山陰合同銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山陰合同銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山陰合同銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、銀行業務を中心にリースやクレジットカードなどの金融サービスを展開する企業です。直近の業績は、預金・貸出金ともに増加し経常収益および経常利益が前期比で増加して増収増益を達成、親会社株主に帰属する当期純利益も増益と堅調な推移を見せています。


※本記事は、山陰合同銀行の有価証券報告書(第123期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山陰合同銀行ってどんな会社?


銀行業務を中心にリースやクレジットカードなど地域密着型の金融サービスを展開するリーディングバンクです。

(1) 会社概要


1889年設立の松江銀行と1894年設立の米子銀行が1941年に合併し、現在の形態として設立されました。1987年に東京証券取引所市場第一部に株式を上場しています。その後、関係会社の設立や再編を進めて事業領域を拡大し、1997年に現在の本店を新築移転、2022年には東証プライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結1,906名、単体1,720名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は保険業務を行う日本生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.14%
日本カストディ銀行(信託口) 5.99%
日本生命保険相互会社 2.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性5名の計13名で構成され、女性役員比率は38.4%です。代表取締役頭取は吉川浩氏が務めています。社外取締役は7名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
吉川浩 取締役頭取(代表取締役) 1989年同行入行。姫路支店長、米子支店長、執行役員山陽営業本部長などを歴任。2022年取締役常務執行役員、2023年取締役専務執行役員を経て、2025年4月より現職。
山崎徹 取締役会長(代表取締役) 1982年同行入行。営業企画部長、執行役員経営企画部長などを経て2015年取締役専務執行役員。2018年取締役副頭取執行役員、2020年取締役頭取を経て、2025年4月より現職。
吉岡佐和子 取締役専務執行役員(代表取締役) 1987年同行入行。古志原支店長、米子支店長、執行役員米子営業本部長、専務執行役員鳥取営業本部長などを歴任し、2024年6月より現職。
生田博久 取締役専務執行役員 1989年同行入行。加古川支店長、執行役員神戸支店長、執行役員リスク統括部長等を経て、2024年取締役専務執行役員DX推進本部長。2026年4月より現職。


社外取締役は、倉都康行(元リサーチアンドプライシングテクノロジー社長)、後藤康浩(元日本経済新聞社編集委員)、本井稚恵(多様性推進等コンサルタント)、グレム・デイビッド・ナウド(元ナウド・アドバイザリー社長)、足立珠希(足立珠希法律事務所代表)、瀬古智昭(鳥取あおぞら法律事務所弁護士)、大森浩(大森会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 銀行業


本店および支店などの国内営業拠点を通じ、預金業務、貸出業務、有価証券投資業務、内国為替業務、外国為替業務などの各種金融サービスを地域および広域の顧客へ提供しています。

主に企業や個人に対する貸出金からの金利収入や、預金・為替・証券関連業務に伴う手数料を収益源としています。同事業の運営は、中核企業である山陰合同銀行が行っています。

(2) リース業


地域企業の設備投資ニーズや経営課題の解決をサポートするため、各種機械設備や車両などのファイナンス・リースおよびオペレーティング・リースサービスを提供しています。

リース契約に基づく顧客からのリース料を主な収益源としています。同事業の運営は、連結子会社であるごうぎんリースが行っています。

(3) その他


銀行業およびリース業を補完する多様なサービスとして、クレジットカード業務、信用保証業務、不動産賃貸業務、債権回収業務、人材紹介や再生可能エネルギー事業などを展開しています。

各サービスの利用に伴う手数料や賃貸料、売電収入などを収益源としています。ごうぎん不動産管理、ごうぎんキャリアデザイン、ごうぎん再生債権回収、ごうぎんクレジットなど複数の子会社が各領域の運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を概観すると、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益はともに連続して増加傾向を保っています。特に直近の事業年度においては、経常利益が323億円、当期利益が221億円と過去5年間で最も高い水準を記録しており、安定した成長基調にあることが読み取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 208億円 217億円 247億円 267億円 323億円
当期利益(親会社所有者帰属) 142億円 145億円 160億円 182億円 221億円

(3) セグメント収益


直近2期間のセグメント別の売上(経常収益)動向を見ると、中核である銀行業が前期比で大きく増加し、全体の収益拡大を牽引しています。また、リース業やその他の事業も順調に売上を伸ばしており、すべてのセグメントで前年を上回る実績を残しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
銀行業 1,167億円 1,458億円
リース業 164億円 176億円
その他 22億円 37億円
調整額 -0.1億円 -億円
連結(合計) 1,353億円 1,671億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動による収入と資産売却等の投資活動による収入で、借入金の返済等を進める「改善型」の傾向を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%でプライム市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は3.5%でプライム市場平均(非製造業平均24.2%)を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8,719億円 1,363億円
投資CF -5,278億円 2,833億円
財務CF -90億円 -94億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」のもと、地域のリーディングバンクとして、「地域・お客様のお役に立つ」ことを基本方針に掲げています。また、長期ビジョンとして「No.1の課題解決力で持続的に成長する広域地方銀行」を定め、地域や顧客の課題解決に貢献することで、共に持続的に成長する姿を目指しています。

(2) 企業文化


経営理念の実現に向け、役職員の行動判断の拠り所として「誠実」「情熱」「成長」「創造」「チームごうぎん」という5つの価値観(GOGIN Five Values)を定めています。誠実かつ真摯に行動し、地域への熱い想いを原動力として挑戦を繰り返し、多様性を尊重してグループの力を結集する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2026年度までを期間とする中期経営計画において、企業価値の最大化と社会的インパクトの創出を目指しています。資本コストを上回るROEを達成しPBR1倍を目指すとともに、最終年度に向けて以下の具体的な数値目標を上方修正して掲げています。

* 当期純利益:255億円
* 金融経済教育提供者数:累計4万人以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「課題解決による成長戦略」「DX戦略」「構造改革・人的資本戦略」「株主価値向上戦略」の4つを基本戦略に掲げています。法人・個人の顧客に対して質の高いコンサルティングを提供するほか、最新テクノロジーの導入による「デジタルな銀行」への変革を進めています。また、人材投資の拡大や構造改革を通じた戦略分野への再配置にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の強みと位置づけ、「高い課題解決力を有すプロフェッショナルな人材が集まり、育ち、最大限能力を発揮できる組織」の実現を掲げています。専門分野別の認定制度による体系的なスキル育成や、多様な人材の確保、柔軟な働き方の提供を進めています。また、従業員のエンゲージメント向上や心身の健康サポートを強化し、働きがいのある職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.9歳 17.1年 7,521,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.7%
男性育児休業取得率 103.3%
男女賃金差異(全労働者) 53.4%
男女賃金差異(正規雇用者) 67.7%
男女賃金差異(非正規雇用者) 83.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率・30歳未満(4.2%)、経験者採用比率(31.6%)、障がい者雇用比率(2.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 営業戦略の実行と競争環境


収益力強化のために多様な営業戦略を実施していますが、他業種との競争激化や顧客ニーズとの乖離、経済環境の悪化などにより戦略が奏功しない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は戦略の進捗を定期的に評価し、機動的に修正・変更する態勢を整えています。

(2) 特定地域の経済動向への依存


主に山陰両県を営業基盤としているため、当該地域の経済情勢や少子高齢化の進展が、預金・貸出金残高や与信費用などに直接的な影響を与えます。これに対応するため、山陽地区や兵庫・大阪、東京への広域展開を進め、地域的なリスク分散を図っています。

(3) 貸出先の業績悪化に伴う信用リスク


取引先の財務状況悪化等により、貸出金の元本や利息の回収が困難になるリスクがあります。特に貸出金残高の増強戦略下では信用リスクが増加する傾向にあるため、内部格付制度を用いた厳正な審査と、ポートフォリオの適切な管理によりリスクのコントロールに努めています。

(4) サイバー攻撃等のシステムリスク


デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴い、サイバー攻撃の脅威が高まっています。万が一、高度なサイバー攻撃によりシステム障害や情報漏えい、不正送金などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償を通じて経営成績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。