※本記事は、東洋テック株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋テックってどんな会社?
同社は関西を拠点に、警備事業およびビル管理事業を展開する総合生活安全企業です。
■(1) 会社概要
1966年に大阪市で機械警備、常駐警備を目的として東洋警備保障を設立し、翌年に機械警備業務を開始しました。1988年に現在の東洋テックへ社名を変更し、1990年に大阪証券取引所市場第二部に上場しています。その後、ビル管理業務や不動産事業などへ領域を拡大し、総合的な事業体制を構築しました。
同社グループの従業員数は連結で2,096名、単体で1,154名となっています。筆頭株主は事業提携先であるセコムで、第2位は同じく事業提携先である関西電力、第3位はディー・ケイとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| セコム | 27.22% |
| 関西電力 | 14.34% |
| ディー・ケイ | 4.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は竹野讓氏が務めています。取締役9名のうち、社外取締役は5名(比率55.6%)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田博之 | 代表取締役会長 | りそな銀行副社長や関西みらい銀行社長などを経て、2020年に代表取締役社長。2026年より現職。 |
| 竹野讓 | 代表取締役社長 | りそな銀行や関西みらいフィナンシャルグループなどの要職を経て、2024年に専務執行役員。2026年より現職。 |
| 岩城勝広 | 取締役常務執行役員DX本部長兼情報システム部長 | 1982年入社。業務本部技術部長や情報システム部長などを歴任し、2021年より現職。 |
| 村上義夫 | 取締役常務執行役員営業本部長兼EXPO・MICE・IR推進室長 | 三井住友銀行を経て、東洋テック姫路代表取締役社長などを歴任。2024年より現職。 |
社外取締役は、稲田浩二氏(元関西電力副社長)、中川正浩氏(元東北管区警察局長)、福地敏行氏(元日本アイ・ビー・エム副社長)、錦野真二氏(セコム執行役員)、堂野敦司氏(元日本銀行名古屋支店長)です。
2. 事業内容
同社グループは、警備事業、ビル管理事業、不動産事業を展開しています。
■警備事業
法人や個人の顧客に対し、機械警備、常駐警備、輸送警備、およびATM管理などの幅広いセキュリティサービスを提供しています。契約物件に警報機器を設置して事件や事故を監視するほか、施設内の安全管理や貴重品の運搬を行うことで、社会の安全・安心を支えています。
日常的かつ反復的な警備サービスの提供や警報機器の設置工事により、顧客から警備料および工事料を受け取る収益モデルです。これらの事業は同社のほか、東洋テックセキュリティサービスや東洋テック姫路、五大テックなどのグループ各社が主体となって運営しています。
■ビル管理事業
オフィスビルやマンション、店舗などを対象に、ビル総合管理業務や清掃業務を提供しています。日常的な清掃業務に加え、消防設備やエレベーターの改修工事、排水ポンプの取替といった設備点検から大規模修繕工事まで、建物の維持・管理にかかわる幅広いニーズに対応しています。
顧客から日常的な清掃や設備点検に対する業務委託料を継続的に受け取るほか、各種修繕工事の進捗や引き渡しに応じて工事代金を受け取る収益モデルです。運営は同社が受託した業務を東洋テックビルサービスおよび東洋テック姫路に委託する形で展開しています。
■不動産事業
顧客や投資家に向けて、不動産の賃貸業務、仲介業務、および投資業務などを展開しています。同社グループが保有する不動産物件を活用し、テナントや入居者に向けた賃貸サービスを提供するほか、不動産の売買や信託受益権の取引をサポートしています。
保有物件の入居者から受け取る毎月の不動産賃貸収入や、売買契約の成立時に顧客から受け取る仲介手数料がおもな収益源です。不動産賃貸業務はもっぱら同社が担い、不動産仲介業務および不動産投資業務はテック不動産などのグループ会社が連携して運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けています。とくに直近の決算期では、大型イベントに向けた警備や清掃業務の受注が大きく寄与し、飛躍的な増収を達成しました。経常利益および利益率も急拡大しており、価格適正化や業務の採算改善に向けた取り組みが確実な成果に結びついています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 275億円 | 301億円 | 312億円 | 349億円 | 431億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 10億円 | 11億円 | 11億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 3.2% | 3.4% | 3.0% | 7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 9億円 | 9億円 | 7億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
大幅な増収に伴い売上総利益と営業利益がともに大きく伸長しています。利益率も改善傾向にあり、既存業務における適正価格への改定や不採算案件の整理が収益性の底上げに貢献していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 349億円 | 431億円 |
| 売上総利益 | 69億円 | 90億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.8% | 20.8% |
| 営業利益 | 10億円 | 29億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与が24億円(構成比40.3%)、法定福利費が5億円(同7.9%)を占めています。労働集約型のビジネスモデルであるため、人件費関連の支出がコストの多くを占めていることがわかります。
■(3) セグメント収益
警備事業では、大型イベントにかかわる売上が牽引したほか、継続的な価格改定の取り組みが奏功し、大幅な増収となりました。ビル管理事業も大規模修繕などの受注増により堅調に推移しています。一方、不動産事業は販売・仲介部門が低調となり減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 警備事業 | 236億円 | 323億円 |
| ビル管理事業 | 95億円 | 103億円 |
| 不動産事業 | 18億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 349億円 | 431億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業の営業活動で得た潤沢な資金をもとに、将来に向けた投資と借入金の返済などの財務活動を同時にまかなう「健全型」のモデルとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 50億円 |
| 投資CF | -45億円 | -12億円 |
| 財務CF | 24億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%であり、いずれもスタンダード市場の平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「東洋テックグループは、安心で快適な社会の実現に貢献します。」という経営理念を掲げています。また、「人・街・未来をまもる」をスローガンとして、安全・安心で持続可能な社会の発展に寄与することを事業活動の基本方針に据えています。顧客や株主をはじめとするすべてのステークホルダーから信頼される企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「TEC WAY」と総称する行動指針を定めており、経営理念やスローガンとともに日々の業務のなかで役職員が取るべき具体的な行動基準として共有しています。労働集約型産業としての根本的な課題を克服するため、「量」の拡大から「質」の向上を重視し、「筋肉質な企業体質への転換」を志向する組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
第13次中期経営計画(2025年4月〜2028年3月)を策定し、持続的な成長と株主還元の強化を目指しています。本業の収益力向上を示す短期的な目標として連結営業利益を設定しているほか、株主価値の持続的な最大化に向けて、配当性向に加えて「株主資本配当率(DOE)」を指標として採用し、中長期的な還元強化を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コア事業であるセキュリティサービスの高度化を推進するとともに、AIやDXを活用した新サービスの創出に注力しています。また、既存業務の採算改善に向けた価格適正化や、新たな成長領域への進出を加速させています。同時に、サステナビリティ経営やウェル・ビーイングを重視した人的資本経営の高度化に取り組み、持続的な成長基盤の構築を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
専門性の高い人材を確保・維持するため、ベースアップなどの継続的な処遇改善やウェル・ビーイングの推進など、積極的な人的資本投資を行っています。採用面では「リファラル採用」や「アルムナイ採用」などを強化し、育成面ではスキルマトリックスの活用や社内公募制度を通じて、社員の自律的なキャリア形成と挑戦意欲の向上を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.1歳 | 12.4年 | 5,423,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(66.7%)、研修費用(59,323円/人)、65才以上高齢者雇用推奨(35.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法規制に関するリスク
警備事業において警備業法や建設業法などの各種規制を受けており、違反により営業停止等の処分を受ける可能性があります。同社グループはコンプライアンス体制を整備し、法令の変更動向を注視しながら適切なリスク管理に努めています。
■(2) 特定の売上先への依存リスク
売上の多くを金融機関に依存しており、キャッシュレス化の進展や業界再編によってATM管理業務などが縮小した場合、業績に悪影響が及ぶ恐れがあります。これに対し、金融機関からのアウトソーシング業務の受託に注力し、取引の維持と拡大を図っています。
■(3) 技術環境の変化リスク
AIやロボットなどの新たな技術が急速に導入されることで、既存の労働集約型ビジネスモデルが影響を受けるリスクがあります。同社はイノベーション推進部を設置し、最先端技術の調査や新サービスの企画を通じて変化に対応できる体制を構築しています。
■(4) 人材確保にかかわるリスク
警備やビル管理事業において継続的な人員確保が不可欠であり、労働人口の減少によって人材が不足した場合、業務の維持に影響が生じる可能性があります。同社は多様な採用チャネルの活用や働き方改革、健康経営の推進などを通じて定着率の向上に取り組んでいます。



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