※本記事は、株式会社カーリット の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
カーリットは、化学品、ボトリング、金属加工、エンジニアリングサービスといった多岐にわたる事業を展開する企業グループです。連結子会社11社、持分法適用関連会社1社、持分法非適用会社1社で構成されています。
単体従業員数は543名、連結従業員数は1,075名です。同社グループの報告セグメントは、化学品、ボトリング、金属加工、エンジニアリングサービスの4つです。
主な国内グループ会社は、ジェーシーボトリング、並田機工、東洋発條工業などです。
カーリットは2024年10月1日の吸収合併により持株会社から事業会社へ移行し、これに伴い第12期より表示方法を変更しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
カーリットは、化学品、ボトリング、金属加工、エンジニアリングサービスといった多岐にわたる事業を展開しており、製造業を基盤とした企業グループです。従業員の平均勤続年数や平均年齢から、長期的なキャリア形成が可能な環境であることがうかがえます。同社グループは、人財への投資を重視し、多様な働き方を支援する取り組みを進めています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均勤続年数が比較的長く、平均年齢も中堅層が中心となっています。これは、従業員が長期にわたってキャリアを築きやすい環境であることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,864,529円 |
| 平均勤続年数 | 16.0年 |
| 平均年齢 | 42.3歳 |
| 単体従業員数 | 543人 |
| 連結従業員数 | 1,075人 |
| 単体のグループ内比率 | 50.5% |
退職給付制度として、同社および連結子会社は、給与や勤続年数に応じて給付額が決まる確定給付型制度と、会社が拠出した資金を従業員が運用する確定拠出型制度を採用しています。退職一時金制度もあり、退職給付として給与と勤務期間に基づいた一時金が支給されます。
なお、確定給付制度における退職給付債務は36.2億円、年金資産は38.9億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
カーリットグループは、経営理念である「信頼と限りなき挑戦」のもと、事業の継続性と将来の成長、社会への貢献を支える人財基盤の構築を人財戦略の目的としています。技術力や事業競争力の維持・向上を重視し、多様な経験や価値観を持つ人財の確保と育成、働きやすい職場環境の整備を重要な経営課題と位置付けています。
従業員の給与は、職務・役割に応じた基準内給与(基本給等)を基礎とし、時間外手当等の基準外給与、会社業績および個人評価に連動した賞与で構成されています。職責や業務遂行状況を踏まえた処遇が行われ、業績に応じた昇給や賞与水準が決定されており、これらは労働組合との協議を経て最終決定されます。
中期経営計画「Challenge2027」では、「事業を続け、広がる将来を支える人財の獲得」、「会社を成長させ、新たな事業を創る人財の育成」、「限りなき挑戦を目指し、多様な人財が活躍できる環境の整備」に注力しています。具体的には、女性活躍推進として積極的な女性採用や中核人財育成研修、女性管理職の登用を進めています。また、外国人採用や中途採用によるダイバーシティの推進、グループ横断的な教育制度の充実、階層別研修や自己啓発支援による人的資本の拡充にも取り組んでいます。さらに、ストレスチェックや産業医面談などを通じた健康経営を推進し、従業員が安心して活き活きと働ける職場環境づくりを目指しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男女の賃金格差は、同一労働の賃金に差はなく、職掌および資格等級別人数構成の差によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 6.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 68.6% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 75.9% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 59.3% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ ジェーシーボトリング株式会社
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
▼ 東洋発條工業株式会社
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 6.7% |
採用に関する指標
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 採用人数 | 28名 |
| 中途採用比率 | 28.5% |
| 新卒の女性採用比率 | 30.8% |
人財育成・登用に関する指標
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.9% |
| 女性管理職候補層比率 | 20.8% |
| 研修費用総額 | 22百万円 |
働きやすい職場環境・人財定着に関する指標
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 育児休業取得率(男性・女性を含む) | 100% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
カーリットグループは、化学品、ボトリング、金属加工、エンジニアリングサービスの4つの事業セグメントを展開しています。多岐にわたる事業を通じて、社会の様々なニーズに応えています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、カーリットと11の連結子会社、1社の持分法適用関連会社、1社の持分法非適用会社で構成されています。主に化学品の製造販売を基盤としつつ、ボトリング事業や金属加工事業、エンジニアリングサービス事業を展開しています。各事業セグメントは、それぞれの製品やサービスについて国内外で戦略を立案し、事業活動を行っています。
化学品
このセグメントでは、産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管などの化薬分野、塩素酸ナトリウムや過塩素酸アンモニウムなどの化成品分野、有機導電材料や光機能材料などの電子材料分野を手掛けています。また、危険性評価試験や電池試験の受託評価分野、研削材のセラミック材料分野、半導体用シリコンウェーハ分野も含まれます。収益は、これらの多岐にわたる製品の製造販売および受託評価サービスから得ています。当期は化薬分野や電子材料分野が堅調に推移した一方で、シリコンウェーハ分野が減益となり、セグメント全体では売上高が減少し、営業利益が増加しました。
ボトリング
このセグメントでは、清涼飲料水のボトリング加工を行っています。収益は、常温無菌充填製造ライン、ホットパック充填製造ライン、缶製造ラインといった製造ラインの受注と稼働から得ています。当期はすべての製造ラインの稼働が堅調に推移したものの、減収となりましたが、コスト削減の取り組みにより増益となりました。株式会社伊藤園が主要な顧客の一つとなっています。
金属加工
このセグメントでは、各種耐熱炉内用金物やスプリングの製造販売を行っています。収益は、製鉄所やセメント工場、ゴミ処理施設などの定期修繕に伴う更新需要や、建設機械関連顧客、自動車関連顧客への製品販売から得ています。当期は耐熱炉内用金物や各種金属スプリングおよびプレス品が堅調に推移し、増収増益となりました。
エンジニアリングサービス
このセグメントでは、建築・設備工事の請負、塗料販売・塗装業務、構造設計などのサービスを提供しています。収益は、建築工事の内部案件や耐震補強設計などの需要から得ています。当期は建築・設備工事が増収となった一方で、塗料販売・塗装業務や構造設計が減益となり、セグメント全体では増収減益となりました。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 化学品 | 217億円 | 210億円 |
| 金属加工 | 70.8億円 | 71.5億円 |
| ボトリング | 45.2億円 | 44.8億円 |
| エンジニアリングサービス | 36.2億円 | 36.4億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は概ね横ばいから微減の傾向を示しています。一方で、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の期において増加傾向にあります。特に当期は、売上高が減少したものの、利益は大きく増加する結果となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 339億円 | 360億円 | 366億円 | 369億円 | 362億円 |
| 経常利益 | 27.4億円 | 29.1億円 | 36.0億円 | 33.2億円 | 37.5億円 |
| 経常利益率 | 8.1% | 8.1% | 9.8% | 9.0% | 10.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 23.4億円 | 22.5億円 | 26.0億円 | 25.7億円 | 29.8億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 98.31 | 94.55 | 109.91 | 109.07 | 130.50 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から減少しています。一方で、従業員1人あたりの営業利益は前期から増加しており、生産性の改善が見られます。これは、売上高の減少にもかかわらず、利益率が向上していることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 34.5百万円 | 33.7百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 2.8百万円 | 3.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
カーリットの経営の安定性について、財務基盤、キャッシュフロー、事業リスクの観点から見ていきます。同社グループは本業で資金を生み出しつつ、将来に向けた投資を積極的に行っている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
カーリットの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均と比較して高い水準にあり、安定した経営基盤を示しています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均を下回っていますが、前期からは改善傾向にあります。手元資金は減少していますが、堅実な財務体質は、入社後の雇用や給与の安定性にもつながる要素と言えるでしょう。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 375億円 | 398億円 |
| 自己資本比率 | 70.7% | 69.0% |
| ROE(自己資本利益率) | 6.9% | 7.7% |
| 現金及び預金 | 49.5億円 | 39.9億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
カーリットの当期のキャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローはプラスとなっています。これは主に税金等調整前当期純利益や減価償却費による収入があったためです。一方、投資活動によるキャッシュフローはマイナスであり、主に固定資産の取得による支出が影響しています。財務活動によるキャッシュフローはプラスとなっており、借入金の増加が主な要因です。
これらの結果、フリーキャッシュフローはマイナスとなっており、同社グループが本業で得た資金を上回る投資を行っている成長投資フェーズにあることを示しています。将来に向けた積極的な投資は、同社グループの持続的な成長を支えるものであり、中長期的な雇用安定性や給与水準の維持に寄与する可能性があります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 47.0億円 | 16.6億円 |
| 投資CF | △9.9億円 | △34.8億円 |
| 財務CF | △17.0億円 | 8.9億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 37.1億円 | △18.2億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、製品の需要や供給の変動、競合他社や取引先の戦略変更などによる市場動向変動のリスクを認識しています。また、原材料の一部を輸入品で調達していることや、海外での事業・輸出取引において、為替相場の変動による影響を受ける可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、人員不足に関するリスクを認識しています。事業活動におけるキャパシティの低下や、後継者不在による重要な技術・ノウハウの継承断絶が、製品の供給安定性や競争力、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
カーリットは、「信頼と限りなき挑戦」を経営理念に掲げ、社会と人々に貢献することを使命とする企業です。創業100周年を迎え、持続可能な社会の実現を目指し、未来に向けた発展を追求しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループの経営理念は「信頼と限りなき挑戦」です。2018年に創業100周年を迎え、創業者である浅野総一郎の理念を踏まえ、現代の存在意義と将来に向けた夢のある発展を追い求めています。
社会と人々に貢献することが使命と考え、「継続ある事業基盤の確立」と「不朽なる技術の進展」を不可欠な要素としています。社員一同、世界に信頼される「カーリットグループ」となるよう、飽くなき挑戦を日々積み重ねることを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは「信頼と限りなき挑戦」という経営理念のもと、モノづくりやサービスの提供を通じて社会課題の解決に貢献し、「持続可能な社会の実現」を目指すサステナビリティ基本方針を掲げています。ステークホルダーからの信頼確保を第一とし、研究開発体制の整備や新規事業への積極的な展開を図っています。
人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針として、女性活躍の推進、外国人採用や中途採用の継続的な推進、グループ横断的な教育制度の充実に取り組んでいます。また、「安心・安全で活き活きとした職場環境づくり」をマテリアリティに掲げ、健康経営を推進しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、中期経営計画「Challenge2027」において、新たな事業ポートフォリオに基づいた経営を推進し、いくつかの事業を重点領域、注力領域、育成領域と位置づけています。中計期間である2025年度から2027年度の3年間を「投資促進」フェーズと位置づけ、生産能力増強、新規生産設備、省エネ・省力化などの投資を積極的に実行していきます。
気候変動への対応に加え、水や化学品の排出管理や生物多様性への取り組み、省エネルギー設備投資などを推進しています。また、重要なリスク要因を認識し、グループリスクマネジメント委員会を設置しています。2026年度からは「リスク管理統括室」を新設し、リスク管理を強化しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
カーリットは監査役会設置会社であり、取締役会と監査役会が経営の監督機能を担っています。社外役員が経営の透明性と公正性の確保に貢献する体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
カーリットの筆頭株主は、みずほ信託銀行の退職給付信託であり、機関投資家や事業会社が上位株主として名を連ねています。複数の信託銀行が上位に位置していることが特徴です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| みずほ信託銀行 退職給付信託 丸紅口 再信託受託者 日本カストディ銀行 | 8.7% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.8% |
| 日油 | 4.0% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性8名・女性2名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役兼社長執行役員は金子洋文氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡本 英夫 | 取締役兼常務執行役員 財務部、法務・コンプライアンス部担当 | 1985年4月 富士銀行(現みずほ銀行)入行、2013年10月 同社法務部長兼内部監査室長、2026年4月 同社取締役兼常務執行役員財務部、法務・コンプライアンス部担当より現職。 |
| 高橋 茂信 | 取締役兼執行役員 生産本部、長野工場統括、生産・品質統括部担当 | 1983年4月 日本カーリット入社、2021年4月 同社執行役員、2025年4月 同社取締役兼執行役員生産本部、長野工場統括、生産・品質統括部担当より現職。 |
| 中津 隆一 | 取締役兼執行役員 ボトリングセグメント担当 ジェーシーボトリング代表取締役社長 | 1991年4月 日本カーリット入社、2023年4月 ジェーシーボトリング代表取締役社長(現)、2026年4月 同社取締役兼執行役員ボトリングセグメント担当より現職。 |
社外取締役は、村山由香里氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、藤原康弘氏(藤原会計士事務所代表)、佐藤晴俊氏(元東京応化工業取締役兼専務執行役員)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会から独立した監査役および監査役会が取締役の職務執行状況を監査しています。社外取締役は、経営全般、法令、財務、コーポレート・ガバナンス等に関して、独立・公正な立場から有益な提言を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
カーリットの取締役の報酬は、月額の固定報酬と賞与で構成されています。賞与は業績連動型株式報酬制度としており、連結経常利益を業績基準に、中長期的な業績向上と企業価値増大への貢献意識を高めることを目的としています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 1.3億円 | 21.5百万円 |
| 社外取締役 | 4名 | 21百万円 | 5.2百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 9百万円 | 4.5百万円 |
| 社外監査役 | 2名 | 24百万円 | 12.0百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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