**シュッピン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、シュッピンの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シュッピンってどんな会社?
同社グループはカメラ、時計、筆記具などの価値ある中古品および新品の買取・販売事業をインターネットと実店舗で展開しています。
■(1) 会社概要
同社は2005年に設立され、同年カメラ事業のEC部門の営業を譲り受けました。2006年に時計販売の店舗買取・販売事業、2008年に筆記具買取・販売事業を開始し、専門性の高い取扱商材を拡大してきました。その後、2012年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2015年に同市場第一部へ市場変更を果たしています。
同社(単体)の従業員数は260名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は海外の金融機関であるUS BANK NATIONAL ASSOCIATION JP ACCTS TSとなっており、第2位は資産管理業務などを行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位も海外金融機関のMSCO CUSTOMER SECURITIESです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| US BANK NATIONAL ASSOCIATION JP ACCTS TS | 9.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.51% |
| MSCO CUSTOMER SECURITIES | 5.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長社長執行役員CEOは齋藤仁志氏が務めています。取締役12名のうち、社外取締役は6名となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 齋藤仁志 | 代表取締役社長社長執行役員CEO | 2001年マップグループ入社。2006年同社入社後、Map Camera営業部長や取締役営業本部長を経て、2022年ESG経営推進室長などを歴任。2026年5月より現職。 |
| 岡部梨沙 | 取締役上席執行役員 | 2007年グローバル・ブレイン入社。ディー・エル・イー等を経て2017年同社入社。管理本部長などを経て2024年取締役上席執行役員等に就任。2026年6月より現職。 |
| 小野尚彦 | 取締役 | 2000年マップグループ入社。2006年同社入社。EC営業部長等を経て、2016年代表取締役社長に就任。2018年社長執行役員CEOを務め、2026年5月より現職。 |
社外取締役は、村田真一(弁護士)、滝ヶ﨑裕二(公認会計士)、草島智咲(ITコンサルタント)、信実克哉(機関投資家での長期投資業務等)、西村裕二(経営コンサルタント)、泉智之(ポートフォリオマネージャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「カメラ事業」「時計事業」「筆記具事業」「自転車事業」の各報告セグメントを展開しています。
■カメラ事業
カメラ愛好家向けの銘機や国内外のデジタルカメラ、フィルムカメラ、交換レンズなどの新品および中古品を幅広く取り扱い、多様なニーズに応える事業を展開しています。ECサイト上で詳細な商品画像やコンディション評価を網羅的に掲載し、店舗でもエキスパートによるアドバイスを提供しています。
収益源は、個人顧客からの通信買取や店舗買取を通じた中古品の販売、ならびにメーカーや問屋から仕入れた新品の販売代金です。独自の買取査定データベースとAIを活用した価格設定システムを用いて適切な価格で商品を流通させており、事業運営はシュッピンが直接行っています。
■時計事業
フォーマルな時計からスポーツ時計までの中古品および新品を幅広く取り揃え、機械式時計を中心とした時計専門店やレディース時計等の専門店を運営しています。専門知識を持ったエキスパートがサービスを提供し、顧客に安全で快適な取引環境を整備しています。
収益モデルはカメラ事業と同様に個人からの買取による中古品の販売代金および新品の販売代金です。中古品を下取し新品を提供することで顧客の利便性とリピート利用を促しており、同事業の運営もシュッピンが主体となって実施しています。
■筆記具事業
世界各国のブランド万年筆やボールペンをはじめとした筆記具関連の幅広い商品を中古品・新品ともに取り揃え、筆記具専門店として展開しています。
中古品と新品の両方を取り扱い、中古品の下取と新品の提供を組み合わせた販売代金が主な収益源です。インターネットを通じた安全な取引環境の構築と情報開示を行い、事業の運営はシュッピンが行っています。
■自転車事業
ロードバイク、小径自転車、マウンテンバイクなどの自転車本体に加え、関連するパーツやアクセサリーまでの中古品および新品を幅広く取り揃えた専門店として事業を展開していました。
収益源は自転車および関連部品の買取・販売による代金でしたが、成長性および収益性の高い事業への経営資源集中を目的として、同事業はシュッピンにより2026年3月31日をもって終了しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は堅調な推移を示していましたが、直近では減収となりました。利益面でも変動が見られ、経常利益率は5%から7%台の範囲で推移し、直近では4.8%に低下しています。EC強化への投資や市場環境の変化に機動的に対応しながら事業運営を継続している状況がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 435億円 | 456億円 | 488億円 | 527億円 | 519億円 |
| 経常利益 | 32億円 | 24億円 | 33億円 | 34億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 5.3% | 6.8% | 6.4% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 22億円 | 17億円 | 23億円 | 20億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年同期から微減となり、それに伴い売上総利益も減少していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方で営業利益は約9億円の減益となり、営業利益率も低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 527億円 | 519億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 98億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.7% | 18.8% |
| 営業利益 | 34億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が16億円(構成比22%)、支払手数料が14億円(同19%)、販売促進費が13億円(同18%)を占めています。売上原価の大部分は当期商品仕入高によって構成されています。
■(3) セグメント収益
主力であるカメラ事業は全体の売上の大半を占め、高い利益率を維持していますが、当期は減収減益となりました。時計事業は増収となったものの、先行施策の影響等により減益となっています。筆記具事業は安定した推移を見せる一方で、終了した自転車事業は減収となり損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| カメラ事業 | 412億円 | 407億円 | 46億円 | 42億円 | 10.2% |
| 時計事業 | 102億円 | 104億円 | 4.4億円 | 3.0億円 | 2.9% |
| 筆記具事業 | 4.7億円 | 4.8億円 | 0.7億円 | 0.7億円 | 14.9% |
| 自転車事業 | 8.0億円 | 3.1億円 | 0.2億円 | -0.5億円 | -15.8% |
| 調整額 | - | - | -17億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 527億円 | 519億円 | 34億円 | 25億円 | 4.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 31億円 |
| 投資CF | -8億円 | -13億円 |
| 財務CF | 0.5億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営理念として「企業は社員と社会に対し、夢を与え続けること」を存在価値と定義し、「やる気こそ会社発展の原動力」と掲げています。インターネットを活用した「価値ある新品と中古品」取引の拡大、顧客の利便性向上を企図し、「安心、安全な取引」を最も重要視して事業を展開することで、循環型社会へ貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
価値ある中古品を見極め、買取・販売することで循環型社会に貢献するプロセスを「リバリュー」と呼び、サステナビリティ戦略として最重要視しています。また、中長期目標の実現に向けたビジョンとして「4つのシンカ」(進む価値、知識を深める価値、真実の価値、新しい価値の追求)や「バリューチェーン・シナリオプランニング」を掲げ、従業員エンゲージメントの強化を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は継続的な収益力の維持向上を目指し、長期的には売上高経常利益率8%を目標として事業展開を行っています。また、株主重視の観点から、株主価値の最大化のための重要な指標としてROE(株主資本利益率)を注視し、長期目標として30%以上を目指すことを掲げています。
* 売上高経常利益率 8%以上
* ROE(株主資本利益率) 30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
継続的に安定した成長を続けるため、各事業における専門性の向上や、AIやデータ活用を推進するEIC(Electronic Intelligent Commerce)企業への変革を掲げています。また、ECサイトの信用力・利便性の向上やブランド認知度の向上、商品在庫の価格変動への対応力強化にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
VUCA時代におけるEC業界の変化に対応するため、知識やスキルの有無に関わらず未経験業務に対する「伸びしろの高さ(変化対応・変化創造力)」を重視したポテンシャル採用を積極的に行っています。また、キャリアチェンジを促進する制度による多能工化や、国籍・性別を問わない多様性の向上を通じて、価値創造の源泉となる人材育成と環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。経営戦略との連動や実績に対する適切な利益配分に基づき、個人の成果に加えて各事業領域の成果を反映させる報酬体系を運用しています。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.0歳 | 7.3年 | 5,934,401円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 57.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リスキリング手当活用率(92.4%)、有給消化率(85.90%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(52%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 中古品の仕入・確保に関するリスク
同社は中古品を中心とした販売を行っているため、一般顧客から現金での買取りを主としています。景気動向の変化や競合買取業者の増加、顧客マインドの変化により、質・量ともに安定的な中古品の確保が困難となる可能性があります。また、コピー商品や盗品の買取りが発生した場合、被害者への無償返還や信用失墜による影響を受けるリスクがあります。
■(2) 商品の価値下落に関するリスク
同社が取り扱うカメラや時計、筆記具などの「価値ある中古品」は、流行の変化に伴う経済的陳腐化や為替相場の変動により、短期間のうちに価値下落がもたらされるものがあります。予測した需要が実現せず滞留期間が長くなり、市場価値が下落した場合、滞留在庫の評価減による損失が発生し、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制に関するリスク
同社が取り扱う中古品は「古物営業法」に定められた「古物」に該当するため、同法による厳しい規制を受けています。万が一、同法に抵触するような不正事件が発生して古物営業許可の取消し等が行われた場合や、インターネット通信販売に関連する「特定商取引に関する法律」の遵守に問題が生じた場合、同社の事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティとシステム障害リスク
ECサイトの安定的な運用に向けてセキュリティ強化やサーバー分散配置を行っていますが、予期せぬ大規模災害やサイバー攻撃等によりシステム障害や情報漏洩が発生した場合、社会的信用の低下や事業活動の停滞につながるリスクがあります。



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