東急不動産ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東急不動産ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する総合不動産グループです。都市開発、戦略投資、管理運営、不動産流通の4事業を展開し、広域渋谷圏の開発や再生可能エネルギー事業などに強みを持ちます。当連結会計年度は、分譲マンションや売買仲介、ホテル事業の好調により、売上高・各利益ともに過去最高となる増収増益を達成しました。


※本記事は、東急不動産ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東急不動産ホールディングスってどんな会社?


東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブルなどを傘下に持つ持株会社です。広域渋谷圏での都市開発や、再生可能エネルギー事業等の多様なポートフォリオを展開しています。

(1) 会社概要


同社は2013年、東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブルの3社による共同株式移転により設立され、上場しました。2014年に東急住宅リースを設立し、2017年には東急不動産リート・マネジメントへ商号変更するなどグループ再編を進めています。2025年1月にはリニューアブル・ジャパンを連結子会社化し、再生可能エネルギー事業を強化しています。

連結従業員数は21,898名、単体では118名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はその他の関係会社である東急です。東急グループの中核企業として、相互に連携しながら事業を展開しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.12%
東急 15.90%
日本カストディ銀行(信託口) 8.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は西川弘典氏です。社外取締役比率は31.3%です。

氏名 役職 主な経歴
西川 弘典 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1982年東急不動産入社。同社取締役、代表取締役などを経て、2020年より現職。
金指 潔 取締役会長 1968年東急不動産入社。同社代表取締役社長、代表取締役会長などを経て、2020年より現職。
星野 浩明 取締役(代表取締役)執行役員 1989年東急不動産入社。同社代表取締役社長(現任)などを経て、2025年より現職。
木村 昌平 取締役執行役員 1984年東急不動産入社。同社取締役などを経て、2019年より現職。東急コミュニティー代表取締役社長を兼務。
宇杉 真一郎 取締役執行役員 1991年東急不動産入社。2022年同社執行役員、2023年東急不動産取締役などを経て、2023年より現職。
野本 弘文 取締役 1971年東京急行電鉄(現東急)入社。同社代表取締役社長、代表取締役会長などを経て、2013年より現職。
太田 陽一 取締役 1983年東急不動産入社。東急リバブル代表取締役社長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、貝阿彌誠(元東京地方裁判所所長)、三浦惺(元日本電信電話社長)、星野次彦(元国税庁長官)、定塚由美子(元厚生労働省人材開発統括官)、宇野晶子(元資生堂常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「都市開発事業」「戦略投資事業」「管理運営事業」「不動産流通事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

都市開発事業


東急不動産等が、オフィスビルや商業施設などの開発、賃貸、運営、売却業務を行っています。また、分譲住宅や賃貸住宅の開発、分譲、売却業務等も展開しています。一部のオフィスビル等については東急コミュニティーに、一部の商業施設については東急不動産SCマネジメントに管理・運営を委託しています。

収益は、オフィスビルや商業施設のテナントからの賃貸料、および分譲マンション等の購入者からの売却代金等が主な源泉です。事業運営は主に東急不動産が行っており、管理業務の一部を東急コミュニティーや東急不動産SCマネジメントが担っています。

戦略投資事業


東急不動産等が再生可能エネルギー発電施設や物流施設の開発、賃貸、運営、売却業務等を行っています。また、東急不動産キャピタル・マネジメント等が不動産ファンド等の運用業務を、PT.Tokyu Land Indonesia等が海外での不動産開発投資を行っています。

収益は、発電施設からの売電収入、物流施設の賃貸料、ファンド運用によるアセットマネジメントフィー等が主な源泉です。運営は東急不動産、東急不動産キャピタル・マネジメント、東急不動産リート・マネジメント、リニューアブル・ジャパン等が行っています。

管理運営事業


東急コミュニティー等がマンション、ビル等の総合管理業務、改修工事業等を行っています。また、東急不動産等がホテル、ゴルフ場、スキー場等の経営を行い、東急リゾーツ&ステイに運営を委託しています。

収益は、管理組合やビルオーナーからの管理委託料、工事代金、ホテル・リゾート施設の利用者からの利用料等が主な源泉です。運営は、東急コミュニティー、東急不動産、東急リゾーツ&ステイ、東急イーライフデザイン等が行っています。

不動産流通事業


東急リバブル等が不動産の仲介、販売代理、買取再販事業等を行っています。また、東急住宅リースや学生情報センター等が賃貸住宅や学生マンション等の管理・運営及び転貸業務等を行っています。

収益は、不動産売買・賃貸の仲介手数料、買取再販による売却益、賃貸物件のオーナーからの管理代行手数料等が主な源泉です。運営は、東急リバブル、東急住宅リース、学生情報センター等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高(営業収益)は順調に拡大傾向にあります。特に利益面での成長が著しく、経常利益は期間を通じて右肩上がりで推移し、直近では1,000億円を超える水準に達しています。当期利益も増加基調を維持しており、全体として収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 9,077億円 9,890億円 10,058億円 11,030億円 11,503億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 466億円 728億円 996億円 1,104億円 1,292億円
利益率(%) 5.1% 7.4% 9.9% 10.0% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 217億円 351億円 482億円 685億円 776億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約20%前後で推移しており、営業利益率も改善傾向にあります。増収効果が利益拡大に寄与し、堅調な業績推移を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 11,030億円 11,503億円
売上総利益 2,160億円 2,453億円
売上総利益率(%) 19.6% 21.3%
営業利益 1,202億円 1,408億円
営業利益率(%) 10.9% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料・手当・賞与が228億円(構成比22%)、販売宣伝費が130億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの増減要因を見ると、都市開発事業は減収ながらも物件売却益等により大幅な増益となりました。不動産流通事業は売買仲介の好調等により増収増益を達成しています。管理運営事業もホテル事業の回復等で増益を確保しましたが、戦略投資事業は海外事業の費用増等により減益となりました。全体としては増益基調です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
都市開発事業 3,622億円 3,461億円 532億円 705億円 20.4%
戦略投資事業 1,070億円 1,090億円 151億円 52億円 4.7%
管理運営事業 3,562億円 3,515億円 228億円 250億円 7.1%
不動産流通事業 2,776億円 3,437億円 385億円 508億円 14.8%
調整額 -274億円 -206億円 -95億円 -108億円 -
連結(合計) 11,030億円 11,503億円 1,202億円 1,408億円 12.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は「積極型」です。本業の営業活動で得た資金に加え、財務活動による資金調達も行いながら、将来の成長に向けた投資活動を積極的に行っている状態です。

なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,565億円 474億円
投資CF -1,782億円 -1,400億円
財務CF 978億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」において、ありたい姿として「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来の実現」を掲げています。「個人」「社会」「環境」それぞれの未来の理想像を描き、独自のプレミアムな価値を創出することで、この未来の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、創業以来、常に新しい事業やサービスの開発に取り組んできた「クリエイティブなカルチャー」の創造と継承を重視しています。変化の時代においても、このカルチャーを土台とし、社会的なテーマを捉えながら価値創造に取り組む姿勢を持っています。また、グループスローガンとして「WE ARE GREEN」を掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2030」を策定し、長期経営方針の「強靭化フェーズ」として位置付けています。2030年度の目標指標として以下を掲げ、強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築を目指しています。

* ROE 10%
* 営業利益 2,200億円以上
* EPS 170円前後

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2030」において、社会的ニーズの変化・高まりからマーケットの拡大が見込める「3つの重点テーマ」への取組を推進します。グループ各社の顧客・市場接点と事業創出力を活かしたビジネスエコシステムを深化させ、高い成長性と市況変動への耐久性を兼ね備えた事業ポートフォリオを構築します。

* 営業利益 2,200億円以上(2030年度目標)
* 営業利益 1,700億円(2027年度中間目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グループ人財理念に基づき、「価値を創造する人づくり」「多様性と一体感のある組織づくり」「働きがいと働きやすさの向上」の3つの戦略を推進しています。DX人財の育成や女性活躍推進、DE&Iの取り組みに加え、グループ共創型社内ベンチャー制度などを通じ、イノベーティブな組織風土の醸成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 15.1年 12,784,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は、提出会社が「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(100%)、ストレスチェック受検率(100%)、デジタル活用によるビジネス件数(105件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投資リスク


都市開発事業や戦略投資事業など投資を伴う事業においては、景気動向、不動産市況、金利動向、競合環境等の影響を受けやすく、これらにより利益率の低下や保有資産価値の下落が生じる可能性があります。同社はVaR値の算出や継続的なモニタリングによりリスク管理を行っています。

(2) 財務資本リスク


不動産開発資金等を借入金や社債で調達しているため、金利上昇や株価下落が経営成績に影響を与える可能性があります。同社は長期固定金利での調達比率を高めることで金利変動リスクを軽減するとともに、財務の健全性維持に努めています。

(3) 気候変動リスク


気候変動による炭素税導入などの移行リスクや、異常気象による建物被害などの物理的リスクが事業に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はTCFD提言への賛同やSBT認定の取得などを通じ、脱炭素社会への移行計画を推進し、リスクへの対応と機会の創出を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。