フォーカスシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォーカスシステムズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォーカスシステムズは、東京証券取引所(市場第一部)に上場するシステムインテグレーターです。公共、エンタープライズ、広域ソリューション、イノベーションの4事業を展開し、インフラ構築から運用・保守まで手掛けます。直近の業績は、売上高・各利益ともに過去最高を更新し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社フォーカスシステムズの有価証券報告書(第45期、自 2020年4月1日 至 2021年3月31日、2021年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

フォーカスシステムズ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. フォーカスシステムズってどんな会社?


システムインテグレーション、ITサービス、セキュリティ製品販売を主軸に、公共・民間・通信等の幅広い分野で事業を展開する企業です。

(1) 会社概要

1977年にソフトウェア開発を目的として設立されました。1988年にNTTデータの前身である日本電信電話と取引を開始し、官公庁向けシステム開発に着手しました。1997年には日本アイ・ビー・エムとの取引を開始し、運用・保守分野へ進出しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2016年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。

同社の従業員数は単体で1,237名です。筆頭株主は、AI技術を活用したソリューションを提供する事業会社で協業関係にあるFRONTEO、第2位はフォーカスシステムズ社員持株会、第3位は生命保険会社の第一生命保険です。

氏名 持株比率
FRONTEO 5.97%
フォーカスシステムズ社員持株会 3.89%
第一生命保険 3.31%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は森啓一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森 啓一 代表取締役社長 監査法人トーマツ、吉田税務会計事務所を経て同社入社。経理部長、管理本部長兼経営企画室長、常務取締役などを歴任し、2011年4月より現職。
三浦 宏介 代表取締役副社長 1981年同社入社。ITサービス事業部長、常務取締役情報通信事業本部長などを歴任し、2014年4月より現職。
室井 誠 専務取締役公共金融事業本部及びデジタルビジネス事業本部担当 1985年同社入社。ITサービス事業本部長、常務取締役公共金融事業本部及びITサービス事業本部担当などを経て、2019年4月より現職。
後藤 亮 常務取締役管理本部担当 1986年同社入社。第二公共事業部長、公共金融事業本部長、取締役管理本部担当などを経て、2018年6月より現職。
鈴木 隆博 取締役ITイノベーション事業本部及びITソリューション事業本部担当 1991年同社入社。ITサービス第二事業本部長、ITイノベーション事業本部長などを経て、2018年4月より現職。


社外取締役は、山口寿彦(元陸上自衛隊・富士警備保障)、瀬尾勘太(瀬尾勘太税理士事務所所長)、荒谷真由美(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共関連事業」「エンタープライズ事業」「広域ソリューション事業」「イノベーション事業」および「その他」事業を展開しています。

公共関連事業

官公庁や地方自治体を最終ユーザーとする社会インフラ基盤システムの提案、設計、製造、運用、保守を行います。具体的には、マイナンバー、財務、貿易、航空管制、年金システムなどを手掛けています。

主な収益源は、システム開発や保守運用の対価として、主要取引先であるNTTデータなどの大手SIerから受け取る料金です。運営はフォーカスシステムズが行っています。

エンタープライズ事業

法人企業向けに基幹業務システムやWeb・クラウドアプリケーションの開発、インフラ構築、RPAソリューションなどを提供します。intra-martやSAPを用いた開発に強みを持ちます。

主な収益源は、システムのコンサルティング、開発、保守運用の対価として、法人顧客から受け取る料金です。運営はフォーカスシステムズが行っています。

広域ソリューション事業

東京・名古屋・大阪地域において、通信制御、組込みソフトウェア、AIソリューション、業務システム開発などを提供します。通信制御やデジタルカメラ等の組込み開発に実績があります。

主な収益源は、システム開発や技術支援の対価として、通信事業者やメーカー等の顧客から受け取る料金です。運営はフォーカスシステムズが行っています。

イノベーション事業

法人企業向けにインフラ基盤の設計・構築、メインフレーム構築、セキュリティ製品(暗号技術、電子透かし等)やIoTソリューションの提供を行います。

主な収益源は、インフラ技術支援やシステム保守、自社製品・ソリューションの提供対価として、主要取引先である日本アイ・ビー・エムや法人顧客から受け取る料金です。運営はフォーカスシステムズおよび関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間において、売上高は毎期着実に増加しており、成長基調を維持しています。利益面でも、経常利益と当期純利益は増加傾向にあり、特に第43期以降は利益率も安定して高い水準を保っています。第45期には売上高、各利益ともに過去最高を更新しました。

項目 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期
売上高 178億円 193億円 215億円 227億円 235億円
経常利益 7.3億円 10.2億円 13.8億円 14.7億円 14.7億円
利益率 4.1% 5.3% 6.4% 6.5% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.5億円 7.2億円 8.7億円 9.3億円 10.3億円

(2) 損益計算書

直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も微増しています。営業利益率は同水準を維持しており、安定した収益構造が見て取れます。

項目 2020年3月期 2021年3月期
売上高 227億円 235億円
売上総利益 31億円 31億円
売上総利益率(%) 13.7% 13.3%
営業利益 14億円 15億円
営業利益率(%) 6.3% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3億円(構成比21%)、役員報酬が2億円(同14%)を占めています。売上原価においては、外注費が117億円(構成比57%)、労務費が74億円(同36%)となっており、外部リソースの活用比率が高いことが特徴です。

(3) セグメント収益

公共関連事業は各種プロジェクトが順調で増収増益、広域ソリューション事業も5G関連等が好調で増収増益となりました。一方、イノベーション事業はデジタルフォレンジック製品の収益減により減収減益となっています。

区分 売上(2020年3月期) 売上(2021年3月期) 利益(2020年3月期) 利益(2021年3月期) 利益率
公共関連事業 73億円 76億円 12億円 13億円 17.4%
エンタープライズ事業 50億円 56億円 6.9億円 6.8億円 12.2%
広域ソリューション事業 42億円 45億円 4.9億円 5.6億円 12.5%
イノベーション事業 62億円 58億円 7.0億円 5.6億円 9.5%
調整額 - - -17億円 -17億円 -
連結(合計) 227億円 235億円 14億円 15億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フォーカスシステムズは、事業活動を通じて安定的に資金を生み出し、将来の成長に向けた投資と株主への還元をバランス良く実行しています。

営業活動では、本業で得た利益に加え、売上債権の減少や未払金の増加などがプラスに寄与し、堅調な資金創出を実現しました。投資活動では、将来の事業基盤強化のために定期預金の積み増し等を行いました。財務活動では、借入による資金調達と返済、配当金の支払いなどを行いました。

項目 2020年3月期 2021年3月期
営業CF 7.5億円 9.4億円
投資CF -5.9億円 -6.2億円
財務CF -8.7億円 -4.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「社員すべてが心と力を合わせ、企業の発展と成長を通じて、未来のより良い環境作りに貢献する。」を経営理念としています。また、人間性と技術力を磨く「個人責任」、社員相互が信頼し合う「企業責任」、社会から必要とされる「社会責任」の3つの責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化

同社はコーポレートスローガンとして「テクノロジーに、ハートを込めて。」を掲げています。IT産業の有力企業グループとして、未来のより良い社会作りを実現することで、広く社会に貢献し続けることを目指しています。また、社員の一体感を高め、組織全体でパワーを発揮できる文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、企業価値と株主価値の向上のため、事業規模拡大の成果である「売上高」と、収益性向上を示す「営業利益」「経常利益」を重要指標としています。また、財務体質強化の観点から「実質有利子負債の削減」を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策

DXの進展をビジネスチャンスと捉え、事業本部間の連携により新たなソリューション創出と新規事業領域の開拓を進めます。公共分野ではデジタル庁創設に伴う需要の取り込み、エンタープライズ分野ではSAP関連ビジネスの拡大、広域ソリューションでは5G/IoT関連、イノベーション分野では自社製品の強化に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

高スキル人材の獲得競争が激化する中、人材を重要な経営資源と位置づけ、採用強化と定着率向上に取り組みます。企業認知度を高めるとともに、高付加価値を生むための教育・研修投資や働き方改革を推進し、従業員にとって魅力ある企業文化の醸成とエンゲージメント強化に努める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2021年3月期 36.0歳 10.1年 5,489,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の事業分野への依存

公共関連システム分野が売上高の約3割を占めており、安定収益基盤となっています。しかし、政権交代や政策転換、国家的緊急事態等により、官公庁や地方自治体の予算削減や組み替えが発生した場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定取引先への依存

主要顧客上位3社向けの売上高が全体の4割強を占めています。長期的に継続取引を維持していますが、顧客の事業方針変更や受注状況の変化があった場合、業績が変動する可能性があります。同社は専門知識と実績を強みとし、顧客満足度の維持に努めています。

(3) 協力会社への依存

売上原価に占める外注費の割合が約6割となっており、業務の一部を協力会社に委託しています。十分な開発人員の確保ができない場合や品質管理に問題が生じた場合、業績に影響する可能性があります。協力会社との関係強化や自社社員のスキル向上に取り組んでいます。

(4) 人材の確保

IT業界における人材獲得競争により、新卒・キャリア採用が計画通り進まない場合や、人材の離職、採用・育成コストの増大が起きた場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。同社は採用強化や働きやすい環境整備により人材の定着に注力しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。