#じげん転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社じげん の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. じげんってどんな会社?
生活関連情報の統合サイト運営を主力とし、M&Aによる多角化で急成長を続けるインターネット企業です。
■(1) 会社概要
2006年にドリコムジェネレーティッドメディアとして設立され、2008年に現在の主力であるライフメディアプラットフォーム事業を開始しました。2013年に東証マザーズへ上場し、2018年には東証一部へ市場変更を果たしました。積極的なM&Aにより、美容・旅行・不動産等の領域へ事業を拡大しています。
連結従業員数は964名、単体では239名体制です。筆頭株主は代表取締役の資産管理会社であるじょうげんで、第2位は創業者の平尾丈氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| じょうげん | 48.69% |
| 平尾 丈 | 5.25% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは平尾丈氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平尾 丈 | 代表取締役社長執行役員CEO | リクルート入社後、じげんの前身企業に出向し25歳で社長就任。MBOを経て上場へ導く。リジョブ、タイズ、アップルワールド等の取締役を兼任し、グループ経営を牽引。 |
| 波多野 佐知子 | 取締役執行役員 | あずさ監査法人、ライフネット生命を経てじげん入社。経営管理部門を統括し、グループ各社の取締役を兼任。 |
| 佐藤 真治 | 取締役執行役員 | ジェイブレイン、アイアンドシー・クルーズ取締役を経てじげん入社。事業本部を統括し、TCVやCORDAの代表取締役等を兼任。 |
社外取締役は、薄葉康生(元グーグル合同会社チャネルセールス事業本部長)、榊淳(一休代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ライフサービスプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) Vertical HR
美容・ヘルスケア、メーカー、建設、不動産、運送、介護・保育といった特定の業界に特化した求人メディアや人材紹介サービスを展開しています。専門性の高い領域において、ユーザーと事業所を高精度でマッチングさせます。
収益は主にクライアント事業所からの求人広告掲載料や、採用決定時に発生する成果報酬等から成ります。運営は、リジョブ、タイズ、アップベース、オーサムエージェント、ミラクス等が担っています。
■(2) Living Tech
賃貸物件情報の検索サイト「賃貸スモッカ」や海外不動産取引支援、リフォーム会社比較サイト「リショップナビ」、プロパンガス会社比較サイト「エネピ」等を運営しています。住まいに関する多様なニーズに対応したサービスを提供しています。
収益は、不動産会社やリフォーム会社、ガス会社等からの広告掲載料や送客手数料等から成ります。運営は同社およびビヨンドボーダーズ等が担っています。
■(3) Life Service
フランチャイズ比較、結婚相談所比較などのマッチングメディアや、ホテル予約サイト等を運営しています。複数のインターネット情報を統合し、ユーザーに一括検索・比較検討の機会を提供します。
収益は提携先企業からの広告料や、旅行予約等に伴う手数料収入等から成ります。運営は同社およびアップルワールド等が担っています。
■(4) その他
既存事業で培った知見を活かしたコンシューマ課金サービスや、事業化を検討している新規開発サービスを展開しています。
収益は主にユーザーからのサービス利用料等から成ります。運営は主にCORDAが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は毎期順調に拡大しており、5期間で約2倍の規模に成長しています。利益面でも税引前利益、当期利益ともに増加基調を維持しており、高い利益率を確保しながら事業規模を拡大させています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 126億円 | 153億円 | 187億円 | 232億円 | 255億円 |
| 税引前利益 | -11億円 | 33億円 | 42億円 | 54億円 | 57億円 |
| 利益率(%) | -8.5% | 21.7% | 22.4% | 23.4% | 22.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -20億円 | 23億円 | 29億円 | 38億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
前期比で増収となり、売上総利益も増加しました。販売費及び一般管理費も事業拡大に伴い増加していますが、営業利益率は20%を超える高水準を維持しており、収益性の高い事業構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 232億円 | 255億円 |
| 売上総利益 | 193億円 | 209億円 |
| 売上総利益率(%) | 83.1% | 82.1% |
| 営業利益 | 54億円 | 57億円 |
| 営業利益率(%) | 23.2% | 22.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が35億円(構成比23%)、給与手当が10億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のライフサービスプラットフォーム事業は、人材紹介領域や旅行・自動車領域等の需要が堅調に推移し、M&A効果も寄与して増収増益となりました。その他事業は規模が小さく、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ライフサービスプラットフォーム事業 | 226億円 | 248億円 | 53億円 | 56億円 | 22.6% |
| その他 | 10億円 | 9億円 | 1億円 | 1億円 | 8.2% |
| 調整額 | -3億円 | -3億円 | -0.2億円 | -0.2億円 | - |
| 連結(合計) | 232億円 | 255億円 | 54億円 | 57億円 | 22.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、運転資金や戦略投資資金を自己資金や借入金等で調達しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の計上や減価償却費の計上、預り金の増加などにより増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、無形資産の取得や子会社株式の取得により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済や自己株式の取得、配当金の支払いにより減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 68億円 | 73億円 |
| 投資CF | -10億円 | -24億円 |
| 財務CF | -26億円 | -38億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「生活機会の最大化」を基本理念として掲げています。インターネットを通じて情報を繋ぐ「場」を提供することで、情報の非対称性を解消し、人々がより多くの選択肢から最適な意思決定を行えるよう支援することを目指しています。
■(2) 企業文化
「OVER the DIMENSION!」を経営理念とし、圧倒的に突き抜けたサービスや会社を創ることで、世の中の常識や価値観を覆すことを目指しています。また、Purposeとして「Update Your Story」を掲げ、人生の岐路に立つすべての人の未来をアップデートすることを存在意義としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年3月期の業績目標として、以下の数値を掲げています。
* 連結売上収益:280億円
* EBITDA:74.3億円
* 連結営業利益:58.8億円
■(4) 成長戦略と重点施策
ライフサービスプラットフォーム事業においては、データドリブンなマッチングテクノロジーを活用し、既存事業の拡大と新規ビジネスモデルへの展開を図ります。また、M&Aを通じた事業領域の拡張や、組織体制の強化によるバリューチェーンの内製化を推進し、新たな収益源の確保と持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を経営の根幹と捉え、人材の成長と事業成長が連動する仕組みづくりに注力しています。事業拡大やM&Aによって創出される「実践の機会」を人材育成の中心に据え、多様なバックグラウンドを持つ人材を結集させることで、社会を変革するチームの組成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 33.1歳 | 3.7年 | 5,480,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.8% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 118.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、チャレンジアサイン率(73.8%)、成長実感率(77.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 広告市場および景気変動の影響
インターネット広告市場は成長傾向にありますが、企業の広告費支出は景気動向に敏感です。急激な景気変動や顧客企業の予算配分変更が生じた場合、掲載案件数の減少や単価低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) メディア顧客企業との関係
事業で用いる情報の一部は提携先のインターネットメディアから提供を受けており、これら企業とのネットワークは重要な経営資源です。メディア顧客企業の提携方針変更や関係性の変化が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 競合との競争激化
同様のビジネスモデルを持つ競合企業が存在し、大手事業者の新規参入や既存他社の規模拡大により競争が激化する可能性があります。優位性を維持できない場合、顧客やユーザーの獲得に支障が生じ、業績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(4) ライフサービスプラットフォーム事業への依存
売上収益の大部分をライフサービスプラットフォーム事業が占めています。各業界の広告費動向や競争激化、サイトの健全性低下等により同事業の収益が減少した場合、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。



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