リプロセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リプロセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(グロース市場)に上場しており、iPS細胞技術を活用した研究支援事業と再生医療などのメディカル事業を主軸としています。直近の決算では売上高が前期比2割以上の増収となり、当期純利益も黒字転換を達成するなど、業績は回復基調にあります。


※本記事は、株式会社リプロセル の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リプロセルってどんな会社?


iPS細胞技術を中核とし、研究試薬や創薬支援サービス、再生医療等製品の研究開発をグローバルに展開するバイオベンチャーです。

(1) 会社概要


2003年に京都大学・東京大学の研究成果を基盤として設立され、2013年にJASDAQ(グロース)市場へ上場しました。その後、2014年には米国および英国のバイオ企業を子会社化し、グローバル展開を加速させています。2016年には関連会社との連携を強化し、現在は日本、米国、英国、インドに拠点を構えています。

現在の従業員数は連結99名、単体28名です。筆頭株主はインターネット証券大手の楽天証券で、第2位は海外の機関投資家等の資産管理を行う銀行系名義、第3位は同社代表取締役社長の横山周史氏となっています。

氏名 持株比率
楽天証券 1.58%
BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNY GCM CLIENT ACCOUNTS MLSCB RD 1.19%
横山 周史 1.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長には横山周史氏が就任しており、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
横山 周史 代表取締役社長 マッキンゼー、住友スリーエムを経て2004年に同社入社。2005年より代表取締役社長を務め、海外子会社や関連会社の代表も兼任しグループ全体を統括。
臼井 大祐 取締役COO 日本油脂、HOYAを経て2015年に同社入社。2016年より取締役を務め、2020年にCOOに就任。インド子会社のCEOも兼務する。


社外取締役は、山川善之(響きパートナーズ株式会社取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「研究支援事業」および「メディカル事業」を展開しています。

(1) 研究支援事業


大学や公的研究機関、製薬企業等を主要顧客とし、iPS細胞などの研究用製品(試薬・細胞)の製造販売、研究受託サービス、および細胞測定機器等の販売を行っています。iPS細胞作製やゲノム編集、薬効薬理試験などの高付加価値サービスを提供し、新薬開発の効率化を支援しています。

収益は、製品販売および受託サービスの対価として顧客から受領します。運営は、日本の同社に加え、米国のREPROCELL USA、英国のREPROCELL Europe、インドのBioserve Biotechnologies Indiaなどの連結子会社が各地域で担っています。

(2) メディカル事業


再生医療等製品の研究開発、受託製造(CDMO)、および臨床検査受託サービスを手掛けています。再生医療分野では「ステムカイマル」等のパイプライン開発を進めるほか、臨床用iPS細胞の製造受託や、郵送検査サービス「ウェルミル」などのヘルスケア関連サービスも展開しています。

収益は、臨床検査や細胞製造受託のサービス料、および将来的な再生医療等製品の販売収益等から構成されます。運営は主に同社および海外子会社が連携して行い、グローバルな規制に対応したサービス体制を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は拡大傾向にあり、第23期には約30億円に達しています。利益面では赤字が続いていましたが、第22期に経常利益が黒字化し、第23期には当期純利益も黒字転換を果たしています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13億円 22億円 30億円 24億円 30億円
経常利益 -7.9億円 -5.1億円 -1.2億円 0.4億円 0.5億円
利益率(%) -61.3% -22.7% -4.1% 1.7% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -8.1億円 -5.8億円 -3.1億円 -0.3億円 1.0億円

(2) 損益計算書


前期から当期にかけて売上高が増加し、売上総利益率も改善しています。営業損益は赤字ですが、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24億円 30億円
売上総利益 11億円 16億円
売上総利益率(%) 46.2% 55.4%
営業利益 -4.1億円 -1.3億円
営業利益率(%) -16.9% -4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が5.2億円(構成比29%)、研究開発費が5.4億円(同30%)を占めています。売上原価においては、製品売上原価が8.2億円(売上原価の62%)を占めています。

(3) セグメント収益


研究支援事業は売上が堅調に推移し、利益も拡大しています。メディカル事業は売上が増加したものの、利益率は研究支援事業と比較すると低い水準にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
研究支援事業 21億円 24億円 4億円 6億円 25.7%
メディカル事業 3億円 6億円 2億円 2億円 28.1%
調整額 - - -6億円 -7億円 -
連結(合計) 24億円 30億円 0.4億円 0.5億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

リプロセルは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業収益が資金需要を賄いきれないため、公的助成金や増資による調達資金に依存する状況です。投資活動によるキャッシュ・フローは、研究開発への積極的な投資が継続されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に増資による資金調達が中心となっています。

同社は、現金及び預金、短期運用有価証券により十分な流動性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.1億円 0.1億円
投資CF 4.0億円 -8.0億円
財務CF 5.4億円 6.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


iPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。研究支援事業を短中期的な柱とし、メディカル事業を中長期的な成長の柱と位置付けています。

(2) 企業文化


真のグローバル企業として成長することを基本方針とし、日本、米国、欧州、インドの各拠点が連携して事業を展開しています。また、顧客、社員、事業パートナー、株主といったステークホルダーとのバランスの取れた関係を重視し、長期的にWin-Winの関係を構築するとともに、社会全体への貢献も重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期の業績見通しとして、以下の数値を掲げています。
* 売上高:30億3700万円
* 営業損失:2億6800万円
* 経常損失:7500万円
* 親会社株主に帰属する当期純損失:7500万円

(4) 成長戦略と重点施策


研究支援事業とメディカル事業の両輪で、短期・中期・長期の持続的な成長を目指しています。特にグローバル化の推進を掲げ、日米欧印の4拠点を活用して世界中の顧客にアクセスします。また、iPS細胞等の最先端技術開発を継続し、技術的優位性を確保することで競争力を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


成長戦略の実現には高度な専門知識や経験を持つ多様な人材が不可欠と考え、人材の確保と育成に注力しています。特に人材流動性の高い海外拠点を含め、優秀な人材の長期確保のためインセンティブ制度等を導入しています。また、フレックスタイム制などワークライフバランスに配慮した制度整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.1歳 5.2年 5,818,395円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発活動に由来するリスク


研究開発には多額の費用と時間がかかりますが、計画通りに進む保証はありません。当初の予定通りに進捗しない場合、将来の収益機会を逸失したり、開発費用の回収が困難になったりすることで、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 再生医療ビジネスに関するリスク


再生医療等製品の開発は法規制に準拠して進められますが、臨床試験で予期せぬ有害事象が発生したり、有効性が証明できなかったりするリスクがあります。これにより治験の中止や承認が得られない、あるいは審査過程での遅延が生じる可能性があります。

(3) 競合リスク


iPS細胞分野は技術革新が速く、大手企業を含む新規参入も増加しています。競合他社がより優れた技術や製品を開発した場合、同社グループの製品・サービスの競争力が低下し、市場シェアや収益性が低下する恐れがあります。

(4) 資金繰り及び資金調達に関するリスク


研究開発費が先行して発生するため、継続的な営業損失が生じる可能性があります。事業進捗に伴い資金需要が増加する中、株式市場からの調達や補助金活用などを進めていますが、十分な資金を確保できない場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。