※本記事は、新田ゼラチン株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新田ゼラチンってどんな会社?
同社は、ゼラチンやコラーゲンペプチド等の製造・販売を中心に、コラーゲン事業をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1918年1月ににかわ(工業用ゼラチン)の製造・販売を開始し、1945年2月に現在の前身となる新田膠質工業を設立しました。1960年に新田ゼラチンへ商号変更し、2011年には東京証券取引所市場第二部に上場(現在はスタンダード市場)しています。2021年には接着剤事業を譲渡し、コラーゲン事業に注力しています。
従業員数は連結で851名、単体で256名です。筆頭株主は資産管理業務等を行うアイビーピーで、第2位は関連会社のニッタ、第3位は新田ゼラチン取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アイビーピー | 19.22% |
| ニッタ | 4.61% |
| 新田ゼラチン取引先持株会 | 2.86% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は竹宮秀典氏が務めています。取締役10名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹宮秀典 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年同社入社。接着剤事業部長、執行役員、ペプチド事業部長、生産本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 杉本芳久 | 取締役執行役員営業本部長 | 1986年同社入社。営業本部営業部長、執行役員、営業本部長、フードソリューション事業本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 林和也 | 取締役執行役員生産本部長 | 1992年同社入社。総合研究所研究部長、執行役員、総合研究所長、管理本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 安藤啓 | 取締役執行役員管理本部長 | 1993年三井住友銀行入行。2023年同社入社。生産本部グローバル生産管理部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、鈴木博正(元みらかホールディングス取締役代表執行役社長)、高橋尚男(元本田技研工業専務執行役員)、種田ゆみこ(種田ゆみこ公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コラーゲン事業」の単一セグメントのもと、製品領域に応じた事業を展開しています。
■(1) ゼラチン
食品用、ソフトカプセル・ハードカプセル用、写真用などのゼラチンおよび副産物(リン酸カルシウム等)の製造・販売を行っています。菓子・デザートなどの食品メーカーや、医薬品・健康食品メーカー等を主要な顧客としています。
収益は、これらの製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は同社のほか、ニッタゼラチンインディアやニッタゼラチンカナダなどの連結子会社がグローバルに分担して行っています。
■(2) コラーゲンペプチド
健康食品用や美容用のコラーゲンペプチドなどの製造・販売を行っています。プロテイン需要が高まる北米市場や、日本、アジアなどの健康食品メーカーや化粧品メーカー等を主要な顧客としています。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は同社を中心に、ニッタゼラチンエヌエー、ニッタゼラチンインディアなどの子会社や関連会社が担っています。
■(3) 食品材料およびバイオメディカル
食肉加工食品用安定剤やデザート用ゲル化剤などの食品材料と、医療用コラーゲン・ゼラチンなどのバイオメディカル製品を提供しています。食品メーカーや医療関連企業等を顧客としています。
収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は同社のほか、上海新田明膠有限公司やニッタゼラチンベトナムなどの海外子会社が展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は400億円前後で推移しており、直近2期は北米市場等での販売減少によりやや減収となっています。しかし、収益性の改善が進んだことで経常利益率は5%台から12%台へと大幅に向上し、利益面では力強い成長を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 318億円 | 392億円 | 404億円 | 387億円 | 380億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 22億円 | 24億円 | 41億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 5.7% | 5.9% | 10.7% | 12.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 8億円 | -24億円 | 26億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となったものの、売上総利益率は向上しています。北米などでの収益性改善が寄与し、営業利益は増加しました。結果として営業利益率も10%台から12%台へと上昇し、収益体質の強化がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 387億円 | 380億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 110億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 28.9% |
| 営業利益 | 39億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 10.1% | 12.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が15億円(構成比24.4%)、荷造運賃が8億円(同12.7%)を占めています。売上原価は271億円で、売上高に対する構成比は71.1%となっています。
■(3) セグメント収益
ゼラチンは日本国内の食品用途が堅調なものの、北米などでの販売減少により減収となりました。一方、コラーゲンペプチドは北米のプロテイン需要が旺盛で増収を牽引しました。バイオメディカルも海外向けが伸長し、売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ゼラチン | 288億円 | 274億円 |
| コラーゲンペプチド | 65億円 | 73億円 |
| 食品材料 | 31億円 | 30億円 |
| バイオメディカル | 3億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 387億円 | 380億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業による収入を示す営業キャッシュ・フローはプラス、投資キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 52億円 | 65億円 |
| 投資CF | -12億円 | -51億円 |
| 財務CF | -26億円 | -24億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、基本理念として社是に「愛と信(まこと)を基盤とし、最高の技術と最大の活力により、社業を発展させ、もって社会に貢献し、希望ある人生をきずこう。」を掲げています。また、新たなパーパス(存在意義)として「アップサイクリングの力で人々の暮らしをより良いものに変える」ことを定めています。
■(2) 企業文化
未利用資源と副産物を自社の技術やサービスで価値あるものに変えるという事業の原点を重視しています。また、「ゼラチン・コラーゲン業界における売上高アジアNo.1を目指し、世界に挑戦する」というビジョンのもと、人材の多様性を尊重し、一人ひとりが能力を発揮して主体的に挑戦できる環境づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2033年3月期をターゲットとする長期経営目標として、売上高800億円、営業利益100億円の達成を目指しています。また、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画では、「収益力及びキャッシュ創出力の抜本的強化」をテーマとしています。
- 売上高:430億円(2027年3月期)
- 営業利益:47億円(2027年3月期)
- 営業利益率:10.9%(2027年3月期)
- ROE:10.0%(2027年3月期)
- DOE:3.0%(2027年3月期)
■(4) 成長戦略と重点施策
独自の競争優位性を海外市場に展開するため、販売体制の強化やコストダウン、供給能力の拡大を進めます。日本やアジアで圧倒的シェアを獲得するとともに、北米や欧州でも一定のポジション確立を目指します。さらに、バイオメディカルなどの新規分野を中長期の成長ドライバーとして育成します。
- 成長戦略実現に向けた戦略投資の大幅な拡大
- 2033年3月期までにDOE4.0%水準への株主還元強化
- コラーゲンマイクロファイバーの早期事業化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働きがい」や「働きやすさ」を感じることで主体的に業務に取り組み、個々の能力を十分に発揮できる環境整備を推進しています。多様な個性や能力を持つ社員が協働することを支援し、透明性の高い評価制度によって挑戦意欲を高めるとともに、グローバル人材の育成にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 14.3年 | 7,766,568円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 74.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用者の割合(46.7%)、中堅社員研修受講者(10人)、産休復職率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 環境規制の強化と気候変動リスク
同社の事業は多くの水資源やエネルギーを必要としており、環境に関する規制変更が事業活動に影響を与える可能性があります。また、異常気象による自社拠点への被害や、原材料の調達難が生じるリスクに対し、再生可能エネルギーへの転換やサプライチェーンの多様化を推進しています。
■(2) 製品・原材料の安全性
異物混入などの重大な品質問題が発生した場合、損害賠償請求や信用の失墜を招く恐れがあります。これに対し、国内外の主要工場で食品安全マネジメントシステムの国際規格であるFSSC22000を取得するなど、国際的な品質管理システムに従った製品製造とトレーサビリティの確保に努めています。
■(3) 原材料の調達と価格変動
世界経済の景気変動による食肉消費量の増減や、動物疾病等による原材料の調達難、流通規制による調達コストの増加リスクがあります。原材料調達先や原材料種の多様化を図り、生産性の向上によるコストダウンとサプライヤーとの連携強化に取り組んでいます。



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