ウィルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウィルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウィルグループは東京証券取引所プライム市場に上場し、販売、コールセンター、工場、介護施設、建設等に特化した人材派遣や業務請負、人材紹介を展開する企業です。直近の業績は、国内の建設技術者領域の成長や正社員派遣等の注力により増収増益を達成しました。国内外の特定の事業領域に特化し成長を続けています。


※本記事は、株式会社ウィルグループの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ウィルグループってどんな会社?


販売やコールセンター等に特化した人材派遣と業務請負を主力とする企業です。

(1) 会社概要


1997年1月にセントメディア(現ウィルオブ・ワーク)を設立しテレマーケティング業を開始しました。同年8月に短期請負を主業務とするビッグエイドを設立し、2000年に両社が合併しています。2006年に持株会社化し、2012年にウィルグループへ商号を変更しました。2013年に東証二部へ上場し、現在はプライム市場に上場しています。直近では2025年にHR CAREERの株式を取得し、医療・福祉業界の人材紹介サービスにも参入しています。

現在の従業員数は連結で9,005名、単体で105名です。筆頭株主は創業者の池田良介氏で、第2位は関連会社の池田企画事務所、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
池田良介 16.48%
池田企画事務所 8.41%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は角裕一氏です。社外取締役比率は60.0%(3/5名)です。

氏名 役職 主な経歴
角裕一 代表取締役社長 2003年セントメディア入社。同社取締役、ウィルオブ・コンストラクション代表取締役等を経て2023年6月より現職。一般財団法人日本人材派遣協会会長も務める。
池田良介 取締役会長 1995年エイブル入社。1997年ビッグエイド入社。2000年セントメディア代表取締役、2006年同社代表取締役社長を経て2022年6月より現職。


社外取締役は、腰塚國博(元コニカミノルタ常務執行役)、高橋理人(HBIP代表取締役)、市川祐子(マーケットリバー代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内Working事業」「海外Working事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内Working事業


国内における販売、コールセンター、製造、介護、建設等のカテゴリーに特化した人材派遣、業務請負、人材紹介、外国人雇用支援等を行っています。エッセンシャル領域でのサービス品質強化や、派遣スタッフのチーム型派遣などを展開し、顧客の生産性向上や人手不足解消を支援しています。

人材派遣契約や業務請負契約、人材紹介契約に基づき、企業から派遣料金や業務委託費、紹介手数料を受け取る収益モデルです。運営は主にウィルオブ・ワークやウィルオブ・コンストラクション、クリエイティブバンクなどの子会社が行っています。

(2) 海外Working事業


主にオーストラリア、シンガポールを中心に、人材派遣や人材紹介などの人材サービスを行っています。オーストラリアでは政府や自治体等の景気に左右されにくい領域を主な派遣先とし、シンガポールでは行政機関等を中心とした顧客基盤に対してサービスを展開しています。

各国において人材派遣契約や人材紹介契約を締結し、企業から対価を受け取っています。運営はWILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.のほか、Ethos BeathChapman Australia Pty Ltd、Scientec Consulting Pte.Ltd.などが担っています。

(3) その他事業


システムエンジニアの人材派遣や人材紹介などに加え、民間や地方自治体向けのDX推進支援事業等を行っています。

人材支援やコンサルティング等を通じて収益を獲得するモデルです。同社や関連する子会社が事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

直近5期間の業績は、売上収益が概ね1300億円から1400億円台で堅調に推移しています。税引前利益は一時期減少傾向にありましたが、直近では国内Working事業の成長や収益性の高い分野へのシフトが奏功し、増益に転じています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1311億円 1439億円 1382億円 1397億円 1469億円
税引前利益 53億円 51億円 44億円 22億円 31億円
利益率(%) 4.0% 3.6% 3.2% 1.6% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 32億円 28億円 12億円 23億円


売上収益は1397億円から1469億円へ増収となりました。売上総利益および営業利益も前年度から増加しており、利益率の改善が見られます。国内の正社員派遣や外国人雇用支援の拡大などが利益増に貢献しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1397億円 1469億円
売上総利益 30億円 42億円
売上総利益率(%) 2.1% 2.9%
営業利益 23億円 33億円
営業利益率(%) 1.6% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比26%)、支払手数料が4億円(同16%)、業務委託費が2億円(同9%)を占めています。

国内Working事業は、建設技術者領域やセールスアウトソーシング領域が堅調に推移し増収増益となりました。海外Working事業も、販管費の抑制や人材紹介の増加により利益率が改善しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内Working事業 831億円 883億円 33億円 36億円 4.1%
海外Working事業 565億円 585億円 14億円 24億円 4.1%
その他 1.7億円 1.0億円 -2.2億円 -3.1億円 -322.1%
調整額 -0.3億円 -0.2億円 -21億円 -24億円 -
連結(合計) 1397億円 1469億円 23億円 33億円 2.2%


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で投資や借入金の返済を行う「健全型」です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 18億円 50億円
投資CF -7億円 -14億円
財務CF -12億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.9%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ミッションとして「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」を掲げています。ビジョンとしては、「Working(働く)」「Interesting(遊ぶ)」「Learning(学ぶ)」「Living(暮らす)」の各事業領域において、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になる「WILLビジョン」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、特定の事業領域に特化し、そのカテゴリーにおけるサービス品質の強化を図ることで、競争が激化する中で顧客から選ばれ続けることを重視しています。多様な人材が活躍できる「居場所」を作り、挑戦や成長機会を通じて活躍できる「舞台」を提供し、個人と組織がともに成長できる風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは中長期的な成長の実現に向けて、中期経営計画(WILL-being 2029)を新たに策定しました。前中期経営計画で得られた成果を基盤に、収益構造改革を進め、さらなる利益成長を図ります。資本効率については、中長期的にROE15%以上を目指しています。

* 2029年3月期 連結営業利益 47億円
* 既存事業の成長やM&A等による上振れ目標 55億円
* 中長期的なROE 15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


国内Working事業においては「正社員・外国人HRビジネスの拡大」を戦略テーマとし、AI代替可能性の低いエッセンシャル領域(建設、製造、介護等)を主戦場として、再現性の高い利益成長を目指します。海外Working事業においては「生産性を重視した収益力の強化」を掲げ、既存の顧客基盤を活かして安定的な収益基盤の確立を図るとともに、中長期の成長機会を探索します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「すべての人に居場所と舞台を創り続ける」を人材育成方針の中核に据え、人的資本の強化に取り組んでいます。事業部や国、雇用形態の枠を超えた一体的な人材マネジメントにより、事業成長と個人の成長の好循環を創出します。「適所をつくる」「適材をつくる」「適所に適材をあてる」という考えのもと、戦略的人材ポートフォリオの構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 8.8年 6,859,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 200.0%
男女賃金差異(全従業員) 65.1%
男女賃金差異(正規) 67.0%
男女賃金差異(非正規) -


※非正規の男女賃金差異について、同社には該当する従業員区分が存在しないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Well-beingスコア(66.6pt)、職場の幸せ力スコア(69.5%)、働きがいスコア(61.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定事業への依存について


同社グループの売上は、国内Working事業の主要3領域(セールス、コールセンター、ファクトリー)に依存しています。事業環境の変化によりこれらの売上が急減した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、介護や建設技術者領域、海外事業など、次世代の柱となる事業の育成を進め、ポートフォリオの多様化を図っています。

(2) 人材の確保について


競争力の維持や持続的な成長のためには、優秀な社員と派遣スタッフの確保・育成・定着が重要です。人材の採用やエンゲージメントの向上が計画通りに進まない場合、サービス品質や生産性が低下するリスクがあります。対策として、独自の採用媒体の活用や企業ブランディング強化などプロモーションを通じた認知度向上に努めています。

(3) 情報システムに関するリスク


事業活動はITに大きく依存しており、大規模なシステム障害やサイバー攻撃、不正アクセスなどが発生した場合、業務の継続に支障をきたす恐れがあります。これに対し、基幹システムを高い安全基準のデータセンターに構築するとともに、リモートワーク環境の整備や外部委託先の厳格な選定を通じて、システム障害等のリスク軽減を図っています。

(4) 景気変動に関するリスク


国内外の経済情勢や景気変動によって、企業の人材需要や消費が落ち込んだ場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は、食品工場や介護施設、建設、政府機関など、比較的景気変動に左右されにくいエッセンシャル領域に注力し、安定した収益基盤の確立を目指すことでリスクの分散を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。