ライドオンエクスプレスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ライドオンエクスプレスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、調理済食材の宅配を主な事業としています。主力ブランドとして宅配寿司「銀のさら」や宅配御膳「釜寅」などを展開しています。直近の業績は、販売促進活動を実施したものの、直営店の閉店等の影響により減収となり、経常利益も大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社ライドオンエクスプレスホールディングス の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ライドオンエクスプレスホールディングスってどんな会社?


「銀のさら」「釜寅」などの調理済食材宅配チェーンを全国展開し、ファントム店舗モデルを先駆ける企業です。

(1) 会社概要


1992年に岐阜県でサンドイッチ店「サブマリン」を開業し、1998年に宅配寿司事業へ参入しました。2001年にフランチャイズ展開を目的として前身となる会社を設立し、2013年に東証マザーズへ上場しました。2017年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。

同グループの従業員数は連結359名、単体28名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である株式会社エミA&Y、第2位は代表取締役社長の江見朗氏、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)となっており、創業者とその関連会社が安定的な持分を保有しています。

氏名 持株比率
エミA&Y 21.62%
江見 朗 7.56%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は江見朗氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
江見 朗 代表取締役社長 1992年サブマリン開業、1995年株式会社サブマリン社長。2001年同社設立とともに社長就任。2017年よりライドオンエクスプレス社長を兼務。
松島 和之 取締役副社長 1992年サブマリン開業、1995年株式会社サブマリン副社長。2001年同社取締役、2010年より副社長。2022年よりライドオンエクスプレス副社長を兼務。
渡邊 一正 取締役副社長 1991年リクルートコスモス入社。ネクストジャパン社長等を経て、2010年同社専務。2016年より副社長。エースタート代表取締役として投資事業も手掛ける。
冨板 克行 常務取締役 1988年木曽路入社。1995年株式会社サブマリン入社、専務。2001年同社入社、2002年取締役を経て2010年より常務。ライドオンエクスプレス常務を兼務。
赤木 豊 常務取締役 1999年日本エル・シー・エー入社。イデアリンク社長等を経て2010年同社取締役。2015年より常務。ライドオンエクスプレス常務を兼務。


社外取締役は、齋藤正夫(公認会計士・税理士)、吉田真(株式会社ゴッタライド代表取締役)、砂子知香(元国際協力機構職員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「宅配事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 宅配寿司「銀のさら」


「おいしいお寿司をもっと身近に」をコンセプトに、高品質な商品を適正価格で提供する宅配寿司チェーンです。独自の解凍技術などにより品質維持に努めています。顧客は一般消費者で、日常の食事から特別な日の利用まで幅広く対応しています。

収益は、直営店における一般消費者への商品販売収入、およびフランチャイズ加盟店からのロイヤルティ収入、加盟金収入、食材販売収入等から構成されています。運営は主に連結子会社の株式会社ライドオンエクスプレスが行っています。

(2) 宅配御膳「釜寅」


釜飯形式の炊き込みご飯を御膳形式で提供する宅配チェーンです。全自動釜めし炊飯器の導入により調理工程を簡略化し、小スペース・少人数での運営を可能にしています。「銀のさら」との複合化出店により経営資源の有効活用を図っています。

収益源は「銀のさら」と同様、直営店での商品販売収入や加盟店からのロイヤルティ収入、食材販売収入等です。運営は株式会社ライドオンエクスプレスが担い、既存の宅配拠点を活用した複合化戦略の中核ブランドとなっています。

(3) 宅配寿司「すし上等!」・「銀のさら 和(なごみ)」


「すし上等!」は低価格帯の商品を提供し、日常的な利用促進を図る第2ブランドです。「銀のさら 和」は、より気軽に楽しめるよう商品内容と価格帯を刷新した新ブランドです。いずれも「銀のさら」と同一拠点内に複合化して出店しています。

これらのブランドも、直営店による売上および加盟店への食材販売やロイヤルティ収入等が収益源となります。株式会社ライドオンエクスプレスが運営主体となり、同一拠点での複数店舗運営(複合化戦略)を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は減少傾向にあり、経常利益も縮小が続いています。直近では利益率が低下しており、収益性の改善が課題となっています。当期利益は前期比で減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 254億円 257億円 254億円 240億円 234億円
経常利益 24億円 20億円 11億円 10億円 7億円
利益率(%) 9.6% 7.8% 4.3% 4.3% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 12億円 5億円 4億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が縮小しています。営業利益率は低下傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 240億円 234億円
売上総利益 118億円 112億円
売上総利益率(%) 49.4% 47.8%
営業利益 11億円 8億円
営業利益率(%) 4.4% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、雑給が26億円(構成比25%)、給与手当が18億円(同17%)を占めています。売上原価においては、食材費等の変動費が主要な割合を占めています。

(3) セグメント収益


同社は宅配事業の単一セグメントであるため、セグメント別の増減要因分析は全体の業績分析と同様です。直営店の閉店や宅配代行サービスの終了等が減収要因となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
宅配事業 240億円 234億円
連結(合計) 240億円 234億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業キャッシュ・フローがプラス、投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済も進めている「健全型」の状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 6億円
投資CF -1億円 -7億円
財務CF -9億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%でスタンダード市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ビジネスを通じ、相手の幸せが自らの喜びと感ずる境地を目指す」という企業理念を掲げています。この理念に基づき、顧客の家庭での生活を「もっと美味しく、もっと便利に」実現していくことを使命としています。

(2) 企業文化


同社では、「感謝の気持ちに基づき衆知を集め、すべてを容認し、自他共に正しく導く」ことを経営指針としています。従業員一人ひとりの成長と顧客の幸せが直結する「店舗経営」への参画を重視し、多様な価値観を持つクルーとの協働を通じて理念の理解を深める文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営目標の達成状況を判断する指標として、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益およびそれぞれの成長率を重視しています。

* 2026年3月期 売上高:234億3,000万円
* 2026年3月期 経常利益:8億400万円
* 2026年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:4億2,900万円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「次世代ホームネット戦略」を基本戦略とし、宅配拠点で構築した顧客基盤等のリソースを活用して新しいライフスタイルの創出を目指しています。具体的には、既存ブランドの品質向上やリブランディングによる収益力の強化、海外市場への出店や新規事業投資による市場開拓に取り組んでいます。

* 新規ユーザー獲得およびリピート促進:SNSやアプリを活用した顧客接点の拡大、WEB注文の利便性向上。
* オペレーションシステムの強化:自社開発システムの活用による店舗運営効率の向上。
* 新規市場の開拓:海外市場への出店検証、新ブランド開発、M&A等の検討。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


労働人口減少に対応するため、店舗運営社員や本部サポート社員、クルーの適正な採用と育成を重要課題としています。店舗運営社員をキャリアの入口とし、現場でのマネジメント経験を経て本部へキャリアチェンジ可能なフローを整備しています。また、動画研修の導入や表彰イベントの開催により、スキル向上とモチベーション維持を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 10.7年 6,889,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 62.9%
男女賃金差異(正規雇用) 62.9%
男女賃金差異(非正規) -%


※男性育児休業取得率は提出会社の実績がなく「-」となっていますが、主要な連結子会社である株式会社ライドオンエクスプレスでは83.3%です。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全正規雇用者に占める女性の割合(16.7%)、Scope1排出量(1,183 t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境及び競合他社との競争


宅配食市場は需要が堅調に推移していますが、大手企業の参入や食品小売業など他業界との競争激化の可能性があります。同社は高い参入障壁を持つと認識していますが、想定を超えた競争環境の変化や価格競争が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業績の季節変動


主要ブランド「銀のさら」は、年末年始やお盆などの繁忙期に売上が集中する特性があります。特に営業利益は下期(特に12月、1月)に偏重する傾向にあります。この重要な時期に何らかの要因で営業停止等が生じた場合、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 食材仕入について


主力商品である水産物等の食材は自然資源であり、為替変動、異常気象、国際的な漁獲制限等により価格高騰のリスクがあります。また、独自の厳しい規格を設けているため、不漁等で規格に合う食材が確保できない場合、品質維持が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。一括物流センターの被災等による供給寸断リスクもあります。

(4) フランチャイズ加盟企業の店舗運営


同社はフランチャイズ本部として加盟店の指導を行っていますが、加盟店でブランドの評判を損なう事態が発生した場合、グループ全体の業績に影響する可能性があります。また、多数の加盟企業が独自の他事業で経営難に陥った場合、ロイヤルティの未払いや撤退等のリスクが生じます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。