東洋テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋テック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(市場第二部)に上場する企業で、機械警備や現金輸送などの警備事業を主力とし、ビル管理事業や不動産事業も展開しています。直近の業績は、売上高260億円(前期比4.7%増)、経常利益8億円(同32.3%減)となり、売上高は伸長したものの、利益面では減益となりました。


#記事タイトル:東洋テック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東洋テック株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2020年4月1日 至 2021年3月31日、2021年6月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋テックってどんな会社?


関西を地盤とする総合警備会社です。金融機関向けの警備やATM管理に強みを持ち、ビルメンテナンスや不動産事業も展開しています。

(1) 会社概要


同社は1966年に機械警備や常駐警備を目的として設立され、1968年には金融機関向けの現金輸送警備を開始しました。1982年にATM管理業務を開始して業容を拡大し、1990年に大阪証券取引所市場第二部(現・東京証券取引所スタンダード市場の前身)に上場しました。2002年には関西電力等と共同でホームセキュリティサービスを開始するなど、地域密着型の展開を進めています。

同社グループは、連結従業員数1,639名、単体1,070名の体制で事業を行っています。筆頭株主は警備業界大手のセコムで、同社に警備業務の一部を委託するなど協力関係にあります。第2位株主は関西電力で、資本業務提携を締結しています。第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
セコム 27.50%
関西電力 14.50%
株式会社日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・株式会社関西みらい銀行退職給付信託口) 4.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性0名の計16名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は池田博之氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
田中卓 代表取締役会長 1975年大和銀行(現りそな銀行)入行。りそな信託銀行社長、りそなホールディングス執行役などを経て2009年同社入社。2011年社長就任、2020年より現職。
池田博之 代表取締役社長 1983年大和銀行(現りそな銀行)入行。近畿大阪銀行社長、りそな銀行副社長などを歴任。2017年同社取締役就任、2020年より現職。
佐藤洋誓 取締役常務執行役員営業本部長 1983年大和銀行(現りそな銀行)入行。りそなキャピタル社長などを経て2017年同社常務執行役員就任。2021年4月より現職。
岩城勝広 取締役常務執行役員業務本部長兼DX本部長兼DX本部情報システム部長 1982年同社入社。業務本部技術部長、管理本部情報システム部長などを経て2021年4月より現職。
村上正年 取締役 1984年同社入社。営業本部長、ホームセキュリティ営業部長などを歴任。2021年4月より共同総合サービス社長兼テックビルサービス社長。


社外取締役は、諸島伸治(ランドコンピュータ相談役)、稲田浩二(関西電力代表執行役副社長)、中川正浩(元警察庁東北管区警察局長)、栗原達司(セコム取締役)、松田浩司(セコム兵庫本部本部長)、浜田誠一郎(関西電力経営企画室室長)、福岡規行(セコム執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「警備事業」「ビル管理事業」「不動産事業」事業を展開しています。

(1) 警備事業


機械警備、現金・貴重品の輸送警備、施設への常駐警備、金融機関のCD/ATM総合管理、警報機器の工事・販売などを提供しています。主要な顧客は金融機関やオフィスビル、一般家庭などです。

収益は、警備サービスの提供や機器販売による対価として顧客から受け取ります。運営は主に同社が担うほか、兵庫県西南部は東洋テック姫路、一部の常駐・輸送警備やATM管理は東警サービスが行っています。また、一部業務をセコムへ委託する場合があります。

(2) ビル管理事業


ビルの設備管理、清掃、環境衛生管理などの総合ビルメンテナンス業務を提供しています。オフィスビルや商業施設などのオーナーや管理会社が主な顧客となります。

収益は、ビル管理業務や清掃業務の委託料として顧客から受け取ります。運営は主にテックビルサービスが担い、清掃業務は大阪フジサービス、地域ごとの展開として共同総合サービス、森田ビル管理、新栄ビルサービス、明成がそれぞれのエリアや得意分野で事業を行っています。

(3) 不動産事業


不動産の賃貸、売買仲介、プロパティマネジメント(不動産管理)業務を行っています。自社保有物件の賃貸や、顧客の不動産活用をサポートしています。

収益は、賃貸料収入や仲介手数料、管理手数料として顧客から受け取ります。不動産賃貸業務は専ら同社が担い、不動産仲介やプロパティマネジメント業務は主にテック不動産が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上高は直近5期間で継続的に増加しており、順調な事業拡大がうかがえます。一方、利益面では、経常利益や当期利益が増減を繰り返しており、直近の期では減益となりました。売上の伸長に伴い利益も確保していますが、利益率は3%台から5%台の間で推移しており、安定的な収益性の維持と向上が課題といえます。

項目 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期
売上高 213億円 222億円 232億円 248億円 260億円
経常利益 8億円 11億円 12億円 13億円 8億円
利益率(%) 3.7% 4.8% 5.2% 5.0% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 7億円 9億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加していますが、売上総利益および営業利益は減少しています。売上総利益率は約2ポイント低下し、営業利益率は約1.6ポイント低下しました。これは、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったことや、販売費及び一般管理費が増加したことなどが要因と考えられます。

項目 2020年3月期 2021年3月期
売上高 248億円 260億円
売上総利益 56億円 53億円
売上総利益率(%) 22.5% 20.5%
営業利益 11億円 7億円
営業利益率(%) 4.3% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与が22億円(構成比46.5%)、法定福利費が4億円(同8.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


警備事業は売上が横ばいで利益率も低下しましたが、依然として主力事業です。ビル管理事業はM&A効果等により大幅な増収増益を達成し、全体の成長を牽引しました。不動産事業は前期の大口仲介案件の剥落により減収減益となりましたが、高い利益率を維持しています。全体としてはビル管理事業の伸長が目立ちます。

区分 売上(2020年3月期) 売上(2021年3月期) 利益(2020年3月期) 利益(2021年3月期) 利益率
警備事業 172億円 172億円 4億円 2億円 1.3%
ビル管理事業 69億円 83億円 1億円 2億円 2.8%
不動産事業 7億円 5億円 5億円 2億円 36.0%
調整額 -9億円 -9億円 0.4億円 0.6億円 -
連結(合計) 248億円 260億円 11億円 7億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で得た資金と財務活動で調達した資金を合わせて、投資活動に充てている「積極型」です。

項目 2020年3月期 2021年3月期
営業CF 20億円 13億円
投資CF -14億円 -14億円
財務CF -5億円 6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「東洋テックグループは、安心で快適な社会の実現に貢献します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、顧客のニーズに最適なサービスを提供し、企業価値の向上に取り組みながら、社会に貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「TEC WAY」と総称される行動宣言と行動指針を定めています。顧客に対しては高品質なサービスの提供と誠実な対応を、株主に対しては収益向上と透明性の高い経営を、従業員に対しては多様性の尊重と働きやすい職場づくりを、社会に対しては法令遵守と地域貢献を約束し、これらを日々の業務における具体的な行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は「変革への持続的挑戦」をスローガンとする第11次中期経営計画を推進しています。2025年の大阪・関西万博などを見据え、関西における業界のリーディングカンパニーを目指しています。なお、新型コロナウイルスの影響を受け、最終年度の数値目標を修正しています。

* 2022年3月期 連結売上高:270億円(修正計画)
* 2022年3月期 連結経常利益:9億円(修正計画)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、環境変化や技術革新への対応として、人材採用の強化や女性・外国人材の活用、AIやIoTを活用した新サービスの開発、金融機関のキャッシュレス化に伴うビジネス見直しを進めています。また、M&Aによる事業拡大や利益率改善、インフラ企業への営業強化等を通じた収益構造の変革に取り組み、ブランド価値の向上と株主還元の拡充を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、国籍・年齢・性別にとらわれない働きがいのある仕事と安全安心な職場環境の構築を目指しています。健康経営の実践や女性警備員の増員、外国人技能実習生の受け入れなどを進め、多様な人材の活用を推進しています。また、DX推進による高品質なサービス提供のため、専門資格の取得推奨や社内競技大会を通じた従業員のスキルアップにも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2021年3月期 43.0歳 11.1年 4,737,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制に関するリスク


同社グループは警備業法をはじめとする各種法令の規制を受けて事業を行っています。警備業の認定更新や有資格者の配置義務、建設業法や貨物自動車運送事業法等の規制を遵守する必要があります。これらの法令に違反した場合、営業停止等の行政処分を受ける可能性があり、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

(2) 金融機関等への売上依存


同社グループは金融機関に対する売上割合が高いため、金融機関の店舗統廃合やATMの削減、キャッシュレス化の進展などが業績に影響を与える可能性があります。これに対し、金融機関からのアウトソーシング受託(回金業務等)に注力することで、取引の維持・拡大に努めています。

(3) 受託現預金の管理リスク


ATM管理業務や売上金回収サービスにおいて、多額の現金を取り扱っています。業務委託先である金融機関等の経営状況によっては、立替資金の回収が困難になるリスクがあります。同社は受託先との協力による柔軟な対応や信用調査の実施により、リスク管理を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。