ディー・エル・イー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディー・エル・イー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ディー・エル・イーは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、IPの新規開発や映像コンテンツの企画製作を手掛けるファスト・エンタテインメント事業を主力としています。直近の業績は、減収かつ営業損失を計上し、厳しい経営環境が続く中で、AI動画などの新技術を活用した事業転換による立て直しを図っています。


※本記事は、株式会社ディー・エル・イーの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ディー・エル・イーってどんな会社?


同社は「秘密結社 鷹の爪」などのIP開発や映像制作を行うファスト・エンタテインメント企業です。

(1) 会社概要


2001年に有限会社パサニアとして設立され、ハリウッド向けの映像コンサルティングから事業をスタートしました。2006年にオリジナルIP「秘密結社 鷹の爪」のテレビ放送を開始し、ファスト・エンタテインメント事業を本格展開しました。2014年のマザーズ上場を経て、2019年には朝日放送グループホールディングスと資本業務提携を締結しました。近年はAIを活用したコンテンツ制作など新領域へ進出しています。

現在の従業員数は連結63名、単体63名です。筆頭株主は事業会社である朝日放送グループホールディングスで、第2位は創業者の椎木隆太氏、第3位は金融機関のNOMURA PB NOMINEES LIMITEDです。

氏名 持株比率
朝日放送グループホールディングス 45.00%
椎木 隆太 15.75%
NOMURA PB NOMINEES LIMITED OMUNIBUSMARGIN(CASHPB) 3.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEO・CCOは小野亮氏が務めています。監査等委員を含め社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
小野 亮 代表取締役社長CEO・CCO 1990年読売映画社入社。2006年ディー・エル・イー入社。2021年執行役員CCOなどを経て、2025年より現職。
椎木 隆太 取締役COO 1991年ソニー入社。2001年同社設立、代表取締役就任。多数の関連会社代表を歴任し、2025年より現職。
井上 和久 取締役 2004年ドリームインキュベータ入社。2013年グッドラックスリー設立、代表取締役就任。2026年より現職。


社外取締役は、曽我有信(元電通グループ代表取締役副社長)、馬場貞幸(法律事務所エイチーム所属)、山岸洋一(元みずほ証券公開引受部長)、浜田高志(現Q.ENESTホールディングス入社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファスト・エンタテインメント事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) IPの企画開発・制作事業


アニメーションやスマートフォンアプリ等のデジタルコンテンツにおけるオリジナルIPの企画開発・制作を行っています。最新のマーケットニーズに合わせ、短納期かつ低コストでコンテンツを量産する体制を構築し、テレビやウェブ、映画等の幅広いメディアで展開しています。

主に制作収入や当該IPのプロモーション収入を収益源としています。制作対象は自社で原著作権を保有するオリジナルIPが中心であり、柔軟で迅速な事業展開を可能としています。運営はディー・エル・イーが中心となって行っています。

(2) ソーシャル・キャラクター・マーケティング事業


顧客の扱う商品やサービスの紹介、マナー啓蒙、観光誘致等の地域活性化を目的としたプロモーション事業を展開しています。ソーシャル・キャラクターを活用し、口コミで伝播しやすい広告・マーケティングプランの企画提案やデジタルコンテンツ制作を提供しています。

主に企業や自治体からの広告・マーケティング収入を収益源としています。自社保有IPを活用することで権利許諾や調整コストを削減し、時事ネタやクライアントの要望に応じた迅速なサービス提供を実現しています。運営はディー・エル・イーが手掛けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は14億円から20億円のレンジで推移していますが、経常利益および当期利益は継続して赤字を計上しています。当期は売上高が減少したことに加え、減損損失や有価証券評価損等の計上により、利益率が大きく悪化する結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 16.4億円 20.2億円 17.1億円 19.8億円 14.6億円
経常利益 -2.9億円 -3.4億円 -6.6億円 -3.9億円 -6.0億円
利益率(%) -17.5% -16.7% -38.7% -19.9% -40.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.1億円 -6.4億円 -5.2億円 -7.4億円 -4.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も縮小しています。コスト削減を進めたものの、売上高の落ち込みをカバーしきれず、営業損失の赤字幅が拡大し、厳しい収益状況が続いています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 19.8億円 14.6億円
売上総利益 7.5億円 5.6億円
売上総利益率(%) 37.7% 38.4%
営業利益 -4.9億円 -6.0億円
営業利益率(%) -24.7% -40.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.3億円(構成比29%)、広告宣伝費が2.0億円(同17%)を占めています。売上原価については、外注加工費等の経費が2.9億円(構成比72%)、労務費が1.1億円(同28%)となっています。

(3) セグメント収益


同社はファスト・エンタテインメント事業の単一セグメントで展開しています。当期はIP・コンテンツ関連やEC・クラファン関連の売上が減少したことなどが響き、前年と比較して減収となり、営業損失も拡大する結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ファスト・エンタテインメント事業 19.8億円 14.6億円 -4.9億円 -6.0億円 -40.7%
連結(合計) 19.8億円 14.6億円 -4.9億円 -6.0億円 -40.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがプラスとなっており、本業の赤字を資産売却および借入や増資で補填する「救済型」の状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -4.6億円 -7.2億円
投資CF 0.1億円 5.4億円
財務CF 0.3億円 4.0億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%で、スタンダード市場の平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「希望や熱意を持った人々をつなぎワクワクを創出し続ける企業」という経営ビジョンを掲げています。インターネットの進化とデジタル化の潮流の中で、クリエイティブとビジネスをプロデュースするファスト・エンタテインメント事業を通じ、世界中の人々へ笑顔や感動、サプライズを届けることを使命としています。

(2) 企業文化


インターネット時代・ソーシャルメディア時代において、「いつでも、どこでも、すぐに」楽しめる「手軽なエンタテインメント」を提供することを重視しています。ファスト・フードやファスト・ファッションのように、スキマ時間に楽しめ、容易に共有できるショート・コンテンツを、短納期かつ低コストで生み出す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


収益性の高い効率経営の観点から、売上高営業利益率を重要な経営指標とするとともに、キャッシュ・フロー経営についても重視しています。持続的成長を通じた企業価値の向上を目指し、元来の本業であるコンテンツ制作に経営資源を集中させることで、早期の営業利益獲得を目指して事業を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


日本のアニメーション業界における需給ギャップの拡大を好機と捉え、手書きにテクノロジーを加えた中品質の「オルタナティブ動画」と、生成AI技術の進化を取り込んだ「AI動画」の2本柱を新たな制作手法として推進しています。また、地方局を含むテレビ局との連携を通じた新規IPの開発や、海外パートナーとのアライアンスを強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大や新規事業、グローバル展開に伴い、継続的な人材確保を重要課題としています。同社の経営理念やビジネスモデルに適した人材の育成と、スピード感あるグローバル展開に対応できる異文化コミュニケーション能力の向上を目指し、教育制度の整備や海外パートナーとの人材交流等を通じた能力開発を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.0歳 5.0年 5,303,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、一部項目の有報における記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新に伴う制作ツールの陳腐化リスク


同社はAdobe Animateや生成AIを主要な映像制作ツールとして採用し、短納期・低コストの制作体制を構築しています。しかし、制作ツールの技術革新が予想を超えて進行し、新しいツールへの移行がスムーズに進まない場合、競争力が低下し、同社グループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規IPのプロデュース不調と海賊版リスク


新規開発したIPが必ずしもユーザーの嗜好に合致するとは限らず、計画通りに成長しない場合、製作委員会への出資金に減損損失が生じる恐れがあります。また、IPの認知度が高まった国において、海賊版や模倣品による権利侵害が発生し、プロモーションコストを超える機会損失が生じるリスクがあります。

(3) 小規模組織による事業推進体制の限界


同社グループは小規模な組織体制であり、事業戦略の推進が各部門の責任者に強く依存する傾向にあります。今後の事業拡大において、優秀な人材の確保や能力開発が計画通りに進まない場合、または人材の流出が生じた場合には、事業の推進や内部管理体制の構築に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。