CAICA DIGITAL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

CAICA DIGITAL 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のCAICA DIGITALは、システム開発を行うITサービス事業と暗号資産等を取り扱う金融サービス事業を展開しています。直近決算では、ITサービスでの選別受注等により減収、営業利益は減益となりましたが、投資有価証券売却益の計上等により最終利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社CAICA DIGITAL の有価証券報告書(第37期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. CAICA DIGITALってどんな会社?


同社グループは、金融機関向けシステム開発で培った知見を活かしたITサービス事業と、暗号資産「カイカコイン(CICC)」の発行やWeb3事業を行う金融サービス事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1989年に株式会社サン・ジャパンとして設立され、2003年に株式を店頭登録しました。2016年よりフィンテック戦略を掲げブロックチェーン分野に注力し、2017年に株式会社カイカへ商号変更、2021年に現在の商号となりました。2022年からWeb3事業に参入し、2025年には株式会社ネクスを完全子会社化してIoT関連事業へ進出しています。

2025年10月31日現在、連結従業員数は356名、単体従業員数は17名です。筆頭株主は情報サービス業を展開する株式会社フィスコ、第2位はIoT関連事業等を営む株式会社ネクスグループ、第3位は株式会社実業之日本デジタルです。これらの大株主とは、事業上の提携関係やグループ内での資本関係を有しています。

氏名 持株比率
フィスコ 13.44%
ネクスグループ 10.31%
実業之日本デジタル 4.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は鈴木伸氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 伸 代表取締役社長 1991年同社入社。事業統轄本部長、第一事業本部長等を経て、2018年代表取締役社長に就任。複数のグループ会社代表を経て、2022年より現職。
山口 健治 代表取締役副社長 2003年シークエッジ(現シークエッジ・ジャパン・ホールディングス)入社。同社代表取締役を経て2015年同社代表取締役に就任。財務経理本部長等を歴任し、2019年より現職。
深見 修 取締役 2011年フィスコ経営戦略本部長。ヤシマ代表取締役、ネクス(現ネクスグループ)取締役等を歴任。CAICAテクノロジーズ取締役等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、川﨑光雄(カテナシア代表取締役)、池田祐作(いけだ税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITサービス」「金融サービス」「IoT関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ITサービス


金融機関向けのシステム開発を中心に、システムに関するコンサルティング、メンテナンス・サポート、暗号資産に関するシステムの研究・開発・販売を行っています。また、企業サポートプラットフォームの運営やDXソリューションサービスにも注力しています。

収益は、顧客からのシステム開発受託費、コンサルティング料、保守運用費等が主な柱です。運営は主に連結子会社の株式会社CAICAテクノロジーズが行っています。

(2) 金融サービス


暗号資産の投資・運用、NFT販売所の運営などを行っています。暗号資産「カイカコイン(CICC)」の発行や、審査制NFT販売所「Zaif INO」の運営を通じて、Web3ビジネスを展開しています。

収益源は、暗号資産の運用益やNFT販売所における販売手数料などです。運営は、株式会社CAICA DIGITAL、株式会社カイカフィナンシャルホールディングス、株式会社EWJなどが行っています。

(3) IoT関連事業


各種無線方式を適用した通信機器の開発・販売、およびそれらに関わるシステムソリューション提供や保守サービスを行っています。AI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術を活用し、分散型技術とリアルデバイスを融合したサービスの創出を目指しています。

顧客に対する通信機器の販売代金やソリューション提供の対価が収益となります。運営は、2025年10月に完全子会社化した株式会社ネクスが行っています。なお、同社の損益計算書への連結は2026年10月期より開始されます。

(4) その他


暗号資産関連コンテンツの提供を行うメディア事業を展開していましたが、当該事業は2025年2月で終了しました。

運営は株式会社CAICA DIGITALが行っていました。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年10月期をピークに減少傾向にあります。利益面では、2023年10月期まで大幅な赤字が続いていましたが、2024年10月期に黒字転換を果たしました。2025年10月期も利益率は低いものの黒字を維持しています。

項目 2021年10月期 2022年10月期 2023年10月期 2024年10月期 2025年10月期
売上高 59億円 64億円 57億円 56億円 52億円
経常利益 -9億円 -14億円 -30億円 1億円 0.8億円
利益率(%) -15.6% -21.7% -52.2% 2.5% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -31億円 -129億円 -44億円 1億円 0.5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、利益率向上のための選別受注などの影響が見られます。営業利益は前期の1億円から0.7億円へと減少しました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。

項目 2024年10月期 2025年10月期
売上高 56億円 52億円
売上総利益 9億円 9億円
売上総利益率(%) 15.8% 17.1%
営業利益 1億円 0.7億円
営業利益率(%) 2.1% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.7億円(構成比21%)、業務委託費が1.4億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


ITサービス事業が売上の大部分を占めていますが、高単価案件へのシフトにより減収となっています。金融サービス事業は売上規模が小さく、赤字が継続しています。なお、IoT関連事業は2025年10月期末に連結貸借対照表のみ取り込まれたため、当期の損益には含まれていません。

区分 売上(2024年10月期) 売上(2025年10月期)
ITサービス 56億円 52億円
金融サービス 0.4億円 0.0億円
その他 0.0億円 -
連結(合計) 56億円 52億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

CAICA DIGITALは、ITサービス事業を中心に事業を展開しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減損損失が主な増加要因となった一方、投資有価証券の売却益が減少要因となり、前年度と比較して増加額が縮小しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入が取得支出を上回り、前年度の減少から増加に転じました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済が主な減少要因となりました。

項目 2024年10月期 2025年10月期
営業CF 3億円 0.5億円
投資CF -4億円 0.2億円
財務CF -2億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、時流を捉え、革新的な事業を創造することを目指しています。長年の金融システム構築で培った知見と最先端テクノロジーに金融事業のノウハウを融合させ、デジタル金融としての新たなナレッジを活かしたサービスを提供するとともに、社会のパラダイムシフトに合致した企業グループとして革新的なサービスを生み出すことを掲げています。

(2) 企業文化


同社は、創業以来手掛けてきたシステム開発事業において、DX化の進展による事業構造の変容や業界再編を見据え、フィンテック戦略を掲げてブロックチェーンやWeb3事業への参入を進めています。安定したキャッシュ・フローを生むシステム開発事業を軸としつつ、変化に対応するための技術革新や新たな事業領域への挑戦を重視する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、連結売上高及び連結営業利益を事業上重視する客観的な指標としており、中期経営計画における2025年10月期の目標数値は以下の通りです。

* 連結売上高:5,195百万円
* 連結営業利益:70百万円

(4) 成長戦略と重点施策


同社はITサービス事業を軸に、DXソリューションへの注力とWeb3ビジネスの伸長による業績拡大を目指しています。具体的には、自社発行暗号資産「カイカコイン(CICC)」の資産価値向上やNFT販売所「Zaif INO」のサービス拡充、Web3事業開発ノウハウの提供を進めます。また、ブロックチェーン関連企業やシステム開発企業を対象としたM&Aも積極的に行う方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、Web3コンサル事業やDXコンサルティング事業の推進に向け、専門分野に特化した人材及びハイスペックなエンジニア等の確保を課題としています。これに対し、ヘッドハンティング会社や専門紹介会社の利用に加え、社員紹介制度の充実を図ることで人材獲得を強化しています。また、テレワークの推進等により多様な人材が活躍できる環境整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年10月期 51.4歳 15.4年 5,924,335円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 4.3%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 83.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 82.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 113.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム開発プロジェクトの採算性


同社子会社のCAICAテクノロジーズが請け負うシステム開発において、見積もり以上の作業発生や仕様変更、納品後の不具合対応などにより、追加コスト負担が生じる可能性があります。これに対し、開発工程ごとの精緻な見積もりを行い、採算性に留意しています。

(2) 情報システムの不稼働


システム開発や情報システムを活用した事業を展開しているため、自然災害、事故、サイバー攻撃等によりシステムが長期間不稼働となった場合、事業中断により業績に重大な影響を与える可能性があります。情報セキュリティ管理規程の整備やシステムの安定稼働維持に努めています。

(3) 暗号資産の運用


同社グループは暗号資産の運用を行っており、価格変動、市場の混乱による取引停止、システム障害、不正アクセスによる盗難などのリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合、対応費用の増加や信用の低下を招き、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 仕掛品の減損リスク


子会社であるネクスでは、IoT製品の開発費を仕掛品として計上しています。新製品の事業化が想定通りに進まない場合や、ローカル5Gの普及遅延など市場環境の変化により、仕掛品の減損損失を計上する必要が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。