ジーテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジーテクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する自動車部品メーカーです。日本、北米、欧州、アジア、中国、南米において車体部品やトランスミッション部品等の製造販売を行っています。2024年3月期は、生産台数の増加や円安の影響などにより、売上高9.6%増、営業利益26.5%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ジーテクト の有価証券報告書(第13期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジーテクトってどんな会社?


自動車用車体部品やトランスミッション部品の製造販売を主力とし、グローバルに展開する独立系部品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1952年に設立された高尾金属工業と、1953年に設立された菊池プレス工業を前身としています。2011年4月に両社が合併し、現在のジーテクトが発足しました。2014年12月に東京証券取引所市場第一部へ市場変更し、2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2022年11月には米国子会社を完全子会社化するなど、海外事業の再編も進めています。

連結従業員数は8,330名、単体では1,166名です。筆頭株主は主要取引先でもある本田技研工業で30.04%を保有しており、その他の関係会社に該当します。第2位は代表取締役社長の高尾直宏氏、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。

氏名 持株比率
本田技研工業 30.04%
高尾 直宏 8.02%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は高尾直宏氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
高尾 直宏 代表取締役社長社長執行役員 1983年本田技研工業入社。1986年高尾金属工業入社。海外子会社社長、製造本部長、海外事業本部長等を経て2016年4月より現職。
瀬古 浩 取締役専務執行役員技術本部長 1984年高尾金属工業入社。欧州地域本部長、技術本部長等を歴任。2023年4月より現職。
廣瀧 文彦 取締役常務執行役員営業本部長 1987年高尾金属工業入社。タイ現地法人社長、営業本部副本部長等を経て2021年6月より現職。
柿崎 明 取締役常務執行役員北米地域本部長 1990年キクチ工機入社。技術本部技術企画部長、品質保証本部長等を歴任。2024年4月より現職。


社外取締役は、笠松啓二(元三井物産スチール代表取締役社長)、稲葉利江子(津田塾大学学芸学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「アジア」「中国」「南米」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


自動車用車体部品やトランスミッション部品の製造販売を行っています。国内の完成車メーカー向けに製品を供給するほか、海外子会社への技術支援や、金型・治工具等の生産設備の供給も行っています。

主な収益源は、完成車メーカーへの自動車部品の販売や、海外子会社からのロイヤリティ収入、金型設備の販売です。運営は主にジーテクトが担当し、研究開発やグローバルマザー工場としての機能も担っています。

(2) 北米


米国、カナダ、メキシコにおいて、自動車用車体部品等の製造販売を行っています。主要顧客である日系完成車メーカーの現地生産拠点向けに製品を供給しています。

収益は、現地の完成車メーカーへの部品販売により獲得しています。運営は、Jefferson Industries Corporation、Austin Tri-Hawk Automotive, Inc.、G-TEKT Mexico Corp. S.A. de C.V.などの現地子会社が行っています。

(3) 欧州


英国、ドイツ、スロバキアにおいて事業を展開し、自動車用車体部品等の製造販売を行っています。日系メーカーに加え、欧州系メーカーへの拡販にも取り組んでいます。

収益は現地顧客への製品販売から得ています。運営は、英国のG-TEKT Europe Manufacturing Ltd.やスロバキアのG-TEKT Slovakia, s.r.o.などの現地子会社が担っています。

(4) アジア


タイ、インド、インドネシアにおいて、自動車用車体部品等の製造販売を行っています。新興国市場の需要に対応した生産体制を構築しています。

収益源は現地完成車メーカーへの部品販売です。運営は、タイのG-TEKT (Thailand) Co., Ltd.、G-TEKT Eastern Co., Ltd.、インドのG-TEKT India Private Ltd.などの現地子会社が行っています。

(5) 中国


中国国内において、自動車用車体部品等の製造販売を行っています。広州や武漢などに拠点を持ち、日系メーカーの現地合弁会社等に製品を供給しています。

収益は現地顧客への製品販売により獲得しています。運営は、Auto Parts Alliance (China) Ltd.、Wuhan Auto Parts Alliance Co., Ltd.などの現地子会社が行っています。

(6) 南米


ブラジルにおいて、自動車用車体部品の製造販売を行っています。南米市場における日系完成車メーカー向けに製品を供給しています。

収益源は現地顧客への製品販売です。運営は、現地の連結子会社であるG-KT do Brasil Ltda.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、特に直近2期で大きく伸長しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに増加基調を維持しており、利益率も安定して推移しています。全体として事業規模の拡大と収益性の向上が両立している傾向が見られます。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 2,283億円 2,094億円 2,365億円 3,143億円 3,446億円
経常利益 87億円 87億円 125億円 143億円 189億円
利益率(%) 3.8% 4.1% 5.3% 4.5% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 55億円 24億円 33億円 70億円 91億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は改善傾向にあり、営業利益および営業利益率も上昇しています。コストコントロールと売上拡大により、収益性が高まっていることが確認できます。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 3,143億円 3,446億円
売上総利益 278億円 331億円
売上総利益率(%) 8.8% 9.6%
営業利益 128億円 162億円
営業利益率(%) 4.1% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が43億円(構成比25%)、荷造運搬費が25億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて、日本、北米、欧州、アジアは増収増益または黒字転換を達成しました。特に日本は大幅な増益となり、北米も黒字化しています。一方、中国は生産台数減少の影響を受け減収減益となり、南米は売上は横ばいですが減益となりました。全体としては海外、特に北米の規模が大きく貢献しています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
日本 446億円 523億円 20億円 46億円 8.7%
北米 1,087億円 1,191億円 -0億円 40億円 3.4%
欧州 267億円 361億円 29億円 27億円 7.6%
アジア 413億円 490億円 19億円 31億円 6.3%
中国 759億円 710億円 38億円 5億円 0.6%
南米 171億円 171億円 24億円 12億円 7.2%
調整額 -億円 -億円 -1億円 2億円 -%
連結(合計) 3,143億円 3,446億円 128億円 162億円 4.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営の基盤を支えています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の資金創出能力を見積もり、設備投資に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入等により、長期運転資金や設備投資資金を調達しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 373億円 375億円
投資CF -160億円 -309億円
財務CF -176億円 -164億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人間性尊重」「技術革新」「堅実経営」を社是として掲げています。また、経営ビジョンとして「情熱と革新を融合させ人とクルマと地球のより良い未来をかたちづくる」を定め、グローバル競争に打ち勝つ企業規模と展開力を実現し、車体部品とトランスミッション部品の専門メーカーとして世界トップを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「愛情と相互信頼をモットーに自己啓発に努めよう」「先進技術を追求し良質廉価な製品を提供しよう」「自主性をもち英知と機敏さで社会に貢献しよう」という行動指針を掲げています。これに基づき、従業員一人ひとりが自主的にスキルアップし、社会に貢献する風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上・利益の持続的な拡大と株主価値の向上を目指しています。財務健全性を維持しつつ、成長のための投資効率も重視しています。

* 2030年度売上高:4,000億円
* 2030年度営業利益:280億円
* 2030年度営業利益率:7.0%
* 自己資本比率:50%以上
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


自動車業界の大変革期において、同社は「車体領域のシステムサプライヤー(Tier 0.5)」への進化を目指しています。EVシフトに対応し、開発から量産までを一括受注する体制を構築するため、外部アライアンスの活用やEV関連技術の実証を進めています。また、生産性向上と信頼性確保のため、工場内物流や製造工程の無人化、自動検査の導入などによる「スマートファクトリーの実現」に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間性尊重」の社是に基づき、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。「全ての従業員に成長の機会を提供し、自主的なスキルアップの支援」と「次の時代に向け新たな価値を生み出す人財の創出」を方針とし、従業員の成長支援、多様な人材の活躍推進、経営幹部候補の育成、専門人材の採用に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 40.5歳 16.5年 6,465,356円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 35.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.2%
男女賃金差異(正規雇用) 78.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 90.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(3.3%)、女性役職者(「主任」・「班長」以上)比率(4.9%)、多様な働き方を支援する新規施策数(2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化


同社グループは世界各国で事業を展開しており、各市場における景気後退や消費低迷、税制変更などが自動車販売の減少につながり、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、各国の市場動向を注視し、設備投資判断や適正な要員配置、経費管理などで迅速かつ的確に対応することに努めています。

(2) 気候変動・環境規制への対応


環境規制の強化や脱炭素への要請に対し適切に対応できない場合、社会的評価の低下等により業績に影響を与える可能性があります。同社は2050年度カーボンニュートラルを目指し、生産時の温室効果ガス排出量削減や、リサイクル性に優れたアルミ製品の開発等に取り組んでいます。

(3) 自動車のEV化


EVへの転換が進む中、同社が研究開発や工場改革において適切に対応できない場合、受注を失い業績に影響を与える可能性があります。これに対し、EV関連事業での売上高拡大を目指し、スマートファクトリーの実現や車体領域のシステムサプライヤーへの進化を推進しています。

(4) 特定の販売先への依存


本田技研工業およびそのグループ会社への売上が連結売上高の5割強を占めており、同社の動向が業績に影響を与える可能性があります。長期的な取引関係を通じて情報を共有し戦略に活用する一方、他の取引先との取引拡大による依存リスクの低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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