パラマウントベッドホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パラマウントベッドホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のパラマウントベッドホールディングスは、医療福祉用ベッド等の製造・販売を行う最大手企業です。主力製品に加え、近年はレンタル卸やメンテナンス事業等の多角化を推進しています。直近の業績は、売上高が9期連続で過去最高を更新して増収となった一方、人件費増や為替差損の影響等により経常減益となりました。


※本記事は、パラマウントベッドホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パラマウントベッドホールディングスってどんな会社?


同社グループは、医療・介護用ベッドやマットレス等の製造・販売、および福祉用具のレンタル卸事業などを展開する企業です。

(1) 会社概要


1950年に木村寝台工業として設立され、1987年に商号をパラマウントベッドに変更しました。1996年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。その後、2011年に持株会社体制へ移行し、現在のパラマウントベッドホールディングスとなりました。海外展開も進めており、インドネシアや中国、ベトナムなどに製造・販売拠点を有しています。

2025年3月31日時点で、同社グループの連結従業員数は4,360名、単体では14名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は株式会社シートック、第3位は有限会社レッジウッドです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 12.69%
シートック 7.61%
レッジウッド 7.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は木村友彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
木村 友彦 代表取締役社長 2008年パラマウントベッド入社。同社執行役員国際事業本部長等を経て2020年より現職。
木村 恭介 代表取締役会長 1979年パラマウントベッド入社。同社代表取締役社長等を経て2020年より現職。
木村 陽祐 常務取締役 2013年パラマウントベッド入社。同社執行役員技術開発本部長等を経て2023年より現職。
八田 俊之 取締役 1984年パラマウントベッド入社。同社執行役員人事部長等を経て2022年より現職。
小林 正樹 取締役 1995年パラマウントベッド入社。パラマウントベッドタイランド社長等を経て2023年より現職。
大内 健司 取締役(監査等委員) 1982年パラマウントベッド入社。同社執行役員財務システム本部長等を経て2022年より現職。


社外取締役は、岡ゆかり(弁護士)、後藤芳一(元経済産業省大臣官房審議官)、髙橋一夫(元大和証券代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ヘルスケア関連事業」の単一セグメントですが、製品・サービスの種類により「医療」「介護」「健康」「その他」の区分で事業を展開しています。

(1) 医療事業


医療施設向けに、医療用ベッド、マットレス、病室用家具、医療用器具備品等の製造・販売を行っています。また、医師の働き方改革や医療従事者の業務改善に資するスマートベッドシステムやリカーリングビジネス(継続的なサービス提供)にも注力しています。

収益は、医療施設等への製品販売代金のほか、メンテナンスやレンタル等のサービス対価から構成されます。運営は主に中核子会社のパラマウントベッドが行っており、海外ではパラマウントベッド アジア パシフィック等の現地法人が販売を担っています。

(2) 介護事業


高齢者施設や在宅介護向けに、介護用ベッドや見守り支援システム「眠りCONNECT」、体動センサー「眠りSCAN」などの製造・販売を行っています。また、福祉用具のレンタル卸事業も展開しており、多様なニーズに対応した製品・サービスを提供しています。

収益は、製品の販売に加え、福祉用具貸与事業者に対するレンタル卸による賃貸料収入等が挙げられます。運営はパラマウントベッドのほか、レンタル卸事業はパラマウントケアサービスが中心となって行っています。

(3) 健康事業


一般消費者向けに、睡眠の質を高めるための電動ベッド「Active Sleep BED」やマットレス、枕などの寝具類の製造・販売を行っています。「医療・介護から健康まで」を掲げ、長年培った技術を活かして健康分野での貢献を目指しています。

収益は、百貨店や家具店、直営店、オンラインショップ等を通じた製品販売によるものです。運営は主にパラマウントベッドが担っており、体験型店舗「眠りギャラリー」の展開なども進めています。

(4) その他事業


上記に含まれない事業として、ベッド・マットレスの点検・修理、消毒、メンテナンスリース等のサービス提供や、保険代理店業などを行っています。

収益は、メンテナンスサービスの提供対価や保険手数料などから構成されます。運営は、メンテナンスサービスを行うパラテクノや、保険代理店業を行うKPサービスなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近では1,000億円台後半で推移しています。一方、利益面では経常利益率が10%台を維持しているものの、直近では原材料価格の高騰や為替の影響等により低下傾向が見られます。親会社株主に帰属する当期純利益も、売上成長に伴う変動はあるものの、安定して黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 872億円 904億円 990億円 1,060億円 1,086億円
経常利益 135億円 135億円 141億円 159億円 128億円
利益率(%) 15.4% 15.0% 14.3% 15.0% 11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 86億円 91億円 92億円 106億円 91億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加傾向にあります。特に販売費及び一般管理費の増加が営業利益の押し下げ要因となっており、営業利益率は低下しました。売上総利益率は概ね横ばいから微増で推移しており、製品・サービスの付加価値は維持されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,060億円 1,086億円
売上総利益 506億円 526億円
売上総利益率(%) 47.8% 48.4%
営業利益 138億円 130億円
営業利益率(%) 13.0% 12.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が64億円(構成比16%)、運送費が42億円(同11%)を占めています。売上原価については内訳の記載はありませんが、原材料費や労務費などが含まれます。

(3) セグメント収益


医療事業は微減となりましたが、介護事業は「眠りSCAN」等の見守り支援機器やレンタル卸事業の拡大により増収となりました。健康事業は来店客数の伸び悩み等により減収となりました。全体としては増収を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医療 407億円 402億円
介護 614億円 653億円
健康 22億円 17億円
その他 18億円 14億円
連結(合計) 1,060億円 1,086億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「先進の技術と優しさで、快適なヘルスケア環境を創造します」という企業理念を掲げています。創業以来、医療・高齢者福祉分野において療養環境の向上や、医療・介護従事者の業務改善等に資する製品・サービスを提供し続けています。

(2) 企業文化


2030年に向けた目指すべき姿として「医療・介護から健康まで、すべての人に笑顔を」というビジョンを掲げています。医療・介護分野で培った技術や知見をもとに、健康分野でも貢献することを目指しています。また、ESGの考え方を重視し、SDGsの達成や持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年のビジョンに基づき、2024年4月から中期経営計画の第Ⅱフェーズ(最終年度:2027年3月期)をスタートさせました。

* 売上高:1,200億円
* 営業利益:150億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「リカーリングビジネスの拡大」「健康事業の進化」「アジア注力エリアでの飛躍」を重点施策としています。国内では医療・介護施設の人手不足に対応する製品・システムや、在宅介護市場の拡大に対応する環境整備を進めます。海外では、アジア地域を中心とした経済成長と医療インフラの充実に合わせ、事業拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業の力の源泉は人財」と捉え、人財基盤の強化を重要課題としています。求める人財像として「チャレンジ」「コミュニケーション」「学び」にオープンでWell-beingな未来を創造できる人材を掲げています。「やり甲斐の創出」と「成長支援」を軸に、従業員の自律的な学習と経験を重視した育成、グローバル人材の採用・育成、ダイバーシティ推進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 51.1歳 25.4年 8,201,595円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 69.0%
男女賃金差異(正規雇用) 70.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受検率(91.5%)、コンプライアンス研修の受講率(100.0%)、定年再雇用制度利用者率(80.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境における制度変更等のリスク


主力製品である医療福祉用ベッドは、医療保険制度や介護保険制度に基づく施設や家庭で使用されます。そのため、これらの公的制度の変更や診療報酬・介護報酬の改定により、顧客である医療施設等の設備投資意欲が減退した場合、同社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外市場での事業拡大に伴うリスク


海外市場での事業拡大においては、輸出入規制の変更、技術・製造インフラの未整備、人材確保の困難さなどのリスクが存在します。また、各国の政治・経済・社会的状況の変化や、環境規制、製品安全・品質規制、医療機器登録規制等の強化・変更が生じた場合、事業活動に支障をきたし、業績等に影響を与える可能性があります。

(3) 特定の資材等の調達に伴うリスク


製品の製造に必要な資材等の中には、特殊な仕様のために少数特定の仕入先からしか入手できないものや、代替が困難なものが存在します。これらの資材について、供給の遅延や中断により供給不足が生じ、タイムリーな調達ができなくなった場合、生産活動に支障が生じ、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品や部品の欠陥によるリスク


製品の品質管理には万全を期していますが、予期せぬ欠陥が生じ、大規模なリコール(無償交換・回収)が必要となった場合、多額の費用負担が発生するとともに、社会的信用の低下を招き、業績等に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。