東急不動産ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東急不動産ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東急不動産ホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場する総合不動産企業です。都市開発事業、戦略投資事業、管理運営事業、不動産流通事業の4つのセグメントを展開しています。直近の業績トレンドとしては、堅調な不動産売買市場を背景とした仲介事業の好調等により、5期連続で増収増益を達成しました。


※本記事は、東急不動産ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東急不動産ホールディングスってどんな会社?


同社は都市開発、戦略投資、管理運営、不動産流通等の不動産関連事業を幅広く展開する総合不動産グループです。

(1) 会社概要


同社は、2013年10月に共同株式移転により東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブルの完全親会社として設立され、同時に東京証券取引所市場第一部に上場しました。2014年に東急住宅リースを設立し、2016年に学生情報センター、2025年に再生可能エネルギー事業を担うリニューアブル・ジャパンを連結子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数はグループ全体で21,036名、単体で105名体制です。筆頭株主は事業会社の東急で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
東急 15.90%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.07%
日本カストディ銀行(信託口) 7.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性5名の計17名で構成され、女性役員比率は29.4%です。代表取締役社長は星野浩明が務めており、社外取締役の比率は約46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
西川弘典 取締役会長(代表取締役) 1982年東急不動産入社。2013年同社執行役員、2017年同社代表取締役社長に就任。2026年より現職。
星野浩明 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1989年東急不動産入社。2023年東急不動産代表取締役社長に就任。2026年より現職。
小林俊一 取締役執行役員 1988年東急リバブル入社。2019年同社取締役に就任し、2025年同社代表取締役社長に就任。同年より現職。
池内敬 取締役執行役員 1989年東急不動産入社。2020年東急不動産取締役に就任し、2026年リエネ・エナジー代表取締役社長となる。同年より現職。
池田秀竜 取締役執行役員 1992年東急不動産入社。2025年同社取締役、同年当社執行役員に就任。同年より現職。
金指潔 取締役 1968年東急不動産入社。2008年同社代表取締役社長、2014年東急不動産代表取締役会長等を経て2026年より現職。
木村昌平 取締役 1984年東急不動産入社。2014年東急不動産取締役に就任し、2022年に東急コミュニティー代表取締役社長となる。2026年より現職。


社外取締役は、貝阿彌誠(元東京地方裁判所所長)、三浦惺(元日本電信電話社長)、星野次彦(元国税庁長官)、定塚由美子(元厚生労働省人材開発統括官)、宇野晶子(元資生堂常勤監査役)、中出和美(元日本ハイアット取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「都市開発事業」「戦略投資事業」「管理運営事業」「不動産流通事業」を展開しています。

(1) 都市開発事業


オフィスビルや商業施設などの開発、賃貸、運営、売却業務、および分譲住宅や賃貸住宅の開発、分譲、売却業務などを行っています。都市部の法人や個人を主な顧客として事業を展開しています。

顧客からの賃貸収入や不動産売却代金、分譲住宅の販売代金を主な収益源としています。運営は東急不動産が主体となり、一部のオフィスビルの管理等は東急コミュニティーが、商業施設の管理・運営は東急不動産SCマネジメントが行っています。

(2) 戦略投資事業


再生可能エネルギー発電施設や物流施設の開発、賃貸、運営、売却業務のほか、不動産私募ファンドやリートの組成・運用業務、海外における不動産開発投資を行っています。

発電施設からの売電収入や物流施設の賃貸収入、ファンド等の運用・管理手数料を収益源としています。運営は主に東急不動産、東急不動産キャピタル・マネジメント、東急不動産リート・マネジメント、リエネ・エナジーなどが行っています。

(3) 管理運営事業


マンションやビル等の総合管理業務、改修工事業のほか、会員制リゾートホテル、都市型ホテル、ゴルフ場、スキー場、シニア住宅などの開発・経営・運営、環境緑化事業などを提供しています。

施設利用者からの宿泊・利用料や物件所有者からの管理委託手数料などを収益源としています。運営は東急コミュニティー、東急リゾート、東急リゾーツ&ステイ、東急イーライフデザイン、石勝エクステリア等が行っています。

(4) 不動産流通事業


不動産の売買仲介、販売代理、買取再販事業のほか、賃貸住宅や学生マンション等の管理・運営および転貸業務などを提供しています。法人・個人の不動産売買や賃貸ニーズに対応しています。

仲介・販売代理に伴う手数料や買取再販による売却益、賃貸住宅の管理・転貸等による家賃収入を収益源としています。運営は主に東急リバブル、東急住宅リース、学生情報センターが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

直近5年間の業績推移を見ると、経常利益および当期利益は一貫して増加傾向にあります。特に当期利益は直近で967億円を記録し、継続的な成長を実現しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常利益 728億円 996億円 1104億円 1292億円 1478億円
当期利益(親会社所有者帰属) 128億円 149億円 203億円 288億円 395億円


直近2期間の営業利益は着実に増加しており、継続的な収益力向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 1408億円 1669億円


各セグメントの売上動向を見ると、都市開発事業および戦略投資事業が大きく成長し、全体の増収を牽引しました。管理運営事業は安定した推移を見せ、不動産流通事業も着実な伸びを示しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
都市開発事業 3461億円 3974億円
戦略投資事業 1090億円 1413億円
管理運営事業 3515億円 3506億円
不動産流通事業 3437億円 3568億円
連結(合計) 11503億円 12460億円


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金と借入等の財務活動による調達資金を合わせて、積極的な投資を行っている「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 474億円 1295億円
投資CF -1400億円 -1645億円
財務CF 15億円 558億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.3%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」において、「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来の実現」をありたい姿として掲げています。「個人」「社会」「環境」それぞれの未来の理想像を描き、事業活動を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーとともにサステナブルな社会と成長を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、常に新しい事業やサービスの開発に取り組んできた「クリエイティブなカルチャー」の創造と継承を土台としています。すべての従業員が「挑戦するDNA」と「社会に向き合う使命感」を持ち、互いに共創する「一体感」のある組織風土の醸成を重視し、多様なグリーンの力で未来を切り拓く姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2030」を推進し、強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築による利益成長を目指しています。2030年度の財務目標として以下の数値を掲げています。

* ROE:10%
* ROA:5%
* EPS:170円前後(平均成長率8%/年)
* 営業利益:2,200億円以上
* 当期純利益:1,200億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


社会的なニーズの変化からマーケットの拡大を見込める「3つの重点テーマ(広域渋谷圏戦略の推進、GXビジネスモデルの確立、グローカルビジネスの拡大)」への取り組みを推進しています。環境先進の強みを生かした「環境プレミアム」の創出や、デジタルトランスフォーメーション(DX)による体験価値の向上とビジネスモデル変革を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「価値を創造する人づくり」「多様性と一体感のある組織づくり」「働きがいと働きやすさの向上」の3つを人財戦略の柱として推進しています。階層に応じた研修やグループ間の人財交流を通じて「経営人財」や「事業変革人財」を持続的に輩出し、DE&Iを基盤としたイノベーティブな組織風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 15.3年 13,199,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 60.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 50.1%


また、同社は「人的資本経営」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(42%)、キャリア採用者管理職比率(55%)、健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投資リスクと不動産市況の変動


不動産市況や国内外の景気動向、競合環境、金利等の影響により、各事業における収益性の悪化や保有資産の価値が下落するリスクがあります。同社は投資対象アセットごとのリスクファクターを定め、継続的なモニタリングを通じてリスク量の管理を行っています。

(2) 財務資本リスクと金利上昇


不動産の開発資金等を借入金や社債発行で調達しているため、金利上昇が経営成績に影響を与える可能性があります。同社は有利子負債の大部分を長期借入とし、金利の固定化を進めることで影響を最小限に抑える取り組みを実施しています。

(3) 気候変動リスク


炭素税などの法規制の厳格化(移行リスク)や、異常気象による建物被害や工期の延長(物理リスク)が事業に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はシナリオ分析を通じた影響の把握と、脱炭素社会への移行計画を推進しています。

(4) IT・情報セキュリティリスク


多くのお客様の個人情報を取り扱っており、サイバー攻撃や情報漏洩が発生した場合、社会的信用やブランドイメージの低下を招くリスクがあります。同社はセキュリティ対策の強化と社員のリテラシー向上施策等を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。