※本記事は、株式会社Cominix の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Cominixってどんな会社?
切削工具の販売を中心に、ものづくり産業を支える専門商社です。グローバル展開やM&Aを推進しています。
■(1) 会社概要
1950年に大阪工具として設立され、切削工具の販売を開始しました。2012年に大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2018年に現在のCominixへ商号を変更しました。海外展開も積極的に進め、アジアや北米等に拠点を設立しています。2024年には株式会社KamogawaHDを子会社化し、事業規模を拡大しました。
同グループは連結従業員数683名、単体195名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は取締役常務執行役員の林祐介氏で、第2位はCominix従業員持株会です。第3位の大阪ビジネスプラニング有限会社は、大株主である役員の資産管理会社と推察されます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 林 祐介 | 12.68% |
| Cominix従業員持株会 | 8.57% |
| 大阪ビジネスプラニング有限会社 | 7.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は代表取締役社長執行役員の柳川修一氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柳川 修一 | 代表取締役社長執行役員 | 2001年同社入社。中阪貿易(上海)有限公司総経理、取締役第二営業本部長等を経て2023年6月より現職。 |
| 柳川 重昌 | 代表取締役会長 | 1969年同社入社。取締役営業部長、専務取締役、代表取締役社長を経て2023年6月より現職。 |
| 田中 秀樹 | 取締役専務執行役員海外事業部事業部長 | 1987年同社入社。海外事業部長、常務取締役、専務取締役第二営業本部長等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 澤口 典宏 | 取締役常務執行役員 | 1991年同社入社。業務部長、取締役業務部長、さくさく代表取締役、常務取締役等を経て2023年6月より現職。 |
| 林 祐介 | 取締役常務執行役員管理本部長兼情報管理室長 | 2002年同社入社。取締役経理部長、取締役管理本部長、常務取締役等を経て2024年4月より現職。 |
| 渡部 哲郎 | 取締役上席執行役員 | 1990年同社入社。第一営業本部長、取締役第一営業本部長を経て2024年4月より現職。 |
| 東 伸裕 | 取締役監査等委員(常勤) | 1986年同社入社。光システム営業部長、取締役光システム営業部長、常勤監査役を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、市川直(元椿本チエイン代表取締役専務執行役員)、森常徳(元三菱電機冷熱応用システム代表取締役社長)、明松優(公認会計士・税理士)、新井信彦(元りそな信託銀行代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「切削工具事業」「耐摩工具事業」「海外事業」「光製品事業」「eコマース事業」「Kamogawaものづくりソリューション事業(KMS事業)」および「その他」事業を展開しています。
■切削工具事業
自動車エンジン部品などの金属加工業者に対し、超硬切削工具や特殊鋼切削工具を中心に、保持工具、測定機器、工作機械などを販売しています。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は、同社および国内子会社の大西機工、東新商会、澤永商店が行っています。直販部門と卸売部門の2部門体制を敷いており、大手企業への直接販売と販売店網を通じた卸売販売を展開しています。
■耐摩工具事業
主に国内製缶業者向けに、缶を成形するための製缶工具等の耐摩工具を販売しています。また、製紙・環境リサイクル業界向けの破砕刃や、電池業界向けの金型なども取り扱っています。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は同社が行っています。顧客の要求仕様に合わせて製作されるカスタム商品が中心であり、飲料容器缶業界をはじめ様々な業界の製造業者へ製品を提供しています。
■海外事業
海外顧客向けに、切削工具、製缶工具、耐摩工具、鉱物資源などを販売しています。中国、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、インド、メキシコ、アメリカ、ロシアなどに拠点を持ちます。
収益は、海外顧客への商品販売代金です。運営は、同社および中阪貿易(上海)有限公司などの各海外現地法人が行っています。日系製造業の海外展開に対応するとともに、現地企業への販売も進めています。
■光製品事業
半導体、液晶、太陽電池向けの検査装置に搭載される光学部品、光源装置、光ファイバーなどを販売しています。特に外観検査装置製造業界が主要な顧客です。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は同社が行っています。検査装置に搭載する部品として、照明用光ファイバーや光源装置などを納入しています。
■eコマース事業
インターネットサイト「さくさくEC」を通じ、切削工具等の商品を販売しています。オリジナル商品を含め、幅広いラインナップを取り扱っています。
収益は、サイト利用者からの商品購入代金です。運営は国内子会社のさくさくが行っています。
■Kamogawaものづくりソリューション事業(KMS事業)
切削工具・研削砥石をはじめ、生産現場で必要な全ての工作機械・生産財を取り扱う「生産財の総合サプライヤー」として事業を展開しています。リノベート事業やPB事業も行っています。
収益は、顧客への商品販売代金やサービス料です。運営は、国内子会社のKamogawa、Kamogawa北海道、および海外子会社が行っています。
■その他事業
上記報告セグメントに含まれない事業として、切削工具等の製造販売を行っています。
収益は、製品の販売代金です。運営は、国内子会社の川野辺製作所および海外子会社のKNB TOOLS OF AMERICA,INC.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方で、経常利益や当期純利益は減少傾向にあり、利益率の低下が見られます。特に直近の決算では利益水準が大きく低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 210億円 | 269億円 | 289億円 | 286億円 | 301億円 |
| 経常利益 | 1.2億円 | 7.8億円 | 11億円 | 8.4億円 | 5.6億円 |
| 利益率(%) | 0.6% | 2.9% | 3.7% | 2.9% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 8.3億円 | 4.2億円 | 4.6億円 | 4.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は若干低下しています。営業利益および営業利益率は低下しており、コスト負担の増加などが利益を圧迫している様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 286億円 | 301億円 |
| 売上総利益 | 64億円 | 68億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 22.4% |
| 営業利益 | 7.5億円 | 5.5億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が25億円(構成比40%)、賞与引当金繰入額が3億円(同4%)を占めています。売上原価については、商品評価損が含まれています。
■(3) セグメント収益
切削工具事業と光製品事業は増収となりましたが、耐摩工具事業や海外事業は減収となりました。新たにKMS事業が加わり売上に寄与しています。利益面では、光製品事業が増益となった一方、主力事業や海外事業で減益となり、全体として利益率が低下しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 切削工具事業 | 164億円 | 168億円 | 1.4億円 | 1.2億円 | 0.7% |
| 耐摩工具事業 | 27億円 | 22億円 | 2.2億円 | 1.6億円 | 7.4% |
| 海外事業 | 74億円 | 73億円 | 2.8億円 | 1.9億円 | 2.6% |
| 光製品事業 | 13億円 | 15億円 | 0.5億円 | 1.0億円 | 6.5% |
| eコマース事業 | 0.5億円 | 0.9億円 | -0.7億円 | -0.7億円 | -81.8% |
| KMS事業 | - | 16億円 | - | -0.3億円 | -1.7% |
| その他 | 8億円 | 8億円 | 0.5億円 | 0.3億円 | 4.3% |
| 調整額 | -1.9億円 | -2.8億円 | 0.7億円 | 0.5億円 | - |
| 連結(合計) | 286億円 | 301億円 | 7.5億円 | 5.5億円 | 1.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
Cominixは、グローバルな成長戦略を推進し、海外市場への積極的な投資と国内市場でのシェア拡大を図っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益創出や売上債権の回収が進んだ一方で、仕入債務の減少や税金等の支払いにより、前年と比較して使用額が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得が主な要因となり、大幅に使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の収入が返済額を上回ったことなどにより、資金獲得となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | -1.0億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | -22億円 |
| 財務CF | -8.5億円 | 36億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「社会に貢献し、社会の発展に寄与してこそ本当の事業である」という考えのもと、顧客の生産性向上に寄与することで社会の発展に貢献することを基本方針としています。また、『ものづくりに携わるすべての人々に寄り添い、世界に「できる」を生み出す。』を存在意義として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は対話を繰り返すことで相互の理解を深めながら、提案営業の質を高めることを重視しています。顧客に潜在する問題点を見つけ出し、自社で提供する商品と使い方の提案にて解決策を提示する営業スタイルを大切にし、ものづくり産業の生産性向上と付加価値の向上を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は継続的な事業の拡大を通じて企業価値を向上させることを目標としており、「新中長期経営計画ローリングプラン(FY76-FY80)」を策定しています。この計画において、「売上高」「営業利益」「ROE」を重要な経営指標と位置づけ、「ものづくりの専門商社」を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、プロダクト・ミックスを重視した商品力の強化や、WEB販売システム等の活用による営業活動の効率化、社員教育への投資に注力しています。また、海外市場への展開や、耐摩工具事業・光製品事業の育成、M&Aを含めた事業再編への対応などを重点施策として掲げ、新規顧客の獲得や新たな市場の開拓を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、商社の競争力の源泉は社員の能力であると考え、社員教育・人材への投資に力を入れています。豊富な商品知識を持ち、ものづくりに携わる人々に寄り添える人材の育成を目指し、各種研修の実施や社内テクニカルセンターの活用を行っています。また、多様な働き方を受容する環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.0歳 | 12.7年 | 6,800,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 87.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 48.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業績変動リスク
同社グループの主要販売商品である切削工具は自動車業界が主要なユーザーであり、同業界の設備投資動向や生産動向の影響を強く受けます。そのため、自動車業界の業況変化による需要変動が、同社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(2) 商品在庫に関するリスク
切削工具の多品種在庫を保有し即納体制を構築していますが、市況の変化により過剰在庫となり商品評価損が発生した場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。同社グループでは適正発注量決定システム等を用いてリスク低減を図っています。
■(3) 仕入先に係る代理店契約の解消・終了に関するリスク
住友電気工業株式会社と特約販売契約を締結し、同社製品を中心に事業を展開しています。同社との関係や戦略に変更が生じ、契約内容の変更や契約継続に支障を来す要因が発生した場合、同社グループの事業活動や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外事業に関するリスク
海外での事業展開を進めていますが、進出国における市場動向、政治・経済情勢、法規制、為替変動などのリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合、事業戦略や経営成績等に影響を与える可能性があります。同社グループでは、情報収集や体制構築によりリスク低減に努めています。



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