※本記事は、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アーキテクツ・スタジオ・ジャパンってどんな会社?
建築家と顧客・建設会社を結ぶプラットフォーム「ASJ建築家ネットワーク事業」を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は2007年に設立され、建築家ネットワーク事業の運営を開始しました。2013年に東証マザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たしています。近年は「住まい」から「暮らし」へと事業領域の拡大を図るべく複数社をグループ化しましたが、事業シナジーの見通しが立たず期中に売却を実施しました。現在は本業である建築家提案サービス事業に回帰するとともに、新たに環境事業やIT・海外事業を立ち上げて再建を図っています。
現在の従業員数は連結34名、単体34名です。筆頭株主は個人のBEHR DIMITRI PHILIP氏で、第2位は資産管理業務を行うSAXO BANK A/S (CLIENT ASSETS)となっています。第4位には創業者の丸山雄平氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| BEHR DIMITRI PHILIP | 23.60% |
| SAXO BANK A/S (CLIENT ASSETS) | 22.90% |
| SIX SIS LTD. | 21.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は丸山雄平氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸山雄平 | 代表取締役社長 | 元夢建人代表取締役。2007年にアーキテクツ・スタジオ・ジャパン代表取締役社長に就任。ESJ代表取締役等を経て、2025年11月より現職。 |
| ベーア・ディミトリ・フィリップ | 取締役 | 元プライスウォーターハウスクーパース。UBSスイス等の金融機関を経て、個人投資家として活動。2025年11月より現職。 |
| 小津晨鳴 | 取締役 | 元楽天戦略アナリスト。メルカリ、DMM.com等を経て、サイバーリーズン・ジャパンシニアプロダクトマネージャーを務める。2025年11月より現職。 |
| 川井博司 | 取締役 | 元スクウェア(現スクウェア・エニックス)メインプログラマー。イン・コントロール代表取締役等を務め、2025年11月より現職。 |
社外取締役は、石塚亮平(麻布総合会計事務所代表)、清水秀幸(ポッピンゲームズジャパン監査役)、大石英樹(かいせい税理士法人代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住まい関連事業」「暮らし関連事業」および「投資関連事業」を展開しています。
■住まい関連事業
建築家ネットワークを活用したビジネスにおいて、建築家やスタジオに対して住宅等に関する各種企画などを提供しています。住宅、リフォーム、商業施設等の建設計画がある顧客に向けて、全国の登録建築家を活用した建物づくりの選択肢を提供し、理想の住まいのプランニングを実現しています。
収益源は、加盟建設会社からのスタジオ加盟金や定額ロイヤリティ、および工事請負契約や建築設計・監理業務委託契約に基づく契約ロイヤリティなどです。また、住宅イベントの企画や広告手配に係るマーケティング収益も得ています。運営は主にアーキテクツ・スタジオ・ジャパンが行っています。
■暮らし関連事業
既存の建築家ネットワーク事業をベースに、「衣+食+住+遊+健康」をテーマとした販売およびサービスの提供を行っています。当社を介して住宅を建設した顧客やASJアカデミー会員などを対象に、家具・インテリア関連商品、絵画・アート作品などを提供し、生活そのものをデザインするサービスを展開しています。
収益源は、家具やインテリア等の商品販売による物販・EC売上や、特選食材・高級ブランド品などを提供するマーチャンダイジング売上などです。事業の運営は主にアーキテクツ・スタジオ・ジャパンや、グループ会社のチャミ・コーポレーションなどが行っていました(期中に一部子会社を売却)。
■投資関連事業
既存の建築家ネットワーク事業などのサポートの一環として、事業戦略に貢献する事業やパートナー企業への投融資を展開しています。事業多様化に貢献する環境事業(ALINプロジェクトなど)への参画や、新規市場への事業展開を視野に入れたプロジェクトを推進しています。
収益源は、プロジェクトの推進に伴う環境関連の売上や、店舗設備の貸与等による収入などです。運営は主にアーキテクツ・スタジオ・ジャパンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第18期に増加したものの、当期は住宅着工件数の減少やプロジェクトの遅れから減収に転じています。利益面では継続して経常赤字を計上しており、子会社の整理等も重なったことで、当期は赤字幅が大きく拡大する結果となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7.4億円 | 5.5億円 | 5.9億円 | 9.0億円 | 6.6億円 |
| 経常利益 | -3.2億円 | -3.5億円 | -2.4億円 | -0.9億円 | -5.5億円 |
| 利益率(%) | -43.2% | -63.7% | -39.8% | -10.4% | -83.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.4億円 | -4.0億円 | -3.9億円 | -0.8億円 | -6.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高が減収となったことに加え、売上総利益も減少しています。一方で販売費及び一般管理費は増加しており、本業の収益力を示す営業赤字が大きく拡大しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9.0億円 | 6.6億円 |
| 売上総利益 | 6.1億円 | 3.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.6% | 51.5% |
| 営業利益 | -1.1億円 | -5.6億円 |
| 営業利益率(%) | -12.5% | -84.8% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が2.1億円(構成比23%)、給料手当が2.0億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
住まい関連事業は工事請負契約件数の減少などにより減収となりました。暮らし関連事業は子会社の売上が加わり大幅な増収となったものの、投資関連事業は環境関連プロジェクト等の売上計上がなく大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 住まい関連事業 | 5.7億円 | 4.4億円 |
| 暮らし関連事業 | 0.3億円 | 2.2億円 |
| 投資関連事業 | 3.0億円 | - |
| 連結(合計) | 9.0億円 | 6.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で資金が流出しているものの、固定資産や子会社株式の売却によって資金を捻出し、借入などの資金調達で補填する「救済型」のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.8億円 | -6.6億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | 5.2億円 |
| 財務CF | 0.8億円 | 1.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータがなく、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は債務超過(-54.2%)となっており市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)は、クライアント(お客様)と建築家と建設会社が共有する高度なプラットホームを構築し、新しいスタイルのサプライチェーン・マネジメントを確立し、美しい日本を創造します。」を経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、情報管理やコミュニケーション、コストマネジメントに対して独自開発したIT技術を投下し、登録建築家および加盟建設会社(スタジオ運営会社)と互いに協力して事業を展開しています。顧客に満足いただけるサービスの提案・提供を行い、成果と成功の共有を目指す企業文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営の基本方針を実現するための目標とする経営指標として、「売上高」および「営業利益」を重要な指標として認識しています。当面の目標として、減少したスタジオ数を2030年2月末までに150ヶ所へ増加させる計画を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は基本に立ち返り、約3,000名の建築家ネットワークを活かした事業展開を図ります。既存の「建築家提案サービス事業」に加えて、「環境事業」および「IT・海外事業」の展開を加速させます。環境事業では亜臨界水反応プラントなどの販売に取り組み、IT・海外事業ではカナダの企業等との共同事業を進め、新規の収益の柱として育成する戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、永続的な事業継続と持続的な成長を遂げるため、人材の確保と定着率の向上、そして育成強化が必要不可欠であると認識しています。年齢や性別に関係なく、安定した人材確保や創発人材の育成をはじめ、従業員の給与水準の向上、働きやすい環境の整備、自己成長の機会の提供などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 53.6歳 | 13.7年 | 4,557,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) スタジオ展開と加盟建設会社に関するリスク
同社の建築家ネットワーク事業は、加盟建設会社が運営するスタジオが重要な役割を担っています。新たな建設会社との加盟店契約が締結できない場合や、加盟建設会社の経営状況の悪化、経営方針の変更等により事業継続が困難となった場合、売上の減少や債権回収の長期化を招き、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 小規模組織と特定人物への依存リスク
同社は小規模な人員体制で事業を展開しており、業容に応じた人員の確保が進まない場合や従業員が退社した場合、業務執行に支障が生じる可能性があります。また、創業者である代表取締役の丸山雄平氏の建築家人脈等の手腕に依存する部分が大きく、同氏が業務執行困難となった場合には事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 継続企業の前提に関するリスク
同社グループは重要な営業損失や経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなっています。これにより、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象が存在しており、事業計画の進捗や収益構造の改善が予定通り進まない場合、今後の事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。