#記事タイトル:アストマックス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、アストマックス株式会社 の有価証券報告書(第13期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アストマックスってどんな会社?
総合エネルギー事業と金融事業を展開し、再生可能エネルギー開発から電力小売までを手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
同社は1992年に商品投資顧問業への参入を目的に設立されました。2012年に単独株式移転により現在のアストマックスを設立し、JASDAQ市場に上場しました。その後、2014年に「八戸八太郎山ソーラーパーク」を竣工させるなど再生可能エネルギー事業を本格化させ、2020年にはJust Energy Japan(現アストマックス・エネルギー)を子会社化し、電力・ガス小売事業へ参入しました。2025年3月には事業再編の一環としてアセット・マネジメント事業を廃止しています。
同グループは連結従業員数61名(単体59名)の体制で事業を行っています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は事業会社である株式会社大和証券グループ本社で、第3位は同社代表取締役会長の牛嶋英揚氏です。なお、株式会社大和証券グループ本社とは過去に資本提携を行っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社大和証券グループ本社 | 13.41% |
| 有限会社啓尚企画 | 9.45% |
| 牛嶋英揚 | 5.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は本多弘明氏が務めています。取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 牛 嶋 英 揚 | 代表取締役会長執行役員 | 1978年住友商事入社。1993年旧アストマックス入社、2001年同社社長、2010年会長を経て、2012年より現職。 |
| 本 多 弘 明 | 代表取締役社長執行役員 | 1979年住友商事入社。2003年アストマックス・アセット・マネジメント社長、2010年旧アストマックス社長などを経て、2012年より現職。 |
| 中 西 典 彦 | 取締役執行役員 | 1989年三和銀行入行。マネーパートナーズグループCFOなどを経て2020年同社入社。2025年より現職。 |
社外取締役は、橋本昌司(弁護士)、溝渕寛明(元住友商事執行役員)、吉田昂希(ヒューリックサステナビリティ部参事役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「再生可能エネルギー関連事業」「電力取引関連事業」「小売事業」「アセット・マネジメント事業」および「ディーリング事業」を展開しています。
■(1) 再生可能エネルギー関連事業
主に再生可能エネルギーを利用した発電および電気の供給に関する事業を行っています。具体的には、太陽光発電所の開発・売電・保守管理(O&M)、地熱発電の事業化、需要家への電力供給契約(PPA)による自家消費モデルの導入、蓄電池事業などを手掛けています。
収益は、開発した発電所からの売電収入や、発電所の保守・運用管理サービスの対価として受け取ります。運営は主にアストマックスと同社子会社のアストマックスえびの地熱が行っています。
■(2) 電力取引関連事業
小売電気事業者向けに電力の卸売りや、需給管理などの代行サービスを提供しています。顧客管理、需給予測、計画値提出、リスク管理などの業務を代行し、電力市場での取引をサポートします。
収益は、電力の卸売販売代金や、業務代行サービスの提供対価として顧客から受け取ります。運営はアストマックスが単独で行っています。
■(3) 小売事業
一般消費者や法人顧客向けに、電力およびガスの小売事業を行っています。市場価格に連動した電力プランや、顧客のニーズに合わせたカスタムメイドなプランなどを提供しています。
収益は、電力およびガスの利用料として需要家から受け取ります。運営はアストマックスおよび子会社のアストマックス・エネルギーが行っています。
■(4) アセット・マネジメント事業
ベンチャーキャピタルファンドや、再生可能エネルギー関連の投資ファンド等の運用業務を行っていました。なお、本事業はグループ内のシナジーが見込み難いとの判断から、2025年3月末をもって廃止されました。
収益は、ファンドの運用報酬や成功報酬として受け取っていました。運営はアストマックスおよび子会社のアストマックス・ファンド・マネジメントが行っていましたが、当該子会社は連結範囲から除外されています。
■(5) ディーリング事業
国内外の主要取引所において、商品先物を中心に株価指数等の金融先物を対象とした自己勘定取引を行っています。
収益は、自己資金を用いた市場取引による売買差益から得ています。運営はアストマックスが行っています。なお、本事業については今後2年を目途に段階的に縮小し、最終的に廃止する方針が決定されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は増加傾向にあり、特に直近で大幅に伸長しています。一方、利益面では変動が大きく、直近は赤字となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 123億円 | 128億円 | 118億円 | 149億円 | 207億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | 3.2億円 | -8.6億円 | 5.1億円 | -1.5億円 |
| 利益率(%) | 0.8% | 2.5% | -7.3% | 3.5% | -0.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.2億円 | 1.3億円 | -3.6億円 | 4.5億円 | -1.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は大幅に増加しましたが、営業損益は赤字に転落しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 149億円 | 207億円 |
| 売上総利益 | -億円 | -億円 |
| 売上総利益率(%) | -% | -% |
| 営業利益 | 7億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | -0.9% |
※同社は「営業費用」として売上原価と販売費及び一般管理費を区分せずに表示しているため、売上総利益のデータはありません。
営業費用のうち、購入電力料が186億円(構成比89%)、給与手当が4億円(同2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電力取引関連事業が売上の大半を占め、大幅な増収を牽引していますが、利益面では苦戦しています。小売事業は増収増益です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 再生可能エネルギー関連事業 | 8億円 | 7億円 | 1億円 | 1億円 | 18.4% |
| 電力取引関連事業 | 82億円 | 131億円 | 4億円 | -1億円 | -0.8% |
| 小売事業 | 56億円 | 69億円 | 1億円 | 2億円 | 2.3% |
| アセット・マネジメント事業 | 2億円 | 2億円 | 0.0億円 | 0.4億円 | 18.7% |
| ディーリング事業 | 3億円 | 1億円 | -0.1億円 | -2億円 | -260.1% |
| 連結(合計) | 149億円 | 207億円 | 5億円 | -1億円 | -0.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は末期型(本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的)となります。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に差入保証金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | -0.6億円 |
| 投資CF | -5億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | 6億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.8%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私達の未来を考える ~すべては持続可能な社会のために~」をミッション(使命・存在意義)として掲げ、持続可能な社会の実現を目指しています。また、ビジョン(近未来の姿)として「変化をとらえ、進化につなげる」を掲げ、変化の波を的確にとらえ、自らも変化し続ける企業になることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「SPIRIT of Challenge」をバリュー(価値観)として掲げています。これは、「Speed(迅速性)」「Professionalism(専門性)」「Integrity(高潔な倫理観)」「Responsibility(当事者意識)」「Imagination(想像力)」「Toughness(タフネス)」「Challenge(挑戦)」「Leadership(リーダーシップ)」の8つの要素から構成され、常にチャレンジ精神を持って行動することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期ビジョン2028(Shift Up)を策定し、2028年3月期において以下の数値目標を掲げています。
* 連結営業収益:350億円
* 税金等調整前当期純利益(実質):8億円
* ROE:9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「総合エネルギー事業会社」への変革をさらに加速させ、「エネルギートータルソリューションプロバイダー」としての成長を目指しています。具体的には、「事業の選択と集中」を推進し、アセット・マネジメント事業の廃止やディーリング事業の段階的縮小・廃止を行う一方で、成長が見込まれる再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業、小売事業へ経営資源を集中させます。特に、地熱発電の開発、系統用蓄電池事業、電力取引の差別化、小売事業の安定収益基盤の強化に注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「働きがいの向上と人財の成長は『会社の成長』」という人事方針の下、次世代マネジメント人材の育成と選抜に注力しています。また、多様な価値観を尊重し、性別や国籍等を問わず能力や適性に基づいた採用・評価を行う方針です。専門性を高めるための階層別・分野別研修の充実や、人事考課制度の見直しを通じて、従業員のエンゲージメント向上と組織の活性化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 8.3年 | 8,250,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員満足度(81.1%)、離職率(3.7%)、基幹職以上の女性比率(18.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グループ経営のガバナンスについて
同社グループは多角的な事業を展開しており、各事業において迅速かつ的確な経営判断が求められます。ガバナンス体制や管理業務遂行体制が十分に機能しない場合、事業展開や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、会議体での審議や社外役員との意見交換を通じてガバナンスの強化を図っています。
■(2) 法的規制等に対するコンプライアンスの徹底について
ディーリング事業や電力事業など、同社の事業は様々な法的規制を受けます。法令違反が発生した場合、行政処分等により営業活動が制限され、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は全役職員への誓約書提出や継続的な研修、内部監査等を通じてコンプライアンスの徹底に努めています。
■(3) 再生可能エネルギー関連事業について
太陽光や地熱などの発電事業では、計画通りに進まないリスクや想定外のコスト発生、自然災害による設備損壊、出力抑制による売電収入減少などのリスクがあります。特に地熱発電は開発リスクが高いため、慎重な調査やパートナー企業との共同事業化によりリスク分散を図っています。また、資金調達にはノンリコースローンを活用しリスクを限定しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。