売も行っています。
製造設備を持たないファブレス体制のため、半導体メーカー等に製造を委託したうえでLSI製品等を販売し、収益を獲得しています。運営は同社が行っています。
■(3) プロフェッショナルサービス事業
各種IPコアを統合して顧客のSoCシステム全体を最適化する設計サービスや、GPU・ビジョン・AI技術を活用したアルゴリズム開発、ソフトウエアからハードウエアに至るまでの受託開発を提供しています。
顧客の開発プロジェクトに対するPoC(概念実証)やプロフェッショナルサービスの対価として収益を得ています。運営は同社が手掛けています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、2025年3月期までは売上高が順調に拡大し、経常利益も黒字基調を維持していました。しかし、直近の2026年3月期は主力のアミューズメント向け製品の出荷減や先行投資負担等により最終赤字に転じており、成長に向けた踊り場を迎えています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 16.7億円 | 23.2億円 | 30.2億円 | 30.8億円 | - |
| 経常利益 | -1.2億円 | 0.3億円 | 3.3億円 | 2.7億円 | - |
| 利益率(%) | -7.4% | 1.2% | 11.0% | 8.8% | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.6億円 | 0.2億円 | 3.3億円 | 1.5億円 | -3.3億円 |
■(2) 損益計算書
前事業年度まで安定した利益を計上していましたが、当事業年度は売上原価の増加や積極的な研究開発等の影響により、営業利益レベルから損失を計上する結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30.8億円 | - |
| 売上総利益 | 13.2億円 | 9.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.9% | - |
| 営業利益 | 2.6億円 | -3.1億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | - |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が5.4億円(構成比45%)、給与手当が1.9億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
2026年3月期の事業別売上を見ると、製品事業が全体の多くを占めています。主力のアミューズメント向け画像処理半導体の量産出荷やカメラモジュール等が寄与した一方、一部製品の出荷が一時的に弱含んだ影響を受けています。IPコアライセンス事業やプロフェッショナルサービス事業は安定的な収益基盤として機能しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| IPコアライセンス事業 | - | 1.4億円 |
| 製品事業 | - | 22.2億円 |
| プロフェッショナルサービス事業 | - | 0.7億円 |
| 合計 | - | 24.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な状況に見えますが、手元資金などの流動性は確保されています。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 営業CF | -6.5億円 |
| 投資CF | -0.7億円 |
| 財務CF | -0.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も85.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパスとして「Making the Image Intelligent」を掲げています。創業以来の強みである画像インテリジェンスの力により、現実世界の問題を解決し、ステークホルダーに価値をもたらす革新的な製品とサービスの創造に努めています。顧客課題や社会課題等の解決と収益・利益の獲得を両立させることで、企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「Diversity & Inclusion(多様な人材が集まり、皆が活かされていること)」を経営理念に掲げています。世界各国から優れた研究者や開発者が集まり、年齢、性別、国籍に関係なく多様な価値観、経験、専門性を有する人材が相互に刺激し合うことで、国際競争力につながる技術革新と事業創出の源泉としています。
■(3) 経営計画・目標
社会・環境の課題や顧客課題の解決に貢献することによって、利益を獲得し企業価値向上を実現することを中長期的な目標としています。特に、AIの社会実装の進展や省人化・自動化ニーズの高まりを背景に、エッジAI半導体やロボティクス・セーフティ関連市場での中長期的な成長と事業ポートフォリオの転換を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、企画から量産までの顧客製品開発ライフサイクル全体にわたり、ソフトウエアからハードウエアまでの一貫開発体制による付加価値の提供と、顧客生涯価値の最大化を推進しています。アミューズメント分野での安定収益基盤の維持・強化に加え、エッジAI半導体分野での国内外のパートナーシップ構築、ロボティクス・セーフティ分野での自律走行ロボットや協働ロボット向けソリューションの展開に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、パーパスに共鳴する多様な専門人材が自らスキルを高め能力を最大限に発揮できるよう、人材育成と環境整備に注力しています。国籍等を問わず有能な技術者を積極的に採用し、裁量労働制やフレックスタイム制等の柔軟な働き方を導入するとともに、社内同好会制度や評価制度の刷新を通じてエンゲージメントと生産性の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 6.8年 | 8,845,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、第4回従業員エンゲージメント調査の総合平均点(7.4点)、社内同好会参加者(延べ49人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術の進展と陳腐化への対応
同社の事業は画像処理やAI技術に密接に関連しており、技術革新のスピードが著しい分野です。予想しない新技術の開発・普及に対する対応の遅れや、競合他社による技術優位性の喪失が生じた場合、製品・サービスの売上が減少し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 販売先の市場動向による影響
同社製品はアミューズメント機器、車載製品、産業機器等のライフサイクルが短い市場に組み込まれています。市場のニーズ変化を見極め、継続的に新市場の開拓を行う必要がありますが、予想以上の市場変動により新規製品開発や開拓が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 代表者への高い依存
代表取締役の山本達夫氏はエンジニア出身で技術全般に精通し、幅広い人脈を活かした営業活動も牽引しています。技術面および営業面において同氏への依存度が高く、退任等により同氏の業務執行が困難となった場合、同社の事業活動や経営成績に重大な支障が生じる可能性があります。
■(4) LSI製品の製造委託に関するリスク
同社はファブレス企業としてLSI製品の製造を半導体メーカー等に委託しています。委託先の技術力や経営安定性を慎重に選定していますが、生産枠の確保難や設備トラブル、世界的な半導体・部材の供給不足が発生した場合、製品納入が停滞し、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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