ウィルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウィルグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する総合人材サービス企業です。家電量販店やコールセンター、工場、介護施設、建設業界等に特化した人材派遣、業務請負、人材紹介を国内外で展開しています。2025年3月期の連結業績は、建設技術者領域の伸長や円安効果で増収となった一方、減損損失等の計上で減益となりました。


※本記事は、株式会社ウィルグループ の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ウィルグループってどんな会社?


人材派遣、業務請負、人材紹介を主軸に、国内の特定カテゴリーや海外市場で事業を展開する人材サービス企業です。

(1) 会社概要


1997年1月に設立されたセントメディア(現ウィルオブ・ワーク)がテレマーケティング業を開始し、2000年2月にビッグエイドを吸収合併してファクトリーアウトソーシング事業へ進出しました。2006年4月に持株会社であるウィルホールディングス(現・同社)を設立してグループ経営体制へ移行。2013年12月に東証市場第二部へ上場し、2014年12月に第一部へ指定替えとなりました。2019年10月には国内人材サービスブランドを「WILLOF(ウィルオブ)」に統一し、ブランド力強化を図っています。

同グループの従業員数は連結7,929名、単体98名です。筆頭株主は創業者の池田良介氏、第2位は資産管理会社と思われる株式会社池田企画事務所、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
池田 良介 18.21%
池田企画事務所 8.69%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は角裕一氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
角 裕一 代表取締役社長 2003年セントメディア(現ウィルオブ・ワーク)入社。同社取締役、ウィルオブ・コンストラクション代表取締役などを経て、2023年6月より現職。
池田 良介 取締役会長 1997年ビッグエイド入社。2000年セントメディア(現ウィルオブ・ワーク)代表取締役、2006年ウィルホールディングス(現同社)代表取締役社長などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、腰塚國博(元コニカミノルタ取締役兼常務執行役・指名報酬委員長)、高橋理人(元リクルート、元楽天常務執行役員)、市川祐子(元楽天IR部長、マーケットリバー代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内Working事業」「海外Working事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内Working事業


国内において、販売、コールセンター、工場、介護施設、建設技術者などの特定カテゴリーに特化した人材派遣・人材紹介・業務請負の人材支援サービスを提供しています。家電量販店での販売支援や、製造業での生産性向上支援、建設業界への施工管理技士派遣などが含まれます。

主な収益源は、派遣先企業からの派遣料金、請負業務の対価、人材紹介の紹介手数料です。運営は主に株式会社ウィルオブ・ワーク、株式会社ウィルオブ・コンストラクションなどの国内子会社が行っています。

(2) 海外Working事業


シンガポールやオーストラリアを中心に、人材派遣や人材紹介などの人材サービスを展開しています。人材派遣では、比較的景気変動の影響を受けにくい政府や自治体が主な派遣先となっており、人材紹介では工業や金融など幅広い分野を対象としています。

収益は、現地の顧客企業や政府機関からの派遣料金および人材紹介手数料等から得ています。運営は、WILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.の傘下にある海外子会社群が行っています。

(3) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、システムエンジニアの人材派遣や人材紹介などを行っています。

収益は、顧客企業からのサービス対価等です。運営は、同社グループの事業会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は緩やかな増加傾向にありますが、利益面では減少傾向が見られます。特に直近では売上収益が過去最高水準にある一方で、利益率は低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,182億円 1,311億円 1,439億円 1,382億円 1,397億円
税引前利益 38億円 53億円 51億円 44億円 22億円
利益率(%) 3.2% 4.0% 3.6% 3.2% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 33億円 32億円 28億円 12億円

(2) 損益計算書


売上収益は微増となりましたが、営業利益は大きく減少しました。これは、前連結会計年度にあった子会社株式売却益の剥落や、当期におけるのれんの減損損失計上などが影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,382億円 1,397億円
売上総利益 304億円 294億円
売上総利益率(%) 22.0% 21.0%
営業利益 45億円 23億円
営業利益率(%) 3.3% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が172億円(構成比63%)、その他が52億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内Working事業は建設技術者領域等の拡大により増収となりましたが、利益は前年の子会社売却益の反動等で減益となりました。海外Working事業は円安効果で増収となりましたが、のれん減損の影響等で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内Working事業 826億円 831億円 50億円 33億円 3.9%
海外Working事業 554億円 565億円 19億円 14億円 2.5%
その他 3億円 2億円 -2億円 -2億円 -135.2%
調整額 -0億円 -0億円 -22億円 -21億円 -
連結(合計) 1,382億円 1,397億円 45億円 23億円 1.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 38億円 18億円
投資CF -6億円 -7億円
財務CF -62億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」をミッションとして掲げています。また、ビジョンとして「Working」「Interesting」「Learning」「Living」の各事業領域で期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域でNo.1の存在になる「WILLビジョン」を掲げています。

(2) 企業文化


「Working」「Interesting」「Learning」「Living」の4領域においてNo.1の存在になることを目指し、特定の事業領域に特化してサービス品質を強化する文化があります。また、競争が激化する中で顧客から選ばれ続けるために、景気変動の少ない領域への展開やカテゴリー特化による差別化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「WILL-being 2026」において、以下の重要業績評価指標(KPI)を掲げています。

* 正社員派遣採用人数/年(建設技術者領域):2026年3月期目標 1,500名
* 正社員派遣定着率(建設技術者領域):2026年3月期目標 71.5%
* 正社員派遣稼働人数(国内Working事業(建設技術者領域を除く)):2026年3月期目標 3,500名
* 外国人管理受託人数(国内Working事業):2026年3月期目標 3,500名

(4) 成長戦略と重点施策


国内Working事業の再成長を基本方針とし、建設技術者領域の拡大、正社員派遣、外国人管理受託の拡大を重点戦略としています。また、海外Working事業では安定した成長を目指し、行政等の安定領域における売上増加やコストコントロールに取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働く人をエキスパートにするキャリアの“最大化”と“最適化”」を掲げ、人的資本の強化を重点課題としています。採用力強化のためサービスブランド「WILLOF」のプロモーションを展開し、育成・定着においては研修の充実や定期的なフォローアップ、資格奨励金や給与評価制度の見直し等により定着率を高める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.9歳 8.0年 6,760,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.3%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 60.5%
男女賃金差異(正規雇用) 63.8%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男女賃金差異(非正規雇用)については、該当者が存在しないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Well-beingスコア(66.0pt)、職場の幸せ力スコア(69.1%)、働きがいスコア(58.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定事業への依存について


同社グループの売上収益は、国内Working事業におけるセールス、コールセンター、ファクトリーの主要3領域に依存しています。事業環境の変化によりこれらの売上が急減した場合や、次の柱となる介護・建設・海外等の事業成長が計画通りに進まず依存度が低下しない場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 人材の確保について


競争優位性の確保と持続的成長には優秀な社員とスタッフの採用・育成が不可欠です。計画通りに人材を確保・育成できない場合や、競合他社への流出、想定以上の離職が生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、多様な人材が活躍できる風土作りや募集方法の多様化などの対策を講じています。

(3) 法改正について


労働者派遣法や社会保険制度、労働契約法などの改正が経営に影響を与える可能性があります。特に派遣期間制限や同一労働同一賃金への対応、社会保険料の上昇などがコスト増につながるリスクがあります。法務部門による動向注視や、コスト上昇分の価格転嫁などの対策を行っています。

(4) 海外における事業展開について


シンガポールやオーストラリア等での事業展開に伴い、各国の景気・為替変動、法規制、政治的不安定さなどのカントリーリスクが存在します。シンガポールに統括拠点を置き、現地の法務・税務顧問と連携してリスク低減に努めていますが、不測の事態が生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。