フォーカスシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォーカスシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォーカスシステムズは東証プライム市場に上場し、官公庁向けや法人向けのシステムインテグレーションや情報セキュリティ製品の提供を主力事業としています。直近の業績は、人的資本への投資を進める中で一次請け比率の向上や価格転嫁が奏功し、売上高・各段階利益ともに過去最高を更新する増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社フォーカスシステムズの有価証券報告書(第50期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォーカスシステムズってどんな会社?


システム開発からインフラ構築、自社製品の提供まで、幅広いITソリューションを展開する独立系システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


1977年にソフトウェア開発を目的として設立されました。1988年に日本電信電話(現NTTデータ)と取引を開始して官公庁向けシステム開発に参入し、1997年からは日本アイ・ビー・エムとの取引により運用・保守分野へも進出しました。1996年の店頭登録を経て、現在は東証プライム市場に上場しています。近年は第三者割当増資等を通じて関連会社を増やし、継続的に事業基盤の拡大を図っています。

従業員数は単体で1,434名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はAI関連のシステム開発で業務資本提携を結んでいるFRONTEO、第3位は同社の社員持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.03%
FRONTEO 6.14%
フォーカスシステムズ社員持株会 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は森啓一氏が務めています。取締役8名のうち、社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
森啓一 代表取締役社長 有限責任監査法人トーマツや税務会計事務所を経て、1998年同社入社。経理部長、経営管理部長、管理本部長等を歴任し、2011年より現職。
三浦宏介 代表取締役副社長 1981年同社入社。開発部長、第二事業本部第二統括部長、ITサービス事業部長等を歴任。情報通信事業本部長を経て、2014年より現職。
室井誠 専務取締役兼公共社会ソリューション事業本部、デジタルビジネス事業本部管掌 1985年同社入社。ITサービス事業本部長、公共金融事業本部長等を歴任し、デジタルビジネス事業本部などを担当。2026年より現職。
後藤亮 常務取締役兼執行役員コーポレートマネジメント本部及びHR・DX推進本部管掌、内部監査室担当 1986年同社入社。第二公共事業部長、公共金融事業本部長等を歴任。2018年に常務取締役に就任し、2025年より現職。
鈴木隆博 取締役兼執行役員テックイノベーション事業本部及びメディカルAI推進室管掌、西日本事業部担当兼経営企画室長 1991年同社入社。ITサービス第二事業本部長、ITイノベーション事業本部長等を歴任。経営企画室長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、瀬尾勘太(瀬尾勘太税理士事務所所長)、荒谷真由美(弁護士法人一番町綜合法律事務所弁護士)、秋山エリカ(東京女子体育大学常任理事兼評議員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共関連事業」「エンタープライズ事業」「広域ソリューション事業」「イノベーション事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

公共関連事業


官公庁や地方自治体を主要な最終ユーザーとし、マイナンバー、財務、航空管制、社会保険などの社会インフラシステムの提案・設計・製造から運用・保守まで、総合的な技術支援を提供しています。

主な収益源はシステム開発や運用・保守に関する受託費用です。事業の運営は同社のほか、エー・アイ・エムスタッフやGAP、TryTreeなどの関連会社が担い、長期的なライフサイクルの下で安定した基盤を築いています。

エンタープライズ事業


主に法人企業を対象として、基幹業務システムやWeb・クラウドアプリケーションの開発、ネットワークインフラの設計・構築、RPAソリューション、ICTコンサルティングを提供しています。

法人企業からのシステム開発や運用・保守費用が主な収益源です。「intra-mart」や「SAP」などの市場シェアの高い製品を取り扱う知見を強みとしており、運営は同社およびメティスが行っています。

広域ソリューション事業


東京・名古屋・大阪地域において、通信制御システムや組み込み型ソフトウェア、法人・行政機関向けシステム開発、AIソリューション、およびそれに付随する運用・保守などを展開しています。

多様な事業分野におけるシステム開発の受託費用やコンサルティング料から収益を得ています。運営は同社をはじめ、エー・アイ・エムスタッフやOtoCheckが担当しています。

イノベーション事業


法人企業向けにインフラ設計・構築、メインフレーム業務、システム開発、運用・保守を提供するほか、IoTや情報セキュリティ分野において自社製品の製造およびソリューション提供を行っています。

システム基盤構築や自社製品を活用したソリューションの提供により、顧客から開発費用やサービス料を受け取ります。運営は同社を中心に、イノス、エー・アイ・エムスタッフが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は右肩上がりで成長を続け、直近では357億円に達しています。利益面でも着実な増益基調を維持しており、特に直近の経常利益は前年比で大きく伸びて31億円となり、利益率も8.6%まで向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 263億円 291億円 315億円 326億円 357億円
経常利益 16億円 19億円 20億円 22億円 31億円
利益率(%) 6.1% 6.6% 6.3% 6.6% 8.6%
当期利益 11億円 14億円 14億円 16億円 23億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に加えて売上総利益率が向上しており、収益性が高まっています。その結果、営業利益も大幅に増加し、本業での稼ぐ力が一段と強まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 326億円 357億円
売上総利益 42億円 52億円
売上総利益率(%) 12.9% 14.7%
営業利益 22億円 30億円
営業利益率(%) 6.7% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5億円(構成比20%)、役員報酬が2億円(同11%)、管理費が2億円(同10%)を占めています。一方、売上原価においては、外注費が182億円(構成比60%)、労務費が100億円(同33%)を占めています。

(3) セグメント収益


公共関連事業やエンタープライズ事業が売上の大部分を占めており、特にエンタープライズ事業は前期から大きく売上を伸ばしています。広域ソリューションやイノベーション事業も堅調に推移し、全セグメントでの増収が全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
公共関連事業 100億円 109億円
エンタープライズ事業 90億円 109億円
広域ソリューション事業 56億円 58億円
イノベーション事業 80億円 81億円
調整額 - -
連結(合計) 326億円 357億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」の傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 18億円 26億円
投資CF -8億円 -1億円
財務CF -10億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社員の一体感を高め、未来のために貢献できる会社を目指すとの思いから、「社員すべてが心と力を合わせ、企業の発展と成長を通じて、未来のより良い環境作りに貢献する。」を経営理念として掲げています。個人・企業・社会に対する3つの責任を果たし、ステークホルダーから信頼され、社会から必要とされる存在となることを使命としています。

(2) 企業文化


多様な価値観を受容する組織文化の醸成を重視しており、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。社員一人ひとりがITの良き使い手として能力を最大限に発揮できるよう、やりがいのある報酬の実現や健康経営を通じたエンゲージメント向上に取り組み、社員相互が信頼し合い、安心かつ働きがいのある環境づくりを実践しています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期に向けた「中期経営計画 27-29」を策定し、「デジタル革新で顧客の変革を支える戦略パートナー」というビジョンを掲げています。企業価値および株主価値の向上を図るため、客観的な指標として以下の目標達成を目指しています。

・売上高450億円
・営業利益額45億円
・営業利益率10.0%
・ROE(自己資本利益率)16.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


労働集約型からAIと実践知を融合した「知能集約型」へのシフトを重点課題とし、生産性と品質の向上を図ります。また、専門人材の確保・育成を最重要課題と位置付けるとともに、M&Aや成長分野への投資により収益基盤を拡充します。資本コストを意識した経営のもと、機動的な自己株式取得など株主還元も強化します。

・成長分野へ3年間で85億円の投資
・配当性向40%以上を維持

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を企業価値を生む源泉と捉え、最新技術やコンサルティングスキルを持つ専門人材の確保・育成を経営戦略上の最重要課題としています。従業員エンゲージメントの向上と専門人材開発を柱に掲げ、キャリアに応じた能力開発支援やAI等先進技術の習得推進、多様で柔軟な働き方を支える環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.4歳 10.8年 6,272,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 79.2%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 76.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 38.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保・育成と労働環境の維持


IT人材の獲得競争の激化や賃金水準の上昇により、採用計画の未達や人材流出が生じた場合、収益を圧迫する可能性があります。同社は競合に劣後しない報酬体系の構築や健康経営、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を通じて、従業員の定着と柔軟な組織文化の醸成に努めています。

(2) システム開発における不採算化


受託型ビジネスにおいて、仕様追加や想定以上の開発難易度、外注先の作業遅延などが発生した場合、工数増大によりプロジェクトが不採算化するリスクがあります。同社は大規模案件の受注前審査を強化し、進捗や原価の継続的なモニタリングを行うことで、不採算化の早期発見と是正を図っています。

(3) 特定顧客への依存と関係性の維持


主要顧客上位3社向け売上高が全体の約4割を占めており、顧客企業の経営戦略の転換やIT投資の削減により取引が縮小した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は高付加価値な提案により戦略的パートナーシップを深めつつ、新規顧客の開拓によるポートフォリオの分散化に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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