※本記事は、新田ゼラチン株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新田ゼラチンってどんな会社?
コラーゲン事業をグローバルに展開する化学メーカーです。ゼラチンやペプチドなどの素材を提供しています。
■(1) 会社概要
同社は1885年に創業し、1918年に工業用ゼラチンの製造を開始した歴史ある企業です。1945年に新田膠質工業として設立され、1960年に現在の社名へ変更しました。2011年に東証二部へ上場し、翌2012年には東証一部銘柄に指定されました。2023年10月に東証スタンダード市場へ移行し、現在に至ります。
連結従業員数は860名、単体では252名です。筆頭株主は創業家関連とみられるアイビーピーで、第2位は兄弟会社にあたるニッタが名を連ねています。第3位には取引先持株会が入っており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アイビーピー | 19.27% |
| ニッタ | 4.62% |
| 新田ゼラチン取引先持株会 | 2.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は竹宮秀典氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹宮 秀典 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年同社入社。接着剤事業部長、生産本部長、ヘルスサポート事業本部長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 杉本 芳久 | 取締役執行役員営業本部長 | 1986年同社入社。営業本部営業部長、フードソリューション事業本部長などを歴任。2024年4月より現職。 |
| 林 和也 | 取締役執行役員生産本部長 | 1992年同社入社。総合研究所長、管理本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 安藤 啓 | 取締役執行役員管理本部長 | 1993年住友銀行入行。2023年同社入社。グローバル生産管理部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、堀要子(元P&Gジャパン合同会社ディレクター)、鈴木博正(元富士レビオ社長)、高橋尚男(元本田技術研究所専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コラーゲン事業」の単一セグメントにおいて、以下の製品群を展開しています。
■(1) ゼラチン
食品用(グミ、ゼリー等)、カプセル用(医薬品ソフトカプセル等)、写真用などの各種ゼラチン製品を提供しています。また、製造過程で生じる副産物(リン酸カルシウム等)の販売も行っています。食品メーカーや医薬品メーカーが主な顧客です。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、国内では主に同社および彦根ゼラチンが行い、海外ではニッタゼラチンエヌエー、ニッタゼラチンインディア等の子会社が製造・販売を担っています。
■(2) コラーゲンペプチド
健康食品用や美容用のコラーゲンペプチドを製造・販売しています。機能性素材として、健康食品メーカーや化粧品メーカー向けに供給するほか、一般消費者向け製品も展開しています。
収益は、製品の販売により得ています。運営は、同社を中心に、ニッタゼラチンエヌエー(米国)、ニッタゼラチンインディア(インド)、上海新田明膠(中国)などの海外拠点が連携して行っています。
■(3) 食品材料
食肉加工食品用の安定剤や、デザート用のゲル化剤などの食品材料を提供しています。食品の食感改良や品質保持を目的とする素材として、食品加工メーカー等に利用されています。
収益は、製品の販売対価です。運営は主に同社が担っており、海外では上海新田明膠(中国)やニッタゼラチンベトナムなどが製造・販売を行っています。
■(4) バイオメディカル
医療用コラーゲンや医療用ゼラチンなどの高付加価値製品を提供しています。再生医療や生体材料などの先端医療分野で使用される素材として、研究機関や医療機器メーカー等へ供給しています。
収益は、製品の販売により得ています。運営は、同社およびニッタゼラチンエヌエー(米国)、上海新田明膠(中国)などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台から400億円前後で推移しています。2024年3月期には北米子会社の減損損失計上などにより大幅な最終赤字となりましたが、2025年3月期には売上高は微減したものの、利益面ではV字回復を果たし、経常利益は42億円規模、当期利益も黒字転換しています。利益率は10%を超え、収益性が大きく向上しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 305億円 | 318億円 | 392億円 | 404億円 | 387億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 17億円 | 22億円 | 24億円 | 41億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 5.5% | 5.7% | 5.9% | 10.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 5億円 | 8億円 | -24億円 | 26億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益は増加し、利益率が大きく改善しました。営業利益は前期の約2倍の水準まで拡大しています。北米子会社の生産停止による収益構造の改善や国内販売の好調が寄与し、高収益体質へと転換している様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 387億円 |
| 売上総利益 | 83億円 | 100億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.5% | 25.7% |
| 営業利益 | 18億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が15億円(構成比25%)、荷造運賃が8億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のゼラチン事業は、北米子会社の生産停止影響等により減収となりました。一方、コラーゲンペプチド事業は北米での販売数量拡大やアジア市場の好調により増収となっています。食品材料事業は食肉加工用安定剤の減少で減収、バイオメディカル事業は医療用ゼラチンの販売好調により大幅な増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ゼラチン | 307億円 | 288億円 |
| コラーゲンペプチド | 62億円 | 65億円 |
| 食品材料 | 32億円 | 31億円 |
| バイオメディカル | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 404億円 | 387億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 49億円 | 52億円 |
| 投資CF | -30億円 | -12億円 |
| 財務CF | -16億円 | -26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「愛と信(まこと)を基盤とし、最高の技術と最大の活力により、社業を発展させ、もって社会に貢献し、希望ある人生をきずこう」という社是を掲げています。ビジョンとして「いつまでも元気で若々しくありたい」という世界中の人々の願いを、コラーゲンの追求により叶えることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社はビジョン実現のため、顧客の要望を叶える製品・サービスの提供、研究開発と生産革新によるコラーゲンの活躍の場拡大、そして「挑戦を良しとする組織風土」を築き新たな市場を開拓・創造することを重視しています。この価値観に基づき、持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「2024-2026中期経営計画」において、2027年3月期までの3ヶ年を収益力及びキャッシュ創出力の抜本的な強化期間と位置付けています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:430億円
* 営業利益:35億円
* ROE:9.0%
* ROIC:7.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
収益力の強化に向けて、コスト競争力の高いインド拠点での供給能力拡大や、バイオメディカル部門での海外販売拡大による黒字化を推進しています。また、財務戦略として設備投資の実行、株主還元の充実、運転資本の効率化によるキャッシュ創出力の強化に取り組んでいます。
* 設備投資:総額98億円(戦略投資43億円含む)
* 株主資本配当率(DOE):2.0%以上(最終年度目標)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「挑戦を良しとする組織風土」の醸成を目指し、人事ポリシーとして「個人・組織」「評価・処遇」「教育・研修」の3つを定めています。多様な人材が互いに信頼し協働できる環境、透明性の高い評価、成長意欲のある社員への支援を通じて、働きがいの向上と個々の能力発揮を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.6歳 | 15.9年 | 7,912,789円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者の女性労働者の割合(31.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の調達リスク
牛骨や豚皮などの動物性原材料を使用しているため、世界経済の変動による食肉消費量の増減や、気候変動、動物疾病(BSEや口蹄疫など)による食肉生産の停滞等の影響を受けます。これにより原材料の調達困難やコスト増加が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外市場での競合
北米、中国、インド、東南アジアなどの海外市場において事業を展開していますが、競合他社との競争激化により販売拡大に影響が出る可能性があります。これに対し、グローバルな販売価格対応や品質向上、技術・サービスの差別化、最適地生産・販売の推進により競争力を強化しています。
■(3) 為替・金利等の変動
グローバルに事業を展開しているため、為替変動や金利変動の影響を受けます。特に円安は原材料輸入コストの増加要因となる一方、海外売上の円換算額増加にも寄与します。想定を超える急激な変動は、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。これに対し、為替予約等によるリスク低減を図っています。



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