地盤ネットホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

地盤ネットホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。地盤解析・調査やBIMソリューションを展開。直近決算では売上高は横ばいも、地盤沈下事故の減少に伴う原価低減や営業活動の成果により、営業損益および経常損益が黒字転換を果たしました。


#記事タイトル:地盤ネットホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、地盤ネットホールディングス株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 地盤ネットホールディングスってどんな会社?


地盤解析を主軸に、生活者の不利益解消を目指す「住生活エージェント」企業です。

(1) 会社概要


同社は2008年に設立され、「地盤セカンドオピニオン」サービスの提供を開始しました。2012年に東証マザーズへ上場し、2014年には持株会社体制へ移行して現在の商号となりました。2021年にはBIMを活用した「省エネルギー計算サービス」を開始するなど事業を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しています。

連結従業員数は146名(単体8名)です。筆頭株主はHOUSEEPO PTE. LTD.(常任代理人 山本強)で、第2位は創業者の山本強氏です。HOUSEEPO PTE. LTD.は、同社相談役でもある山本強氏の関係会社です。

氏名 持株比率
HOUSEEPO PTE. LTD. 21.61%
山本 強 12.96%
松井証券 3.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は荒川高広氏です。取締役4名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
荒川 高広 代表取締役社長 2003年プラスアルファ入社。2010年地盤ネット入社。同社執行役員事業本部長、取締役、プレイス代表取締役、地盤ネット代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。
渡 辺 可 奈 子 取締役人事部長 1989年防衛庁入庁。ジャパンフットサルコート人事部長、アキュラホーム人事課長、リペアワークス管理部長、バーンホールディングス執行役員人事部長等を経て、2023年6月より現職。
髙 瀬 秀 人 取締役経営企画部長 2002年ジックス起業。2010年まるさんかくしかく代表取締役。2017年地盤ネット入社、営業部長、事業企画部長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、木全美加(公認会計士・木全美加公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「地盤事業」、「BIM Solution事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 地盤事業


工務店等が住宅を建築する際に必要な地盤調査・解析を行い、適正な基礎仕様を判定する「地盤解析判定書」や「地盤品質証明書」を提供しています。また、不同沈下等の事故が発生した際の賠償保証も行っています。

主な収益源は、工務店等からの依頼に基づく地盤解析、地盤調査、および部分転圧工事等のサービス対価です。運営は主に地盤ネットが行っています。

(2) BIM Solution事業


建設事業者が土地仕入れから着工に至る過程で必要な建築図面の作成を支援しています。具体的には、3Dパースやウォークスルー動画、VRコンテンツの制作、BIMモデリング支援などを提供しています。

収益源は、建設事業者等からの制作受託や支援業務の対価です。運営は地盤ネットおよび海外拠点のJIBANNET ASIAが行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、過去の住宅事業に関連する追加工事や是正工事などが含まれます。

収益源は、当該工事等の対価です。運営は地盤ネットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年3月期まで増加傾向にありましたが、その後減少に転じ、直近は横ばいで推移しています。利益面では2024年3月期に赤字となりましたが、2025年3月期には営業利益、経常利益ともに黒字転換を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 20億円 22億円 23億円 19億円 19億円
経常利益 0.9億円 -0.3億円 1億円 -0.6億円 1億円
利益率(%) 4.6% -1.3% 4.4% -3.1% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.3億円 -0.5億円 0.3億円 -1億円 0.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高は横ばいながら、売上原価の低減により売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費も減少し、営業利益率が大幅に改善して黒字化しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 19億円 19億円
売上総利益 8億円 9億円
売上総利益率(%) 43.1% 49.0%
営業利益 -0.5億円 1億円
営業利益率(%) -2.6% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.8億円(構成比34%)、役員報酬が1.1億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


地盤事業は地盤沈下事故の減少による補償費用削減等で増益となりました。BIM Solution事業は非住宅業界への営業成果で増収となり、赤字幅が縮小しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
地盤事業 16億円 16億円 2億円 3億円 21.5%
BIM Solution事業 3億円 3億円 -0.8億円 -0.3億円 -11.8%
その他 0.6億円 0.0億円 0.1億円 -0.0億円 -1.5%
調整額 - - -2億円 -2億円 -
連結(合計) 19億円 19億円 -0.5億円 1億円 5.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、持続的な成長と企業価値向上を目的とした投資資金需要に対し、内部資金に加え、金融機関からの借入を中心に機動性と長期安定性を重視した資金調達を実施しています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の増加等により資金を獲得しました。投資活動では、有形固定資産や無形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済や自己株式の取得により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.0億円 0.7億円
投資CF -0.4億円 -0.3億円
財務CF -0.6億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「“生活者の不利益解消”という正義を貫き、安心で豊かな暮らしの創造をめざします。」という経営理念を掲げています。専門知識を持たない生活者と供給者の間の情報格差を埋める「住生活エージェント」として、公正な立場で商品やサービスを提供していくことを目指しています。

(2) 企業文化


生活者の不利益を解消するため、高度な知見をもとに公正な立場で活動することを重視しています。株主、顧客、取引先、従業員等のステークホルダーと良好な関係を築き、企業倫理とコンプライアンスの遵守を徹底するとともに、コーポレート・ガバナンスを強化し、企業価値の向上に努める方針です。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画を策定しています。経営指標として売上高伸び率、売上高営業利益率、ROEを重視しています。

* 2026年3月期目標:売上高31.5億円
* 2026年3月期目標:営業利益0.3億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、事業領域の拡大や新規事業の創出に取り組んでいます。特に、改正建築基準法対応による省エネ・構造計算業務の拡大や、デジタルツイン技術を活用した新サービスの展開に注力します。また、DX戦略の推進や自然災害への対応、ガバナンス強化も重要課題としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を事業価値創造の源泉と位置づけ、人的資本への投資を最重要視しています。高い専門性を持つ社員の活躍の場を創造し、リーダーシップを発揮できる管理職を育成します。「成長の実感」「挑戦できる組織づくり」「多様性の推進」「働き方改革」を軸に、社員が誇りを持って働ける企業文化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.8歳 5.1年 5,314,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント調査での「働きがいがある」割合(74.0%)、全労働者の年次有給休暇取得率(60.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定事業への依存


同社グループは地盤事業を核として事業を展開しています。事業環境の変化や競争の激化、新規参入等により地盤事業が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。新たな柱となる事業の育成も検討していますが、変化への対応が遅れた場合のリスクがあります。

(2) 競合によるリスク


国内の新設住宅着工戸数の減少に伴い、地盤関連市場の縮小が予想されます。同社は新サービス等で差別化を図っていますが、競合他社による類似サービスの出現等により、サービスの優位性が保てなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 地盤解析サービスの瑕疵


地盤解析において予見できない原因や過失による解析ミス等で不同沈下等が多数発生した場合、信用失墜や保険料率の高騰により業績に影響を及ぼす可能性があります。地盤品質証明書を発行した住宅の地盤事故に対しては、修復費用等を賠償する責任を負っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。