地盤ネットホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

地盤ネットホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

地盤ネットホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、住宅・建設領域において地盤調査や地盤解析、地盤補償サービスを展開する企業です。建築図面の作成を支援するBIM Solution事業も手掛けています。直近の業績は、売上高が大幅な増収となった一方、経常利益は減益となっています。


※本記事は、地盤ネットホールディングスの有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 地盤ネットホールディングスってどんな会社?


地盤調査や解析、補償サービスを提供する地盤事業と、建築図面作成を支援するBIM Solution事業を展開しています。

(1) 会社概要


2008年6月に地盤解析を主たる事業目的として設立され、「地盤セカンドオピニオン」の提供を開始しました。2012年12月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2014年10月の新設分割を経て現在の商号へと変更しました。2025年4月にハウスワランティを完全子会社化し、2026年1月には東京証券取引所スタンダード市場へ市場区分を変更しています。

現在の従業員数は連結で185名、単体で12名体制です。筆頭株主はHOUSEEPO PTE. LTD.で、第2位は事業戦略推進や企業価値向上を目的に資本業務提携を締結しているKaihou、第3位は楽天証券共有口となっています。

氏名 持株比率
HOUSEEPO PTE. LTD. 21.40%
Kaihou 9.78%
楽天証券共有口 7.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は荒川高広氏が務めています。社外取締役比率は50.0%(取締役6名中3名)です。

氏名 役職 主な経歴
荒川高広 代表取締役社長 2003年4月プラスアルファ入社。2010年7月地盤ネット入社。同社執行役員、取締役等を経て、2021年4月同社代表取締役社長。2024年6月より現職。
渡辺可奈子 取締役人事部長 1989年4月防衛庁入庁。アキュラホームやキャンディルの人事部長等を経て、2021年9月同社執行役員人事総務部長。2023年6月より現職。
中村與希 取締役 2008年4月リクルート入社。リクルートマーケティングパートナーズ等を経て、2020年7月合同会社e-mu創業。2026年1月Kaihou取締役COO。2026年6月より現職。


社外取締役は、保田志穂(桜田通り総合法律事務所弁護士)、中尾麗イザベル(元GA technologies執行役員)、井村俊哉(Zeppy代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地盤事業」および「BIM Solution事業」を展開しています。

(1) 地盤事業


工務店等からの依頼に基づき、住宅の地盤調査データから地盤の強度や沈下の可能性を解析し、適正な住宅基礎仕様を判定する地盤解析判定書や地盤品質証明書を提供しています。また、地盤の軟弱箇所のみを締め固める部分転圧工事の提案や施工も行っています。

工務店等に対して地盤調査や解析、補償サービス、工事を提供することで収益を得ています。地盤品質証明書を発行した住宅で地盤事故が発生した場合は、一定期間損害を賠償する仕組みを備えています。運営は主に地盤ネットおよびハウスワランティが行っています。

(2) BIM Solution事業


建設事業者が土地仕入れから建築着工に至る各段階で必要となる多様な建築図面の作成業務を支援しています。建築物の完成予想図やウォークスルー動画、VRコンテンツ等の提供、BIMによる3Dモデリングの作成支援などを行っています。

設計段階で専門性と多大な労力を要する作図業務の一部を代行することで、建設事業者から収益を得ています。また、建設事業者が抱えるバックオフィス業務や作図業務を受託するサービスも展開しています。運営は主に地盤ネットおよびJIBANNET ASIAが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時減少傾向にありましたが、直近の2026年3月期にはハウスワランティの子会社化等の影響により大幅な増収となり、32億円を計上しています。経常利益は期によって変動が見られますが、当期は特別利益の計上などにより当期利益が大きく増加しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 22.2億円 23.1億円 18.8億円 18.8億円 31.9億円
経常利益 -0.3億円 1.0億円 -0.6億円 1.1億円 0.5億円
利益率(%) -1.3% 4.4% -3.1% 5.9% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.5億円 0.7億円 -1.0億円 0.7億円 2.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の18.8億円から当期は31.9億円へと大幅に拡大し、売上総利益も9.2億円から13.6億円へと増加しました。一方で、事業拡大等に伴い販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益は前期の1.1億円から当期は0.4億円へと減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 18.8億円 31.9億円
売上総利益 9.2億円 13.6億円
売上総利益率(%) 49.0% 42.5%
営業利益 1.1億円 0.4億円
営業利益率(%) 5.8% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.0億円(構成比30%)、役員報酬が1.5億円(同11%)、支払報酬が1.4億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


地盤事業はハウスワランティとの統合効果により取引顧客数が大幅に増加し、売上高が大きく伸長しました。一方、BIM Solution事業はモデリング業務の受注は堅調だったものの、戸建住宅着工戸数の減少に伴いCGビジュアライゼーション関連の受注が減少し、減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
地盤事業 15.8億円 29.2億円 3.4億円 3.6億円 12.3%
BIM Solution事業 3.0億円 2.7億円 -0.3億円 -0.0億円 -1.5%
その他 0.0億円 - -0.0億円 - -
調整額 - - -2.0億円 -3.2億円 -
連結(合計) 18.8億円 31.9億円 1.1億円 0.4億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.7億円 0.5億円
投資CF -0.3億円 -4.1億円
財務CF -1.9億円 1.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「“生活者の不利益解消”という正義を貫き、安心で豊かな暮らしの創造をめざします。」という経営理念を掲げています。専門的な知識を持たない生活者と供給者との間に存在する情報格差による不利益を解消するため、蓄積されたデータと高度な知見を活用し、公正な判断基準を提供して安心で豊かな暮らしに貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


社会的責任の自覚とコンプライアンスの徹底により社会からの信頼を確立し、すべてのステークホルダーから適切な評価を得られるよう、経営の公平性、透明性および効率性の確保に努める文化を重視しています。また、すべての従業員が能力を最大限発揮できる人的資本経営をテーマに、社員が自らの仕事に誇りを持って生き生きと働ける職場環境の整備を進めています。

(3) 経営計画・目標


企業価値を高めるために、成長性・収益性の指標として売上高成長率と売上高営業利益率を重視しています。また、株主資本コストを意識した経営指標としてROE(自己資本利益率)を採用するとともに、事業ポートフォリオの最適化を進める中で投資案件の評価指標としてROIC(投下資本利益率)も活用し、資本効率を意識した経営を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


高付加価値サービスの提供や事業領域の拡張に向け、住宅市場に加えインフラ等の非住宅市場への展開や、BIM分野でのサービス領域拡張を図っています。また、3次元点群データを活用したデジタルソリューションの事業化、蓄積データの活用によるDXの推進、グループ全体の営業・サービス・データ連携によるシナジー創出を通じて、従来の件数依存型から高付加価値サービスへの収益モデル転換を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大の源泉である「人」を資産として位置づけ、「成長の実感」「挑戦できる組織づくり」「多様性の推進」「働き方改革」の4つの軸を人材育成・環境整備の基本方針としています。専門性を持つセールスエンジニアやDX人材の中途採用強化、専門資格取得支援、管理職の計画的育成を進めるほか、グループ横断的なキャリアパス整備を通じて人材定着と組織力強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 5.3年 7,160,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 38.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※男性育児休業取得率については、対象者0名のため「-」となっています。また、男女賃金差異については同社は公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント調査での「働きがいがある」割合(69.0%)、全労働者の年次有給休暇取得率(70.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定事業への依存リスク


同社グループは地盤事業を中核として事業を展開していますが、新設住宅着工戸数の減少や競争激化、新規参入による類似サービスの出現などにより地盤事業が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。新たな収益の柱となる事業の育成や他社との差別化を図っています。

(2) 個人情報管理と情報漏洩リスク


サービス提供にあたり顧客や施主の個人情報を取得しており、外部からの不正アクセスや内部からの情報漏洩を防ぐためセキュリティ強化等の対策を行っています。しかし、不測の事態で個人情報が漏洩した場合には、損害賠償の発生や信用の失墜につながるリスクがあります。

(3) 損害保険契約の継続リスク


地盤品質証明書を発行した住宅の不同沈下等の事故に備え、大手損害保険会社と賠償責任保険契約を締結しています。しかし、事業環境の変化等により将来も同等の条件で保険加入を継続できる保証はなく、万一契約継続が困難になった場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 許認可等の取消や法的規制のリスク


建設業や一級建築士事務所、宅地建物取引業の許認可を受けて事業を行っていますが、法令違反等により許認可が取り消された場合、事業活動に支障をきたします。また、地盤解析基準などの関連法令や法的規制が変更された場合にも、事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。