※本記事は、株式会社ジーダット の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジーダットってどんな会社?
半導体や液晶パネルなどの電子デバイス設計に不可欠なEDA(電子設計自動化)ソフトウェアを自社開発する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2003年にエスエックス・テクノロジーとして設立され、翌2004年に現在の社名へ変更しました。同年、セイコーインスツルメンツ(現セイコーインスツル)のEDAシステム事業を承継し、アルゴグラフィックスの連結子会社となりました。2007年にジャスダック証券取引所(現東証スタンダード)へ上場を果たしています。
現在は連結子会社を持たない単体企業として運営されており、従業員数は131名です。筆頭株主はCADシステムの販売等を行う事業会社で、第2位は電子部品メーカーの関連会社です。この2社で発行済株式の7割以上を保有しており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アルゴグラフィックス | 51.40% |
| セイコーインスツル | 21.18% |
| ジーダット従業員持株会 | 1.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員には松尾和利氏が就任しています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松尾 和利 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年直方信用金庫入庫。セイコー電子工業を経て2004年同社入社。営業本部長などを歴任し、2019年より現職。 |
| 小川 尚史 | 取締役専務執行役員営業本部長デバイスソリューション本部長 | 1983年第二精工舎入社。2004年同社入社。東日本営業部長、経営管理本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 藤澤 義麿 | 取締役 | 1965年日本レミントン・ユニバック入社。アルゴグラフィックス代表取締役社長などを経て、2017年より現職。 |
| 長谷部 邦雄 | 取締役 | 1984年伯東入社。アルゴグラフィックス専務執行役員管理本部長などを務め、2014年より現職。 |
社外取締役は、坂本和彦(セイコータイムクリエーション取締役・専務執行役員)、渥美滋(元ソニーLSIデザイン第6LSI設計部門長)です。
2. 事業内容
同社は「EDAソフトウェアの開発・販売及びコンサルテーション」事業および「その他」事業を展開しています。
■(1) EDA製品・商品販売
LSI(大規模集積回路)やFPD(フラットパネルディスプレイ)などの設計を支援するソフトウェアを開発・販売しています。自社開発の主力製品「SX-Meister」に加え、海外パートナー企業の補完製品も取り扱っています。顧客は主に半導体メーカーや液晶パネルメーカー、電子機器メーカーなどです。
収益は、顧客である電子デバイスメーカー等から、ソフトウェアのライセンス使用料として受け取ります。運営は同社が行っており、国内は直販が中心ですが、海外市場(米国、台湾、中国、韓国等)では現地代理店を通じて販売を行っています。
■(2) 保守サービス
販売したEDAソフトウェア製品の継続的な利用を支援するため、保守サポートを提供しています。顧客の技術的課題に対するサポートや、ソフトウェアのアップデートなどが含まれます。顧客基盤である半導体・FPD業界の技術革新に対応したサービスを展開しています。
収益は、製品を導入した顧客から、一定期間(通常は1年間など)の保守契約に基づくサービス料として受け取ります。運営は同社が担当しており、製品販売とセットまたは継続契約として安定的な収益源となっています。
■(3) ソリューション
顧客の要望に応じたソフトウェアの受託開発や、半導体・FPD等のデバイス設計受託、EDA環境構築支援などを行っています。自社製品のカスタマイズや、設計プロセス自体の請負などが含まれます。
収益は、顧客からの委託業務に対する対価(受託開発費や設計料など)として受け取ります。運営は同社が行っており、製品販売や保守サービスと並ぶ事業の柱として、顧客の多様なニーズに応える体制をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は18億円台から21億円前後へと緩やかに拡大傾向にあります。利益面では、経常利益率が10%台半ばで推移しており、高い収益性を維持しています。直近の2025年3月期は微増収となったものの、コスト増により各利益段階で減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 18.2億円 | 19.7億円 | 20.2億円 | 20.6億円 | 20.6億円 |
| 経常利益 | 1.5億円 | 2.8億円 | 3.2億円 | 3.7億円 | 2.9億円 |
| 利益率(%) | 8.3% | 14.0% | 15.7% | 18.1% | 14.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.0億円 | 1.7億円 | 2.7億円 | 3.3億円 | 2.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を比較すると、売上高はほぼ横ばいで推移しています。売上総利益率は約63%と高い水準を維持していますが、販売費及び一般管理費が増加した影響で、営業利益および営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 20.6億円 | 20.6億円 |
| 売上総利益 | 12.9億円 | 13.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 62.5% | 63.3% |
| 営業利益 | 3.0億円 | 2.6億円 |
| 営業利益率(%) | 14.7% | 12.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3.6億円(構成比35%)、給料及び手当が3.0億円(同28%)を占めています。売上原価においては、労務費が6.3億円(構成比83%)と大半を占めており、人件費と開発投資が費用の中心であることが分かります。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、直近の動向としては、半導体市場向けが一時的な需要増などで増加した一方、FPD(液晶パネル等)市場向けが国内メーカーの撤退・縮小の影響で減少しました。売上構成の変化により、全体としては微増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| EDAソフトウェア開発・販売及びコンサルテーション | 20.6億円 | 20.6億円 |
| 連結(合計) | 20.6億円 | 20.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社の営業CFはプラス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスとなっており、改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)に該当します。ただし、投資CFのプラスは主に定期預金の払戻によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.7億円 | 1.4億円 |
| 投資CF | -0.0億円 | 0.1億円 |
| 財務CF | -1.0億円 | -1.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.1%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「技術革新の激しい顧客企業等のパートナーたるにふさわしい知識、技術力を備え、常に最先端の技術を見つめつつ、顧客の現実の課題を確実に解決していくことにより社会に貢献する」ことを経営の基本理念としています。この理念のもと、半導体、FPD、微細加工分野の電子系CADソフトウェア領域においてNo.1ポジションを目指し、強い自社製品を主軸とした高収益事業の構築を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「行動ガイドブック」を整備し、コンプライアンスやセキュリティレベルの向上に努めています。また、人的資源を経営の中枢と位置づけ、人材の多様性を尊重し、国籍・性別・採用形態を区別しない採用活動や、ワークライフバランスを重視した働きがいのある職場環境づくりを推進する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社はソフトウェア開発事業の特徴である固定費中心の費用構造を踏まえ、高収益な事業体質を目指しています。具体的には、以下の数値を経営指標の目標として掲げています。
* 経常利益率:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、顧客の技術進化や多様なニーズに対応するため、製品力・技術力の強化、製品ラインアップの拡張、販売力および販売チャネルの拡張を重点施策としています。特にアナログLSI設計の自動化やパワー半導体の設計効率化に向けた研究開発、海外市場への展開強化に取り組んでいます。
* 製品力・技術力:アナログLSI設計自動化、パワー半導体向け設計ツールの機能拡張、AI活用技術の研究開発。
* 製品ラインアップ:電子部品分野や半導体後工程分野への研究開発範囲拡張、競争力のある代理販売品の拡充。
* 販売力:デバイスソリューションの海外販路開拓、コンサル型提案へのシフト。
* 販売チャネル:重点海外パートナーとの連携強化、製造装置・テスタ分野等へのチャネル拡張。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は経営資源の中枢を人的資源と位置づけ、採用、教育、働き方改革、職場環境整備への投資を行っています。人材の多様性を重視し、国籍や性別等を問わない採用や人事制度の拡充を図るとともに、ワークライフバランスの実現に向けた環境づくりを推進しています。また、産官学連携やAI技術の習得など、技術革新に対応できる人材の育成にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.3歳 | 11.6年 | 6,443,708円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | -% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | -% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※男性育児休業取得率は該当者がいないため「-」となっています。なお、男女賃金差異については、同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため公表義務の対象ではなく、記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員率(11%)、有給休暇取得率(69%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報資産の消失リスク
同社はソフトウェア製品のソースコードや開発環境、顧客へのライセンス情報など、事業の根幹に関わる重要な情報資産を保有しています。これらは東京と大阪で多重分散管理されていますが、大規模災害等によりすべて、あるいは多くが消失した場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場環境の変化と競争
同社が対象とする国内市場は縮小傾向にあり、海外市場の開拓や新製品投入による販売力強化を進めています。また、国内では高信頼性設計ニーズの掘り起こしを図っていますが、これらの対策が遅れたり適切でなかったりした場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 技術革新への対応遅れ
半導体やFPD市場は技術革新が速く、常に最先端のニーズを取り込む必要があります。新技術の研究から事業化までには長期間を要し、市場に受け入れられる保証もありません。市場ニーズの変化を捉え損ねたり、優秀な人材や資金を確保できず製品競争力が低下したりした場合、業績に影響する可能性があります。



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