AZ-COM丸和ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AZ-COM丸和ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AZ-COM丸和ホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、小売業を中心としたEC物流や低温食品物流などのサードパーティ・ロジスティクス事業を主力としています。直近の業績は、新規物流センターの立ち上げや取扱物量増加などにより、売上高および各利益ともに増収増益のトレンドです。


※本記事は、AZ-COM丸和ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AZ-COM丸和ホールディングスってどんな会社?


同社は小売業を中心としたサードパーティ・ロジスティクス(3PL)事業を主力とする物流企業です。

(1) 会社概要


1973年に丸和運輸機関として設立され、一般区域貨物自動車運送事業を開始しました。2014年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌年には市場第一部へ指定されています。事業の拡大を続けるなか、2022年に純粋持株会社体制へと移行し、現在のAZ-COM丸和ホールディングスに商号を変更しました。

従業員数はグループ連結で5,462名、単体で77名です。筆頭株主はTARO‘Sであり、第2位株主は創業者の和佐見勝氏、第3位株主はその他の関係会社であるWASAMIとなっています。

氏名 持株比率
TARO‘S 19.08%
和佐見 勝 18.27%
WASAMI 14.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性3名の計19名で構成され、女性役員比率は15.8%です。代表取締役社長最高経営責任者は和佐見勝氏が務めています。社外取締役比率は31.6%です。

氏名 役職 主な経歴
和佐見 勝 代表取締役社長最高経営責任者(CEO) 1973年同社を設立し代表取締役社長に就任。各グループ会社の代表取締役社長を歴任し、2009年代表取締役社長最高経営責任者に就任。現在、丸和運輸機関の代表取締役会長最高経営責任者等を兼務し現職。
山本 輝明 取締役副社長執行役員 1971年長銀入行。新生銀行専務等を経て、2011年同社取締役常務執行役員。専務を経て2020年取締役副社長執行役員。丸和運輸機関取締役副社長執行役員を兼務し現職。
葛野 正直 取締役専務執行役員 1985年埼玉りそな銀行入行。りそなHD執行役等を経て、2019年同社取締役常務執行役員。現在、同社取締役専務執行役員経営管理グループ長、丸和運輸機関取締役専務執行役員として現職。
藤田 勉 取締役専務執行役員 1984年みずほ証券入社。日本投資環境研究所専務等を経て、2012年同社取締役。アズコムデータセキュリティ社長等を経て、2023年同社取締役専務執行役員経営戦略グループ長より現職。
本橋 克宣 取締役専務執行役員 1980年みずほ信託銀行入社。みずほFG執行役専務等を経て、2021年同社社外取締役。2023年取締役専務執行役員経営企画グループ長を経て、2025年取締役専務執行役員経営戦略グループ長より現職。
平野 健治 取締役専務執行役員 1987年同社入社。運行事業本部長等を経て、九州丸和ロジスティクスや東北丸和ロジスティクスの代表取締役社長を歴任。2025年同社取締役専務執行役員、丸和運輸機関代表取締役社長より現職。
岩﨑 哲律 取締役常務執行役員 1993年同社入社。EC常温物流運営本部長等を経て、2022年同社取締役常務執行役員。丸和運輸機関取締役常務執行役員を経て、2025年丸和運輸機関取締役専務執行役員より現職。
小倉 友紀 取締役常務執行役員 1988年同社入社。運行システム事業本部長や3PL物流統括本部長等を経て、2022年同社取締役執行役員事業推進グループ長。2024年同社取締役常務執行役員BCP事業推進グループ長より現職。


社外取締役は、舘逸志(元国土交通省政策統括官・内閣審議官)、西郷正実(元関東管区警察局長)、船本美和子(虎ノ門第一法律事務所パートナー弁護士)、上條正仁(元埼玉りそな銀行代表取締役社長)、丹生谷晋(元出光興産代表取締役副社長)、後藤紘子(後藤公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

物流事業


EC物流、低温食品物流、医薬・医療物流を主軸に、顧客に対するロジスティクス・コンサルティングを通じた物流戦略の企画や物流システムの構築、並びに包括的な物流業務の受託を行っています。一般貨物や軽貨物などの輸配送サービスも提供しています。

収益源は、顧客企業から受託する物流センター運営、輸配送、包括的な物流業務などのサービス提供による対価です。事業の運営は、丸和運輸機関、北海道丸和ロジスティクス、関西丸和ロジスティクスなどの各種グループ会社が行っています。

その他事業


文書保管の分野において重要書類の保管やWebアプリケーションを利用した書類検索、電子データ閲覧サービスを提供しています。加えて、首都圏を中心とした不動産賃貸や、情報システムのコンサルティングサービスも展開しています。

収益源は、顧客からの文書保管・電子データ化サービスの利用料や、不動産の賃貸収入、およびIT技術者の派遣やシステム開発に伴うコンサルティング報酬です。運営は主にアズコムデータセキュリティや丸和運輸機関などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで順調な拡大を続けています。経常利益についても堅調に推移しており、直近の期では事業規模の拡大を背景に増益に転じました。物流需要の増大を背景に、成長トレンドを維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,330億円 1,778億円 1,986億円 2,084億円 2,305億円
経常利益 91億円 119億円 145億円 116億円 125億円
利益率(%) 6.9% 6.7% 7.3% 5.6% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 53億円 32億円 59億円 38億円 33億円

(2) 損益計算書


取扱物量や稼働車両台数の増加により売上高が増加し、それに伴い売上総利益および営業利益も着実に成長しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,084億円 2,305億円
売上総利益 214億円 221億円
売上総利益率(%) 10.3% 9.6%
営業利益 110億円 119億円
営業利益率(%) 5.3% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、外部委託費が5億円(構成比41%)、給与手当が5億円(同35%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である物流事業は、新規物流センターの稼働や既存取引先の取扱物量増加などにより順調に拡大し、増収増益を達成しました。その他事業についても、情報システム事業やビジネスプロセス・アウトソーシングの新規案件が寄与して増収増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
物流事業 2,056億円 2,274億円 113億円 117億円 5.1%
その他 28億円 32億円 4億円 5億円 16.7%
連結(合計) 2,084億円 2,305億円 110億円 119億円 5.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 89億円 134億円
投資CF -106億円 -392億円
財務CF -30億円 47億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様第一義を基本に、サードパーティ・ロジスティクス業界のNo.1企業を目指し、同志の幸福と豊かな社会づくりに貢献する」を経営理念に掲げています。顧客や地域社会をはじめとするステークホルダーと共に発展していくことを目指し、顧客の経営を全面的にサポートできるロジスティクスのプロ集団として事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、企業文化である「桃太郎文化」の定着と醸成を経営戦略の重要な基盤と捉えています。定期的な文化浸透活動や全従業員によるクレドカードの保有を通じて理念の浸透を図り、「挑戦・成長・貢献」の考えの下、コンプライアンス経営の遂行と企業倫理に基づく事業活動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2028」を策定し、環境変化に強い高収益企業づくりを目指しています。経営の基盤となる財務力・収益力の継続的な改善を図るため、目標とする経営指標を設定しています。

* 自己資本比率:45%以上
* 売上高経常利益率:8%以上
* ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長を実現するため、コア事業であるEC物流、低温食品物流、医薬・医療物流の拡大と開拓に注力しています。また、労働力不足や輸送費の上昇といった課題に対し、DXの推進と適用による持続可能な物流モデルの構築や省人化・省力化に努めています。経営資源の適正な配分やM&Aを通じた事業拡大も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「経営(事業)戦略が実現できるポートフォリオの再構築」を基本方針とし、専門人材の採用やリクルーター制度を通じた人材確保に注力しています。また、従業員の自律的なキャリア形成の支援や、階層別・職種別研修による能力開発、タレントマネジメントシステムを活用した適材適所の配置を推進し、多様な人材の活躍を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.1歳 15.6年 7,538,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 62.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 187.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(10.60%)、有給休暇取得率(71.80%)、育児休業復帰率(93.00%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コンプライアンスに関するリスク


貨物自動車運送事業法等の各種法令の適用を受けており、法令違反等が認められた場合には、監督官庁からの行政処分や社会的信用の低下、損害賠償等が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 大口取引先の変動のリスク


物流機能の一括受託を主たる事業としているため、特定の取引先に対する売上依存度が相対的に高くなる傾向があります。事業環境の変化や契約解消等が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原油価格の高騰のリスク


貨物自動車運送事業を営む上で、軽油を中心とした燃料価格の変動は運送コストに直接影響を与えます。コスト上昇分を十分に転嫁できない場合、収益性が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 重大な事故の発生のリスク


多数の事業用車両を保有し、物流センターで多くの従業員が業務に従事しています。人命に関わる重大な事故や労働災害が発生した場合、行政処分や刑事責任の問責等が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。