※本記事は、株式会社ジーテクトの有価証券報告書(第15期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジーテクトってどんな会社?
自動車用部品の製造・販売をグローバルに展開し、次世代自動車向けの開発も推進しています。
■(1) 会社概要
1952年に高尾金属工業、1953年に菊池プレス工業として設立され、両社とも本田技研工業と取引を開始しました。北米やアジアなど海外展開を進める中、2011年に両社が合併してジーテクトが誕生しました。2014年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、その後もメキシコや欧州に拠点を設立するなど事業を拡大しています。
従業員数は連結で8,061名、単体で1,220名です。大株主の筆頭は事業会社の本田技研工業で、第2位は創業者の高尾直宏氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 本田技研工業 | 20.77% |
| 高尾 直宏 | 8.02% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は高尾直宏氏が務めています。取締役6名中2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高尾 直宏 | 代表取締役社長社長執行役員 | 本田技研工業入社後、高尾金属工業にて営業・海外事業本部長等を歴任し、2011年専務取締役に就任。2016年より現職。 |
| 瀬古 浩 | 取締役専務執行役員技術本部長 | 高尾金属工業入社後、技術部門や欧州拠点の社長を歴任。2019年より技術本部長を務め、2023年より現職。 |
| 廣瀧 文彦 | 取締役専務執行役員営業本部長 | 高尾金属工業入社後、タイ拠点の社長等を経て、2019年より営業本部長。2021年に常務執行役員となり、2026年より現職。 |
| 柿崎 明 | 取締役常務執行役員北米地域本部長 | キクチ工機入社後、技術部門を歩み、2017年より技術本部副本部長。2023年に取締役常務執行役員に就任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、笠松啓二(元三井物産スチール代表取締役社長)、稲葉利江子(東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「アジア」「中国」「南米」の報告セグメントを展開しています。
■日本
同社グループの基盤として、自動車用車体プレス部品の製造販売や、金型・治工具等の生産設備開発を行っています。本田技研工業をはじめとする国内完成車メーカーが主要な顧客です。
収益は製品販売の対価として顧客から受け取ります。また、量産に必要な金型設備の製作・販売による収益も得ており、運営は同社が主体となって行っています。
■北米
米国やカナダ、メキシコにおいて、現地完成車メーカー向けに自動車用部品の製造販売を行っています。また、研究開発の中核機能も担っています。
収益は自動車用部品や金型等の販売代金として得ています。運営はJefferson Industries Corporationなどの複数の子会社が行っています。
■欧州
イギリス、スロバキア、ドイツに拠点を置き、現地の自動車メーカー等に向けて部品の製造販売や、営業・開発のリサーチ機能を提供しています。
収益は製品の販売対価として受け取っています。運営は主にG-TEKT Europe Manufacturing Ltd.等の子会社が行っています。
■アジア
タイ、インド、インドネシアに拠点を設け、成長市場である同地域の完成車メーカー向けに自動車用部品を製造販売しています。
現地での製品販売による収益を事業の柱としています。運営はG-TEKT (Thailand) Co., Ltd.などの子会社が主体となって行っています。
■中国
広州や武漢などに複数の生産拠点を有し、中国市場で事業を展開する自動車メーカー向けにプレス部品や精密部品を製造販売しています。
収益は製品販売や金型等の開発売上によって得ています。運営はAuto Parts Alliance (China) Ltd.などの子会社が担っています。
■南米
ブラジルの生産拠点を中心に、現地の自動車メーカーに向けて車体プレス部品の製造販売を行っています。
自動車用部品や金型等の販売を主な収益源としています。運営は子会社のG-KT do Brasil Ltda.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は3,000億円台で推移し、比較的安定した規模を維持しています。経常利益も100億円台後半を継続して確保しており、利益率は5%前後で安定しています。当期利益も底堅く推移し、各期を通じて黒字を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2365.0億円 | 3143.1億円 | 3446.0億円 | 3392.3億円 | 3334.1億円 |
| 経常利益 | 125.3億円 | 142.8億円 | 189.0億円 | 175.3億円 | 184.8億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 4.5% | 5.5% | 5.2% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 32.6億円 | 69.8億円 | 91.2億円 | 88.8億円 | 100.7億円 |
■(2) 損益計算書
当期は前期と比較して売上高がわずかに減少したものの、売上総利益は微増となりました。営業利益は減少していますが、売上総利益率および営業利益率に大きな変動はなく、安定した収益構造を保っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3392.3億円 | 3334.1億円 |
| 売上総利益 | 342.4億円 | 343.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.1% | 10.3% |
| 営業利益 | 163.8億円 | 156.2億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 4.7% |
販売費及び一般管理費(186.8億円)のうち、給料及び手当が46.9億円(構成比25.1%)、荷造運搬費が28.4億円(同15.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
金型・設備や試作等の開発売上が増加したものの、北米や中国・アジアでの減産などの影響により、多くのセグメントで減収となりました。一方、日本や北米、南米セグメントでは前年を上回る売上を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 608.8億円 | 592.5億円 |
| 北米 | 1253.1億円 | 1266.6億円 |
| 欧州 | 372.4億円 | 362.6億円 |
| アジア | 402.4億円 | 400.5億円 |
| 中国 | 575.0億円 | 529.3億円 |
| 南米 | 180.6億円 | 182.5億円 |
| 連結(合計) | 3392.3億円 | 3334.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 225.4億円 | 350.5億円 |
| 投資CF | -300.5億円 | -373.9億円 |
| 財務CF | 57.7億円 | 61.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は社是として「人間性尊重」「技術革新」「堅実経営」を掲げています。また、「情熱と革新を融合させ人とクルマと地球のより良い未来をかたちづくる」ことを経営ビジョンとして設定し、健全な財務体質を維持しつつ、自己資本に対する収益性を高め、社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は行動指針として「愛情と相互信頼をモットーに自己啓発に努めよう」「先進技術を追求し良質廉価な製品を提供しよう」「自主性をもち英知と機敏さで社会に貢献しよう」という価値観を重視しています。また、人財を最も重要な経営資源と位置付け、多様性から生まれる活力により新しい価値を創造する風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は持続的な成長と株主価値の向上を目指し、売上高成長率と売上高営業利益率の向上を目標に掲げています。資本効率の面では自己資本利益率(ROE)10%以上を目指しており、2030年度の経営目標として以下の数値を設定しています。
* 売上高:4,000億円
* 営業利益:280億円
* 営業利益率:7.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の持続的成長に向け、国内外の生産拠点における省人化・無人化などのスマートファクトリー化を推進し、収益力の強化と事業体質の変革を図ります。また、電動化や知能化に対応するため、「クルマのシステムサプライヤー(Tier0.5)」への進化を目指し、モジュール化提案や独自プラットフォームの開発に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財の多様性向上」を経営戦略の重要項目に掲げ、従業員が活き活きと働ける環境づくりと成長できる企業風土の醸成に努めています。「全ての従業員に成長の機会を提供し、自主的なスキルアップの支援」と「次の時代に向け新たな価値を生み出す人財の創出」を方針とし、多様な働き方の定着や健康経営の推進に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 16.5年 | 7,089,134円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 97.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(8.8%)、女性役職者比率(3.8%)、多様な働き方を支援する新規施策数(4)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境と需要の変動
同社グループは世界各国で自動車部品を供給しているため、各市場における景気後退や消費低迷、地政学リスクや物価上昇などが自動車販売の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、市場動向を注視し、設備投資や要員配置などの迅速な対応に努めています。
■(2) 気候変動と環境規制への対応
各国での環境規制の強化や脱炭素への要請が高まる中、温室効果ガス排出量の管理や削減が適切に行えない場合、社会的評価の低下や機会損失が生じるリスクがあります。同社はカーボンニュートラルを目指し、製品ライフサイクル全体での排出量低減や環境負荷の低い製造方法への転換を進めています。
■(3) 自動車のEV化に伴う影響
内燃機関車からEVへの転換が進むことで、車体構造の変化や部品点数の減少などが従来の需要や生産体制に大きな影響を与える可能性があります。また、地域ごとの転換スピードの違いもリスクとなります。同社はEV関連事業の確立を掲げ、研究開発や外部とのアライアンス強化に取り組んでいます。
■(4) 新素材および新工法の普及
自動車業界においてアルミなどの新素材やギガキャストなどの新工法が普及した場合、同社グループの製品と競合し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は新素材の量産技術確立を進めるとともに、他社との協業による大型一体化部品の製品化に向けた開発・提案活動を推進しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。