エー・ピーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エー・ピーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場。「食のあるべき姿を追求する」を理念に、地鶏や鮮魚等の生産から販売までを一貫して手掛ける「生販直結モデル」による飲食事業等を展開しています。直近の業績は、インバウンド需要の増加等により増収となり、営業利益・経常利益は黒字転換しましたが、最終損益は減益(赤字)となっています。


※本記事は、株式会社エー・ピーホールディングス の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エー・ピーホールディングスってどんな会社?


「塚田農場」や「四十八漁場」などの飲食店を運営し、食材の生産から販売までを手掛ける「生販直結モデル」が特徴の企業です。

(1) 会社概要


2001年に前身となる有限会社エー・ピーカンパニーが設立され、2006年には宮崎県日南市にて自社養鶏を開始しました。その後、2012年に東証マザーズへ上場し、翌2013年には東証一部へ市場変更を果たしています。2020年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。

連結従業員数は706名、単体では54名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長兼社長の米山久氏で、第2位は米山氏の資産管理会社と思われるMTRインベストメントです。第3位には食品宅配事業を展開するオイシックス・ラ・大地が名を連ねています。

氏名 持株比率
米山 久 42.99%
MTRインベストメント 5.31%
オイシックス・ラ・大地 4.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表者は代表取締役社長 兼 会長の米山久氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
米山 久 代表取締役社長 兼 会長 2001年エー・ピーカンパニー(現同社)設立、代表取締役社長。MTRインベストメント代表取締役。2023年9月より現職。
横澤 将司 取締役 2001年平田牧場入社。2011年同社入社。魚事業部事業部長、執行役員ブランド開発室室長等を経て2024年6月より現職。
佐竹 祐樹 取締役 2005年レインズインターナショナル入社。2015年同社入社。執行役員開発本部本部長、上席執行役員を経て2024年6月より現職。
近内 理恵 取締役 2008年同社入社。マーケティング本部副本部長、ブランドコミュニケーション部部長、執行役員等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、尾崎智史(公認会計士)、田路至弘(弁護士)、小栗悠夫(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「生産流通事業」および「販売事業」を展開しています。

(1) 生産流通事業


全国各地の競争力ある食材を選定し、産地の生産者や行政と直接関係を構築した上で、食材の生産および加工販売を行っています。地鶏「みやざき地頭鶏」「黒さつま鶏」などの自社農場での生産や、鮮魚の漁業事業者との直接取引などを手掛けています。

この事業による主な収益は、グループ外の小売業や卸売業への食材販売や、グループ内店舗への食材供給から得ています。運営は、地頭鶏ランド日南、新得ファーム、カゴシマバンズなどの子会社や、関連会社の豊洲漁商産直市場などが担っています。

(2) 販売事業


「生販直結モデル」の一部として、主に外食店舗および中食事業を運営しています。「宮崎県日南市塚田農場」「四十八漁場」などの居酒屋や、「しゃぶしゃぶつかだ」などのレストランを展開するほか、宅配弁当やエキナカ等での弁当販売も行っています。

収益は、外食店舗を利用する消費者からの飲食代金や、中食商品の販売代金から得ています。運営は主に子会社のエー・ピーカンパニー、中食事業を担う塚田農場プラスなどが担当しています。海外においても、シンガポールやインドネシアなどで店舗展開を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響を受けた時期を経て回復傾向にあり、当期は211億円に達しました。利益面では、経常利益が赤字と黒字を行き来する状況が続いていましたが、当期は黒字転換を果たしています。一方、当期純利益は当期も赤字となっており、最終黒字化が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 89億円 80億円 172億円 206億円 211億円
経常利益 -24億円 16億円 -11億円 -0.7億円 3億円
利益率(%) -26.4% 20.0% -6.4% -0.4% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -33億円 3億円 -13億円 -4億円 -0.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高が増加し、売上総利益も微増しています。営業損益については、前期の赤字から当期は3億円の黒字へと転換し、本業の収益性が改善していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 206億円 211億円
売上総利益 134億円 135億円
売上総利益率(%) 65.1% 64.0%
営業利益 -1億円 3億円
営業利益率(%) -0.5% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が52億円(構成比40%)、賃借料が24億円(同18%)、減価償却費が4億円(同3%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、販売事業が売上の大部分を占めており、当期は増収黒字化を達成しました。生産流通事業も売上規模は小さいものの黒字を確保しており、利益率は8.9%と比較的高い水準にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
生産流通事業 7億円 8億円 1億円 1億円 8.9%
販売事業 199億円 203億円 -2億円 1億円 0.6%
連結(合計) 206億円 211億円 -1億円 3億円 1.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCFパターンは「健全型(営業CF+、投資CF-、財務CF-)」です。営業活動で得た現金を投資に回しつつ、借入金の返済も進めている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 5億円
投資CF -0.7億円 -8億円
財務CF -4億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータなし、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は-0.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本の食のあるべき姿を追求する」という共通のミッションを掲げています。第一次産業の活性化と高品質低価格の実現を通じて、食産業における生産者、販売者、消費者の「ALL-WIN」の達成を目指しています。

(2) 企業文化


「生販直結モデル」を通じて、生産者や行政と直接的な信頼関係を構築することを重視しています。自社で農場や加工場を運営することで産地を知り、生産者の想いを共有する文化があります。販売店舗においては、独自の販促手法により顧客感動満足を追求し、生産者の想いを背負う社会的意義を持つことを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、以下の課題に取り組む方針を示しています。
* 店舗の収益性の維持、向上(平均客単価4,000円前後の維持又は向上)
* 提携産地の開拓と取組産業の拡充
* 生産流通事業の体制強化及び収益性の維持、向上
* 人材の確保及び教育の強化

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、国内飲食事業では既存事業のリブランディングを進め、付加価値の高い商品開発やサービス強化に取り組む方針です。また、事業部採算制の導入により各ブランド単位での戦略実行を推進します。新規事業・海外事業については選択と集中を実行し、外食以外の事業(宅配弁当やECなど)の多角化も検討しています。

* 既存店舗(塚田農場等)の改装と旗艦店化
* 地方エリアへの新規出店推進
* 複合型店舗「江戸前横丁」のような新たな飲食モデルの確立
* 生産者との直接ネットワーク拡大と取扱品目の拡充

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の確保においては、アルバイト採用の強化や効率的な中途採用を継続する方針です。人材育成については、店舗運営スキルの可視化や昇進試験による早期戦力化を図るとともに、資格取得支援やオンライン講座などを通じて多様な人材育成を推進しています。また、外国籍人材の活躍支援や柔軟な雇用形態の促進など、ダイバーシティ推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 8.5年 5,355,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 47.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.7%
男女賃金差異(正規雇用) 87.4%
男女賃金差異(非正規) 60.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(77.1%)、人時売上高(114.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品衛生管理および各種法的規制


飲食店営業許可や食品衛生法などの規制を受けており、食中毒などの衛生問題が発生した場合、営業停止処分や損害賠償請求等により業績に影響を与える可能性があります。また、労働関連法令の改正による社会保険料負担の増加などもリスク要因となります。

(2) 主要食材への依存と調達リスク


「塚田農場」などの店舗は「みやざき地頭鶏」や「黒さつま鶏」を主要食材としており、売上構成比が高くなっています。鳥インフルエンザ等の疫病や自然災害による生産量減少、風評被害などが発生した場合、調達難やコスト上昇により業績に影響を与える可能性があります。

(3) 自然災害による影響


店舗の多数が首都圏に集中しているほか、各地で生産事業を行っています。大規模な地震や台風などの自然災害が発生した場合、店舗営業の停止や生産活動の阻害により、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 出退店政策と差入保証金


新規出店において条件に合う物件が確保できない可能性があります。また、業績不振店舗の退店や業態変更に伴う減損損失や原状回復費用が発生するリスクがあります。さらに、賃貸人の経営状況によっては差入保証金が返還されない可能性もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。