キッズウェル・バイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キッズウェル・バイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のバイオベンチャー。バイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の2軸で展開しています。第25期はバイオシミラー製品の販売増や価格調整等が奏功し、売上高が前期比で倍増、営業損益および経常損益で上場来初の黒字化を達成しました。


※本記事は、キッズウェル・バイオ株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キッズウェル・バイオってどんな会社?


バイオシミラーによる安定収益と、革新的な細胞治療(再生医療)開発を両立するハイブリッド型のバイオ企業です。

(1) 会社概要


2001年に北海道大学発のバイオベンチャーとして設立され、2012年に東証マザーズへ上場しました。同年、国内初のフィルグラスチムバイオシミラーの製造販売承認を取得し上市を果たしました。その後、ノーリツ鋼機グループとの資本提携や組織再編を経て、2021年に現社名へ変更しました。2024年には細胞治療事業を子会社のエスカトルへ承継し、事業体制を再構築しています。

連結従業員数は37名(単体37名)です。筆頭株主はノーリツ鋼機で21.58%を保有するその他の関係会社となっており、第2位は個人株主の江平文茂氏(3.22%)、第3位はNANO MRNA(2.27%)です。

氏名 持株比率
ノーリツ鋼機 21.58%
江平 文茂 3.22%
NANO MRNA 2.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は紅林伸也氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
紅林 伸也 代表取締役社長 ゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレー証券を経て、再生医療推進機構(現セルテクノロジー)入社。2019年同社入社、執行役員事業開発本部長等を経て2023年より現職。
三谷 泰之 取締役 藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。東京大学で博士号取得後、米国留学等を経て2019年同社入社。事業開発部長、執行役員研究本部長等を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、栄木憲和(元バイエル薬品代表取締役会長)、西岡佐知子(プラスナコミュニケーションズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「バイオシミラー事業」および「細胞治療事業(再生医療)」事業を展開しています。

(1) バイオシミラー事業


特許期間が満了した先行バイオ医薬品と同等の品質・有効性・安全性を持つバイオ後続品の開発を行っています。がん領域や眼疾患領域など、医療ニーズの高い分野で製品を展開しており、パートナー製薬企業を通じて医療機関へ提供されています。

収益は、開発段階に応じたマイルストン収入と、上市後の原薬・製剤供給による販売収益、およびパートナー企業の販売実績に応じたロイヤリティ収入から成ります。同社が開発から製造までをマネジメントし、原薬等はCDMO(開発製造受託機関)に製造委託し、パートナー企業へ供給する体制をとっています。

(2) 細胞治療事業(再生医療)


乳歯歯髄幹細胞(SHED)を活用した再生医療等製品の実用化を目指しています。特に脳性麻痺などの小児疾患や希少疾患、骨疾患等を対象に、従来治療が困難であった疾患に対する新たな治療法の創出に取り組んでいます。

主な収益源は、製薬企業との提携時に得られる契約一時金や開発マイルストン収入です。将来的には、製品の原料となる細胞等の供給による販売収益やロイヤリティ収入を見込んでいます。運営は主に連結子会社の株式会社S-Quatreが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期にかけての業績を見ると、売上収益は変動しつつも直近期で大きく伸長しました。損益面では長らく損失計上が続いていましたが、2025年3月期に営業利益および経常利益が黒字転換しました。最終損益についても赤字幅が大幅に縮小し、収益体質の改善が進んでいます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 10億円 16億円 51億円
経常利益 -10億円 -10億円 0.1億円
利益率(%) -99.5% -60.7% 0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -10億円 -5億円 -0.2億円

(2) 損益計算書


直近の損益構成を確認すると、売上高に対して売上原価の比率が比較的高いものの、売上総利益率は30%台を確保しています。営業利益率はプラスに転じており、販売費及び一般管理費のコントロールが進んでいることがうかがえます。

項目 2025年3月期
売上高 51億円
売上総利益 16億円
売上総利益率(%) 32.3%
営業利益 0.3億円
営業利益率(%) 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が8億円(構成比48%)、その他経費が4億円(同25%)を占めています。売上原価については、製品製造原価が34億円(構成比100%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCFパターンは「改善型(営業CF+、投資CF+、財務CF-)」です。営業利益に加え、資産売却等によって資金を確保しつつ、借入金の返済を進める改善局面にあると言えます。

項目 2025年3月期
営業CF 9億円
投資CF 1億円
財務CF -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.1%で市場平均(グロース市場:43.3%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を企業理念に掲げ、「こどもの力になること、こどもが力になれること」を経営ビジョンとしています。バイオ医薬品の研究開発ノウハウを活かし、患者とその家族、医療従事者を支える革新的な治療法の開発を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、サステナビリティの文脈において、多様性(性別・年齢・国籍・価値観)を認め尊重する風土を重視しています。また、創造的・革新的な取り組みや自主性を評価し、失敗を恐れずにチャレンジできる環境づくりを推進しており、専門性の高いバイオ人財が能力を最大限発揮できる組織文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は研究開発型バイオベンチャーとして、短期的な数値目標よりも中長期的な指標を重視しています。バイオシミラー事業と細胞治療事業の組み合わせによる「安定と成長の両立」を目指し、以下の目標を掲げています。

* バイオシミラー事業単独での継続的な営業黒字
* 2026年度以降の安定的な連結営業黒字化の実現

(4) 成長戦略と重点施策


バイオシミラー事業では、安定供給体制の構築と収益性改善に加え、新規バイオシミラーの開発に注力します。また、国内初のサプライチェーン構築や海外市場への展開も推進します。細胞治療事業では、SHED(乳歯歯髄幹細胞)を用いた製品の研究開発を進め、早期のパートナー提携による開発リスク低減と収益化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


高度な専門知識を持つ「バイオ人財」の確保と育成を最優先事項としています。多様性や創造性を尊重し、失敗を恐れず挑戦できる環境を提供することで、イノベーションを促進します。また、従業員一人ひとりのキャリアプランを尊重し、柔軟な働き方の導入や報酬制度の整備を通じて、優秀な人財の定着と活躍を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.5歳 5.6年 8,146,569円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 許認可等に関するリスク


同社グループは医薬品医療機器等法等の規制下で事業を行っており、法令違反や有資格者の欠員等により業務停止や許認可取消等の処分を受けた場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、開発品が臨床試験等で有効性・安全性を示せず承認が得られない場合、上市できず事業計画に支障をきたす恐れがあります。

(2) 医療制度改革の影響に関するリスク


日本では医療費抑制のための薬価改定が継続的に行われており、同社開発品の上市後も薬価引き下げの影響を受ける可能性があります。これにより、パートナー企業への原薬販売価格やロイヤリティ収入が減少し、経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 医薬品開発事業全般に関するリスク


医薬品開発は長期かつ不確実性が高く、予期せぬ副作用や効果不足により開発が中止される可能性があります。また、試験の遅延や治験薬製造の問題等で承認取得が遅れるリスクもあります。これらの事態が発生した場合、事業計画や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の販売先への依存に関するリスク


売上の大半を特定のパートナー製薬企業(千寿製薬、持田製薬等)向けのバイオシミラー原薬供給等が占めています。新規パートナーとの提携で分散を図る方針ですが、主要な販売先との契約解消や方針変更が生じた場合、経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。