阿波製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阿波製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

阿波製紙はスタンダード市場に上場する機能紙・不織布メーカーです。自動車エンジン用濾材や水処理用分離膜支持体などを主力製品としています。2025年3月期の連結業績は、売上高171億円(前期比6.3%増)、経常利益2.8億円(同8.5%増)と増収増益でした。


※本記事は、阿波製紙株式会社 の有価証券報告書(第111期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 阿波製紙ってどんな会社?


阿波製紙は、独自の抄紙技術を活かし、自動車や水処理分野に不可欠な機能紙・不織布を提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1916年に機械抄き和紙メーカーとして創業しました。1961年に自動車エンジン用濾紙、1983年に分離膜支持体用不織布の販売を開始し、機能紙・不織布メーカーへと転換を図りました。2012年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2016年に同市場第一部へ指定替え、2022年にスタンダード市場へ移行しました。2025年3月には新小松島工場にて分離膜支持体用不織布の生産を開始しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は645名(単体433名)です。筆頭株主は株式会社徳応舎で、第2位は主要取引先でもある三木産業株式会社、第3位は株式会社日伸となっています。上位株主には創業家関連や取引先企業が名を連ねています。

氏名 持株比率
徳応舎 20.24%
三木産業 9.98%
日伸 8.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOには三木康弘氏が就任しています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
三木 康弘 代表取締役社長CEO 第一勧業銀行を経て1992年入社。同年より社長を務める。2020年よりCEO・CIO、2022年よりCDOを兼務。
長尾 浩志 取締役専務執行役員COOCTO 1980年入社。研究開発部長、生産管理部長等を歴任。2020年よりCTO・CPO、2022年よりCOOを兼務。
三木 悠太郎 取締役常務執行役員CSOCDO東京支店長 みずほ銀行を経て2017年入社。経営管理部長等を経て、2023年より現職。CDO・CSOを兼務。
三木 富士彦 取締役上席執行役員水環境事業部長 富士通を経て1997年入社。海外事業部長、国際事業部長、品質保証部長等を歴任し、2023年より現職。
岡澤  智 取締役上席執行役員CFO 1986年入社。経営管理部長、経営企画室長等を歴任。2020年よりCFO、2023年よりCROを兼務。
日下 善文 取締役上席執行役員阿南事業所長 1984年入社。大潟工場長、営業部徳島営業所長等を経て、2016年より阿南事業所長。2024年より現職。


社外取締役は、松重和美(四国大学・四国大学短期大学部理事学長)、國原惇一郎(元蝶理代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、機能紙・不織布の製造・販売事業を展開しており、単一セグメントですが製品群ごとに事業を分類しています。

**(1) 自動車関連資材**
エンジン用濾材、クラッチ板用摩擦材原紙、鉛蓄電池用セパレータ原紙などを提供しています。主な顧客は自動車部品メーカー等です。
これらの製品を販売することで対価を得ています。運営は同社およびタイの連結子会社Thai United Awa Paper Co.,Ltd.、中国の持分法適用関連会社が行っています。

**(2) 水処理関連資材**
海水淡水化や超純水製造などに使用される分離膜支持体用不織布、廃水処理用のMBR(膜分離活性汚泥法)用浸漬膜及びユニットを提供しています。世界の水処理用分離膜メーカーや水処理プラントなどが顧客です。
製品の販売により対価を得ています。運営は主に同社が行っており、分離膜支持体用不織布は新工場の稼働により生産能力を増強しています。

**(3) 一般産業用資材**
食品用機能紙(脱酸素剤包材など)、電気・電子部品用機能紙(断熱部材など)を提供しています。加工食品メーカーや電子機器メーカーなどが主な顧客です。
製品の販売により対価を得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間の推移を見ると、売上高は2023年3月期まで拡大傾向にありましたが、2024年3月期に一旦減少し、2025年3月期は再び増加しました。利益面では、2023年3月期に高い利益率を記録しましたが、直近2期は利益率が低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 126億円 150億円 173億円 161億円 171億円
経常利益 -1.1億円 2.8億円 3.4億円 2.6億円 2.8億円
利益率(%) -0.9% 1.8% 1.9% 1.6% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.4億円 2.8億円 2.4億円 0.5億円 0.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。販売費及び一般管理費が増加したものの、営業利益は前期比で増加し、営業利益率も改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 161億円 171億円
売上総利益 26億円 27億円
売上総利益率(%) 15.9% 16.0%
営業利益 3.5億円 4.3億円
営業利益率(%) 2.2% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.5億円(構成比19%)、研究開発費が4.3億円(同19%)、運賃及び荷造費が4.2億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車関連資材は北米での販売好調や円安効果により増収となりました。水処理関連資材は市場の堅調な伸びと拡販効果により増収、一般産業用資材も微増となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
自動車関連資材 87億円 89億円
水処理関連資材 66億円 71億円
一般産業用資材 13億円 13億円
連結(合計) 161億円 171億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスであることから、営業で得た資金に加え、借入等の資金調達を行いながら積極的な投資を実施している「積極型」といえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.9億円 1.6億円
投資CF -37.7億円 -51.8億円
財務CF 35.1億円 48.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「紙の可能性を追求し、多様な機能材との新結合を図ると同時に、環境との調和を目指した商品・サービスの提供を通じて、人類・社会に貢献すること」を使命として掲げています。独自の製品・技術・サービスにより、世界一の会社を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「道徳経済合一」を社是として掲げています。これは、持続可能な社会の実現と利益追求の両立を目指し、高い倫理観を持って公正で誠実な事業活動を推進することを意味しています。また、独自の製品・技術・サービスで世界一を目指すという高い志を持つ文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は第4次中期経営計画(2024年4月~2026年3月)を推進しています。本計画では「事業ポートフォリオの最適化」と「知的資本のフル活用による経営基盤の強化」を重点課題としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は長期的な基本方針として「新市場の開拓と事業領域の拡大」「中核商品のグローバル市場における競争優位の追究」「SDGsと高収益の両立」を掲げています。具体的には、新工場の稼働による分離膜支持体(RO膜用支持体)の供給体制強化やグローバル拡販、NEV(新エネルギー車)市場向けの耐火・断熱商品の開発・拡販に注力しています。また、国内生産体制の再構築や、DXによる業務効率化、研究開発体制の強化を通じた新たな顧客価値の創造に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「謙虚に学びつづけ、助け合い、自ら変化にチャレンジしていく人財」を求める人事理念としています。人材育成方針に基づき、自律的に学び成長し続ける従業員を支援し、エンゲージメントサーベイを通じて組織の活性化を図っています。また、多様な人材の採用、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、ワークライフバランスの向上、健康経営の推進を通じて、従業員がいきいきと働ける環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.7歳 17.7年 5,181,042円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.4%
男女賃金差異(正規) 85.1%
男女賃金差異(非正規) 71.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(92.8%)、障がい者雇用率(2.0%)、特定保健指導該当率(25.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境変化に関するリスク


同社の主力製品である自動車関連資材および水処理関連資材は、グローバルなサプライチェーンに組み込まれており、世界経済の変動の影響を受ける可能性があります。特に、米国政府の関税政策や電気自動車(EV)化の進展による需要構造の変化、競合他社との競争激化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 安定調達に関するリスク


主要原材料である木材パルプやリンターパルプなどを海外から調達しているため、原材料の生産不安定や為替変動、国内メーカーの生産停止等の影響を受ける可能性があります。これにより生産調達体制に支障が生じ、業績が低下する懸念があります。

(3) 人財確保・育成に関するリスク


少子高齢化による労働人口減少や人材の流動化に伴い、優秀な人財の確保・育成が困難になる可能性があります。人手不足や高度技術の継承に支障が生じた場合、同社の安定的成長に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 事業ポートフォリオに関するリスク


自動車関連資材はEV化や燃料電池車の普及により需要が減少する可能性があります。また、水処理関連資材においても競争激化によりシェアが低下するリスクがあります。これらの主力事業への依存に伴うリスクに対し、新製品開発や事業領域の拡大による分散化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。