記事タイトル:「第一ライフグループ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、株式会社第一ライフグループ の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 第一ライフグループってどんな会社?
同社は第一生命保険などを傘下に持ち、国内外で生命保険事業やアセットマネジメント事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1902年に日本初の相互会社形態の保険会社として設立されました。2010年に株式会社へ組織変更し上場を果たしました。その後、2015年に米国のプロテクティブライフコーポレーションを完全子会社化するなどグローバル展開を推進し、2016年に持株会社体制へ移行しました。2026年には現在の社名へと変更しています。
現在の従業員数は連結で60,138名、単体で702名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理等を行う日本カストディ銀行となっており、第3位にはケイマン諸島に拠点を置く法人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.71% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.86% |
| SMP PARTNERS (CAYMAN) LIMITED(常任代理人 みずほ銀行) | 2.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.6%です。代表取締役社長Group Chief Executive Officerは菊田徹也氏が務めています。社外取締役比率は46.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊田 徹也 | 代表取締役社長Group Chief Executive Officer | 1987年4月同社入社。アセットマネジメント事業ユニット長、投資本部長等を経て、2023年4月代表取締役社長Chief Executive Officerに就任。2025年4月より現職。 |
| 稲垣 精二 | 取締役会長 | 1986年4月同社入社。経営企画部長、グループ経営戦略ユニット長等を経て、2017年4月第一生命保険代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。 |
| 山口 仁史 | 代表取締役専務執行役員Group Chief Human Resources Officer | 1989年4月同社入社。人事ユニット長、アジアパシフィック事業本部長、海外生保事業オーナー等を経て、2026年4月より現職。 |
| 北堀 貴子 | 取締役常務執行役員Group Chief Customer Experience Officer(Japan) | 1994年4月同社入社。第一生命保険営業企画部長、同コミュニケーションデザイン部長等を経て、2024年4月同社常務執行役員に就任。2025年4月より現職。 |
| 隅野 俊亮 | 取締役 | 1992年4月同社入社。経営企画ユニット長、北米事業本部長等を経て、2021年6月取締役常務執行役員に就任。2023年4月より現職。第一生命保険代表取締役社長を兼務。 |
| 曽我野 秀彦 | 取締役 | 1983年4月日本銀行入行。同札幌支店長等を経て、2015年7月同社入社。国際業務部担当、海外生保事業ユニット担当等を経て、2025年4月より現職。 |
| 柴垣 貴弘 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年4月同社入社。金融法人部長、第一フロンティア生命保険代表取締役副社長執行役員等を経て、2022年6月同社取締役(上席常勤監査等委員)に就任。2024年6月より現職。 |
| 山腰 憲司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1990年4月同社入社。アセットマネジメント事業ユニット長、監査ユニット長、第一生命保険内部監査部長等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、井上由里子(放送大学教授)、新貝康司(イグアルファン代表取締役)、ブルース・ミラー(豪州海外投資審査委員会委員長)、石井一郎(troisH代表取締役)、佐藤りえ子(石井法律事務所パートナー)、永瀨悟(第一フロンティア生命保険社外取締役)、牧野あや子(牧野公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内保険事業」「海外保険事業」および「その他事業」を展開しています。
■(1) 国内保険事業
第一生命保険や第一ネオ生命保険などのグループ各社を通じ、生涯設計デザイナー等の多様なチャネルを活用して、個人の顧客に向けて最適な生命保険や損害保険などの商品・サービスを提供しています。保障と資産形成の一体的な価値提供を推進しています。
収益は主に顧客から受け取る保険料収入と、それに伴う資産運用収益によって構成されています。事業の運営は主に第一生命保険、第一フロンティア生命保険、第一ネオ生命保険、第一アイペット損害保険などの事業会社が行っています。
■(2) 海外保険事業
北米、オセアニア、アジアパシフィック地域などのグローバル市場において、現地の特性に応じた生命保険事業を展開しています。また、生命保険の周辺領域であるリタイアメント事業への参入や、再保険事業なども行い、グループの成長ドライバーとして機能しています。
各進出国の顧客から得られる保険料収入や再保険収入、また資産運用による収益が主な収益源となっています。運営は主に米国のプロテクティブライフコーポレーションや豪州のTAL、第一生命ベトナムなどの海外子会社が担っています。
■(3) その他事業
生命保険業の枠を超えた保険サービス業への変革を目指し、福利厚生サービスプラットフォームの提供や、国内外の不動産・オルタナティブ投資等のアセットマネジメント事業、グループ会社の経営管理など非保険領域の事業を展開しています。
プラットフォーム利用企業からの会費やサービス利用料、不動産等の運用に伴うフィー収入などが主な収益源です。運営は主にベネフィット・ワンやアセットマネジメント関連のグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の経常利益は3000億円から7500億円の範囲で推移しており、直近2期間は7500億円台と高い水準を維持しています。親会社株主に帰属する当期純利益も増減を繰り返しながら、直近の2026年3月期は2953億円と前期から大きく増加し、堅調な利益を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 5909億円 | 3875億円 | 5390億円 | 7557億円 | 7537億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1672億円 | 2496億円 | 1744億円 | 1806億円 | 2953億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の経常収益(売上高相当)は記載されていませんが、本業の利益を示す営業利益は1989億円から3003億円へと大幅な増益となっています。これに伴い、税引前利益や当期利益も順調に拡大しており、収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 1989億円 | 3003億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が114億円(構成比約33%)、業務委託費が113億円(同約33%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の国内保険事業は、円金利上昇に伴う円建商品の販売増加等により増収となっています。一方、海外保険事業は一部契約の反動等で微減となりました。また、その他事業はグループ会社からの配当金収入増などにより大幅な増収を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内保険事業 | 77088億円 | 81556億円 |
| 海外保険事業 | 36247億円 | 35238億円 |
| その他事業 | 432億円 | 791億円 |
| 調整額 | -15001億円 | -4502億円 |
| 連結(合計) | 98766億円 | 113083億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.7%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5926億円 | 7922億円 |
| 投資CF | -9805億円 | -9263億円 |
| 財務CF | -736億円 | -1272億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
Purpose(存在意義)として「共に歩み、未来をひらく 多様な幸せと希望に満ちた世界へ」を掲げています。1人ひとりの異なる価値観や生き方が尊重され、多様な幸せと未来への希望に満ちた世界の実現を目指しています。ステークホルダーと共に歩み、未来を切りひらくための挑戦を続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
「いちばん、人を考える」「まっすぐに、最良を追求する」「まっさきに、変革を実現する」という3つのValues(大切にする価値観)を定めています。お客さまや社会にとっての最良を誠実に追求し、スピード感をもって自ら変革し続ける革新性を重視し、積極的な挑戦を促す文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2024-2026年度の中期経営計画において、2030年度までに「グローバルトップティアに伍する保険グループ」になることを目指しています。資本循環経営を推進し、資本コストを安定的に上回る資本効率を追求しており、以下の数値目標を掲げています。
・グループ修正ROE 12%(2026年度)、15%以上(2030年度)
・グループ修正利益 4,500億円(2026年度見通しは5,600億円)
■(4) 成長戦略と重点施策
「国内保険事業」と「アセットマネジメント事業」への区分再編を進め、保障と資産形成・承継の一体的な価値提供を加速させます。また、海外事業を成長ドライバーとしてキャピタルライトな領域への進出を進め、AIやデジタル技術の活用による生産性向上を図ります。さらに、福利厚生プラットフォームを中心とする新規事業を通じ、「保険サービス業」への進化を牽引します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人財が可能性を最大限に発揮し、挑戦と変革を実現する」をキーメッセージに掲げています。スペシャリティコース等による多様な人材獲得やDX人材の育成を進めるほか、「Myキャリア制度」などを通じた主体的なキャリア形成を支援しています。また、ジョブ型人事制度の導入によりパフォーマンスに応じた処遇を実現しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.1歳 | 10.9年 | 11,426,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.7% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 61.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 16.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(18.2%)、女性組織長比率(22.0%)、エンゲージメント総合スコア(67.6)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金融市場の変動や信用・流動性に関するリスク
国内外の金利、為替、株式市場の変動により、保有資産の価値が低下し有価証券評価損等が発生するリスクがあります。また、金利の乱高下により資産運用ポートフォリオの利回りが低下し、収益性の確保が困難になるほか、流動性の枯渇によって不利な条件で資産を処分せざるを得ない可能性があります。
■(2) システム障害やサイバー攻撃に関するリスク
事業運営や顧客情報の管理において情報システムに大きく依存しているため、システム障害や外部からのランサムウェア等によるサイバー攻撃が発生した場合、業務の中断や情報の改ざん、個人情報の漏えいが生じるリスクがあります。これにより、社会的信用の失墜や損害賠償責任が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 戦略の実行及び海外事業の拡大に関連するリスク
買収や出資等の投資戦略が期待通りのシナジーや収益を生まない場合や、AI・デジタル変革(DX)への対応が競合に劣後した場合、中長期的な競争力が低下するリスクがあります。さらに、海外事業の拡大に伴い、進出国における法規制の変更、政情不安、為替変動等の特有のリスクにも直面しています。
■(4) 法令違反およびビジネス倫理に関するリスク
営業現場や代理店において、不適切な募集行為や顧客情報の不適切な取得・利用などが発生するリスクがあります。コンプライアンスや企業文化の浸透が不十分な場合、レピュテーションの大幅な低下や行政処分を招き、新規契約の減少や既存契約の流出等、事業活動の低迷につながるおそれがあります。



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