※本記事は、アストマックス株式会社の有価証券報告書(第14期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アストマックスってどんな会社?
アストマックスは、再生可能エネルギー関連や電力取引、小売などを手がける総合エネルギー事業会社です。
■(1) 会社概要
1992年、商品投資顧問業への参入を目的に設立されました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2012年には旧アストマックスの単独株式移転により現在の体制となりました。同年に太陽光発電事業へ参入したことを機に、その後電力取引関連事業や小売事業にも参画し、総合エネルギー事業への転換を図っています。
従業員数は連結61名、単体59名です。筆頭株主は建築工事等の企画やコンサルティングを行うヒューリックプロパティソリューションで、第2位は有限会社啓尚企画、第3位は代表を務める牛嶋英揚氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヒューリックプロパティソリューション | 17.97% |
| 有限会社啓尚企画 | 8.92% |
| 牛嶋英揚 | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長執行役員は牛嶋英揚氏です。取締役5名中3名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 牛嶋英揚 | 代表取締役会長兼社長執行役員 | 1978年住友商事入社。旧アストマックス代表取締役社長などを経て、2026年より現職。 |
| 中西典彦 | 取締役執行役員 | 1989年三和銀行入行。マネーパートナーズ取締役副社長兼CFO等を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、橋本昌司(橋本総合法律事務所代表)、溝渕寛明(元住友商事執行役員)、吉田昂希(秋田ウインドパワー研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「再生可能エネルギー関連事業」、「電力取引関連事業」、「小売事業」、「ディーリング事業」および「その他」の事業を展開しています。
■再生可能エネルギー関連事業
太陽光発電所の売電や保守・運用管理、新たな太陽光発電所や地熱発電の開発、PPAを中心とした自家消費モデルの導入、蓄電池事業などを行っています。
主な収益源は、電力の販売や保守運用サービスの提供による対価です。運営はアストマックスやアストマックスえびの地熱のほか、複数の匿名組合が共同で行っています。
■電力取引関連事業
一般送配電事業者などの顧客向けに電力の卸売販売を行うほか、顧客管理や需給予測などの代行サービス、蓄電所のアグリゲーター業務を提供しています。
収益は、卸売市場や発電事業者から調達した電力の販売代金や、業務代行サービスの手数料から得ています。運営はアストマックスが単独で行っています。
■小売事業
特別高圧や高圧、および低圧市場の顧客に向けて、電力を販売する事業です。企業向けの大口電力だけでなく、個人を中心とする低圧市場にも対応しています。
収益源は、一般消費者などの顧客から受け取る電力の販売代金です。アストマックスおよびアストマックス・エネルギーが運営を行っています。
■ディーリング事業
国内外の主要な取引所において、商品先物を中心に株価指数などの金融先物を対象とした自己勘定による裁定取引などを行っています。
市場価格の変動を利用した取引による利益を収益源としています。同事業は2027年3月期末までの廃止に向けて規模を縮小しており、アストマックスが運営を行っています。
■その他
各報告セグメントに該当しない親会社の事業や業務受託などに関する収益が含まれています。アストマックスが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時減少したものの、その後は右肩上がりの成長を続けています。一方、経常利益は市場環境の影響を受けて変動が大きく、赤字と黒字を繰り返す傾向にありましたが、直近ではヘッジ取引の影響等により大幅な黒字へと転換しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 127.7億円 | 117.7億円 | 148.6億円 | 206.7億円 | 252.6億円 |
| 経常利益 | 3.2億円 | -8.6億円 | 5.1億円 | -1.5億円 | 25.3億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | -7.3% | 3.5% | -0.7% | 10.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.3億円 | -3.6億円 | 4.5億円 | -1.5億円 | 19.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が堅調に拡大する中で、営業利益も前期間の赤字から大きく改善し、利益率も10%を超える水準へと上昇しました。収益構造の良化が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 206.7億円 | 252.6億円 |
| 営業利益 | -1.8億円 | 26.4億円 |
| 営業利益率(%) | -0.9% | 10.4% |
営業費用のうち、購入電力料が202.9億円(構成比89.7%)と大部分を占め、次いで給与手当が4.2億円(同1.9%)、減価償却費が3.2億円(同1.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電力取引関連事業は取引数量の拡大や価格変動により大幅な増収増益を牽引しました。一方、小売事業は価格競争の激化により減益となり、再生可能エネルギー関連事業やディーリング事業も損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 再生可能エネルギー関連事業 | 6.7億円 | 8.5億円 | 1.4億円 | -0.5億円 | -5.5% |
| 電力取引関連事業 | 128.6億円 | 186.7億円 | -1.0億円 | 28.5億円 | 15.2% |
| 小売事業 | 68.6億円 | 56.0億円 | 1.6億円 | 0.7億円 | 1.3% |
| アセット・マネジメント事業 | 2.0億円 | - | 0.4億円 | - | - |
| ディーリング事業 | 0.9億円 | 1.3億円 | -2.3億円 | -1.7億円 | -128.5% |
| その他 | - | 0.1億円 | - | - | - |
| 調整額 | - | - | -1.4億円 | -1.7億円 | - |
| 連結(合計) | 206.7億円 | 252.6億円 | -1.5億円 | 25.3億円 | 10.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.6億円 | 10.1億円 |
| 投資CF | -0.3億円 | -1.7億円 |
| 財務CF | -8.3億円 | -1.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「私達の未来を考える ~すべては持続可能な社会のために~」をミッションに掲げています。社会の一員として、持続可能な社会の実現を目指すために、絶えず未来を考え続けることが自らの使命であり存在意義であるとの考えを持ち続けることを重要視しています。
■(2) 企業文化
「SPIRIT of Challenge」をバリューとして定めています。常にチャレンジ精神を持ち、価値を発揮していくことを役職員全員がしっかりと認識することを目指しています。また、ビジョンには「変化をとらえ、進化につなげる」を掲げ、変化の波を的確にとらえ自らも変化していく姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期ビジョン2028において、「エネルギートータルソリューションプロバイダー」への進化を掲げ、資本コストを意識した収益構造の構築を目指しています。
* 2028年3月期目標 連結営業収益:350億円
* 2028年3月期目標 税金等調整前当期純利益(実質):8億円
* 2028年3月期目標 ROE:9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業・財務・非財務戦略の三位一体の推進により、持続的な成長を目指しています。「事業の選択と集中」を進め、成長が見込まれる電力取引や再生可能エネルギー関連へ各種資本を集中配分しています。系統用蓄電池を軸としたアグリゲーション事業の拡大や小売事業の強化、DXによる全社最適の実現に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な企業価値向上の基盤として、人材を重要な経営資本の一つと位置付けています。次世代の経営体制を担うマネジメント人材の選抜・育成を急務とし、外部研修の実施や執行役員の登用を進めています。また、能力や適性に基づいた公正な給与決定を行い、多様な価値観を持つ人材が活躍できる社内環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.2歳 | 9.2年 | 8,238,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員満足度(73.6%)、離職率(5.3%)、基幹職以上の女性比率(18.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グループ経営のガバナンス
同社グループは多様な事業を展開しており、各々の事業において迅速かつ的確な経営判断が求められます。グループ全体でのガバナンス体制や管理業務の遂行体制が十分に機能しない場合、同社グループの事業展開や経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等に対するコンプライアンス
同社グループの各事業は、電気事業法や個人情報保護法、国内外の主要取引所の諸規則などの様々な法的規制を受けます。万が一、法令違反等が発生した場合、監督当局から行政上の指導や処分を受け、通常の営業活動が制限されるなど事業活動に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 再生可能エネルギー関連事業における事業採算の悪化
太陽光発電や地熱発電などの事業化においては、想定外のコスト発生や出力抑制の増加による売電収入の減少などにより、事業採算が悪化する可能性があります。また、事業用地の取得に伴う不動産価値の低下や環境汚染などのリスクも存在し、これらが業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。



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