リプロセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リプロセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リプロセルは東証グロース市場に上場し、iPS細胞を中心とした次世代医療ビジネスを展開しています。研究用試薬や受託サービスを提供する研究支援事業と、再生医療等製品の研究開発を担うメディカル事業が柱です。業績は直近で減収となり、研究開発への先行投資等により経常損失及び当期純損失を計上しています。


※本記事は、株式会社リプロセルの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

リプロセル転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. リプロセルってどんな会社?


iPS細胞技術を活用した研究支援事業とメディカル事業を展開するバイオテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


2003年、細胞技術を中心とした次世代医療ビジネスの確立を目的として設立されました。2005年にヒトES細胞用試薬の販売を開始し、2009年には世界で初めてヒトiPS細胞由来心筋細胞を発売しました。2013年にJASDAQに上場し、2014年以降は米英などの海外企業を相次いで買収しています。

現在の従業員数は連結で101名、単体で30名です。筆頭株主は代表取締役社長の横山周史氏で、第2位は個人の株主、第3位は短資業を営む上田八木短資となっています。日米欧およびインドに拠点を有し、グローバルに事業を展開しながら、グループシナジーを追求する体制を構築しています。

氏名 持株比率
横山周史 1.21%
中野暁 1.05%
上田八木短資 0.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は横山周史氏が務めており、社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
横山周史 代表取締役社長 住友スリーエム等を経て2004年に同社入社。2005年より現職。
臼井大祐 取締役COO HOYA等を経て2015年に同社入社。2020年より現職。


社外取締役は、山川善之(元響きパートナーズ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「研究支援事業」および「メディカル事業」を展開しています。

(1) 研究支援事業


大学や公的研究機関、製薬企業等を主要顧客とし、iPS細胞研究に使用される培養液等の研究用製品の製造販売や、患者由来iPS細胞を用いた疾患モデル作製等の研究受託サービスを提供しています。また、海外メーカーの細胞測定機器等の販売も行っています。

収益源は、試薬等の製品販売代金やサービス受託料です。新技術を比較的短期間で事業化し収益化できる特徴があり、短中期的な収益基盤となっています。運営は主にリプロセルおよび米国、英国、インドの子会社が担い、グローバルに連携して事業を展開しています。

(2) メディカル事業


体性幹細胞製品「ステムカイマル」やiPS神経グリア細胞製品などの再生医療等製品の研究開発を推進しています。また、臨床用に最適なiPS細胞の受託製造サービスや、臓器移植関連等の臨床検査、個人の生物学的年齢を測定する郵送検査サービスも手掛けています。

収益源は、受託製造サービスや臨床検査の受託料等です。現在は研究開発に向けた先行投資が中心であり、中長期的な成長の柱と位置付けられています。運営はリプロセルのほか、海外のグループ会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移をみると、売上高は22億円から30億円の間で推移していますが、当期は減収となりました。利益面では、先行投資となる研究開発費の負担が大きく、直近の当期純利益は継続して損失を計上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 22億円 30億円 24億円 30億円 22億円
経常利益 -5億円 -1億円 0.4億円 0.5億円 -6億円
利益率(%) -22.7% -4.1% 1.7% 1.5% -26.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -5億円 -3億円 -2億円 -3億円 -3億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も縮小しています。また、研究開発への継続的な投資や販管費の増加により、営業損失の赤字幅が拡大する結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 30億円 22億円
売上総利益 16億円 10億円
売上総利益率(%) 55.4% 45.5%
営業利益 -1億円 -9億円
営業利益率(%) -4.4% -38.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5億円(構成比27%)、研究開発費が6億円(構成比33%)を占めています。売上原価については、製品売上原価が8億円(構成比64%)、役務原価が4億円(同36%)となっています。

(3) セグメント収益


研究支援事業は堅調な需要を背景に主要な収益源となっていますが、メディカル事業では再生医療製品の開発に伴う先行投資が続いているため、連結全体として営業赤字となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
研究支援事業 24億円 20億円
メディカル事業 6億円 3億円
連結(合計) 30億円 22億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.1億円 -4億円
投資CF -8億円 0.6億円
財務CF 7億円 -


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.7%で、グロース市場の平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、iPS細胞および体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発を促進し、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。真のグローバル企業として成長していくことも基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーとのバランスの取れた関係を重視し、長期的にWin-Winの関係を築く体制を構築しています。また、社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献も重視する価値観を根底に置いて事業を展開しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込めるメディカル事業へ積極的に投資する方針です。2027年3月期の業績見通しとして、以下の数値を掲げています。

* 売上高:26億円
* 営業損失:6億円
* 経常損失:5億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向け、短期・中期的な収益基盤である研究支援事業と中長期的な成長ドライバーであるメディカル事業の両輪をバランスよく成長させます。国内外の大学や企業との連携による技術的優位性の確保や、公的資金の活用を通じた開発の加速、積極的なグローバル化の推進により市場リーダーシップの確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社の成長戦略の実現には、高度な専門的知識、技能および経験を有する多様な人材の確保と育成が不可欠です。各部門での優秀な人材を対象としたインセンティブ制度の導入や、フレックスタイム制などのワークライフバランスを実現しやすい環境整備により、人材の長期定着と自律的な成長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.2歳 5.5年 6,147,669円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下のため公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発活動に関するリスク


公的資金の活用や産学連携により、日米欧およびインドの4拠点で研究開発に重点を置いて活動しています。しかし、研究開発活動が計画どおりに進まない場合、先行投資負担により業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 再生医療ビジネスに関するリスク


現在、再生医療製品など複数のパイプラインを開発していますが、臨床試験で想定外の有害事象が発生したり、有効性が証明できずに治験が中止となったりするリスクがあります。また、承認申請の過程で審査遅延が起こる可能性もあります。

(3) iPS細胞分野での競合リスク


iPS細胞の分野は技術革新が速く、新規参入の動きも活発なため、従来の技術が陳腐化するリスクがあります。大手企業を含む競合相手との競争が激化し、生産性や販売力で上回る企業が現れた場合、計画通りの収益を上げられない可能性があります。

(4) 高度専門人材の確保に関するリスク


高度な専門知識を持つ多様な人材の確保が不可欠ですが、特に海外では人材の流動性が高く、優秀な人材が流出するリスクがあります。インセンティブ制度等で長期確保に努めていますが、人材確保が計画通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。