※本記事は、CYBERDYNE株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. CYBERDYNEってどんな会社?
装着型サイボーグ「HAL」を主力とし、人とテクノロジーが共生する社会を目指す研究開発型企業です。
■(1) 会社概要
同社は2004年に茨城県つくば市で設立され、2009年にHAL福祉用の初期モデルの製造販売を開始しました。2013年にはドイツに海外子会社を設立し、海外でのサイバニクス治療事業を本格化させました。2014年に東京証券取引所マザーズに上場し、2015年には医療用HALについて厚生労働省より医療機器として製造販売承認を取得するなど、社会実装を進めています。
同社グループは連結で203名、単体で80名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の山海嘉之氏で、第2位は事業会社の大和ハウス工業、第3位は金融機関の楽天証券(投信口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山海嘉之 | 38.24% |
| 大和ハウス工業 | 12.31% |
| 楽天証券(投信口) | 1.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山海嘉之氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山海嘉之 | 代表取締役社長 | 筑波大学システム情報系教授、内閣府FIRSTプログラム研究統括、筑波大学サイバニクス研究センター長を経て現職。 |
| 本田信司 | 取締役COO | 武田薬品工業専務取締役CSOや日清食品ホールディングス常務執行役員CSO等を経て現職。 |
社外取締役は、松村明(元筑波大学副学長・理事・附属病院長)、鈴木健嗣(筑波大学システム情報系長・大学執行役員)、髙原勇(元トヨタ自動車技術統括部主査)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ロボット関連事業」の単一セグメント内で事業を展開しています。
■(1) 医療・介護・予防分野(サイバニクス医療健康イノベーション)
装着型サイボーグHALを医療機器として展開し、脳・神経・筋系の機能改善や再生を促進するサイバニクス治療を提供しています。また、高齢者の自立支援やフレイル予防に向けたHAL自立支援用モデルや、日常的にヘルスケアデータを収集・解析・AI処理する「Cyvis」シリーズを展開しています。
収益モデルは、医療機関や個人向けのHAL等のレンタル料収入、治療・トレーニングサービスの提供、保守契約に基づく保守料収入などです。運営は同社および米国やドイツ等の海外子会社が行っています。
■(2) 生活・職場支援分野(サイバニクス ライフイノベーション)
作業者の身体負荷低減と安全性・生産性向上の両立を支援するHAL腰タイプ作業支援用や、AIを搭載した次世代型清掃ロボット「CL02」、搬送ロボットなどを提供しています。空港、工場、建設、物流、農業などの重筋作業を伴う幅広い現場での活用を想定しています。
収益モデルは、法人顧客に対するロボットの販売やレンタル、保守契約に基づく保守売上などから構成されています。運営は同社が主体となって事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は安定して推移していますが、直近の2026年3月期はやや減収となっています。利益面では研究開発費等の先行投資負担により赤字が続いていましたが、当期は税引前利益および当期利益ともに黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 22億円 | 33億円 | 44億円 | 44億円 | 38億円 |
| 税引前利益 | -4億円 | 0.5億円 | -11億円 | -9億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | -18.1% | 1.6% | -26.2% | -20.1% | 15.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | -3億円 | -15億円 | -6億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
減収に伴い売上総利益は微増にとどまりましたが、売上総利益率は改善しています。投資有価証券評価益の計上等により、営業赤字幅は前期から縮小しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 38億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 38.7% |
| 営業利益 | -9億円 | -6億円 |
| 営業利益率(%) | -21.2% | -15.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が10億円(構成比30%)、給与手当が3億円(同10%)を占めています。また、売上原価(当期総製造費用)の内訳では、材料費が2億円(構成比66%)、労務費が0.6億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はロボット関連事業の単一セグメントであるため、全社の数値を記載しています。海外子会社の売却影響などにより減収となったものの、事業の効率化を図り営業赤字は縮小しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ロボット関連事業 | 44億円 | 38億円 | -9億円 | -6億円 | -15.6% |
| 連結(合計) | 44億円 | 38億円 | -9億円 | -6億円 | -15.6% |
営業利益+資産売却等で借入返済を進める改善局面であることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | 2億円 |
| 投資CF | 23億円 | 21億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は97.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「テクノロジーは人や社会に役立ってこそ意味がある」という基本理念のもと、人とテクノロジーが共生し相互に支援し合う「テクノピアサポート社会」の実現を目指しています。社会が直面する超少子高齢化などの課題を解決するため、ロボット産業・IT産業に続く「サイバニクス産業」の創出を牽引しています。
■(2) 企業文化
革新技術の創出と基礎的研究開発から社会実装までを一貫した事業スキームとして展開しています。革新技術の創生と新産業創出による市場開拓、これらの挑戦を通じた人材育成の3本柱を上向きにスパイラルを描くように同時展開する「未来開拓型企業」を目指す文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は設定されておらず、経営上の重要な非財務指標として「HAL等の稼働台数」を活用しています。HAL等の製品のレンタルや保守契約による収益が主たる収益源であり、将来の見通しを把握するため稼働台数の増加を持続的な成長の指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
バイオ・医療系とAIロボット・情報系を融合する「HCPS融合サイバニクス withフィジカルAI」をコア技術とし、さらなる社会実装を目指しています。米国カーネギーメロン大学等の世界各国の先進企業・医療機関との連携強化によるグローバル展開や、サイバニクス治療の標準治療化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「未来開拓型人材」の育成と登用を人材戦略の核心に据えています。単一分野にとどまらない専門知識と統合的な視野を兼ね備え、強い情熱と倫理観をもって社会変革に挑戦し続ける人材を求めています。博士や医療系資格等の高度専門資格取得の奨励やアカデミアとの連携支援などを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.6歳 | 9.3年 | 6,885,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(16.2%)、外国籍者比率(7.5%)、専門資格取得率(33.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 創業者等の特定人材への依存と組織体制構築リスク
同社は、経営面および新技術の開発において創業者である山海嘉之氏に多くを依存しています。また、高度な研究開発人材を多数有しているため、優秀な人材が退職した場合や、事業拡大に伴う人員増強および内部管理体制の充実が円滑に進まない場合、製品開発スピードや事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主力製品「HAL」への収益依存と市場環境の変化リスク
同社の主な収益源は主力製品「HAL」に依存しており、各国の法規制や医療政策、保険制度の整備の遅れが生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。また、代替技術の登場や知的財産権の契約変更などにより、HALの持続的な市場拡大が見込めなくなった場合、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 医療機器承認および保険収載に関する制度リスク
HAL等を医療機器として展開するためには、各国当局の承認や認証が必要です。承認取得の遅延や、各国の公的・民間医療保険への収載範囲・条件の違いなどにより、普及が計画通りに進まないリスクがあります。また、法制度や税制の変更により、事業活動や収益性に影響が生じる可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。