カーリット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カーリット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の化学メーカー。祖業の爆薬製造技術を応用した化学品事業を主力に、飲料ボトリング、金属加工、エンジニアリングサービスを展開します。2025年3月期は、化学品や金属加工が堅調に推移し増収となるも、原材料高騰やシリコンウェーハ分野の減速が響き、増収減益となりました。


※本記事は、株式会社カーリット の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カーリットってどんな会社?


産業用爆薬や発炎筒などの化学品事業を核に、ボトリングや金属加工など多角的な事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1916年に創業者がスウェーデンからカーリット爆薬の製造権を取得し、1934年に浅野カーリットとして設立されました。1949年に東証へ上場し、2013年には持株会社体制へ移行しました。その後、2024年7月に現社名へ変更し、同年10月に中核子会社等を吸収合併して事業会社体制へと移行しています。

同グループの従業員数は連結1,070名、単体525名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第2位は退職給付信託の受託者であるみずほ信託銀行、第3位は資産管理を行う日本カストディ銀行となっており、上位は主に金融機関や資産管理会社で占められています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.60%
みずほ信託銀行 退職給付信託 丸紅口 再信託受託者 日本カストディ銀行 8.30%
日本カストディ銀行(信託口) 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役兼社長執行役員は金子洋文氏、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 洋文 代表取締役兼社長執行役員内部監査室担当 1984年日本カーリット入社。グループ営業統括などを経て2020年より社長を務める。現在は内部監査室を担当。
小川 文生 取締役兼執行役員研究開発本部長 1991年日本カーリット入社。営業本部長などを経て、2023年に日本カーリット社長に就任。現在は研究開発本部長を務める。
山口 容史 取締役兼執行役員研究開発本部担当 1988年日本カーリット入社。R&Dセンター副所長やシリコンテクノロジー社長などを歴任。現在は研究開発本部を担当。
岡本 英夫 取締役兼執行役員財務部、法務・コンプライアンス部、金属加工セグメント担当 1985年富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ信託銀行法務室長を経て2013年に同社入社。現在は財務、法務・コンプライアンス等を担当。
高橋 茂信 取締役兼執行役員生産本部、長野工場統括、生産・品質統括部担当 1983年日本カーリット入社。群馬工場長や生産本部長を歴任。現在は生産本部、長野工場統括、生産・品質統括部を担当。


社外取締役は、新保誠一(元東京海上日動火災保険常務)、村山由香里(弁護士)、藤原康弘(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品」「ボトリング」「金属加工」「エンジニアリングサービス」事業を展開しています。

(1) 化学品


産業用爆薬や自動車用緊急保安炎筒などの「化薬分野」、ロケット燃料原料等の「化成品分野」、半導体材料等の「電子材料分野」、その他「受託評価」「セラミック材料」「シリコンウェーハ」の各分野で製品・サービスの製造販売を行っています。主な顧客は自動車、電子部品、宇宙航空産業などのメーカーや官公庁です。

収益は、各製品の販売代金や試験受託料などから得ています。運営は、2024年10月の合併により主に株式会社カーリットが行っているほか、海外では佳里多(上海)貿易有限公司などが販売を担っています。

(2) ボトリング


茶系飲料、コーヒー、スポーツドリンクなどの清涼飲料水の受託製造(ボトリング加工)を行っています。大手飲料メーカーなどを主な顧客とし、ペットボトル製品の充填加工を提供しています。

収益は、飲料メーカーからの加工賃収入(受託加工料)が中心です。運営は、連結子会社のジェーシーボトリング株式会社が行っています。

(3) 金属加工


製鉄所やごみ焼却施設等で使用される各種耐熱炉内用金物や、建設機械・自動車向けの各種スプリング等の製造販売を行っています。

収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、耐熱金物は並田機工株式会社、スプリング製品は東洋発條工業株式会社が主に行っています。

(4) エンジニアリングサービス


上下水道・排水処理施設の設計・監理、工業用塗料の販売および塗装工事、建築・設備工事などを手掛けています。官公庁や民間企業を顧客としています。

収益は、設計・監理料、工事代金、塗料の販売代金などから得ています。運営は、カーリット産業株式会社、南澤建設株式会社、富士商事株式会社、株式会社総合設計などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は300億円台後半で推移しており、直近では緩やかな増収傾向にあります。経常利益は30億円前後で安定的に推移していますが、利益率は当期においてやや低下しました。当期純利益は前期比で横ばいとなっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 455億円 339億円 360億円 366億円 369億円
経常利益 18億円 27億円 29億円 36億円 33億円
利益率(%) 3.9% 8.1% 8.1% 9.8% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 9億円 24億円 11億円 35億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高は微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。販管費も増加したため、営業利益は減少しています。売上高営業利益率は8.3%と前期から低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 366億円 369億円
売上総利益 95億円 93億円
売上総利益率(%) 26.0% 25.1%
営業利益 34億円 30億円
営業利益率(%) 9.2% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が13億円(構成比22%)、研究開発費が8億円(同14%)、支払運賃が8億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学品セグメントは増収となるも、シリコンウェーハ分野等の影響で減益となりました。ボトリングセグメントは受注数量減少により減収減益です。金属加工セグメントは減収ながらも増益を確保しました。エンジニアリングサービスセグメントは設備工事の増加等により増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
化学品 202億円 217億円 15億円 15億円 6.8%
ボトリング 52億円 45億円 6億円 3億円 7.6%
金属加工 72億円 71億円 5億円 5億円 7.2%
エンジニアリングサービス 41億円 36億円 8億円 8億円 22.7%
連結(合計) 366億円 369億円 34億円 30億円 8.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* 健全型(本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資も手元資金の範囲内で実施している状態)

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 22億円 47億円
投資CF -14億円 -10億円
財務CF -18億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、創業者の理念を踏まえ、「信頼と限りなき挑戦」を経営理念に掲げています。社会と人々に貢献することを使命とし、「継続ある事業基盤の確立」と「不朽なる技術の進展」を不可欠な要素としています。ステークホルダーからの信頼確保を第一に、新製品の開発と新規事業の開拓を行い、世界に信頼されるグループを目指しています。

(2) 企業文化


マテリアリティ(重要課題)の最上位に「安心・安全で活き活きとした職場環境づくり」を掲げています。従業員一人ひとりにとって働きがいのある職場づくりに注力し、人財の多様性の確保や健康経営の推進に取り組んでいます。また、社会課題の解決に貢献し、「持続可能な社会の実現」を目指すというサステナビリティ基本方針のもと活動しています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「Challenge2027」を策定し、「利益ある成長」と「ESG」の具現化を目指しています。2027年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:430億円
* 営業利益:43億円
* ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Challenge2027」では、事業ポートフォリオの最適化による企業価値向上を目指しています。半導体・電子機器・5G関連材料や、EV化に伴う自動車関連需要などの成長分野に焦点を当て、生産設備の新設・増強や研究開発の拡充を進めます。また、既存事業の収益性改善、気候変動対策等のESG経営の高度化、DX推進などの事業インフラ再構築にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


100年の経験を活かしつつ、「人への投資」を一層進める方針です。男女区別なく多様な人財が活躍できるよう、女性の採用や管理職登用、外国人・中途採用を推進しています。また、グループ横断的な教育制度の充実や、健康経営の推進により、従業員が活き活きと働ける職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 15.8年 6,448,371円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 90.9%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 75.1%
男女賃金差異(非正規) 67.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(39.4% ※2024年度までの累計)、女性管理職候補層比率(19.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新のリスク


技術革新のスピードと市場ニーズの変化が速い一部事業分野において、新技術の登場により既存製品やサービスが陳腐化し、競争力を失う可能性があります。同社は、市場調査や技術トレンドの情報収集を継続し、製造・営業・開発の連携体制でリスクを管理しています。

(2) 市場動向変動のリスク


製品の需給変動や競合他社の戦略変更などが業績に影響を与える可能性があります。外部環境をモニタリングし、市場動向の変化に対応するとともに、4つの事業セグメントによる多角化でリスク分散を図っています。

(3) 原材料調達・価格変動のリスク


原材料の調達難や価格高騰、物流キャパシティの減少などが、製品の供給安定性や業績に影響を及ぼす可能性があります。複数社購買による調達ルートの確保などで安定調達を図り、リスクを分散・管理しています。

(4) 為替相場の変動のリスク


原材料の一部を輸入しているため、為替変動による原価高騰の影響を受ける可能性があります。また、海外事業や輸出取引においても為替レートの影響を受けます。為替予約の活用などで影響軽減に努めていますが、急激な円安局面では重要なモニタリング項目としています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。