NECキャピタルソリューション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NECキャピタルソリューション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、リース事業を中心にファイナンス、インベストメント事業を展開する総合金融サービス企業です。2025年3月期は、官公庁向けリースの伸長や資産売却益の計上があったものの、前期の大型案件の反動や資金原価の増加等が響き、売上高は微減、各利益段階で減益となりました。


※本記事は、NECキャピタルソリューション株式会社 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NECキャピタルソリューションってどんな会社?


NECグループの金融サービス会社として発足し、現在はSBI新生銀行グループとも連携する総合金融企業です。

(1) 会社概要


1978年に日本電気リースとして設立され、情報処理機器等のリースを開始しました。2005年に東証二部に上場し、翌2006年に東証一部へ指定替えとなりました。2008年に現社名へ変更し、2010年には株式会社リサ・パートナーズを連結子会社化して投資事業を強化しています。2024年にはSBI新生銀行の持分法適用関連会社となりました。

連結従業員数は860名、単体では639名体制です。筆頭株主は銀行業を営む株式会社SBI新生銀行で、第2位は創業母体である日本電気株式会社、第3位は大手リース会社の三井住友ファイナンス&リース株式会社です。SBI新生銀行とは資本業務提携関係にあり、日本電気とも引き続き重要なパートナー関係を維持しています。

氏名 持株比率
SBI新生銀行 33.29%
日本電気 17.61%
三井住友ファイナンス&リース 11.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長は菅沼正明氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
菅沼正明 代表取締役社長 日本電気に入社し、新事業推進本部長や執行役員を歴任。2022年4月に同社シニアオフィサーに就任し、同年6月より現職。
平野昇一 代表取締役執行役員副社長 日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)に入行。同行専務執行役員、昭和リース代表取締役社長等を経て、2024年12月より現職。
新井貴 取締役執行役員常務 日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。2014年に同社へ入社し、リサ・パートナーズ取締役等を兼務。2022年4月より現職。
塚田雄一 取締役執行役員常務 1989年に同社入社。経営企画部長や営業推進本部長等を歴任し、2023年4月より現職。


社外取締役は、名和高司(一橋ビジネススクール教授)、萩原貴子(株式会社DDD代表取締役)、山神麻子(ITN法律事務所パートナー)、牧角司(SBI新生銀行専務執行役員)、對間康二郎(SBI新生銀行常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「リース事業」、「ファイナンス事業」、「インベストメント事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) リース事業


官公庁、自治体、民間企業に対して、情報通信機器や事務用機器、各種設備機器のリース、レンタル、割賦販売を行っています。また、リースに関連する物品売買、満了・中途解約に伴う物件売却、リース機器の保守サービスなども手掛けています。

収益は、顧客からのリース料や割賦販売代金、物件売却収入などを源泉としています。運営は主にNECキャピタルソリューションが行っているほか、海外では現地法人が事業を展開しています。

(2) ファイナンス事業


企業向けの金銭の貸付やファクタリング(売掛債権の買取)、配当収益の獲得を目的とした有価証券投資などを行っています。顧客やベンダーの資金ニーズに対応したファイナンスサービスを提供しています。

収益は、貸付金の利息、ファクタリングの手数料、有価証券からの配当金などが主な源泉です。運営はNECキャピタルソリューションおよび海外現地法人が担っています。

(3) インベストメント事業


有価証券の売却益獲得を目的としたベンチャー企業向け投資や、企業再生、不動産投資、アドバイザリー業務などを展開しています。ファンドビジネスや自己勘定投資を通じて、企業や資産の価値向上を支援しています。

収益は、投資有価証券の売却益、ファンドからの配当、アドバイザリー手数料などを源泉としています。運営は主に連結子会社の株式会社リサ・パートナーズが行っています。

(4) その他の事業


賃貸レジデンスやヘルスケア施設等の不動産賃貸・開発、再生可能エネルギーの発電・売電事業、PFI・PPP事業、観光事業など多岐にわたるサービスを展開しています。

収益は、不動産の賃貸料、売電収入、各種サービスの手数料などを源泉としています。運営はNECキャピタルソリューションのほか、株式会社リサ・パートナーズや各事業目的会社等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2,200億円台から2,500億円台で推移しており、直近3期は2,500億円台後半で安定しています。経常利益は2023年3月期をピークに減少傾向にあり、2025年3月期は前期比で減益となりました。当期純利益も同様の傾向を示していますが、毎期黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,213億円 2,499億円 2,581億円 2,559億円 2,549億円
経常利益 61億円 114億円 124億円 118億円 94億円
利益率 2.8% 4.6% 4.8% 4.6% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 59億円 66億円 58億円 47億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は横ばいですが、売上原価の増加等により売上総利益率は低下しています。営業利益は販管費の増加も影響し、前期比で減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,559億円 2,549億円
売上総利益 326億円 297億円
売上総利益率(%) 12.7% 11.6%
営業利益 117億円 78億円
営業利益率(%) 4.6% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が82億円(構成比38%)、業務委託費が33億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別では、主力のリース事業は売上が微増したものの、販管費や資金原価の増加等により減益となりました。ファイナンス事業は配当収益の減少等で減収減益です。インベストメント事業は売上が微増しましたが、貸倒引当金繰入額の増加等により減益となりました。その他の事業も減収減益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
リース事業 2,284億円 2,292億円 55億円 44億円 1.9%
ファイナンス事業 91億円 76億円 33億円 29億円 37.9%
インベストメント事業 136億円 137億円 41億円 22億円 16.0%
その他の事業 47億円 43億円 6億円 5億円 12.1%
調整額 -1億円 -1億円 -18億円 -22億円 -
連結(合計) 2,559億円 2,549億円 117億円 78億円 3.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはマイナス、投資CFもマイナスですが、財務CFはプラスとなっており、借入等で資金を調達しつつ事業活動や投資を行っている「勝負型(事業拡大に伴う資産増加)」の状態です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にリース債権及びリース投資資産の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -213億円 -340億円
投資CF -83億円 -150億円
財務CF 493億円 1,056億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均(プライム9.4%)を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も9.9%で市場平均(プライム非製造業24.2%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、これまでの「CSV経営(共通価値の創造)」を継続しながら、2030年に向けた新たなグループビジョンとして「次世代循環型社会をリードするSolution Company」を掲げています。キャピタルソリューションの革新により、モノ、地域経済、企業成長の好循環に繋がるサービスを提供し、社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


「Solution Company」の「Company」には、「会社」だけでなく「価値観を共有する集団(仲間)」という意味も込められています。社会課題解決による収益力向上とともに、価値観を共有する従業員が誇りに思える会社作り(エンゲージメントの向上)を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


グループビジョンの実現に向けた第一段階として「中期計画2025」を策定しています。2025年度(2026年3月期)を最終年度とし、当社らしい循環型サービスの創出を目指しています。

* 2026年3月期 売上高:2,950億円
* 2026年3月期 営業利益:155億円
* 2026年3月期 経常利益:160億円
* 2026年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:100億円

(4) 成長戦略と重点施策


「中期計画2025」では、サービス事業の拡大と循環型サービスの創出、注力事業への戦略的投資、ベンダーファイナンスの強化を掲げています。具体的には、再生可能エネルギーやPFI事業の拡大、ICT関連サービスの高付加価値化、SBI新生銀行グループとの連携によるシナジー創出などを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最大の資産と位置づけ、事業戦略に連動した人材・組織・カルチャー変革を推進しています。自律的なキャリア形成を支援するため、人材公募制度や社内インターン制度を導入し、役割等級制度への移行など人事制度の改定も行っています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 14.4年 7,805,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.5%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.1%
男女賃金差異(正規) 60.2%
男女賃金差異(非正規) 56.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.43%)、有給休暇取得率(70.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利変動リスク


リース事業やファイナンス事業の資金調達において、有利子負債比率が高くなっています。市場金利が急激に上昇した場合、調達コストが増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、ALM(資産・負債の総合管理)を実施してリスク低減に努めています。

(2) SBI新生銀行グループとの関係


2024年10月にSBI新生銀行の持分法適用関連会社となりました。リース事業や投融資事業、地域貢献等でのシナジー創出を目指していますが、各種施策の進捗状況によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) NECグループとの関係


筆頭株主の異動により日本電気の持分法適用関連会社ではなくなりましたが、引き続き主要株主として関係を維持しています。NECグループ向け金融サービスの提供やNEC製品の取扱比率が高いため、同グループの業績動向が同社の業績に影響を与える可能性があります。

(4) 残価変動リスク


リース満了時の残存価値(残価)を設定したオペレーティング・リースを展開しています。市場環境の変化等により、リース満了時の物件売却価格が設定残価を下回った場合、損失が発生する可能性があります。これに対し、定期的なモニタリングや物件・満了時期の分散を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。