記事タイトル:「じげん転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、株式会社じげんの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
0. まとめ
じげんは東京証券取引所プライム市場に上場し、求人、不動産、旅行など多様な領域でライフサービスプラットフォーム事業を展開しています。直近の業績は、M&Aや各領域の堅調な需要を背景に、売上収益292億円、営業利益59億円と増収増益を達成しました。積極的な事業展開でさらなる成長を目指す企業です。
1. じげんってどんな会社?
ライフサービスプラットフォーム事業を中心に、人々の生活機会を最大化するサービスを展開する企業です。
(1) 会社概要
2006年6月、ドリコムとリクルートグループのジョイントベンチャーとして設立されました。2008年にライフメディアプラットフォーム事業を開始し、2009年に「じげん」へ社名変更しました。2013年11月に東証マザーズに上場後、ブレイン・ラボやリジョブなど多数のM&Aを実行して事業を拡大し、2022年4月にプライム市場へ移行しました。
従業員数は連結で1,350名、単体で226名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長執行役員CEOの平尾丈氏の資産管理会社であるじょうげんで、第2位は平尾丈氏個人、第3位は信託業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| じょうげん | 49.31% |
| 平尾 丈 | 5.32% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.85% |
(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは平尾丈氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平尾 丈 | 代表取締役社長執行役員CEO | 2005年リクルート入社。2006年出向により同社に参画し、2008年代表取締役社長に就任。リジョブ取締役などを経て、2018年より現職。タイズ取締役やアルファスタッフ代表取締役なども兼務。 |
| 今井 良祐 | 取締役執行役員 | 2013年同社入社。住まいディビジョンのヘッドや企画マーケティングユニットのヘッドを歴任。アイアンドシー・クルーズ代表取締役等を経て2021年執行役員に就任し、2025年より現職。 |
| 波多野 佐知子 | 取締役執行役員 | 2006年あずさ監査法人入所。公認会計士登録後、ライフネット生命保険を経て2018年同社入社。経営管理部長を経て2021年取締役に就任し、2024年より現職。アップベース取締役なども兼務。 |
社外取締役は、薄葉康生(元グーグル合同会社チャネルセールス事業本部長)、榊淳(一休代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ライフサービスプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。
(1) ライフサービスプラットフォーム事業 (Vertical HR)
美容・ヘルスケア領域の「リジョブ」、薬局領域の「ファーマキャリア」、メーカー領域の「タイズ」など、特定の業種に特化した求人メディアや人材紹介事業を展開しています。求職者と採用ニーズの高い顧客企業を高精度でマッチングさせています。
主な収益源は、求人情報の掲載料や、採用に至った場合の成果報酬です。運営は、リジョブ、エニーキャリア、タイズ、アップベースなど複数の子会社がそれぞれの得意領域において担っています。
(2) ライフサービスプラットフォーム事業 (Living Tech / Life Service)
不動産やライフサポートに関連するメディアとして「賃貸スモッカ」や「リショップナビ」、旅行関連の「アップルワールド」、フランチャイズ比較サイトなどを幅広く展開しています。複数の情報を統合し、一括検索・一括反響を可能にするサービスを提供しています。
主な収益源は、ユーザーの応募や問い合わせに応じた成果報酬や広告出稿料です。運営はじげん本体のほか、ビヨンドボーダーズ、アップルワールドなどの各子会社が行っています。
(3) その他
既存事業で培ったマッチングテクノロジーやプラットフォーム運営の知見を活かし、ユーザー課金モデルを中心とした新規開発サービスの企画・開発・運営や、事業化を検討している新規事業を展開しています。
主な収益源は、個人ユーザーからの利用料や課金収入です。事業の運営は、主にCORDAを中心とした子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
(1) 業績推移
同社グループは過去5期間にわたり、安定して増収増益のトレンドを維持しています。主力事業である人材領域や不動産領域の好調に加え、積極的なM&Aによる事業領域の拡大が奏功しています。利益率も高い水準で推移しており、効率的な事業運営と投資回収が両立していることがわかります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 153億円 | 187億円 | 232億円 | 255億円 | 292億円 |
| 税引前利益 | 33億円 | 42億円 | 54億円 | 57億円 | 59億円 |
| 利益率(%) | 21.7% | 22.4% | 23.4% | 22.2% | 20.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | 29億円 | 38億円 | 39億円 | 42億円 |
(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益と営業利益も着実に増加しています。一方で、事業拡大やM&Aに伴う人件費の増加、および主力事業における集客拡張のための広告宣伝費の投下により、利益率はわずかに低下していますが、引き続き高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 255億円 | 292億円 |
| 売上総利益 | 68億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.5% | 25.6% |
| 営業利益 | 57億円 | 59億円 |
| 営業利益率(%) | 22.2% | 20.2% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が40億円(構成比23%)、給与手当が9億円(同5%)を占めています。売上原価のうち、労務費が2億円(構成比18%)、経費が10億円(同82%)を占めています。
(3) セグメント収益
主力のライフサービスプラットフォーム事業は、人材紹介領域における既存事業の成長や、新規M&Aによる事業機会の獲得により、需要が堅調に推移し大幅な増収を達成しています。その他の事業も安定して売上を伸ばしており、グループ全体の成長に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ライフサービスプラットフォーム事業 | 248億円 | 285億円 |
| その他 | 9億円 | 10億円 |
| 調整額 | -3億円 | -3億円 |
| 連結(合計) | 255億円 | 292億円 |
(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであることから、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のパターンと言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 73億円 | 43億円 |
| 投資CF | -24億円 | -38億円 |
| 財務CF | -38億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
(1) 経営理念
同社は、基本理念として「生活機会の最大化」を掲げ、インターネットを通じて世界をつなぐ「場」を提供し、社会との調和と持続的発展を追求しています。また、経営理念「OVER the DIMENSION! - 次元を超えよ!」のもと、圧倒的に突き抜けたサービスと会社を創り、世の中の常識や価値観を覆すことを使命としています。
(2) 企業文化
同社の存在意義(Purpose)は「Update Your Story - あなたを、未来に。」であり、人生の岐路に立つ全ての人に寄り添い、未来をアップデートすることを目指しています。多彩なバックグラウンドを持つ人材が結集し、「UPDATERs」として独自の個性と別解を用いて社会を変革していく、挑戦と価値創造を重んじる文化が根付いています。
(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な企業価値向上のため、第三次中期経営計画「ZIGExN Matching Agent」を推進しています。2027年3月期に向けた業績目標や、2031年3月期の中長期的目標を明確に掲げ、規律ある資本効率性を維持しつつ積極的な戦略投資を実施し、利益とキャッシュ・フローの絶対額の最大化を目指しています。
・2027年3月期目標:連結売上収益335億円、EBITDA83億円、連結営業利益64億円
・2031年3月期目標:売上収益500億円超、EBITDA120億円超
(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、AIを活用したビジネスモデルの進化とバリューチェーンの拡張を推進します。AIが生産性を、人が成約価値の最大化を担う「AIと人の最適配置」を実現し、RPOやBPOなど集客以降のプロセスにも深く介在して収益基盤を強固にします。また、業績貢献の大きい大型M&Aやロールアップ戦略を実行し、事業ポートフォリオ管理を徹底します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
(1) 人材戦略・方針
同社は、人的資本を企業経営の根幹と位置づけ、人材の成長と事業成長が連動する仕組みづくりに注力しています。実践の機会を軸に教育体系を整備し、グループ人材ポートフォリオの再定義やバーチャルカンパニー制の導入を進めています。次世代リーダーの抜擢や外部の優秀な経営人材の獲得を強化し、M&A戦略を牽引する人材のパイプライン構築に取り組んでいます。
(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 33.2歳 | 4.0年 | 5,540,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.3% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 115.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、生産性(1人あたり営業利益)(434万円)、事業開発・PMI経験者数(118名)、プロフェッショナル数(74名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 広告市場への依存と競合激化
同社の売上収益の大部分はライフサービスプラットフォーム事業によるものであり、顧客企業の広告費の支出動向や景気変動に敏感です。また、大手媒体の参入や既存他社の規模拡大により獲得競争が激化した場合には、単価の低下や掲載案件数の減少を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) メディア顧客企業との関係変化
提供する情報の一部はインターネットメディアを運営する顧客企業から提供を受けており、親密なネットワークが重要な経営資源です。検索エンジン対策などのマッチングテクノロジーで信頼関係を構築していますが、提携方針の変更等により関係性が変化した場合、事業運営に支障をきたす恐れがあります。
(3) M&Aや新規事業の投資回収リスク
積極的なM&Aや新サービス開発により事業領域を拡大していますが、システムへの先行投資や広告宣伝費の追加支出が利益率を押し下げるリスクがあります。また、取得した企業の収益性が著しく低下した場合、計上されているのれんの減損処理が必要となり、財務状況に影響を与える可能性があります。
(4) システム障害や技術革新への対応遅れ
事業運営は通信ネットワークに依存しており、自然災害やサイバー攻撃等によりシステムがダウンした場合、サービス提供が困難になります。さらに、生成AIなどの急速な技術革新に対して、システムの拡充やセキュリティガバナンスの強化が遅れた場合、サービスの競争力が相対的に低下するリスクがあります。



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