※本記事は、株式会社第一生命ホールディングスの有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 第一生命ホールディングスってどんな会社?
国内大手生命保険グループの持株会社です。国内、海外での保険事業に加え、資産形成・承継事業などを展開しています。
■(1) 会社概要
1902年9月に日本初の相互会社として設立されました。2010年4月に株式会社化し東京証券取引所市場第一部へ上場、2016年10月には持株会社体制へ移行し現商号へ変更しました。2022年4月にプライム市場へ移行し、2023年1月にはアイペット損害保険を子会社化しています。直近では2024年5月にベネフィット・ワンを子会社化しました。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は60,814名(単体490名)です。筆頭株主および第2位株主は、資産管理業務を行う信託銀行の信託口です。第3位は海外法人であり、機関投資家や海外投資家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.31% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.41% |
| SMP PARTNERS (CAYMAN) LIMITED | 2.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長Group Chief Executive Officerは菊田徹也氏です。社外取締役比率は46.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊田 徹也 | 代表取締役社長Group Chief Executive Officer | 1987年入社。投資本部長、第一生命保険取締役、同社代表取締役社長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 稲垣 精二 | 取締役会長 | 1986年入社。経営企画部長、第一生命保険代表取締役社長、同社代表取締役会長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 山口 仁史 | 代表取締役専務執行役員海外生保事業オーナー | 1989年入社。人事ユニット長、アジアパシフィック事業本部長などを経て、2024年12月より現職。 |
| 北堀 貴子 | 取締役常務執行役員Group Chief Customer Experience Officer(Japan) | 1994年入社。第一生命保険執行役員、同社取締役常務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 曽我野 秀彦 | 取締役 | 1983年日本銀行入行。2015年同社入社。常務執行役員Chief Sustainability Officerなどを経て、2025年4月より現職。 |
| 隅野 俊亮 | 取締役 | 1992年入社。執行役員経営企画ユニット長、北米事業本部長、第一生命保険代表取締役社長などを経て、2023年4月より現職。 |
| 柴垣 貴弘 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年入社。執行役員金融法人部長、第一フロンティア生命保険代表取締役副社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 山腰 憲司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1990年入社。アセットマネジメント事業ユニット長、監査ユニット長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、井上由里子(一橋大学大学院教授)、新貝康司(元日本たばこ産業代表取締役副社長)、ブルース・ミラー(元駐日オーストラリア大使)、石井一郎(元東京海上ホールディングス専務)、佐藤りえ子(弁護士)、増田宏一(元日本公認会計士協会会長)、永瀨悟(元デクセリアルズ取締役CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内保険事業」「海外保険事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内保険事業
国内において、個人および法人顧客に対し、生命保険や損害保険などの保障・サービスを提供しています。第一生命保険、第一フロンティア生命保険、ネオファースト生命保険の3社を中心に、多様化するニーズに対応した商品ラインアップを展開しています。
収益源は、保険契約者から受け取る保険料や資産運用収益などです。運営は、第一生命保険、第一フロンティア生命保険、ネオファースト生命保険に加え、少額短期保険を提供する第一スマート少額短期保険、損害保険を提供するアイペット損害保険などが行っています。
■海外保険事業
米国、オーストラリア、ベトナム、インド、インドネシア、タイ、カンボジア、ミャンマー、ニュージーランドにおいて、生命保険事業を展開しています。先進国市場と新興国市場の双方で、各国の市場特性に合わせた保険商品を提供しています。
収益源は、海外の保険契約者から受け取る保険料や現地での資産運用収益などです。運営は、米国のProtective Life Corporation、オーストラリアのTAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltd、ベトナムのDai-ichi Life Insurance Company of Vietnam, Limitedなどの現地法人が行っています。
■その他事業
上記報告セグメントに含まれない事業として、アセットマネジメント事業や福利厚生代行サービスなどの新規事業を展開しています。資産形成・承継ニーズへの対応や、ヘルスケア・ウェルビーイング領域での価値提供を行っています。
収益源は、投資信託等の運用報酬や福利厚生サービスの利用料などです。運営は、アセットマネジメントOne(持分法適用関連会社)や、2024年にグループ入りしたベネフィット・ワンなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
連結の保険料等収入は2021年3月期から2024年3月期にかけて順調に拡大を続けていましたが、2025年3月期は6兆円台へと減少(前年比9.7%減)しています。これは主に第一フロンティア生命において、海外金利の低下の影響により外貨建保険等の販売が一服したことによるものです。また、資産運用収益についても、円高進行に伴う為替差損益の悪化などにより減少しました。
一方、利益面を見ると、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は増加(経常利益は前年比33.4%増)しています。これは、金利上昇や良好な金融市場環境を背景に、第一生命において利息及び配当金収入などが増加し、順ざや(資産運用ポートフォリオの平均利回りが予定利率を上回る状態)が前年より拡大したこと等が大きく寄与しています。これにより、資本効率を示す自己資本利益率(ROE)も11.7%へと向上し、高水準を記録しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 保険料等収入 | 4兆7,303億円 | 5兆2,920億円 | 6兆6,544億円 | 7兆5,264億円 | 6兆7,959億円 |
| 資産運用収益 | 2兆7,196億円 | 2兆5,511億円 | 2兆2,809億円 | 3兆340億円 | 2兆5,284億円 |
| 経常利益 | 5,529億円 | 5,909億円 | 3,875億円 | 5,390億円 | 7,191億円 |
| 自己資本利益率(ROE) | 8.5% | 9.1% | 5.1% | 9.8% | 11.7% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 3,638億円 | 4,094億円 | 1,737億円 | 3,208億円 | 4,296億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、保険料等収入の減少により経常収益は減収となりましたが、経常利益は大幅な増益となりました。これは、保険金等支払金や責任準備金等繰入額といった費用が収益の減少幅以上に減少したことや、資産運用における収益性が改善したことによるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 11兆282億円 | 9兆8,733億円 |
| 経常利益 | 5,390億円 | 7,191億円 |
| 経常利益率(%) | 4.9% | 7.3% |
※保険業のため、一般企業の「売上高」を「経常収益」、「営業利益」を「経常利益」に読み替えて表示しています。売上総利益は該当概念がないため省略しています。
■(3) セグメント収益
国内保険事業は減収増益となりました。第一フロンティア生命での販売減により減収となりましたが、第一生命での利息・配当金収入の増加等により増益を確保しました。海外保険事業は増収増益となり、Protective Lifeでの運用収益増加や前年の評価損剥落が寄与しました。その他事業はベネフィット・ワンの連結化等により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内保険事業 | 8兆4,717億円 | 7兆7,088億円 | 4,070億円 | 5,845億円 | 7.6% |
| 海外保険事業 | 3兆927億円 | 3兆6,213億円 | 1,274億円 | 1,831億円 | 5.1% |
| その他事業 | 109億円 | 432億円 | 1,992億円 | 2,210億円 | 511.4% |
| 調整額 | -5,472億円 | -1兆5,001億円 | -1,946億円 | -2,696億円 | - |
| 連結(合計) | 11兆282億円 | 9兆8,733億円 | 5,390億円 | 7,191億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金で借入返済を行いつつ、将来に向けた投資も実施している健全型(営業CF+、投資CF-、財務CF-)です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9,974億円 | 5,926億円 |
| 投資CF | -6,016億円 | -9,805億円 |
| 財務CF | -1,458億円 | -736億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は5.0%で市場平均を下回っています。なお、保険会社は負債(責任準備金)が大きくなる特性があるため、自己資本比率は一般事業会社よりも低くなる傾向があります。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、社会における存在意義(Purpose)として「共に歩み、未来をひらく 多様な幸せと希望に満ちた世界へ」を掲げています。一人ひとりの異なる価値観や生き方が尊重される世界を実現するため、顧客をはじめとするステークホルダーと共に歩み、未来を切り拓く挑戦を続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、Purposeの実現のために大切にする価値観(Values)として、「いちばん、人を考える」「まっすぐに、最良を追求する」「まっさきに、変革を実現する」の3つを定めています。あらゆる「人」のことを真剣に考え、誠実に最良を追い求め、スピード感を持って自ら変革し続ける姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2031年3月期に「日本の保険業界の未来を先導する存在になること」「グローバルトップティアに伍する保険グループになること」を目指しています。2027年3月期には海外生保事業からの利益貢献比率40%を目標としています。また、資本コストを安定的に上回る資本効率の実現を目指し、修正ROE等の指標向上に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内保障事業では、人口減少・高齢化を踏まえたビジネスモデル変革を進め、AI等の活用による生産性向上を図ります。海外生保事業では、既存事業の成長と戦略的M&Aの両輪で成長を加速させます。また、資産形成・承継事業や、ベネフィット・ワンを活用した新規事業により、従来の保険業を超えた「保険サービス業」への変革を推進し、非保険領域での成長も目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人財が可能性を最大限に発揮し、挑戦と変革を実現する」をキーメッセージに、人財戦略を推進しています。ジョブ型人事制度の導入による専門性の高い人財の獲得・リテンションや、DX人財・グローバル人財の育成に注力しています。また、従業員エンゲージメントの向上や、多様な働き方の推進、健康経営にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.2歳 | 11.7年 | 10,442,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.5% |
| 男性育児休業取得率 | 108.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 107.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、事業戦略に伴う人財シフト(2,852名)、次世代グローバル経営リーダー候補(205名)、女性役員比率(17.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場・信用・流動性に関するリスク
金利、株価、為替等の市場変動により、資産運用収支が悪化するリスクがあります。また、発行体の信用力低下や債務不履行による損失リスク、大規模災害時等の資金流出に対応できない流動性リスクも存在します。特に金利上昇時の債券価格下落や、株式市場の低迷は財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 保険引受に関するリスク
実際の死亡率や解約率が保険料設定時の前提と乖離した場合、収益が悪化する可能性があります。また、パンデミックや大規模災害により保険金支払いが急増するリスクや、医療技術の進展に伴う入院給付等の増加リスクもあります。これらに備え、適切な責任準備金の積立や再保険の活用を行っています。
■(3) オペレーショナル・テクノロジー・サイバーに関するリスク
システム障害やサイバー攻撃により、顧客サービスの中断や情報漏洩が発生し、社会的信用の失墜や損害賠償につながるリスクがあります。特に、外部委託先を含むサプライチェーン全体でのセキュリティ対策や、デジタル変革(DX)推進に伴う新たなリスクへの対応が重要となります。
■(4) 法令違反・コンダクト・企業文化に関するリスク
役職員や代理店による法令違反、不祥事、不適切な営業行為が発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜を招くリスクがあります。過去の金銭不正取得事案や情報漏洩事案を受け、コンプライアンス態勢の強化や企業風土の改革に取り組んでいますが、これらが十分に機能しない場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。



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