アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場しており、登録建築家と建設会社、顧客を結ぶプラットホーム事業を主力としています。「住まい」「暮らし」「投資」の3セグメント体制へ移行し、事業領域を拡大中です。直近の業績は、売上高が前期比約1.5倍と大幅に増収し、営業損失および経常損失は縮小して改善傾向にあります。


※本記事は、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アーキテクツ・スタジオ・ジャパンってどんな会社?


建築家との家づくりを支援するネットワーク事業を展開し、暮らしや投資領域へも事業を拡大している企業です。

(1) 会社概要


2007年に建築家ネットワーク事業を目的に設立され、2008年に事業譲受を経て本格稼働しました。2013年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場。2024年には監査等委員会設置会社へ移行し、SupaSpace PTE LTD等の子会社化を進めました。2025年より報告セグメントを「住まい」「暮らし」「投資」の3区分へ変更しています。

連結従業員数は48名、単体では38名です。筆頭株主は賃貸斡旋事業などを行うApaman Networkで、第2位は創業者であり取締役会長の丸山雄平氏、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
Apaman Network 21.99%
丸山 雄平 11.54%
木下 昭彦 8.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は庵下伸一郎氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
庵下 伸一郎 代表取締役社長 オザキ・エンタープライズ、日本リース、セガなどを経て、2022年に同社入社。執行役員事業開発本部長を経て、2023年9月より現職。
丸山 雄平 取締役会長 1981年三谷商事入社。夢建人を設立後、2007年に同社代表取締役社長に就任。TEMPO NETWORK代表取締役などを経て2023年9月より現職。
石﨑 謙二 取締役 高橋電設代表取締役、エクソル、ギガエンジニアリングを経て、2024年6月同社社外取締役に就任。同年9月より現職。


社外取締役は、チン ユウ ヤオ(Deus International代表取締役)、石塚 亮平(公認会計士・税理士)、吉原 慎一(弁護士・公認会計士)、四倉 佐知夫(元豊田通商理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「住まい関連事業」「暮らし関連事業」および「投資関連事業」を展開しています。

(1) 住まい関連事業


全国の建築家と加盟建設会社(スタジオ)のネットワークを活用し、建築家との家づくりを希望する顧客に対して、プランニングから完成までをサポートするプラットホームを提供しています。また、リノベーションや海外での空間プロデュースなども行っています。

収益は、加盟建設会社からの加盟金や月額・成約ロイヤリティ、登録建築家からのプロモーションフィー等から構成されています。運営は主にアーキテクツ・スタジオ・ジャパンが行うほか、SupaSpace PTE LTD等の子会社も関与しています。

(2) 暮らし関連事業


「住まい」から派生する「衣・食・住・遊・健康」をテーマにした商品やサービスを提供しています。具体的には、会員向けに家具・インテリア・アートの販売や、催事イベントの開催などを行っています。

収益は、家具やインテリア関連商品、アート作品等の販売代金が主な源泉となります。運営はアーキテクツ・スタジオ・ジャパンに加え、連結子会社のESJやチャミ・コーポレーションが担っています。

(3) 投資関連事業


既存事業のサポートとして、パートナー企業への投融資や顧客への各種ローン提供などを行っています。また、事業多様化に貢献する事業投資として、環境関連プロジェクトなどにも参画しています。

収益は、投融資先からのリターンや事業投資による収益などが該当します。この事業セグメントの運営は、主にアーキテクツ・スタジオ・ジャパンが主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近で大幅に増加し、過去数年の中では高い水準となりました。利益面では、依然として営業損失、経常損失、当期純損失が続いていますが、損失額は前期と比較して縮小傾向にあります。全体として、事業規模の拡大と共に赤字幅の改善が進んでいる状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7.4億円 5.5億円 5.9億円 9.0億円
経常利益 △3.2億円 △3.5億円 △2.4億円 △0.9億円
利益率(%) △43.2% △63.7% △39.8% △10.4%
当期利益(親会社所有者帰属) △3.5億円 △4.3億円 △3.6億円 △0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は約9億円と前期比で大きく伸長し、売上総利益率も大幅に改善しました。一方、販売費及び一般管理費は微減にとどまり、営業損失が継続しています。ただし、売上増と原価率の改善により、営業損失の額は前期の半分以下に縮小しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5.9億円 9.0億円
売上総利益 5.1億円 6.1億円
売上総利益率(%) 86.0% 67.6%
営業利益 △2.2億円 △1.0億円
営業利益率(%) △36.5% △10.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.1億円(構成比30%)、支払手数料が0.9億円(同13%)を占めています。売上原価については、当期商品仕入高や外注費などが含まれますが、詳細な内訳の記載はありません。

(3) セグメント収益


「住まい関連事業」は売上が横ばいながらも黒字を確保しました。「投資関連事業」は新規に立ち上がり、高い利益率で全社の収益改善に貢献しています。「暮らし関連事業」も黒字でスタートしました。全社費用の調整額が大きく、連結全体では営業損失となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
住まい関連事業 - 5.7億円 - 0.7億円 11.9%
暮らし関連事業 - 0.3億円 - 0.1億円 26.8%
投資関連事業 - 3.0億円 - 0.7億円 24.5%
その他 - - - - -
調整額 - - - △2.5億円 -
連結(合計) 5.9億円 9.0億円 △2.2億円 △1.0億円 △10.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであり、投資活動もマイナスで推移しています。不足する資金を財務活動(株式の発行等)で調達している「勝負型」の状況です。事業構造改革の途上にあり、外部資金に依存しながら成長投資を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF △2.0億円 △0.8億円
投資CF △0.9億円 △0.5億円
財務CF 2.5億円 0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-101.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.5%で市場平均を大きく下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


クライアントと建築家、建設会社が共有する高度なプラットホームを構築し、新しいスタイルのサプライチェーン・マネジメントを確立することで、美しい日本を創造することを経営理念としています。顧客満足の追求と、独自IT技術による成果の共有を目指しています。

(2) 企業文化


「生活の質はデザイン次第」から「生活そのものをDesignする“暮らし提案企業”へ」という方針を掲げ、単なる住まいの提供にとどまらず、心まで豊かにする暮らし方を提案する姿勢を重視しています。また、建築家との家づくりを当たり前の選択肢とすることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期を転換点として、収益構造と財務体質の改善を確実に達成し、単年度黒字化を果たすことを目標としています。具体的には、「売上高」と「営業利益」を重要な経営指標と位置づけ、コスト最適化と新規施策の展開により企業価値向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「住まい」から「暮らし」まで事業領域を拡大し、収益構造の転換を図ります。具体的には、建築家ネットワークの強化に加え、「衣・食・住・遊・健康」をテーマとした「暮らし関連事業」を成長因子として育成します。また、海外展開による新たな収益確保や、資本業務提携による財務基盤の強化も進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の持続的成長のため、人材の確保と定着率向上、育成強化を不可欠としています。年齢や性別に関係なく、安定した人材確保や創発人材の育成に取り組み、給与水準の向上や働きやすい環境整備を進めます。また、従業員の有給休暇取得率を65%へ向上させることを当面の目標としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 52.9歳 13.3年 5,268,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 収益構造の特性


加盟建設会社が運営するスタジオが事業の重要な役割を担っており、新規加盟契約が締結できない場合や加盟店の経営悪化は業績に影響します。また、例年3月に工事請負契約が増加するため、売上が第4四半期に集中する傾向があり、契約締結の遅れが業績変動要因となります。

(2) 小規模組織及び人材確保


同社グループは小規模な組織体制で運営されており、特定の業務や知識を持つ人材に依存する部分があります。業容に応じた人材確保が遅れたり、役職員の予期せぬ退職が発生したりした場合は、業務執行体制が機能せず、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定人物への依存


創業者であり取締役会長の丸山雄平氏は、建築家との人脈構築など事業全般において重要な役割を果たしています。同氏が業務執行困難となった場合、事業活動に支障が生じる可能性があります。経営ノウハウの共有や権限委譲により、依存度を下げる体制構築を進めています。

(4) 継続企業の前提に関する事象


継続して営業損失等を計上し、営業キャッシュ・フローもマイナスであることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。収益構造の改善や財務体質の強化策を進めていますが、現時点では不確実性が認められます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。