山陰合同銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山陰合同銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する山陰地方最大手の地方銀行。島根県・鳥取県を主要基盤とし、銀行業務を中心にリースやクレジットカード等の金融サービスを展開しています。2025年3月期の連結業績は、貸出金利息や役務取引等収益の増加により、経常収益、経常利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、株式会社山陰合同銀行の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山陰合同銀行ってどんな会社?


島根・鳥取両県を地盤とする広域地方銀行です。「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」を掲げ、地域課題の解決に取り組んでいます。

(1) 会社概要


同社は1889年に松江銀行として設立され、1941年に米子銀行と合併し現行名となりました。1987年に東証一部(現プライム)へ上場し、山陰地方のリーディングバンクとしての地位を確立しています。近年では2020年に新基幹系システムを稼働させ、2022年には再生可能エネルギー事業会社を設立するなど、多角化を進めています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結1,882名、単体1,708名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は同様に資産管理を行う日本カストディ銀行、第3位は保険業を営む日本生命保険となっています。安定した機関投資家が上位を占める株主構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.48%
日本カストディ銀行(信託口) 6.62%
日本生命保険相互会社 2.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役頭取は吉川浩氏が務めています。社外取締役比率は53.8%です。

氏名 役職 主な経歴
吉川 浩 取締役頭取(代表取締役) 1989年入行。米子支店長、山陽営業本部長などを経て、2023年取締役専務執行役員。2025年4月より現職。
山崎 徹 取締役会長(代表取締役) 1982年入行。経営企画部長、常務執行役員、取締役専務執行役員などを歴任。2020年取締役頭取を経て、2025年4月より現職。
吉岡 佐和子 取締役専務執行役員(代表取締役) 1987年入行。米子支店長、執行役員米子営業本部長などを経て、2024年4月専務執行役員鳥取営業本部長。同年6月より現職。
生田 博久 取締役専務執行役員 1989年入行。神戸支店長、リスク統括部長、DX推進本部長などを歴任。2024年4月専務執行役員DX推進本部長となり、同年6月より現職。
伊藤 信二 取締役(監査等委員) 1990年入行。経営企画部グループ長、松江駅前支店長、出雲支店長、執行役員石見営業本部長などを経て、2023年6月より現職。
中村 真実子 取締役(監査等委員) 1986年入行。島根医大通支店長、お客様サービス部長、人事部長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、倉都康行(リサーチアンドプライシングテクノロジー代表)、後藤康浩(亜細亜大学教授)、本井稚恵(コンサルタント)、グレム・デイビッド・ナウド(ナウド・アドバイザリー社長)、今岡正一(公認会計士)、足立珠希(弁護士)、瀬古智昭(弁護士・公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業

本店および支店75ヶ店等において、預金、貸出、有価証券投資、為替、社債受託などの銀行業務を行っています。個人や法人顧客に対し、資金の貸付や資産運用、決済サービスなどを提供しており、同社グループの中核事業です。

収益は主に、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金利益、および為替手数料や投資信託販売手数料などの役務取引等利益から構成されています。運営は主に株式会社山陰合同銀行が行っています。

リース業

情報通信機器、産業機械、輸送用機器などの各種物件のリース業務を行っています。地元の法人顧客を中心に、設備投資ニーズに対応したリースサービスを提供しています。

収益は、顧客からのリース料収入が主な源泉です。運営はごうぎんリース株式会社が行っています。

その他

銀行業、リース業以外の事業として、クレジットカード業務や信用保証業務、コンサルティング業務などを展開しています。地域商社を通じた販路拡大支援や再生可能エネルギー発電事業など、地域活性化に資する多様なサービスを提供しています。

収益は、クレジットカードの手数料や年会費、信用保証料などが主な源泉です。運営は株式会社ごうぎんクレジット、ごうぎん保証株式会社、ごうぎんエナジー株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、主に経常収益の増加によるものです。過去からの趨勢としては、経常収益、経常利益ともに増加傾向で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 892 951 1,127 1,202 1,353
経常利益(億円) 144 208 217 247 267
当期純利益(億円) 97 145 155 168 187

(2) 損益計算書

当期は経常収益が増加した一方、経常費用も増加しました。経常利益は増益となりました。当期純利益も増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 1,202 1,353
経常費用 954 1,086
経常利益 247 267
当期純利益 168 187

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の役務取引等収益は当期に増加しました。中でも、預金・貸出業務が最も大きく、次いで証券関連業務が続きます。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 173 189
預金・貸出業務 62 71
為替業務 24 25
証券関連業務 29 33
代理業務 11 10

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、預金等を中心とした安定的な資金調達基盤を整備し、営業活動や設備投資等に十分に対応できる手元資金を確保しています。
連結ベースの営業活動によるキャッシュ・フローは、預金等の増加が貸出金の増加を上回ったことから大幅な収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得による支出が売却や償還による収入を上回ったため、支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 63 872
投資活動によるキャッシュ・フロー 8 △528
財務活動によるキャッシュ・フロー △64 △90

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」を経営理念として掲げています。地域のリーディングバンクとして「地域・お客様のお役に立つ」ことを基本方針とし、課題解決を通じて地域と共に持続的に成長する「No.1の課題解決力で持続的に成長する広域地方銀行」という長期ビジョンの実現を目指しています。

(2) 企業文化


役職員の行動指針として「誠実」「情熱」「成長」「創造」「チームごうぎん」の5つの価値観(GOGIN Five Values)を定めています。信頼関係を基盤とし、地域への熱い想いを持って挑戦を繰り返し、多様性を尊重する風通しの良い組織風土のもとで、すべてのステークホルダーの期待に応えることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2026年度までの中期経営計画では、最終年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 親会社株主に帰属する当期純利益:185億円以上
* ROE(株主資本ベース):6%程度

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「課題解決による成長戦略」「DX戦略」「構造改革・人的資本戦略」「株主価値向上戦略」の4つを基本戦略としています。法人・個人コンサルティングの強化や、銀行と証券の強みを活かした「全資産アプローチ」の推進、デジタル化による利便性向上と業務変革に取り組みます。また、店舗ネットワーク再編やリスキリングによる戦略分野への人員配置、人事制度改定などを通じて人的資本の最大化を図り、持続可能な地域社会の実現を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な資産と捉え、専門性の高い人材育成と自律的なキャリア形成を支援しています。多様な人材の確保に向けた採用チャネルの拡充や、スキルを可視化する認定制度の導入、実践的な研修機会の提供を行っています。また、エンゲージメント向上、心身の健康保持、D&I推進を通じて、誰もが能力を最大限発揮できるウェルビーイングな職場環境の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 17.5年 7,332,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.2%
男性育児休業取得率 97.4%
男女賃金差異(全労働者) 49.9%
男女賃金差異(正規) 62.9%
男女賃金差異(非正規) 88.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(30歳未満)(5.0%)、経験者採用比率(29.5%)、有給休暇平均取得率(86.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定地域の経済動向の影響


同社は島根・鳥取両県を主要な営業基盤としているため、同地域の経済情勢の変化が業績に大きく影響する可能性があります。人口減少や少子高齢化が進む中、地域経済の停滞は預金・貸出金の伸び悩みや与信費用の増加につながるリスクがあります。これに対し、山陽・兵庫・大阪・東京などへの広域展開によりリスク分散を図っています。

(2) 信用リスク


取引先の財務状況悪化などにより、貸出金の元本や利息の回収が困難になるリスクがあります。特に貸出金残高の増強戦略を進める中で、対象資産の増加に伴い信用リスクも増加傾向にあります。厳正な審査や自己査定、ポートフォリオ管理などを通じてリスクコントロールを行っていますが、予期せぬ経済環境の悪化等は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 市場リスク


金利、株価、為替などの市場変動により、保有する金融資産の価値が変動し損失を被るリスクがあります。有価証券運用においてはリスクテイクの多様化を進めていますが、急激な市場変動が発生した場合には、減損や評価損の発生により業績に影響を与える可能性があります。リスク量のモニタリングやALM委員会での管理を通じて適切に対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。