ヨシックスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨシックスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。居酒屋チェーン「や台ずし」等の直営展開を行う飲食事業と、店舗設計・施工を行う建装事業を展開。第40期は新規出店35店舗を実施し、売上高は8.5%増、経常利益は0.8%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ヨシックスホールディングスの有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨシックスホールディングスってどんな会社?


「や台ずし」を主力ブランドとする居酒屋チェーンの直営展開と、自社店舗の建築・施工管理を行う建装事業が特徴です。

(1) 会社概要


1985年に株式会社テンガロンキッドとして設立され、2000年に主力業態「や台ずし」の1号店をオープンしました。2014年に東京証券取引所JASDAQおよび名古屋証券取引所第二部へ上場し、2016年には両取引所の第一部へ指定替えとなりました。2021年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しています。

連結従業員数は886名、単体従業員数は15名です。筆頭株主は同社代表取締役会長CEOが代表を務める株式会社吉岡、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の吉岡昌成氏です。

氏名 持株比率
吉岡 35.40%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 6.19%
吉岡 昌成 6.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長CEOは吉岡 昌成氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
吉岡 昌成 代表取締役会長CEO 1980年ヨシオカ建装創業。1985年同社設立代表取締役就任。2023年6月より現職。
瀬川 雅人 代表取締役社長COO 1998年同社入社。2001年常務取締役、2005年専務取締役、2017年代表取締役副社長を経て、2023年6月より現職。
吉岡 裕太郎 専務取締役 2013年同社入社。2014年常務取締役、2018年専務取締役就任。2024年1月よりヨシオカ建装および芝産業の代表取締役社長を兼務し現職。
伊達 富夫 常務取締役 2006年電通入社。2019年同社入社、執行役員。2021年取締役を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、鳥居 達也(近江商事代表取締役)、植村 亮仁(公認会計士・税理士)、堀 雄治(元国分西日本退社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」、「建装事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 飲食事業


「や台ずし:本格職人にぎりずし居酒屋」を主要ブランドとし、「ニパチ」「ひとくち餃子の頂」などの居酒屋業態を直営店として展開しています。東は福島県から西は鹿児島県まで幅広い地域に出店し、駅前1等地ではなく周辺の1.5等地や2等地に出店することで固定費を抑制しています。

収益は、来店客への飲食サービスの提供による対価です。運営は主に連結子会社の株式会社ヨシックスフーズが行っていますが、自然薯料理の「華花」業態はワンダフードイノベーション株式会社が運営しています。

(2) 建装事業


店舗の設計および施工管理を行っており、中でも飲食店建築を得意分野としています。グループ内でその強みを最大限に活用し、新規出店や業態転換におけるイニシャルコストの抑制、および迅速な施工による機動的な店舗展開を支援しています。

収益は、グループ会社や外部顧客からの店舗設計・施工案件の受注による工事代金等です。運営は主に株式会社ヨシオカ建装が行っており、芝産業株式会社も建装事業を担っています。

(3) その他事業


コーポレートベンチャーキャピタルとして、今後の成長が見込まれるフードテック企業や店舗内装等の建装関連分野のベンチャー企業への投資事業を行っています。また、飲食・建装関連企業を対象としたM&A仲介も計画しています。

収益は、投資先からのリターンやM&A仲介手数料等が想定されます。運営は株式会社ヨシックスキャピタルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第37期に一時減少しましたが、その後は右肩上がりで推移し、直近の第40期には229億円に達しました。経常利益も第36期の赤字からV字回復し、25億円前後の水準を維持しています。利益率も10%を超える高い水準で安定しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 97億円 86億円 171億円 211億円 229億円
経常利益 -13億円 31億円 18億円 25億円 26億円
経常利益率 -13.4% 35.7% 10.7% 12.0% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -6.0億円 0.2億円 1.4億円 1.4億円 2.9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は67%程度の高い水準を維持しています。営業利益率も10%台を確保しており、安定した収益性を保っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 211億円 229億円
売上総利益 141億円 153億円
売上総利益率(%) 66.7% 67.0%
営業利益 23億円 23億円
営業利益率(%) 11.0% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当が70億円(構成比54%)、地代家賃が14億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


飲食事業、建装事業ともに増収となりました。特に主力の飲食事業は、「や台ずし」を中心とした新規出店効果により、売上が堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
飲食事業 206億円 223億円
建装事業 6億円 6億円
連結(合計) 211億円 229億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金の範囲内で、新規出店などの投資活動と配当支払などの財務活動を行っており、健全な資金循環となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 38億円 9億円
投資CF -13億円 -17億円
財務CF -9億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで、楽しくすごせる心・食・居を演出する」を企業理念としています。「心・食・居」を通じて、すべての人にとって心温まる存在となり、食を通じて元気を提供し、ニーズに適した居心地の良さを創造することを目指しています。

(2) 企業文化


「元気を持って帰ってもらう店なんやで」という基本理念のもと、「“あたりまえや”を当たり前に」を社是として掲げています。元気な声出し、清潔感、笑顔の接客を当たり前に行うことを徹底し、顧客が明日への活力を得られるような店舗づくりを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


飲食事業および建装事業の生産性を高め、収益増大に努めています。イニシャルコストの抑制と早期回収に注力し、フリー・キャッシュ・フローの増大を目指しています。中期的には、売上高経常利益率が恒常的に10.0%超となることを目標としています。

* 2026年3月期目標:売上高242億円
* 2026年3月期目標:経常利益27億円

(4) 成長戦略と重点施策


積極的な出店による規模拡大と収益基盤強化に取り組んでいます。特に「や台ずし」業態の展開を軸に、スクラップ&ビルドによる直営店舗の純増を進めます。また、未開拓エリアである関東北部などへの出店拡大や、顧客ニーズに対応した新業態の開発、建装事業の強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を最も重要な経営資源と位置付け、地域特性に柔軟に対応するため、各地域で採用した従業員を前面に立てた店舗運営を行っています。優秀な人材の確保と育成を最重要課題とし、特に将来の幹部候補となる新卒採用や、企業理念を体現できる人材への教育に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.1歳 7.7年 5,594,000円


※平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 8.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.4%
男女賃金差異(正規雇用) 82.9%
男女賃金差異(非正規) 97.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(12.2%)、外国籍の正社員比率(12.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新規出店計画について


物件確保において、不動産業者や金融機関等から幅広く情報収集を行っていますが、ニーズに合致した物件が必ずしも確保できるとは限りません。また、出店できたとしても計画通りの収益を確保できない場合があり、計画通りに新規出店が進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業態開発について


主力業態である「や台ずし」の継続的な展開を予定していますが、同業態の業績が振るわず展開が鈍化した場合は業績に影響する可能性があります。また、顧客の嗜好変化に合わせて新たな収益の柱となる新規業態を開発する必要がありますが、これが想定通り推移しない場合もリスク要因となります。

(3) 人材採用・育成について


地域密着型の店舗運営において「人材」は最重要資源ですが、外食産業全体の人手不足や人材流動化により、有能な経験者の採用は困難な状況です。また、求めるサービス水準に達するまでの育成が計画通りに進まない場合、店舗のサービス品質に影響し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制等について


食品衛生法や風営法等の規制を受けており、食中毒事故や法令違反が発生した場合、営業停止処分や損害賠償請求、信用力の低下を招く可能性があります。特に深夜営業を行う店舗では風営法の遵守が重要であり、違反があった場合は一定期間の営業停止等が命じられるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。