アジュバンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アジュバンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アジュバンホールディングスは、東京証券取引所 スタンダード市場に上場する企業です。サロン専売の化粧品メーカーとして、スキンケアやヘアケア商品の企画開発・販売を主力としています。直近の業績は、売上高が41.0億円と前期比で減収となりましたが、当期純利益は0.4億円となり黒字転換を果たしています。


※本記事は、株式会社アジュバンホールディングス の有価証券報告書(第36期、自 2024年3月21日 至 2025年3月20日、2025年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アジュバンホールディングスってどんな会社?


サロン専売の化粧品メーカーとして、美容室等に向けたスキンケア・ヘアケア商品の企画開発・販売を行っています。

(1) 会社概要


1990年4月に有限会社みずふれんどとして設立され、1992年にアジュバン化粧品の製造・販売を開始しました。2012年12月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2013年12月には市場第一部銘柄に指定されました。その後、2021年9月に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。

同社グループの従業員数は連結で124名、単体で17名です。大株主については、筆頭株主は株式会社T・Nソリューション(12.03%)、第2位は取締役の田中昌樹氏(11.74%)、第3位は株式会社ボンニー(11.64%)となっています。

氏名 持株比率
T・Nソリューション 12.03%
田中昌樹 11.74%
ボンニー 11.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長兼社長は中村豊氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
中村豊 代表取締役会長兼社長 1990年同社設立。2016年代表取締役会長を経て、2021年より会長兼社長。アジュバンコスメジャパン代表取締役を兼務。
田中順子 専務取締役 1990年同社設立時に代表取締役社長。2011年専務取締役経営企画課担当などを経て、2021年より現職。
中川秀男 取締役 1993年入社。管理本部本部長兼総務部部長などを歴任し、2011年取締役就任。2021年より2C代表取締役を兼務。
藤原武 取締役 1997年入社。営業企画部部長、西日本営業部部長などを経て2021年執行役員。2023年より現職。
大嶋宏和 取締役 2005年入社。東日本営業部部長などを経て2021年執行役員。2023年より現職。
田中昌樹 取締役 2004年入社。アジュバンコスメジャパン取締役企画分析部部長を経て、2024年より現職。


社外取締役は、南正光(元日本電子材料内部統制・コンプライアンス担当シニアエキスパート)、影田清晴(影田総合法律事務所代表)、三村淳司(三村公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化粧品販売事業」の単一セグメントですが、取り扱い品目により「スキンケア」「ヘアケア」「その他」に区分されています。

**スキンケア事業**
クレンジング、洗顔料、化粧水、美容液、マスク、保湿クリーム、化粧下地、メイクアップ、ボディケアなどを提供しています。主な顧客は理美容室やエステティックサロン等のサロンです。

**ヘアケア事業**
シャンプー、トリートメント、頭皮用クレンジング、頭皮用ローション、スタイリング剤、カラー剤などを提供しています。サロン専売品として、美容のプロフェッショナルを通じたカウンセリング販売を行っています。

**その他事業**
育毛剤、サロン向け経営管理システム(MAPシステム)、業務用美容材料などを提供しています。また、連結子会社の2CによるEC事業や、ADJUVANT GLOBAL COMPANY LIMITEDによる海外事業も含まれます。

収益モデルは、主にサロンに対する商品卸売による販売収入です。また、MAPシステムの利用料や、ECサイトを通じた消費者への直接販売収入も得ています。運営は、国内理美容専売事業をアジュバンコスメジャパン、EC事業を2C、業務用商材販売をシアー・プロフェッショナル、海外事業をADJUVANT GLOBAL COMPANY LIMITEDがそれぞれ行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円台で推移していますが、直近では減少傾向にあります。利益面では、2024年3月期に当期純損失を計上しましたが、2025年3月期には黒字転換を果たしました。経常利益率は以前と比較すると低水準にあり、収益性の回復が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 48.9億円 44.3億円 43.8億円 44.4億円 41.0億円
経常利益 3.3億円 4.0億円 2.7億円 0.2億円 1.4億円
利益率(%) 6.7% 9.1% 6.1% 0.4% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.4億円 3.9億円 4.0億円 -1.0億円 0.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も縮小していますが、販売費及び一般管理費の抑制により、営業利益は黒字に転換しました。売上総利益率は約64%前後と高い水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 44.4億円 41.0億円
売上総利益 28.6億円 26.6億円
売上総利益率(%) 64.4% 64.8%
営業利益 -0.0億円 1.3億円
営業利益率(%) -0.0% 3.1%


コスト構成を見ると、販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.9億円(構成比23%)、販売促進費が2.2億円(同9%)、役員報酬が1.6億円(同7%)を占めています。売上原価は売上高に対して約35%で推移しており、製造原価のコントロールがなされています。

(3) セグメント収益


区分別に見ると、主力のヘアケア、スキンケアともに減収となりました。その他事業においては、株式会社2CのEC事業などで集客導線の見直し等を行いましたが、売上高は大きく減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
スキンケア 16.4億円 15.2億円
ヘアケア 28.3億円 27.4億円
その他 3.2億円 1.9億円
連結(合計) 44.4億円 41.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.8億円 3.1億円
投資CF 3.9億円 -1.0億円
財務CF -2.0億円 -1.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「美と健康を通じてすべての人に夢と感動をお届けする」を経営理念として掲げています。人々の生活を豊かにする商品の研究・開発を通じて社会貢献すること、美容のプロフェッショナルをサポートするプロフェッショナルを目指すこと、そして顧客や社員に感謝し感謝される存在となることを経営目標としています。

(2) 企業文化


同社は創業以来、カウンセリングによる販売にこだわりを持つサロン専売メーカーとして、「人間が本来持っている、自ら健やかになろうとする力を引き出す」ことを商品開発の基本方針としています。「美しさに正しくありたい」という想いのもと、糖とミネラルを独自のバランスで配合し、肌や髪のトラブル原因となる要素を極力取り除いた商品提供を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2025-2027 NEXT」と題した中期経営計画を策定し、2030年度のありたい姿に向けた事業基盤の構築を進めています。2028年3月期を最終年度とする数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:47.7億円
* 連結経常利益:1.7億円
* ROE:3.2%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、取引サロン数の抜本的な増加やECサイトの拡充による「顧客の量的拡大と深耕」、業務用商材の強化による「新たなカラー顧客の創造」、そして東南アジアなどへの「海外市場の拡大」を重点戦略としています。

* 取引サロン数の増加と店販力強化サポート
* 業務用カラー剤販売事業の拡大
* 香港、韓国に加え東南アジア等への海外展開
* 新規事業の育成とM&Aの検討

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「ヒトに基軸をおく経営」を掲げ、社員一人ひとりが心身ともに健康であり、多様性を確保することが企業の持続的存続につながると考えています。人的資本を最重要資産と位置づけ、「安心・安全・公平な労働環境」の整備を進めるとともに、女性活躍推進や働きがいの向上、心身の健康維持・増進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 7.0年 6,884,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 82.7%
男女賃金差異(正規) 81.0%
男女賃金差異(非正規) 21.3%


※男性育児休業取得率は、集計対象となる従業員がいないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(30.0%)、有給休暇取得率目標(70%以上)、所定外労働時間45時間/月の超過回数目標(0回)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内化粧品市場の競争激化


美容業界では人口減少による顧客数の減少や消費停滞が予想され、競合他社や異業種からの参入により競争が激化しています。特に自然派・オーガニック製品への注目が高まる中、競争環境の変化や顧客ニーズに適切に対応できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制への対応


化粧品の企画・販売において医薬品医療機器等法等の規制を受けており、法令違反等により許可の取消しや業務停止命令を受けた場合、事業活動が制限される可能性があります。また、EC事業における特定商取引法や新たなインターネット関連規制の変更等も、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 商品開発の不確実性


新商品やリニューアル商品の継続的な投入は成長の要ですが、開発期間の長期化や、発売後に予期せぬ新技術・成分の発見等により想定した利益が得られない可能性があります。また、万が一商品に瑕疵が判明した場合、損害賠償請求や信用の失墜により、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 製造委託先への依存


商品の製造を外部工場に委託しているため、委託先が天災や経営破綻等により製造能力が低下した場合、商品の品質維持や安定供給に支障をきたす恐れがあります。このような事態が発生した場合、同社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。