※本記事は、株式会社エー・ピーホールディングスの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エー・ピーホールディングスってどんな会社?
飲食事業や中食事業、食品の生産流通事業を一気通貫で展開し、新たな食の価値を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2001年10月に飲食店のプロデュース等を目的として設立されました。2004年に地鶏モデル1号店をオープンし、2006年に自社農場を建設して生産を開始するとともに、エー・ピーカンパニーへ商号を変更しました。2012年に東証マザーズに上場し、2013年に東証一部へ市場変更を行っています。その後、2020年に持株会社体制へ移行し、現在の社名となりました。
従業員数は連結で735名、単体で66名です。筆頭株主は創業者の米山久氏で、第2位は米山氏が代表取締役を務める資産管理会社のMTRインベストメント、第3位は西陽一郎氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 米山 久 | 40.66% |
| MTRインベストメント | 5.29% |
| 西 陽一郎 | 3.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長 兼 社長は米山久氏が務めており、社外取締役比率は42.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 米山 久 | 代表取締役会長 兼 社長 | 2001年エー・ピーカンパニー(現エー・ピーホールディングス)設立し代表取締役社長。2020年代表取締役社長執行役員CEO。2023年9月より現職。 |
| 横澤 将司 | 取締役 | 2011年同社入社。魚事業部事業部長、執行役員ブランド開発室室長等を経て、2023年エー・ピーカンパニー代表取締役。2024年6月より現職。 |
| 佐竹 祐樹 | 取締役 | 2015年同社入社。執行役員開発本部本部長、上席執行役員等を経て、2023年エー・ピーカンパニー取締役等。2024年6月より現職。 |
| 近内 理恵 | 取締役 | 2008年同社入社。マーケティング本部ブランドコミュニケーション部部長、執行役員等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、尾崎智史(尾崎公認会計士事務所所長)、田路至弘(TANAKAホールディングス社外監査役)、小栗悠夫(小栗総合法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内外食事業」「海外外食事業」「中食事業」および「生産流通事業」を展開しています。
国内外食事業
独自の「生販直結モデル」を通じて調達した高品質な食材を活かし、国内における外食店舗の企画・運営を行っています。「宮崎県日南市塚田農場」などの居酒屋事業、「四十八漁場」などの専門店事業、中高級価格帯のレストラン事業を提供しています。
収益は、主に店舗を利用する消費者から飲食代金として受け取ります。運営は主にエー・ピーカンパニー、新鮮組フードサービスが行っています。
海外外食事業
主にアジア圏および米国において外食店舗を展開し、ブランドの浸透と収益基盤の拡大を図っています。インドネシア、香港、シンガポール、米国に直営店舗を出店するほか、フランチャイズ方式によりカンボジアやフィリピンへ展開しています。
収益は、海外の各地域において店舗を利用する消費者からの飲食代金として受け取ります。運営は主にAP Company International Singapore Pte., Ltd.などの各現地法人が行っています。
中食事業
宅配弁当、エキナカ、および商業施設等の店舗においてお弁当や惣菜の製造・販売を行っています。地方の希少食材や独自の調理法を取り入れた付加価値の高い商品開発を行い、行楽需要や法人向けイベント需要を取り込んでいます。
収益は、弁当や惣菜の販売代金として消費者や法人顧客から受け取ります。運営は主に塚田農場プラスが行っています。
生産流通事業
「生販直結モデル」の川上・川中を担い、地鶏の生産事業および鮮魚・青果物等の流通事業を展開しています。自社農場での生産から加工、販売までの一貫体制を確立し、物流コスト等の課題を解決する流通ソリューションの提供も行っています。
収益は、主に小売業および卸売業を営む企業やグループ内店舗への食品等の卸売代金として受け取ります。運営は主に地頭鶏ランド日南、新得ファームなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の業績は回復基調にあり、売上高は継続的な増加傾向を示しています。経常利益は一時マイナスに転じた時期もありましたが、既存事業の収益性改善や不採算店舗の撤退など構造改革を進めた結果、直近の期間では大幅な増益を達成し、当期純利益も黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 80億円 | 172億円 | 206億円 | 211億円 | 218億円 |
| 経常利益 | 16億円 | -11億円 | -0.7億円 | 2.5億円 | 7.2億円 |
| 利益率(%) | 20.0% | -6.4% | -0.4% | 1.2% | 3.3% |
| 当期利益 | 3億円 | -13億円 | -4.5億円 | -0.4億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は着実に成長しており、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率が安定して推移する中、店舗運営の効率化や適正な価格改定等の施策が奏功し、営業利益および営業利益率は前年度と比較して大幅に向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 211億円 | 218億円 |
| 売上総利益 | 135億円 | 138億円 |
| 売上総利益率(%) | 64.0% | 63.3% |
| 営業利益 | 2.6億円 | 8.5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が52億円(構成比40%)、賃借料が22億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である国内外食事業は既存店の回復により増収となりました。海外外食事業は不採算店舗の撤退を進めたことで減収となったものの、中食事業は宅配・駅ナカ事業が堅調に推移し増収、生産流通事業も概ね横ばいを維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内外食事業 | 148億円 | 153億円 |
| 海外外食事業 | 25億円 | 21億円 |
| 中食事業 | 30億円 | 37億円 |
| 生産流通事業 | 8億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 211億円 | 218億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローがともにプラスとなり、それらの資金を借入金の返済などの財務活動に充てる「改善型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 13億円 |
| 投資CF | -8億円 | 0.2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は213.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「日本の食のあるべき姿を追求する」というミッションのもと、「生販直結モデル」の事業展開を通じて、第一次産業の活性化と高品質低価格の実現による、食産業における生産者、販売者、消費者の「ALL-WIN」の達成を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、ミッションへの深い共感と文化の醸成を目的として、「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)・感情移入文化の再点火」を重視しています。ミッション共有研修や産地体感フィールド研修などを通じて全社的なエンゲージメントを高め、現場一人ひとりが自律的に判断し行動できる組織文化を築いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営の効率化や生産性向上を目指し、事業を推進しています。財務面においては、有利子負債への依存度を低減させることや、自己資本の拡充による財務基盤の強化を目標に掲げています。さらに、人的資本経営の観点からは、2031年3月期に向けた5つの重点施策ごとに各種のKPIを設定し、進捗をモニタリングしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、AI活用による事業モデルの変革や、人材のポテンシャルを発掘する自律型組織への移行を進めています。また、付加価値の創造による適正な価格転嫁を実施し、収益構造の強靭化を図るほか、東南アジアを中心とした海外市場でのグローバル展開や戦略的M&Aを通じて、新たな成長基盤を拡大する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、現場から自発的に課題を発見し独自の価値を創造できる「自律型人材」の育成を最重要テーマに掲げています。アルバイトから正社員へと段階的にステップアップさせる「カンテラ採用」による次世代リーダーの内製化や、「生販直結モデル」を活かしたバリューチェーンの習得を通じて、多様な人材が活躍できる社内環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 9.4年 | 5,249,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 60.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 87.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(-41.5%)、キャリアビジョン保有率(9.1%)、社内ライセンス保有率(5.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 食品衛生や各種法的規制の遵守
飲食店営業許可や食品表示法等の規制を受けており、万が一、食中毒の発生や異物混入、アレルギー表示の誤り等の法令違反が生じた場合、営業停止処分やブランドイメージの失墜などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 主要食材(地鶏等)への依存
「みやざき地頭鶏」等の主要食材の売上構成比が高いため、鳥インフルエンザ等の疫病発生による供給停止や、円安・穀物価格高騰に伴う飼料やエネルギーコストの上昇が生じた場合、仕入コストの増加を招き、業績に影響を与える可能性があります。
(3) 人件費の高騰と労働力不足
多数の短時間労働者を雇用しており、最低賃金の引き上げや社会保険の適用拡大に伴う労務コストの増加が懸念されます。DX導入等による生産性向上を図っていますが、人手不足や人件費の高騰が継続した場合、収益性を圧迫する可能性があります。



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