海帆 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

海帆 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場の飲食企業です。居酒屋「新時代」を中心とした飲食事業に加え、再生可能エネルギー事業、メディカル事業へ多角化を進めています。直近決算では、飲食事業の回復や新規事業の貢献により増収となりましたが、投資負担やコスト増により営業損失、経常損失、当期純損失を計上し、赤字が継続しています。


※本記事は、株式会社海帆 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 海帆ってどんな会社?


名古屋を拠点に居酒屋等を展開する飲食企業です。近年は再生可能エネルギーや医療支援へ事業領域を拡大しています。

(1) 会社概要


2003年に有限会社として設立され、名古屋市で「なつかし処昭和食堂」などの飲食店経営を開始しました。2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしています。近年は事業ポートフォリオの変革を進めており、2022年に再生可能エネルギー事業を開始したほか、2024年には医療法人の経営支援を行う企業の株式を取得し、メディカル事業へ参入しました。

同社グループの従業員数は連結88名、単体83名です。筆頭株主は同社取締役(元代表取締役社長)の吉川元宏氏で、第2位、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
吉川元宏 19.11%
水島 亨 1.41%
鳥居茂徳 1.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は守田直貴氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
守田 直貴 代表取締役社長 リアライズ代表取締役などを経て、2022年に同社取締役、2024年1月より現職。
吉川 元宏 取締役 コスモアールエス代表取締役、五洋インテックス代表取締役社長などを歴任。2022年に同社代表取締役社長を務めた後、2024年1月より現職。
手塚 進 取締役(監査等委員会) エーザイ、住友不動産建物サービスを経て、2022年に同社内部監査室室長に就任。2025年6月より現職。


社外取締役は、上田真由美(BDJ GLC PTE.LTD)、青木伸文(公認会計士・税理士)、阪井光平(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」「再生可能エネルギー事業」「メディカル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 飲食事業

居酒屋を中心とした飲食店舗の企画開発および運営を行っています。主力ブランドとして、パリモチ鶏皮串「伝串」が特徴の「新時代」や、「なつかし処昭和食堂」「えびすや」などを展開しています。東海地区をドミナント拠点としつつ、関東地区等にも店舗を拡大しています。

収益は、直営店舗における一般顧客からの飲食代金や、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入などで構成されます。運営は主に同社および子会社の株式会社SSSが行っています。

(2) 再生可能エネルギー事業

太陽光発電設備の開発、営農型太陽光発電設備の開発、および太陽光発電設備の販売を行っています。脱炭素社会の実現に寄与するとともに、飲食事業以外の安定的な収益基盤の確保を目指しています。

収益は、開発した太陽光発電設備による売電収入や、設備の販売代金などから得ています。運営は主に子会社のKR ENERGY JAPAN合同会社およびKRエナジー1号合同会社が行っています。

(3) メディカル事業

医療機関の経営支援を行う事業です。具体的には、提携する美容クリニック等に対して、広告・SNS運用、予約管理、経営管理、事業計画立案などのコンサルティング業務を提供しています。

収益は、支援先の医療法人等から受け取るコンサルティング報酬などが主な源泉となります。運営は子会社の株式会社Kaihan Medicalが行っています。

(4) その他

報告セグメントに含まれない事業として、その他の付随的な業務などが含まれます。

収益は、関連する事業活動から得られる収入などです。運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は21億円から28億円へと拡大傾向にあります。これは飲食事業の回復や新規事業の開始によるものです。一方で、利益面では経常損失が続いており、赤字幅は縮小傾向にあるものの、依然として損失を計上しています。積極的な事業投資や構造改革を進めている最中と言えます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 21億円 24億円 28億円
経常利益 -6億円 -6億円 -5億円
利益率(%) -30.3% -23.3% -18.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -11億円 -6億円 -10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は約24億円から約28億円へ増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。しかし、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回る状態が続いており、営業損失を計上しています。事業拡大に伴うコスト負担が重く、収益構造の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 24億円 28億円
売上総利益 16億円 20億円
売上総利益率(%) 67.4% 71.4%
営業利益 -6億円 -5億円
営業利益率(%) -24.1% -16.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比30%)、地代家賃が3億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を分析します。飲食事業は売上の大半を占めますが、利益率は低水準です。再生可能エネルギー事業は売上が急増しましたが、損失を計上しています。新規参入のメディカル事業は売上規模は小さいものの、高い利益率を記録し、セグメント利益に貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
飲食事業 24億円 24億円 2億円 1億円 4.7%
再生可能エネルギー事業 0.0億円 0.9億円 -2億円 -0.4億円 -42.1%
メディカル事業 - 3億円 - 1億円 38.3%
連結(合計) 24億円 28億円 -6億円 -5億円 -16.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の収益(営業CF)がマイナスで、投資活動もマイナスですが、財務活動による資金調達でこれらを補っている「勝負型」または「救済型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -6億円 -3億円
投資CF -8億円 -4億円
財務CF 17億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のためマイナスとなりグロース市場平均を下回っています。また、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.7%でグロース市場平均(非製造業平均43.3%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「幸せな食文化の創造」を社是として掲げています。時代を見つめ、顧客の声に真摯に耳を傾け、顧客はもとより社会・地域への感謝を忘れず、新たなチャレンジを続けていくことを経営の方針としています。

(2) 企業文化


同社グループ独自の風土が生み出す「人間力」を最も大切な経営資源と位置づけています。この「人間力」こそがサービス向上の原動力であり、差別化の源泉であると考えています。また、いかなる経営環境下においても全役職員が一丸となって継続的成長を図る姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上を最大に伸ばし、経費を最小に抑えることで最大の利益を確保するという考え方に基づき、以下の指標を経営上の目標としています。

* 売上高成長率
* 売上高経常利益率
* 株主資本利益率(ROE)の向上
* 総資産利益率(ROA)の向上
* 自己資本比率の向上

(4) 成長戦略と重点施策


財務体質の健全化と経営管理体制の強化を進めつつ、事業ポートフォリオの変革に取り組んでいます。飲食事業では、「新時代」等のターゲット業態への転換やM&Aによる規模拡大を図ります。同時に、再生可能エネルギー事業およびメディカル事業を新たな収益の柱として育成し、安定的な収益基盤の確立を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「性別・年齢・国籍にかかわらず、公平で開かれた職場環境」の実現を基本戦略としています。特に飲食事業においては多様な人材の確保が重要であると考え、正社員・パートタイマーの採用強化、非正規社員からの正社員登用、女性の管理職登用および外国人労働者の雇用拡大に積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.4歳 3.4年 3,864,447円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性労働者の割合(16.4%)、非正規雇用従業員から正社員への登用(5名)、正社員に占める外国人労働者の割合(9.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社との競争激化


飲食業界、特に居酒屋業態は参入障壁が低く、厳しい競合状態にあります。同社は独自メニューや価格設定で差別化を図っていますが、競合他社の店舗増加や類似業態の台頭により競争がさらに激化した場合、集客力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食材の安全性・安定供給と価格高騰


特定の食材への依存度は低いものの、天候不順や国際情勢、為替変動等により原材料価格が高騰するリスクがあります。また、食中毒等の衛生問題が発生した場合、社会的信用の失墜や営業停止処分などを招き、グループ全体の業績やブランドイメージに重大な影響を与える可能性があります。

(3) 再生可能エネルギー事業に関するリスク


同事業では、国のエネルギー政策の変更(固定価格買取制度の変更等)や、気候変動による日照時間の減少、設備トラブル等の影響を受ける可能性があります。これらにより、想定した売電収入が得られない場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。