※本記事は、キッズウェル・バイオ株式会社の有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キッズウェル・バイオってどんな会社?
バイオシミラーと細胞治療を両輪とするハイブリッド事業体制で、革新的な医薬品開発に取り組む企業です。
■(1) 会社概要
2001年に北海道大学での研究成果の実用化を目的としてジーンテクノサイエンスが設立されました。2012年にフィルグラスチムバイオシミラーの製造販売承認を取得し、同年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。その後も事業拡大を進め、2021年に現在のキッズウェル・バイオへ商号変更を行いました。2024年には細胞治療事業をS-Quatreとして分社化しています。
従業員数は連結・単体ともに32名体制で運営されています。筆頭株主は事業会社のノーリツ鋼機で、第2位は個人の江平文茂氏、第3位はNANOホールディングスとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ノーリツ鋼機 | 19.08% |
| 江平文茂 | 4.03% |
| NANO ホールディングス | 2.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は紅林伸也氏です。取締役3名のうち社外取締役は2名であり、社外取締役比率は約66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 紅林伸也 | 代表取締役社長 | ゴールドマン・サックス証券、再生医療推進機構等を経て、2019年同社に入社。執行役員事業開発本部長を務め、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、栄木憲和(元バイエル薬品社長)、西岡佐知子(プラスナコミュニケーションズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品開発事業」を展開しています。
■(1) バイオシミラー事業
バイオシミラー原薬等の開発・供給を行っており、国内外の製薬企業を主な顧客としています。先行バイオ医薬品と同等の品質・安全性・有効性を持つ医薬品をより安価な製造プロセスで開発し、医療費抑制と患者のアクセス向上に貢献しています。
収益源は、臨床試験開始や承認申請等の進捗に応じたマイルストンペイメント(一時金)と、パートナー製薬企業への原薬供給による販売収益で構成されています。運営は同社が主体となり、パートナー製薬企業や開発・製造受託機関と連携して行っています。
■(2) 細胞治療事業(再生医療)
小児疾患や希少疾患等、従来の医薬品では治療が困難なアンメットメディカルニーズの高い疾患領域に対し、乳歯歯髄幹細胞(SQ-SHED)を活用した細胞治療製品の研究開発を行っています。脳性麻痺を最重要適応症と位置づけています。
収益源は、提携時の契約一時金や開発進捗に応じたマイルストン収益に加え、上市後における細胞等の供給による販売収益を想定しています。運営は主に完全子会社であるS-Quatreが担い、国内外のアカデミアや製薬企業と連携しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の売上高はバイオシミラー原薬の供給増等により大幅な増収傾向にあります。一方で、利益面については研究開発投資の強化等により経常損益は赤字に転じており、先行投資型のバイオベンチャー特有の業績推移となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 51億円 | 66億円 |
| 経常利益 | 0.1億円 | -3.7億円 |
| 利益率(%) | 0.1% | -5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.6億円 | 2.9億円 |
■(2) 損益計算書
直近の売上高は拡大しているものの、円安に伴う製造原価の上昇等により売上総利益率は低下しています。また、新規開発や臨床試験に向けた研究開発費の増加により営業損益は赤字に転じています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 51億円 | 66億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.3% | 26.5% |
| 営業利益 | 0.3億円 | -1.4億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | -2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が11億円(構成比59%)、支払ロイヤリティーが2億円(同12%)を占めています。売上原価は全額が製品製造原価(構成比100%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは医薬品開発事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上高推移を記載しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 医薬品開発事業 | 51億円 | 66億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のため借入等による資金調達を行い、研究開発や設備への投資を継続している局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | -11億円 |
| 投資CF | 0.7億円 | -0.1億円 |
| 財務CF | -2億円 | 14億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を企業理念に掲げ、「こどもの力になること、こどもが力になれること」を経営ビジョンとしています。バイオ医薬品の開発ノウハウを活用し、病気に苦しむ患者や家族を支える革新的な治療薬を提供することで、すべての人々が幸せに暮らせる社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
多様性(性別・年齢・国籍・価値観)、創造性・革新性、自主性を尊重し、失敗を恐れずチャレンジができる組織風土の醸成に取り組んでいます。一人ひとりのキャリアプランを尊重した働き方の実現を目指すとともに、創造的・革新的な取り組みや自主的な活動を積極的に評価する企業文化を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
研究開発型バイオベンチャーとして、事業特性に応じた中長期的な経営指標を設定しています。バイオシミラー事業では開発投資と収益のバランスを見極めながら事業単独での継続的な収益確保を目標としています。また、グループ全体として事業の着実な推進と安定的な連結営業黒字化の実現を目指し、業務効率化等に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
「安定と成長の両立」を目指すハイブリッド事業体制を推進しています。バイオシミラー事業では既存品の安定供給体制強化や製造原価の低減を図りつつ、新規バイオシミラーの開発や海外展開を推進します。細胞治療事業では脳性麻痺を最重要適応症と再定義して経営資源を集中し、パートナー企業と連携しながら実用化に向けた開発を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
バイオ医薬品および細胞治療製品の研究開発に必要な専門人材(研究開発、品質管理、製造、薬事、知的財産等)の確保・育成を経営の重要基盤と位置付けています。グローバル人材の採用や、OJT・外部連携を通じた能力向上を支援するほか、従業員のキャリアやライフステージに応じた柔軟な働き方を可能とする制度の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.6歳 | 5.6年 | 9,168,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医薬品開発の不確実性と長期化リスク
医薬品の研究開発には長期間を要し、予期せぬ副作用の発生や期待する治療効果が得られない場合、開発が中止される可能性があります。また、各種試験の遅延や治験薬製造の問題等により承認取得が想定通りに進まない場合、事業計画および経営成績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) バイオシミラー市場における競合環境の変化
国内外の製薬企業やバイオベンチャーが独自または共同で医薬品開発を行っており、同一疾患を対象とした競合品が存在します。他社の開発品やバイオAG(先行品と原薬・製剤が同一の後発品)が市場で優位性を示した場合、同社開発品のシェア低下や開発中止を余儀なくされる可能性があり、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) パートナー企業等への依存に関するリスク
同社の事業モデルは、臨床開発以降のプロセスや原薬製造においてパートナー製薬企業や開発・製造受託機関(CDMO)との提携に大きく依存しています。提携先の方針変更による契約解除、製造の遅延、品質問題等が発生した場合、開発スケジュールや原薬の安定供給に支障が生じ、事業計画に大きな影響を与える可能性があります。



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