住信SBIネット銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

住信SBIネット銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するインターネット専業銀行。デジタルバンク事業、BaaS事業、THEMIX事業を展開し、預金・貸出業務や提携先への銀行機能提供を行う。直近の業績は、貸出金利息や手数料収益の増加により経常収益、経常利益、当期純利益ともに増収増益で推移している。


#住信SBIネット銀行転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、住信SBIネット銀行株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 住信SBIネット銀行ってどんな会社?


インターネット専業銀行として、モバイルアプリを通じた銀行サービスや、提携先企業への銀行機能提供(BaaS)を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1986年に住信ビジネスサービスとして設立され、2007年に銀行業の営業免許を取得し現商号にて営業を開始しました。2020年には日本航空との提携による「JAL NEOBANK」を開始しBaaS事業を拡大、2023年3月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。2024年には子会社NEOBANKテクノロジーズを設立しています。

従業員数は連結785名、単体664名です。大株主の第1位は資産管理業務等を行う三井住友信託銀行、同率第1位は金融持株会社のSBIホールディングスで、両社が34.19%ずつ保有しています。第3位は証券金融業務を行う日本証券金融です。同社は三井住友信託銀行とSBIホールディングスの共同出資によるインターネット銀行です。

氏名 持株比率
三井住友信託銀行 34.19%
SBIホールディングス 34.19%
日本証券金融 3.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長兼社長執行役員は円山 法昭氏です。社外取締役比率は約35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
円山 法昭 代表取締役社長兼社長執行役員 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行後、SBIホールディングス取締役執行役員常務、SBIモーゲージ(現SBIアルヒ)代表取締役会長執行役員CEOなどを経て2014年4月より現職。
松本 安永 代表取締役会長兼会長執行役員 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社後、同社常務執行役員などを歴任。2024年4月に同社顧問となり、同年6月より現職。
横井 智一 取締役兼副社長執行役員 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行、SBIホールディングス入社を経て同社出向。2024年4月より現職。NEOBANKテクノロジーズ代表取締役社長を兼任。
岡澤 亮太 取締役兼常務執行役員 住友信託銀行(現三井住友信託銀行)入社。三井住友トラスト・ホールディングス総務部統括主任調査役を経て同社出向。2024年6月より現職。
木村 紀義 取締役 電通国際情報サービス(現電通総研)入社、イー・トレードなどを経て同社設立準備調査会社出向。常務執行役員システム本部長などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、米山 学朋(三井住友信託銀行取締役専務執行役員)、町田 行人(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業入社)、八田 斎(元ライフネット生命保険常務取締役執行役員CCO兼CISO)、武田 知久(元日本銀行理事)、森山 保(マクサス・コーポレートアドバイザリー代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルバンク事業」「BaaS事業」「THEMIX事業」を展開しています。

(1) デジタルバンク事業


主にモバイルアプリやインターネットをチャネルとして、預金業務、貸出業務、デビットカード業務などの金融サービスを個人および法人顧客に提供しています。主力商品である住宅ローンについては、ネット完結型の申込プロセスの提供などにより顧客利便性を高めています。

収益源は、貸出金の利息収入、各種手数料収入などです。運営は主に住信SBIネット銀行が行っており、住宅ローンの一部業務については子会社の株式会社優良住宅ローンなどが担っています。

(2) BaaS事業


提携先企業に銀行機能を提供する「NEOBANK®」サービスを展開しています。提携先の顧客が、提携先のアプリやサービスを通じて銀行口座を開設し、決済や融資などの銀行サービスを利用できる仕組みを提供しています。

収益源は、提携先を経由した顧客取引から得られる収益の一部や、銀行機能提供に対する手数料などです。運営は住信SBIネット銀行が主体となり、子会社のDayta Consulting株式会社などが関連業務を行っています。

(3) THEMIX事業


顧客の同意を得たデータを活用したデータマーケティングや広告事業、林業・林政DX、カーボンクレジット支援などの非金融ビジネスを展開しています。金融データと非金融データを組み合わせた新たな価値創造を目指しています。

収益源は、広告掲載料やデータプラットフォーム利用料、DX支援に対する対価などです。運営は、子会社の株式会社テミクス・データ、株式会社テミクス・グリーン、持分法適用関連会社の株式会社マプリィなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、経常収益(売上高に相当)は一貫して増加傾向にあります。経常利益および当期純利益も毎期増益を続けており、順調な成長を示しています。特に2025年3月期は経常収益が1,400億円を超え、当期純利益も280億円規模に達しています。利益率も高い水準で安定しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 788億円 835億円 981億円 1,186億円 1,465億円
経常利益 207億円 233億円 294億円 348億円 382億円
利益率(%) 26.3% 27.9% 30.0% 29.4% 26.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 139億円 171億円 199億円 248億円 281億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、経常収益(売上高)が約24%増加し、業務粗利益(売上総利益)も約9%増加しました。経常利益(営業利益)も増益を確保していますが、利益率は若干低下しています。収益の拡大に伴い、利益額自体は着実に積み上がっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,186億円 1,465億円
売上総利益 727億円 794億円
売上総利益率(%) 61.3% 54.2%
営業利益 348億円 382億円
営業利益率(%) 29.4% 26.1%


販売費及び一般管理費(営業経費)のうち、外注費が124億円(構成比31%)、減価償却費が82億円(同20%)、給料・手当が62億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


デジタルバンク事業は貸出金利息や手数料収益の増加により増収増益となりました。BaaS事業も口座数の増加等により大幅な増収増益を達成しています。THEMIX事業は事業立ち上げ期のため経費が先行し、損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
デジタルバンク事業 655億円 707億円 313億円 338億円 47.8%
BaaS事業 89億円 127億円 36億円 47億円 37.2%
THEMIX事業 2億円 4億円 -1億円 -3億円 -70.3%
調整額 -19億円 -44億円 0億円 -1億円 -
連結(合計) 727億円 794億円 348億円 382億円 48.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は末期型(事業拡大に伴う資産増加)です。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に貸出金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5,512億円 -325億円
投資CF 154億円 -1,358億円
財務CF -14億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は1.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、正しい倫理的価値観と誠実な行動により社会から信頼される企業を目指しています。金融業における近未来領域の開拓と革新的な事業モデルの追求により新しい価値を創造し、最先端のITを駆使した金融取引システムを安定的に提供することで、顧客との強固な信頼関係と揺るぎない事業基盤を確立することを経営理念としています。

(2) 企業文化


同社は「テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会を創っていく。」をコーポレートスローガンとしています。法令遵守や顧客保護、リスク管理等の態勢構築と人材育成、利便性・先進性・収益性の高い商品・サービスの開発、信頼性の高い事務・システムの構築を事業運営方針として掲げ、公正かつ革新的な姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期的な経営戦略による計数目標として、2025年3月期を到達目標年とする「中期事業目標」を公表し、以下の実績を達成しました。

* 業務粗利益:793億円(目標790億円以上)
* 経常利益:381億円(目標400億円以上)
* ROE:17.5%(目標17%以上)
* OHR(経費率):51.2%(目標50%以下)
* 住宅ローン実行額:1兆9,361億円(目標2兆円以上)
* 口座数:825万口座(目標900万口座以上)
* NEOBANK提携パートナー数:22社(目標15~20社)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、革新的なビジネスモデルの創造、安定した収益基盤・顧客基盤の確立、経営管理態勢の強化を課題として掲げています。デジタルバンク事業では住宅ローンのプロセス改革や新商品開発、BaaS事業では提携先拡大と口座収益化、THEMIX事業ではデータプラットフォームビジネスの展開を推進します。また、生成AI等の先端技術活用も進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、性別・国籍・年齢等に関わらず多様な人材が能力を発揮できる環境を重視しています。新卒・経験者採用に加え、システム部門での外国籍人材採用も推進しています。また、テレワークやスーパーフレックス制度等の柔軟な働き方の整備、階層別研修やリスキリング等の人材投資、パルスサーベイによるエンゲージメント向上施策を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.3歳 4.9年 8,509,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.7%
男女賃金差異(正規雇用) 65.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(2028/3末時点目標20.0%以上)、男性育児休業取得人数(14日以上の取得推奨)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバー攻撃に関するリスク


インターネット専業銀行である同社にとって、サイバー攻撃による不正アクセスやシステム停止は重大なリスクです。個人情報の漏洩や銀行機能の停止が発生した場合、事業活動への悪影響や社会的信用の失墜につながる可能性があります。同社はCSIRTの設置や24時間監視等の対策を講じていますが、攻撃の高度化により完全に防げない可能性があります。

(2) 大規模システム障害


システムがサービスの根幹であるため、システム障害による取引停止やデータ消失は事業に甚大な影響を及ぼします。同社はシステムの冗長化や監視体制の強化に努めていますが、災害や想定外の事象により大規模障害が発生した場合、行政処分や信用低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。また、BaaS事業における提携先システムとの連携不具合もリスク要因です。

(3) 銀行代理業者や提携先の拡大及びそのモニタリングに関するリスク


住宅ローン販売やBaaS事業において銀行代理業者や提携先は重要な役割を担っています。適切な提携先の開拓が進まない場合や、提携先による法令違反等を防止できなかった場合、事業成長の鈍化や行政処分、損害賠償責任が生じる可能性があります。同社は銀代業務管理部署を設置しモニタリングを強化していますが、リスクを完全に排除できる保証はありません。

(4) 金融犯罪に関するリスク


マネー・ローンダリングやフィッシング詐欺等の金融犯罪対策は重要課題です。同社のサービスが犯罪に利用された場合、行政処分の対象となるほか、サービスの安全性に対する信頼が損なわれる可能性があります。同社はリスク評価に基づき対策を高度化していますが、巧妙化する犯罪手法への対応が遅れるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。