ウイン・パートナーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウイン・パートナーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 プライム市場に上場する同社は、心臓カテーテル治療機器などを主力とする医療機器販売事業を展開しています。2025年3月期の業績は、主力製品の販売数量伸長等により売上高は814億円と増収、経常利益も28億円と増益で着地し、堅調な成長トレンドを維持しています。


※本記事は、ウイン・パートナーズ株式会社 の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウイン・パートナーズってどんな会社?

心臓疾患治療など身体的負担の少ない「低侵襲医療」に特化した医療機器販売を行う持株会社です。

(1) 会社概要

2013年にウイン・インターナショナルとテスコが経営統合し、共同持株会社として設立されました。同年に東証JASDAQへ上場し、2014年に市場第一部へ指定替え、2022年にプライム市場へ移行しました。その後もエムシーアイやトーセイメディカル、トライテックを子会社化し、事業規模を拡大しています。

連結従業員数は630名、単体では54名です。筆頭株主は有限会社オフィスAで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は株式会社キエマ企画です。主要株主には創業家や取引関係者が含まれていると考えられますが、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社オフィスA 19.24%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND 7.05%
キエマ企画 6.61%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は秋沢英海氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
秋沢 英海 代表取締役社長 西本産業(現キヤノンメドテックサプライ)を経て、タクミコンサーン(現ウイン・インターナショナル)入社。同社社長を経て、2013年より現職。
三田上 浩美 取締役執行役員営業統括部長 日本メディックスを経てタクミコンサーン入社。取締役営業本部長などを歴任し、2013年より現職。
秋田 裕二 取締役執行役員 オービック、アロウジャパンを経てテスコ入社。同社社長などを歴任し、2015年より現職。
松本 啓二 取締役執行役員管理本部長 西本産業を経てエルクコーポレーション社長などを歴任。2015年ウイン・インターナショナル入社後、2020年より現職。
中田 陽一 取締役(常勤監査等委員) ディックファイナンス、あきんどスシローを経てウイン・インターナショナル入社。内部監査室長を経て、2015年より現職。


社外取締役は、井出健治郎(大学教授・元学長)、高村悦子(大学医学部教授)、神田安積(弁護士)、菊地康夫(公認会計士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「医療機器販売事業」を展開しています。

(1) 虚血性心疾患および心臓律動管理関連

心筋梗塞や狭心症治療に使用されるカテーテル等の医療機器や、不整脈治療のためのペースメーカ、植込型除細動器などを医療機関向けに提供しています。これらは患者への負担が少ない「低侵襲医療」を支える主要商品群です。

収益は、医療機関への機器販売代金として受け取ります。運営は主に株式会社ウイン・インターナショナルやテスコ株式会社などの事業子会社が行っており、地域ごとのネットワークを活かした販売活動を展開しています。

(2) 心臓血管外科およびその他領域

心臓外科手術で使用されるステントグラフトや人工弁、人工血管のほか、脳血管疾患治療用の医療機器や、X線血管撮影装置などの大型機器も取り扱っています。また、インスリンポンプ等のその他医療機器も販売しています。

収益は、商品の納入による販売収益が中心です。運営は株式会社ウイン・インターナショナル、テスコ株式会社に加え、株式会社エムシーアイや株式会社トーセイメディカル、株式会社トライテックなどが各地域や専門領域で事業を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近の業績を見ると、売上高は順調に拡大しており、安定的な成長トレンドにあります。利益面でも、経常利益は多少の変動はあるものの概ね安定した利益率を維持しており、当期純利益も堅調に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 621億円 664億円 709億円 771億円 814億円
経常利益 23億円 28億円 25億円 26億円 28億円
利益率(%) 3.6% 4.2% 3.5% 3.4% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 14億円 19億円 20億円 21億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は若干の変動が見られます。営業利益は前期比で増加し、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 771億円 814億円
売上総利益 95億円 99億円
売上総利益率(%) 12.4% 12.2%
営業利益 26億円 28億円
営業利益率(%) 3.4% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が31億円(構成比44%)、法定福利費が6億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益

各事業領域において売上高が増加しました。特に心臓血管外科関連や心臓律動管理関連の伸びが顕著です。医療機器関連は大型案件の減少により減収となりましたが、全体としては増収を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
虚血性心疾患関連 174億円 185億円
心臓律動管理関連 187億円 208億円
心臓血管外科関連 129億円 147億円
末梢血管疾患関連及び脳外科関連 80億円 85億円
医療機器関連 104億円 78億円
その他 98億円 111億円
連結(合計) 771億円 814億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ウイン・パートナーズのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、本年度、営業活動により資金を創出し、その一部を投資活動や財務活動に充当しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、純粋な営業活動から得られた収入が、税金の支払い等を上回り、資金の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得等により、資金の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前期の配当金支払いおよび自己株式の取得等により、資金の支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 21億円
投資CF -2億円 -22億円
財務CF -14億円 -18億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「すべての人にベター・クオリティ・オブ・ライフを提供し、豊かな社会の実現に貢献します。」という企業理念を掲げています。安全で最適な医療の提供と、身体的負担の少ない低侵襲医療の普及を通じて、健康幸福寿命の伸長や医療費の抑制という社会的課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化

「新しいニーズを創造し、次世代医療関連ビジネスのリーディングカンパニーを目指します。」というビジョンのもと、既存の枠にとらわれない市場開拓や、理念に共感する企業のグループ化を進めています。また、ステークホルダーとの信頼関係構築のため、公正なコーポレートガバナンスを重視する風土があります。

(3) 経営計画・目標

効率的な経営を行うことを重要課題とし、目標とする経営指標としてROE(自己資本利益率)を重視しています。中期的には以下の数値を目標として掲げています。
* ROE(自己資本利益率):15.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策

医療制度改革や競争激化に対応するため、低侵襲医療の専門性を活かした提案力で差別化を図る方針です。循環器領域から脳や消化器等へ事業領域を拡大するとともに、M&Aや提携を活用して業界再編を促進し、営業エリアの拡大を目指しています。また、医療機関の経営課題解決に向けた支援も強化します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人」を最大の財産と位置づけ、OJTや階層別研修、専門資格取得支援などの教育環境を整備しています。また、多様性の確保を重要課題とし、女性活躍推進チーム「KIRARIS」による両立支援や、譲渡制限付株式報酬の導入など、従業員一人ひとりが活躍し成長できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 8.9年 6,747,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 76.7%
男女賃金差異(正規雇用) 76.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者)については、対象者がいない等の理由により記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率25%継続(45%)、新任女性役職者昇格推薦率(22%)、男性社員の育休取得率(38%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度改革による価格下落

診療報酬体系の見直しや特定保険医療材料の償還価格改定により、販売価格が低下傾向にあります。主力商品であるステントやペースメーカ等は特定保険医療材料に指定されており、制度改革が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 医療機器関連法規等の規制

医薬品医療機器等法の規制を受け、販売業の許可取得や生物由来製品の販売記録管理などが義務付けられています。許可要件の違反等により許可が取り消された場合、事業継続に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 顧客の変化に関するリスク

医療機関の経営統合や購買戦略の見直し、同業他社との競争激化により、値下げ圧力が高まる傾向にあります。市場環境の変化に適切に対応できず、取引先の喪失や販売価格の著しい低下が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。