ダイキョーニシカワ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイキョーニシカワ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイキョーニシカワは東京証券取引所プライム市場に上場する総合プラスチックメーカーです。マツダなどを主要顧客とし、自動車のインストルメントパネル等の樹脂部品や住宅設備機器の製造販売を手掛けています。直近の業績では、米国での需要増や円安の好影響などを受け、減収ながらも増益を達成し、堅調に推移しています。


※本記事は、ダイキョーニシカワ株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイキョーニシカワってどんな会社?


総合プラスチックメーカーとして自動車樹脂部品や住宅設備機器の製造・販売を手掛けています。

(1) 会社概要


2007年に西川化成など3社の合併でダイキョーニシカワとして発足しました。同年よりタイや中国、メキシコ等に法人を設立し、自動車メーカーへのグローバルな供給体制を構築しています。2014年に東京証券取引所市場第一部に上場し、直近でも中国拠点を完全子会社化するなど事業基盤の強化を続けています。

同社グループは連結で5,712名、単体で2,647名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社の西川ゴム工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には同じく事業会社であるイノアックコーポレーションが名を連ねています。

氏名 持株比率
西川ゴム工業 8.96%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.23%
イノアックコーポレーション 5.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は杉山郁男氏が務めています。社外取締役は5名で取締役11名のうち45.5%を占めます。

氏名 役職 主な経歴
杉山郁男 代表取締役社長 1987年マツダ入社。本社工場長、米国生産準備室副室長等を経て、2022年同社常務執行役員に就任。2024年より現職。
戸井秀樹 代表取締役副社長 1987年広島銀行入行。徳山支店長、常務執行役員東部統括本部長等を経て、2023年ダイキョーニシカワに入社し、同年より現職。
畑石光生 取締役専務執行役員 1985年大協(現ダイキョーニシカワ)入社。製造本部八本松工場長、メキシコ法人社長、製造本部長等を経て、2022年より現職。
川上博之 取締役専務執行役員 1990年西川化成(現ダイキョーニシカワ)入社。技術本部長、エイエフティー代表取締役社長等を経て、2023年より現職。
石田裕 取締役専務執行役員 1986年大協(現ダイキョーニシカワ)入社。関東大協代表取締役社長、営業本部長等を経て、2023年より現職。
三舟滋治 取締役専務執行役員 1986年大協(現ダイキョーニシカワ)入社。技術本部長、エイエフティー代表取締役社長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、村田治子氏(公認会計士・税理士)、弘中武都氏(マツダ上席執行役員)、松本俊彦氏(サタケ取締役)、小林宏明氏(日東製網代表取締役社長)、石田洋子氏(広島大学大学院客員教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アセアン」「中国・韓国」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


自動車メーカー向けにインストルメントパネルやバンパー等の自動車樹脂部品を製造・販売するほか、バスユニット部材などの住宅設備機器の製造も手掛けています。マツダ向けを主力とし、ダイハツ工業等へも製品を供給しています。

収益は、自動車メーカーや住宅機器メーカーへの製品販売から得ています。運営はダイキョーニシカワを中心に、三伸化工やエイエフティーなどが製造・販売を担い、デックやDNCサービスが金型設計やサポート業務等を行っています。

(2) 北米


アメリカおよびメキシコにおいて、現地に進出している日系自動車メーカー向けを中心に自動車樹脂部品の製造および販売を行っています。インストルメントパネル等の内装部品やバンパー等の外装部品などを取り扱っています。

収益は、主要顧客である自動車メーカーの現地関係会社等へ製品を納入することで得ています。事業の運営は、メキシコ法人のDaikyoNishikawa Mexicanaと、米国法人のDaikyoNishikawa USAがそれぞれ担当しています。

(3) アセアン


タイおよびインドネシアにおいて、現地の日系自動車メーカー向けに自動車樹脂部品の製造・販売を展開しています。現地の生産拠点からサプライチェーンへの効率的な部品供給を行っています。

収益は、同社グループの主要顧客が展開する現地の関係会社などへ自動車部品を販売することで得ています。事業の運営は、タイ法人のDaikyoNishikawa(Thailand)と、インドネシア法人のPT.DaikyoNishikawa Tenma Indonesiaが行っています。

(4) 中国・韓国


中国において日系自動車メーカーの現地工場へ自動車樹脂部品の製造・販売を行っています。また、自動車部品等の設計や技術サービス、樹脂部品の開発業務などのサポート事業も手掛けています。

収益は、自動車メーカーの現地関係会社への製品納入や、設計・解析業務等の受託により得ています。中国での製造販売は大協西川汽車部件(常熟)や大協西川汽車部件(南京)が担い、設計等のサポート業務は中国の帝恩汽車部件(上海)と韓国のDaikyoNishikawa Koreaが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2022年3月期以降、順調に拡大傾向をたどってきましたが、2026年3月期は一部地域の減産影響などで微減収となりました。一方、経常利益については継続的なコスト改善効果や為替差益などにより増益基調が続いており、利益率は着実に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1167億円 1457億円 1590億円 1686億円 1657億円
経常利益 -10億円 29億円 88億円 97億円 107億円
利益率(%) -0.8% 2.0% 5.5% 5.7% 6.5%
当期利益 27億円 -15億円 100億円 67億円 87億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、売上原価の低減などにより売上総利益および営業利益は増益を確保しています。利益率もわずかながら改善傾向にあり、堅実な事業運営がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1686億円 1657億円
売上総利益 224億円 227億円
売上総利益率(%) 13.3% 13.7%
営業利益 100億円 103億円
営業利益率(%) 5.9% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が26億円(構成比21%)、荷造運搬費が21億円(同17%)、研究開発費が11億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の日本は新製品の売上増があったものの、主要顧客の減産などで減収減益となりました。一方、北米は米国での増産効果やメキシコでの為替影響などで増収を確保し、大幅な増益を達成しました。中国・韓国は減収ながらもコスト改善により黒字転換を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 1038億円 1013億円 68億円 34億円 3.4%
北米 463億円 469億円 30億円 56億円 12.0%
アセアン 108億円 109億円 5億円 5億円 5.0%
中国・韓国 77億円 67億円 -1億円 0.8億円 1.2%
連結(合計) 1686億円 1657億円 100億円 103億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローはプラス、投資キャッシュ・フローおよび財務キャッシュ・フローはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で積極的な設備投資を行いつつ、借入金の返済も並行して進める健全型の資金繰り状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 168億円 176億円
投資CF -76億円 -49億円
財務CF -183億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.9%となっており、いずれもプライム市場の製造業平均を上回る水準を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社員の幸福と繁栄を願い、人・社会・地球を大切にする企業」「感動創造企業を目指し、技術開発と革新的なものづくりにチャレンジする企業」「企業倫理の徹底を図り、地域から信頼される企業」の実現を基本方針に掲げています。高機能な樹脂製品でクルマの軽量化や循環サイクルをリードする提案型企業を目指しています。

(2) 企業文化


サステナブルな社会の実現に向け、社員一人ひとりが自分事として課題解決に取り組む姿勢を重視しています。安全・健康を全てに優先させ、人間尊重を基本として安心して活き活きと働き続けられる企業を目指しています。継続的に学び、多様な考えを取り入れることで新たな知の結合を生み出す風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2024年度~2027年度)において、長期ビジョンのステージ1「基盤の構築」と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。このほか、CO2排出量削減などのサステナビリティに関するKPIも設定しています。

* 連結売上高:1,800億円
* 売上高営業利益率:7%
* 自己資本当期純利益率(ROE):9%

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長を実現するため、「顧客戦略」「商品戦略」「ものづくり戦略」「経営基盤戦略」の4つを着実に実行しています。環境対応や軽量化を軸とした高付加価値化による収益構造の再構築や、スマートファクトリー化によるコスト競争力の強化を進めています。

* 新規顧客の開拓や新市場・新事業の開拓
* デジタル技術を活用した業務プロセスの改革
* 次世代製品の品質マネジメント体制の実現

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員の成長こそが会社の成長における最も重要な要素と考え、「ものづくりから向かうはひとづくり」として次世代に活躍できる人材の育成に取り組んでいます。多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備を進めており、フレックスタイム制の拡充や多様な働き方を支援する新たな休暇制度の導入などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.0歳 16.2年 5,938,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 72.9%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職の人数(12名)、中途採用者の管理職比率(29.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存リスク


同社の売上の大部分はマツダおよび同社グループが占めており、連結売上高の7割以上を依存しています。そのため、サプライチェーン上の外的要因等により同社グループの自動車生産台数が減少した場合には、ダイキョーニシカワの業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新製品開発と技術の不確実性


環境対応や軽量化のニーズに応えるため、金属から樹脂への代替製品開発などを積極的に進めています。しかし、新製品や新技術が必ずしも顧客に支持される保証はなく、市場の急速な変化に対応できなかった場合、将来の成長力や収益性が低下するリスクがあります。

(3) 価格競争の激化


自動車業界における価格競争の激化を背景に、部品メーカー間でも競合が厳しさを増しています。技術開発による付加価値の向上で価格維持に努めていますが、低価格での受注を余儀なくされた場合、売上高の維持や収益性の確保が困難になる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。