※本記事は、ダイキョーニシカワ株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイキョーニシカワってどんな会社?
開発から製造まで一貫して手掛ける提案型の総合プラスチックメーカーで、自動車部品を主力としています。
■(1) 会社概要
同社は2007年に西川化成、ジー・ピー・ダイキョー、旧ダイキョーニシカワの3社合併により発足しました。2014年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、海外ではタイ、中国、メキシコ、インドネシア、米国などに製造・販売拠点を設立して事業を拡大させています。2019年には東広島市に本社工場を新設し操業を開始しました。
連結従業員数は5,779名、単体では2,781名です。筆頭株主はゴム製品製造を行う西川ゴム工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は高分子化学メーカーのイノアックコーポレーションです。事業上のパートナー企業が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 西川ゴム工業 | 16.64% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.83% |
| イノアックコーポレーション | 5.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名、計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は杉山 郁男氏です。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉山 郁男 | 代表取締役社長 | マツダ執行役員、マツダトヨタマニュファクチャリングUSA, Inc. 副社長などを経て、2024年4月同社副社長執行役員、同年6月より現職。 |
| 戸井 秀樹 | 代表取締役副社長 | 広島銀行常務執行役員などを経て、2023年4月同社副社長執行役員、同年6月より現職。 |
| 畑石 光生 | 取締役専務執行役員 | 1985年大協(現同社)入社。製造本部長、DaikyoNishikawa Mexicana取締役社長などを歴任。2022年6月より現職。 |
| 川上 博之 | 取締役専務執行役員 | 1990年西川化成(現同社)入社。技術本部長、エイエフティー代表取締役社長などを歴任。2023年6月より現職。 |
| 石田 裕 | 取締役専務執行役員 | 1986年大協(現同社)入社。関東大協代表取締役社長、同社営業本部長などを歴任。2023年6月より現職。 |
| 三舟 滋治 | 取締役専務執行役員 | 1986年大協(現同社)入社。技術本部長、エイエフティー代表取締役社長などを歴任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、佐々木 茂喜(オタフクホールディングス会長)、村田 治子(村田治子公認会計士・税理士事務所代表者)、弘中 武都(マツダ常務執行役員)、松本 俊彦(サタケ取締役)、小林 宏明(日東製網代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中米・北米」「アセアン」「中国・韓国」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
インストルメントパネル、バンパーなどの自動車部品や、バスユニット部材などの住宅部品の開発・製造・販売を行っています。主要顧客はマツダ、ダイハツ工業、TOTOグループなどです。また、金型や生産設備の開発も手掛けています。
収益は自動車メーカーや住宅機器メーカーへの製品販売および金型販売から得ています。運営は同社に加え、三伸化工、関東大協、エイエフティー、デックなどの国内子会社が行っています。
■(2) 中米・北米
メキシコおよび米国において、現地の自動車メーカー向けにインストルメントパネルやバンパーなどの自動車樹脂部品を製造・販売しています。
収益は現地の自動車メーカーへの製品販売および金型販売から得ています。運営は、メキシコのDaikyoNishikawa Mexicana, S.A. de C.V.および米国のDaikyoNishikawa USA Inc.が行っています。
■(3) アセアン
タイおよびインドネシアにおいて、日系自動車メーカー向けを中心に自動車樹脂部品の製造・販売を行っています。
収益は現地の自動車メーカーへの製品販売および金型販売から得ています。運営は、タイのDaikyoNishikawa(Thailand) Co.,Ltd.やDMS Tech Co.,Ltd.、インドネシアのPT.DaikyoNishikawa Tenma Indonesiaが行っています。
■(4) 中国・韓国
中国における自動車樹脂部品の製造・販売および設計・技術サービスの提供、韓国における樹脂部品の設計・開発を行っています。
収益は現地の自動車メーカーへの製品販売、金型販売および設計業務の受託等から得ています。運営は、中国の大協西川汽車部件(常熟)有限公司や帝恩汽車部件(上海)有限公司、韓国のDaikyoNishikawa Korea Co.,Ltd.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期に一度落ち込んだものの、その後は回復・増加傾向にあり、当期は1,686億円に達しました。利益面でも、2022年3月期には損失を計上しましたが、以降はV字回復を遂げています。当期は経常利益97億円、当期純利益65億円となり、利益率はコロナ禍前の水準を超えて改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,502億円 | 1,167億円 | 1,457億円 | 1,590億円 | 1,686億円 |
| 経常利益 | 54億円 | -10億円 | 29億円 | 88億円 | 97億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | -0.8% | 2.0% | 5.5% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | -21億円 | 5億円 | 58億円 | 65億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比6.0%増の1,686億円、売上総利益は9.3%増の224億円となりました。原価率は改善傾向にあり、営業利益は15.1%増の100億円、営業利益率は5.9%に向上しています。増収効果に加え、コスト改善活動等が利益押し上げに寄与しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,590億円 | 1,686億円 |
| 売上総利益 | 205億円 | 224億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.9% | 13.3% |
| 営業利益 | 87億円 | 100億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運送費が14億円(構成比12%)、研究開発費が12億円(同9%)、給料及び手当が11億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは増収増益となり、全社利益を牽引しました。中米・北米セグメントは売上が大幅に増加したものの、為替影響等により減益となりました。アセアンおよび中国・韓国セグメントは、現地の生産動向等の影響を受けています。特に中国・韓国は営業損失となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,033億円 | 1,038億円 | 47億円 | 68億円 | 6.5% |
| 中米・北米 | 382億円 | 463億円 | 37億円 | 30億円 | 6.4% |
| アセアン | 120億円 | 108億円 | 7億円 | 5億円 | 5.0% |
| 中国・韓国 | 56億円 | 77億円 | -4億円 | -1億円 | -1.3% |
| 連結(合計) | 1,590億円 | 1,686億円 | 87億円 | 100億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、その範囲内で投資活動と借入金の返済を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 204億円 | 168億円 |
| 投資CF | 16億円 | -76億円 |
| 財務CF | -88億円 | -183億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社員の幸福と繁栄を願い、人・社会・地球を大切にする企業を実現します」「感動創造企業を目指し、技術開発と革新的なものづくりにチャレンジします」「企業倫理の徹底を図り、地域から信頼される企業を築きます」という企業理念を掲げています。高機能な樹脂製品でクルマの軽量化や樹脂の循環サイクルをリードする提案型企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、開発から品質保証まで手がける「提案型の総合プラスチックメーカー」としてのアイデンティティを持っています。常に新しい発見と可能性を追い求め、プラスチックの特性を高めながら、機能性・安全性・環境配慮など付加価値の高い製品の提供を目指す姿勢を重視しています。また、人・社会・地球にやさしいものづくりを追求し続けることを基本方針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は長期ビジョン「Vision 2040」を策定し、2027年度を最終年度とする中期経営計画を推進しています。中期経営指標として、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:1,800億円
* 売上高営業利益率:7%
* 自己資本当期純利益率(ROE):9%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では「顧客戦略」「商品戦略」「ものづくり戦略」「経営基盤戦略」の4つを柱としています。樹脂による新たな市場開拓や、循環サイクルを実現した商品のモデル創出、スマートファクトリーの実現、人的資本経営やDXによる効率化を推進しています。特に樹脂製テールゲートや電動車向け部品などの技術開発に注力し、事業拡大を目指しています。
* カーボンニュートラル:CO2排出量45%減(2013年度比)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは「ものづくりから向かうはひとづくり」を掲げ、次世代に活躍できる人材の育成に取り組んでいます。タレントマネジメントシステムの導入や階層別教育を通じてリーダーを輩出するとともに、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進。多様な働き方の実現や心理的安全性の確保などを通じて、社員のエンゲージメント向上と持続的な企業成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.4歳 | 15.4年 | 5,666,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含めております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 38.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 52.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職(10名)、女性監督職(29名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先による影響
同社グループの主要顧客はマツダであり、マツダ車に関わる売上高は約7割を占めています。そのため、同顧客の自動車生産および販売動向が、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業展開に伴うリスク
中米・北米、アセアン、東アジアで事業を展開しており、予期しない法律・規制の変更、人材確保の困難さ、ストライキ、社会的混乱などのリスクがあります。これらが顕在化した場合、材料調達や生産、販売に支障が生じ、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保・育成
グローバル展開のため多様な人材の確保・育成に努めていますが、転職や不慮の事故等による人材の流失、ノウハウの逸失が発生する可能性があります。このような状況が発生した場合、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。



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