AZ-COM丸和ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AZ-COM丸和ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。EC物流、低温食品物流、医薬・医療物流を中心とした3PL事業を展開。当連結会計年度は、EC需要の拡大や新規拠点の開設により売上高は過去最高を更新して増収となる一方、先行投資費用やコスト上昇の影響で減益となりました。


※本記事は、AZ-COM丸和ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AZ-COM丸和ホールディングスってどんな会社?


EC物流や低温食品物流に強みを持つ大手3PL企業です。現場力と提案力を武器に成長を続けています。

(1) 会社概要


1973年に有限会社丸和運輸機関として設立。1990年代より物流一括受託(3PL)事業を展開し、2014年に東証二部上場、2015年に同一部へ指定されました。2022年に持株会社体制へ移行し、現商号に変更。直近では2024年に株式会社ルーフィを完全子会社化し、ラストワンマイル事業を強化しています。

連結従業員数は5,241名、単体は68名です。筆頭株主は創業者で社長の和佐見勝氏、第2位は株式会社TARO’S、第3位は株式会社WASAMIで、第3位株主については有価証券報告書に社長の資産管理会社である旨の記載があります。

氏名 持株比率
和佐見 勝 19.42%
TARO’S 19.08%
WASAMI 14.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)は和佐見勝氏です。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
和佐見 勝 代表取締役社長最高経営責任者(CEO) 1973年同社設立、代表取締役社長就任。各子会社社長を経て、2009年より現職。日本3PL協会会長等を兼務。
山本 輝明 取締役副社長執行役員 1971年SBI新生銀行入行。同行代表取締役専務、アプラスフィナンシャル社長等を経て、2020年より現職。
葛野 正直 取締役専務執行役員経営管理グループ長 1985年埼玉りそな銀行入行。同行取締役、りそなホールディングス執行役等を経て、2022年より現職。
藤田 勉 取締役専務執行役員経営戦略グループ長 1984年みずほ証券入社。同社常務執行役員等を経て、2023年より現職。
本橋 克宣 取締役専務執行役員経営企画グループ長 1980年みずほ信託銀行入社。同社常務執行役員、みずほフィナンシャルグループ執行役専務等を経て、2023年より現職。
岩﨑 哲律 取締役常務執行役員事業推進グループ長 1993年同社入社。EC物流運営本部長、EC事業本部長等を経て、2022年より現職。
小倉 友紀 取締役常務執行役員BCP事業推進グループ長 1988年同社入社。運行システム事業本部長、3PL物流統括本部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、舘逸志(元国土交通省政策統括官)、西郷正実(元関東管区警察局長)、船本美和子(弁護士)、上條正仁(元埼玉りそな銀行社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 物流事業(3PL)**
顧客の物流ニーズを把握し、戦略立案からシステム構築、包括的な業務受託までを行うサードパーティ・ロジスティクス(3PL)を提供しています。特に、EC物流、低温食品物流、医薬・医療物流を主軸としています。
収益は、顧客企業からの業務受託料等からなり、運営はAZ-COM丸和ホールディングス傘下の丸和運輸機関、北海道丸和ロジスティクスなどの事業会社が行っています。

**(2) 物流事業(輸配送サービス)**
一般貨物運送、軽貨物運送(当日お届けサービス、ネットスーパー等)、鉄道利用運送、産業廃棄物収集運搬などを用途に合わせて提供しています。
収益は、輸配送サービスの提供対価であり、運営は丸和通運、ジャパンクイックサービス、ファイズホールディングスなどのグループ各社が行っています。

**(3) その他**
文書保管、不動産賃貸、情報システム開発などのサービスを提供しています。文書保管では書類の保管から電子化までをサポートし、情報システムではIT技術者の派遣やシステム開発を行っています。
収益は、保管料、賃貸料、システム開発費等からなり、運営はアズコムデータセキュリティや持株会社等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では2024年3月期まで増加基調でしたが、2025年3月期は減益となりました。利益率は5%台から7%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,121億円 1,330億円 1,778億円 1,986億円 2,084億円
経常利益 83億円 91億円 119億円 145億円 116億円
利益率(%) 7.4% 6.9% 6.7% 7.3% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 53億円 32億円 59億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。売上原価の増加率が売上高の伸びを上回ったことが要因と考えられます。営業利益率は低下しており、コストコントロールが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,986億円 2,084億円
売上総利益 233億円 214億円
売上総利益率(%) 11.7% 10.3%
営業利益 138億円 110億円
営業利益率(%) 7.0% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、その他が55億円(構成比53%)、給与手当が25億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


物流事業は、EC常温3PLや医薬・医療3PLでの新規センター開設や物量増加により増収となりましたが、拠点開設コストや各種コスト上昇により減益となりました。その他事業は、情報システム事業やBPO案件が好調で増収増益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
物流事業 1,960億円 2,056億円 138億円 113億円 5.5%
その他 26億円 28億円 4億円 4億円 15.1%
調整額 - - -4億円 -8億円 -
連結(合計) 1,986億円 2,084億円 138億円 110億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

AZ-COM丸和ホールディングスは、物流事業を中核とし、安定した事業基盤のもとで成長を続けています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払い増加や税金等調整前当期純利益の減少により、前年比で収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得による支出増加が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、前年は増資による収入がありましたが、当期は支出に転じました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 108億円 89億円
投資CF -59億円 -106億円
財務CF 86億円 -30億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様第一義を基本に、サードパーティ・ロジスティクス(3PL)業界のNo.1企業を目指し、同志の幸福と豊かな社会づくりに貢献する。」という経営理念を掲げています。ロジスティクスのプロ集団として、顧客経営のサポートと地域社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「桃太郎文化」と呼ばれる企業文化を醸成・伝承できる人材の育成を重視しています。これは「人の成長なくして企業の成長はなし」という考えに基づき、階層別の役割や求められる能力・行動を明確化し、社内外研修や適正配置を通じて実践されています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、財務力・収益力の改善と利益還元を目的として、以下の経営指標を安定的に維持することを目標としています。
* 自己資本比率:45%以上
* 売上高経常利益率:8%以上
* ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


EC物流、低温食品物流、医薬・医療物流の3大コア事業の拡大に加え、DX推進による省人化・生産性向上、人材確保・育成に注力します。また、経営資源を成長事業へ集中投資し、低収益事業の再生・再編を進めることで経営効率化を図ります。
* EC物流:サプライチェーン一貫物流プロセスの構築
* 低温食品物流:「AZ-COM7PL」等のサービスメニュー発展と産直プラットフォーム構築
* 医薬・医療物流:物流ネットワーク最適化とセンター再構築

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に必要な人材確保のため、新卒採用強化と即戦力となる中途採用を含むチャネル多角化に取り組みます。また、「全社オールリクルート体制」を推進し、戦略的人材育成とタレントマネジメントによる適正配置・離職防止に努めています。人材育成のDX化や資格取得支援など、「人材育成プラットフォーム」の構築も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.1歳 15.2年 7,683,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 35.3%
男女賃金差異(全労働者) 59.2%
男女賃金差異(正規) 80.7%
男女賃金差異(非正規) 174.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業復帰率(95.90%)、有給休暇取得率(69.10%)、中途社員採用率(69.18%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コンプライアンスに関するリスク


貨物自動車運送事業法等の各種法令規制を受けており、法令違反時には行政処分や罰金等の可能性があります。同社グループでは「行動憲章」「行動規範」を制定し、教育研修等でコンプライアンス体制を強化していますが、違反が発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 大口取引先の変動リスク


3PL事業の特性上、特定の取引先への依存度が高くなる傾向があります。同社グループは販売先の多様化や信頼関係構築に努めていますが、予期せぬ契約変更や解消が生じた場合、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保及び育成リスク


業容拡大に伴い、新卒・中途採用による人材確保と育成が急務です。インターンシップやオールリクルート体制等で対策を講じていますが、人材獲得競争の激化により計画通りの確保が困難な場合や人材流出が生じた場合、業績や経営体制に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。