※本記事は、CYBERDYNE株式会社 の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. CYBERDYNEってどんな会社?
同社は、人・ロボット・情報系を融合した「サイバニクス技術」を駆使し、装着型サイボーグ「HAL®」等を展開する研究開発型企業です。
■(1) 会社概要
2004年に筑波大学発ベンチャーとして設立され、2014年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場しました。2013年には医療用HAL®が欧州で医療機器認証を取得し、2015年に日本で製造販売承認、2017年には米国FDAの承認を取得するなど、グローバルに医療機器としての展開を進めています。
同社グループの従業員数は連結211名、単体83名です。筆頭株主は創業者で社長の山海嘉之氏であり、第2位には住宅総合メーカーの大和ハウス工業が名を連ねています。大和ハウス工業とは、ロボット技術の活用や販売代理店契約などを通じて協力関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山海 嘉之 | 38.24% |
| 大和ハウス工業 | 12.31% |
| 野村信託銀行株式会社(投信口) | 0.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は創業者の山海嘉之氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山海 嘉之 | 代表取締役社長 | 2003年筑波大学教授。2004年同社設立・取締役。2006年より社長および研究開発部門責任者を務める。内閣府SIPプログラムディレクター等を兼任。 |
| 本田 信司 | 取締役COO | 武田薬品工業にて米国統括や専務取締役等を歴任。日清食品ホールディングスCSOを経て、2023年同社社外取締役、同年12月より現職。 |
社外取締役は、松村明(医師・茨城県立医療大学学長)、鈴木健嗣(筑波大学教授)、武藤華子(コーン・フェリー・ジャパン パートナー)、髙原勇(慶応義塾大学特任教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ロボット関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 医療・介護福祉分野
医療用HAL®による「サイバニクス治療」や、自立支援用HAL®を活用した「Neuro HALFIT®」プログラムを提供しています。医療機関や個人利用者へ製品・サービスを提供し、主に脳・神経・筋系の機能改善や自立度向上を支援しています。
収益は、医療機関や個人利用者からの製品レンタル料、保守料、および治療・トレーニングサービスの利用料から構成されています。運営は、国内ではCYBERDYNEが製品展開を行うほか、鈴鹿ロボケアセンターなどの子会社がサービスを提供しています。海外ではCyberdyne Care Robotics GmbHなどが事業を行っています。
■(2) 生活・職場分野
腰部負荷を低減するHAL®作業支援用や、次世代型清掃ロボット「CL02」、搬送ロボットなどを展開しています。物流倉庫、建設現場、空港、商業施設などにおける重作業の負担軽減や、清掃・搬送業務の自動化・効率化を支援しています。
収益は、導入企業からの製品販売代金やレンタル料、保守サービス料によって構成されています。運営は主にCYBERDYNEが行っていますが、海外展開においては各地域の現地法人が販売やサポートを推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は拡大傾向にありますが、利益面では損失計上が続いています。ただし、直近では営業損失および当期損失の赤字幅が縮小しており、損益改善の兆しが見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 19億円 | 22億円 | 33億円 | 44億円 | 44億円 |
| 税引前利益 | 4億円 | -4億円 | 0.5億円 | -11億円 | -9億円 |
| 利益率(%) | 21.8% | -18.1% | 1.6% | -26.2% | -20.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.6億円 | -5億円 | -3億円 | -15億円 | -6億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は横ばいですが、営業損失は大きく改善しました。売上原価や販管費のコントロールに加え、受託研究などのその他収益が増加したことが寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 44億円 | 44億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.0% | 54.1% |
| 営業利益 | -20億円 | -9億円 |
| 営業利益率(%) | -46.3% | -21.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が11億円(構成比39%)、研究開発費が11億円(同38%)を占めています。研究開発型企業として、引き続き研究開発への投資比重が高い構造となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、ロボット関連事業として売上収益は微増しました。国内および海外での製品レンタルや治療サービスの提供が増加したことが要因です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ロボット関連事業 | 44億円 | 44億円 |
| 連結(合計) | 44億円 | 44億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業キャッシュ・フローはマイナスですが、投資資産の償還等により投資キャッシュ・フローがプラスとなっています。財務キャッシュ・フローはマイナスであり、手元資金を活用しながら事業運営と負債返済を行っている「救済型」に近い状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -9億円 | -4億円 |
| 投資CF | -21億円 | 23億円 |
| 財務CF | 2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はマイナスであり市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は97.3%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人」と「サイバー・フィジカル空間」を融合する「サイバニクス技術」を駆使し、人とテクノロジーが共生・相互支援する「テクノピアサポート社会」の実現を目指しています。この社会は、年齢や障がいの有無を超えて誰もが自立度・自由度を高め、安心して暮らせるWell-being社会と定義されています。
■(2) 企業文化
社会課題の解決と新産業創出を同時展開する「未来開拓型企業」を目指しています。未踏の領域において、専門外であっても自ら道を切り拓き、強い情熱と倫理観を持って社会変革に挑戦し続ける「未来開拓型人材」の育成と登用を重視しています。また、革新技術の創出と社会実装を一貫して推進する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は具体的な数値目標として「HAL®等の稼働台数」を経営上の重要な非財務指標として掲げています。これは、主たる収益源がレンタル・保守売上であり、将来の収益見通しを把握するために重要視されているためです。なお、稼働台数は年々増加傾向にあります。
■(4) 成長戦略と重点施策
「テクノピアサポート社会」実現のため、革新技術の研究開発と社会実装を加速させます。具体的には、内閣府SIP等のプロジェクトへの参画や、C-Startupを通じたスタートアップ支援・連携を強化します。また、サイバニクス治療のグローバル標準化を目指し、国内外での臨床試験推進や適応疾患拡大、保険適用に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ビジョンに共感する優秀な人材を、性別や国籍等を問わず確保・育成する方針です。多様な働き方に対応した柔軟な雇用形態や環境整備を進めるとともに、専門性を高めるための資格取得支援やアカデミアとの連携による博士号取得も推奨しています。「未来開拓型人材」として、情熱を持って社会変革に挑む人材を求めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.3歳 | 8.4年 | 6,745,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員に対する女性比率(10.00%)、従業員数に対する女性比率(16.87%)、従業員数に対する外国籍者比率(9.64%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 会社組織に関するリスク
経営および新技術開発において、創業者である山海嘉之社長に多くを依存しています。同氏の業務執行が困難になった場合や、優秀な研究開発人材が退職した場合、事業展開や製品開発スピードに影響が出る可能性があります。また、事業拡大に伴う人員確保や内部管理体制の充実が課題となる可能性があります。
■(2) 特定製品への依存リスク
売上収益の大半を「HAL®」関連が占めており、当面はこの傾向が続く見込みです。法規制や医療政策の変更、技術革新による代替製品の登場、特許権に関する筑波大学との契約関係の変化などにより、HAL®の市場拡大が見込めなくなった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 事業活動全般に関するリスク
国内外での事業展開において、地政学リスク、感染症や災害、法制度の変更などがリスク要因となります。特に海外では、商習慣の違い、労働環境の混乱、為替変動などが事業運営に影響を与える可能性があります。また、製品の不具合による賠償請求や社会的信用の低下も潜在的なリスクとして認識されています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。