東洋テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋テックは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、警備事業、ビル管理事業、不動産事業を展開する企業です。主力の警備事業では機械警備や常駐警備を提供しています。直近の業績では、大阪・関西万博関連の大型受注や既存業務の適正価格への改定交渉が浸透したことにより、大幅な増収増益を達成しています。


**記事タイトル:東洋テック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、東洋テックの有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋テックってどんな会社?


同社グループは、警備事業を中心にビル管理や不動産事業を展開する総合生活安全企業です。

(1) 会社概要


1966年に機械警備、常駐警備を目的とする東洋警備保障として設立され、1967年に機械警備業務を開始しました。1990年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2003年にビル管理業務を会社分割しました。2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行し、M&Aや組織再編を経て事業を拡大しています。

現在の同社グループは、連結従業員数2,096名、単体従業員数1,154名の体制で事業を展開しています。筆頭株主はセコムで、第2位は関西電力、第3位はディー・ケイとなっています。セコムとは警備業務の委託等において関係を持ち、関西電力とはホームセキュリティの共同会社設立や資本業務提携の歴史があります。

氏名 持株比率
セコム 27.22%
関西電力 14.34%
ディー・ケイ 4.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は池田博之氏、代表取締役社長は竹野讓氏が務めています。取締役9名のうち社外取締役は5名で、社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
池田博之 代表取締役会長 1983年大和銀行入行。りそな銀行代表取締役副社長等を経て2017年同社社外取締役。2020年代表取締役社長に就任し2026年より現職。
竹野讓 代表取締役社長 1986年大和銀行入行。関西みらいフィナンシャルグループ執行役員等を経て2024年同社専務執行役員。2026年より現職。
岩城勝広 取締役常務執行役員DX本部長兼情報システム部長 1982年同社入社。業務本部技術部長や管理本部情報システム部長等を経て2021年取締役に就任。2026年より現職。
村上義夫 取締役常務執行役員営業本部長兼EXPO・MICE・IR推進室長 1982年三井銀行入行。東洋テック姫路代表取締役社長等を経て2024年同社取締役に就任。同年より現職。


社外取締役は、稲田浩二氏(元関西電力取締役代表執行役副社長)、中川正浩氏(元警察庁東北管区警察局長)、福地敏行氏(元日本アイ・ビー・エム取締役副社長)、錦野真二氏(セコム執行役員人事本部長)、堂野敦司氏(セコム執行役員・元日本銀行名古屋支店長)です。

2. 事業内容


同社グループは、警備事業、ビル管理事業、不動産事業を展開しています。

警備事業


機械警備、常駐警備、輸送警備等の警備業務や、ATM等の総合管理、警報設備に係る工事・機器販売を提供しています。主に金融機関などの顧客に対し、事件・事故の監視や安全管理などのセキュリティサービスを展開しています。

契約物件に対する日常的なサービス提供期間にわたり、契約によって定められた時期に警備料等の対価を受領する収益モデルです。事業の運営は、同社ならびに東洋テック姫路、東洋テックセキュリティサービス、五大テック等の連結子会社が行っています。

ビル管理事業


ビル、マンション、店舗などのビルメンテナンスや清掃業務に加え、大規模改修や設備の更新工事などのビル総合管理業務を提供しています。設備点検サービスなどの法定点検も実施し、施設の安全と快適な環境維持を支援しています。

清掃や点検などの日常的または反復的なサービス提供期間にわたり、顧客から定められた時期に対価を受領して収益を上げています。事業の運営は、同社のほか東洋テックビルサービスおよび東洋テック姫路が主に行っています。

不動産事業


同社グループが保有する不動産物件の賃貸業務や、不動産の現物や信託受益権の売買に関する仲介業務、不動産投資業務を提供しています。

賃貸業務からの賃貸収入や、売買の媒介契約成立に基づく引き渡し時点での手数料から収益を得ています。事業の運営は、不動産賃貸業務は専ら同社が担い、不動産仲介業務や投資業務はテック不動産が主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では大型イベントの警備受託等により大幅な増収となっています。経常利益も売上拡大や価格改定の効果により増加基調で推移しており、直近期間では収益性が大きく改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 275億円 301億円 312億円 349億円 431億円
経常利益 9億円 10億円 11億円 11億円 30億円
利益率(%) 3.3% 3.2% 3.4% 3.0% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 7億円 6億円 7億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。また、販売費及び一般管理費等のコントロールにより、営業利益および営業利益率はともに大幅に向上し、収益体質が強化されていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 349億円 431億円
売上総利益 69億円 90億円
売上総利益率(%) 19.8% 20.8%
営業利益 10億円 29億円
営業利益率(%) 3.0% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与が24億円(構成比40.3%)、法定福利費が5億円(同7.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の警備事業は、大型イベント関連の売上寄与や継続的な価格改定により大幅な増収増益となりました。ビル管理事業も大規模修繕等の受注増により好調に推移しています。一方、不動産事業は販売・仲介部門の低調により減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
警備事業 236億円 323億円 4億円 21億円 6.4%
ビル管理事業 95億円 103億円 3億円 7億円 6.7%
不動産事業 18億円 5億円 3億円 2億円 36.3%
調整額 - - -0.1億円 -0.3億円 -
連結(合計) 349億円 431億円 10億円 29億円 6.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金で投資と借入金の返済を賄う、健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 29億円 50億円
投資CF -45億円 -12億円
財務CF 24億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.2%でいずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「東洋テックグループは、安心で快適な社会の実現に貢献します。」という経営理念のもと、「人・街・未来をまもる」をスローガンに掲げています。安全・安心で持続可能な社会の発展に寄与することを基本方針とし、すべてのステークホルダーから信頼され続ける企業グループとして、企業価値および株主価値の持続的な最大化を目指しています。

(2) 企業文化


多様化する社会ニーズに対応した新たな価値の創出や、経営効率の向上に注力する文化を持っています。従業員の働きやすさと働きがいを追求し、「チャレンジを奨励する企業風土」の醸成に努めています。また、サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスの充実、コンプライアンスの徹底を通じた健全で透明性の高い事業運営を重視しています。

(3) 経営計画・目標


第13次中期経営計画(2025年4月から2028年3月までの3カ年)において、「筋肉質な企業体質への転換」をスローガンに掲げ、「量」の拡大から「質」の向上への取り組みを推進しています。既存業務の採算改善に向けた価格適正化と新たな成長領域への進出を加速させるとともに、人的資本経営の高度化を通じた持続的な成長を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業であるセキュリティサービスの高度化を推進するとともに、既存業務の収益構造の変革に取り組みます。大型イベントで培った遂行力や総合力を成長基盤とし、AIやDXを活用したサービス拡充など新たな成長領域への進出を進めます。また、ウェル・ビーイング経営の実践やサステナビリティに関する課題解決に取り組み、企業の成長と社会的責任の両立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


成長戦略の実現に向け、高付加価値なサービスを提供できる専門性の高い人財の確保・維持を重視しています。多様な採用チャネルの構築やリファラル採用等の推進により人材を確保するとともに、スキルマトリックスを用いた計画的な育成を実施します。また、ウェル・ビーイングの推進により、従業員のエンゲージメント向上と生産性の最大化を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 12.4年 5,423,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.6%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 71.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(66.74%)、エンゲージメントサーベイのスコア(6.85点)、65才以上高齢者雇用推奨(35%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制に関するリスク


警備事業等を実施する上で、警備業法や建設業法、貨物自動車運送事業法等の各種規制を受けています。これら関係法令に違反した場合、処罰の対象となり営業停止等の行政処分を受ける可能性があり、同社の事業運営や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 特定の売上先への依存リスク


同社グループは金融機関に対する売上割合が高いため、キャッシュレスの進展や金融機関の合併・統合等の再編により、店舗機械警備や貴重品輸送警備、ATM管理業務などが解約・縮小された場合、業績に大きな悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 特定の仕入先への依存リスク


機械警備システムの運用に係る監視センター装置の開発や機材供給を富士通に依存しています。自然災害等によりセンター装置の故障や機材供給に障害が生じた場合、監視センターの運用に支障をきたし、事業活動に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) サイバー攻撃リスク


監視系システムをはじめとする各種ITシステムを活用して事業を展開しており、サイバー攻撃によるシステムダウンや情報漏洩等のリスクが存在します。未知のマルウェアやゼロデイ攻撃によりシステム障害が発生した場合、事業継続や社会的信用に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。