※本記事は、株式会社横田製作所の有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 横田製作所ってどんな会社?
同社は、独自の技術で水や流体の問題を解決する業務用ポンプ・バルブの専門メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1948年に創業し、1953年に炭鉱用ポンプの需要拡大を受けて広島市で横田ポンプ製作所として設立されました。1959年に現在の横田製作所に商号を変更し、その後も耐食・耐摩耗特殊ステンレス合金鋳鋼や脱泡ポンプなど独自技術の開発を推進してきました。2013年にJASDAQに株式を上場し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は単体で80名体制です。筆頭株主は代表取締役および親族の株式を信託する一般社団法人ヨコタで、第2位は光通信KK投資事業有限責任組合、第3位は広島信用金庫となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般社団法人ヨコタ | 32.81% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.44% |
| 広島信用金庫 | 6.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は横田義之氏が務めています。社外取締役比率は約11%(全役員中1名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横田義之 | 代表取締役社長 | 2007年同社入社。2017年経理総務部長、本社工場長などを経て、2018年より現職。 |
| 綿井宏 | 常務取締役本社工場長 | 1996年同社入社。2019年取締役本社工場長などを経て、2023年より現職。 |
| 河本正博 | 取締役技術部長 | 1982年同社入社。技術部品質保証グループリーダーなどを経て、2021年より現職。 |
| 中川勝巳 | 取締役営業本部長 | 1996年同社入社。営業本部広島支店長などを経て、2021年より現職。 |
| 坂根裕二 | 取締役経理総務部長 | 2011年同社入社。経理総務部総務・人事グループリーダーなどを経て、2021年より現職。 |
社外取締役は、川角栄二氏(元新明和工業・かわすみ特許商標事務所開所)です。
2. 事業内容
同社グループは単一セグメントにおいて、業務用機器の開発から製造、販売、保守までを一貫して展開しています。
■ポンプ・バルブ製品および部品・サービス
同社は、自吸渦巻ポンプや片吸込渦巻ポンプ、脱泡・脱気装置などのポンプ製品と、無水撃チェッキ弁や自動制御弁などのバルブ製品を開発・製造・販売しています。自社開発の特殊ステンレス合金鋳鋼を組み合わせることで、発電所、製鉄、化学などの各種工場から、上下水道施設、農業用灌漑施設まで幅広い顧客の設備環境に対応したソリューションを提供しています。
収益源は、これら業務用機器の販売代金や、納入先へのメンテナンス用部品の供給、定期点検工事サービスを通じた対価です。事業の運営は同社が単独で行っており、ハードとソフトを含めたソリューションをニッチ市場に特化して提供することで、同業他社との差別化を図り、高い収益力を維持するビジネスモデルを構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が17億円台から23億円規模へと着実に拡大しています。経常利益も成長基調にあり、利益率はいずれの年度も13%を超える高い水準で推移しており、直近2期は20%台に乗せるなど、高収益体質が定着しつつあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 17億円 | 18億円 | 20億円 | 23億円 | 23億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 3億円 | 4億円 | 5億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 13.6% | 14.3% | 18.0% | 20.3% | 20.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益率は47.8%と高水準を維持しています。原材料費の増加や人件費の引き上げなどがあったものの、適切な販売価格の調整や生産性向上の取り組みが奏功し、営業利益ベースでも増益を達成しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 23億円 | 23億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.8% | 47.8% |
| 営業利益 | 5億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 20.0% | 20.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.5億円(構成比24%)、役員報酬が1.2億円(同19%)を占めています。売上原価については、当期製品製造原価のうち材料費が5.0億円(構成比42%)、労務費が4.3億円(同36%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、製品区分別の売上高を比較します。官公需や海外向けの需要増によりポンプ製品の売上が大きく伸びた一方で、バルブ製品や部品・サービスの売上は減少しました。事業全体としては補い合い増収を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ポンプ製品 | 9億円 | 12億円 |
| バルブ製品 | 5億円 | 4億円 |
| 部品・サービス | 8億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 23億円 | 23億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で設備投資などを賄い、かつ自己株式の取得や配当金の支払いも自己資金で行う「健全型」のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 4億円 |
| 投資CF | -1億円 | -3億円 |
| 財務CF | -1億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営信条として「我等、人間の使命である進化と向上を企業経営を通じて具現し、社会に貢献する」を掲げています。また、「技術立社。体力をつけ、小なりといえども洗練された会社になる。」という経営方針のもと、小さくても志とこだわりを持ち、時代を超えて永続する独自の企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「一、誠意を込めつくして対応しよう 一、創意に満ちあふれた商品にしよう 一、熱意を燃し続けて成果をみよう」という経営指針を大切にしています。独自のものを創造する「ヨコタDNA」に基づき、少数精鋭による合理的な仕事の体系と、公正な評価・報酬制度を通じて成果に報いる仕組みを整える文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、経常利益、自己資本利益率の3つを設定して事業運営を行っています。
・売上高:23.5億円
・経常利益:4.4億円
・自己資本利益率:9.2%
■(4) 成長戦略と重点施策
「技術力×組織力」を強化し、既存のニッチ市場における優位性をさらに高めつつ新たなニッチ市場を開拓する方針です。具体的には、顧客の要望を傾聴してマーケティング機能を強化し、競争優位の源泉となるコア技術の開発力向上を図るとともに、合理的な範囲での省力化・省人化を推進して高付加価値製品の提供力を高める戦略を描いています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性を確保しサステナビリティの取組みを強化する方針です。性別等の属性に関係なく、将来の幹部候補としての可能性を重視して管理職へ登用しています。ニッチ市場の事業特性から深い専門性を求めつつ、同時にイノベーションの源泉となる価値観や考え方の多様性も高めることを人材育成の基本としています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.5歳 | 12.5年 | 6,986,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品需要の減少
同社は発電所や各種工場など多方面の需要分野を対象としていますが、今後の産業構造の変化によりポンプおよびバルブの製品需要が減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、ニッチ市場集積のマーケティング分析や新たな需要分野の開拓、WEB展示会の開催などにより対応しています。
■(2) 研究開発体制の弱化
顧客の要望に対応するため継続的な研究開発を行っていますが、人材や資金などの経営資源が確保できず研究開発体制が弱化した場合、製品の優位性が喪失する恐れがあります。そのため、継続的な研究開発者の育成と採用、一定以上の予算確保、およびアウトソーシングの併用で体制を維持しています。
■(3) 組織的対応力の低下
小規模な組織で運営されているため、業務が急激に拡大して人材の採用や育成が追いつかない場合、組織的対応力が低下するリスクがあります。特に製品の納期が年度末に集中するため、不測の事態による出荷遅延を防ぐべく、製品納期の平準化や部門間の連携強化に取り組んでいます。
■(4) 品質管理体制の弱化
社内だけでなく外注加工先に対しても品質保持を要請していますが、生産技術の継承不足などにより品質管理体制が弱化した場合、ブランドイメージの悪化につながる恐れがあります。最適設備の積極導入や技術継承のための作業標準の作成などにより、総合的な品質管理体制の維持に努めています。



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