ヨシックスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨシックスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨシックスホールディングスは東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する企業です。本格職人にぎりずし居酒屋「や台ずし」を主力ブランドとする飲食事業と、自社店舗の設計・施工を中心とする建装事業を展開しています。積極的な新規出店が寄与し、直近の業績は増収増益と好調です。


※本記事は、株式会社ヨシックスホールディングスの有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨシックスホールディングスってどんな会社?


同社は居酒屋チェーンの直営展開と、店舗の設計・施工を担う建装事業を両輪として展開する外食企業です。

(1) 会社概要


1985年に設立され、1998年にお好み焼き・鉄板焼き居酒屋「や台や」、2000年に主力業態のすし居酒屋「や台ずし」をオープンしました。2006年にヨシオカ建装を子会社化して建装事業を強化し、2014年にJASDAQ等へ上場を果たします。2021年には持株会社体制へ移行し現在の社名へ変更しました。

従業員数は連結929名、単体16名です。筆頭株主は創業者および代表取締役会長CEOの資産管理会社である吉岡で、第2位は創業者の吉岡昌成氏、第3位は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
吉岡 35.30%
吉岡 昌成 6.20%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長CEOを吉岡昌成氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
吉岡 昌成 代表取締役会長CEO 1980年にヨシオカ建装を創業し、1985年に同社代表取締役に就任。2001年の合併等を経て同社トップとして事業を牽引し、2023年より現職。
瀬川 雅人 代表取締役社長COO 1998年に同社へ入社後、常務取締役、専務取締役などを歴任。事業本部長として各ブランドの展開に尽力し、2023年より現職。
吉岡 裕太郎 専務取締役 2013年に同社へ入社し、管理本部長や建装事業部長などを歴任。2018年に専務取締役に就任し、ヨシオカ建装の代表取締役などを務め、2021年より現職。
伊達 富夫 常務取締役 2006年に電通へ入社し、2019年に同社へ入社。執行役員として新事業・新業態開発担当や内部監査室長を経て2021年に取締役に就任し、2024年より現職。


社外取締役は、鳥居達也(近江商事代表取締役)、植村亮仁(植村亮仁公認会計士事務所所長)、堀雄治(元国分西日本所属)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」および「建装事業」を展開しています。

(1) 飲食事業


本格職人にぎりずし居酒屋「や台ずし」を主力ブランドとして、居酒屋チェーンを展開しています。全業態でオープンキッチンを採用し、駅前一等地の周辺地域に出店することで固定費を抑えつつ、地元密着の店舗運営を行っています。また、均一低価格の「ニパチ」や餃子居酒屋などの多様な業態を開発しています。

収益は、直営店および一部フランチャイズ店での飲食サービス提供による売上から得ています。出店地域は北海道から九州まで幅広くカバーしており、同事業の運営は主にヨシックスフーズやワンダフードイノベーションなどのグループ会社が行っています。

(2) 建装事業・その他


飲食店建築を中心とした店舗の設計および施工管理を行っています。グループ内で建装事業の強みを最大限に活用することで、新規出店や業態転換時のイニシャルコストを抑制し、迅速な店舗展開と投資回収の早期実現を可能としています。

収益は、グループ内外の店舗設計・施工等の内装工事完了時の代金から得ています。運営はヨシオカ建装や芝産業が行っています。また、その他事業としてヨシックスキャピタルがベンチャー企業への投資やM&A仲介などの投資事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで持続的な成長を遂げています。利益面では一時的な変動が見られたものの、直近では順調に利益水準を拡大しており、利益率も10%を超える水準で安定的に推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 86億円 171億円 211億円 229億円 259億円
経常利益 31億円 18億円 25億円 26億円 33億円
利益率(%) 35.7% 10.7% 12.0% 11.2% 12.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 10億円 18億円 18億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期を比較すると、売上の増加に伴い売上総利益と営業利益がともに拡大しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 229億円 259億円
売上総利益 153億円 174億円
売上総利益率(%) 67.0% 67.0%
営業利益 23億円 30億円
営業利益率(%) 10.2% 11.6%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当が78億円(構成比54%)、地代家賃が16億円(同11%)を占めています。一方、売上原価は86億円で、売上高に対する構成比は33%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、主力である飲食事業が大半を占めており、積極的な新規出店が牽引して全体の売上成長に大きく貢献しています。建装事業はグループ内の出店戦略を裏方として支える役割を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
飲食事業 - 254億円
建装事業 - 5億円
連結(合計) 229億円 259億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も77.1%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 32億円
投資CF -17億円 -14億円
財務CF -3億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで、楽しくすごせる心・食・居を演出する」を企業理念として掲げています。「心」は心温まる存在感、「食」は元気をお持ち帰りいただける存在、「居」は居心地の良さを提供できる存在と定義し、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「元気を持って帰ってもらう店なんやで」という基本理念のもと、「“あたりまえや”を当たり前に」を社是として掲げています。元気な声出し、清潔感、笑顔の接客を当たり前に行うことを徹底し、従業員の多様な個性を尊重しながら、地域や顧客のニーズに柔軟に対応する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


店舗を運営する上で負担となる固定費を徹底的に抑え、各店舗が確実に利益を生む体制を構築することを目指しています。特に新規出店時のイニシャルコストの抑制と早期回収に注力し、フリー・キャッシュ・フローの増大を図る方針です。

* 売上高経常利益率:恒常的に10.0%超
* 2027年3月期目標:売上高285億円、営業利益31億円、経常利益34億円、当期純利益23億円

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的に持続的な成長を継続するため、積極的な出店による企業規模の拡大と収益基盤の強化を推進しています。主力ブランド「や台ずし」を中心とした直営店舗の純増と、新たな収益の柱となる新業態の開発に取り組んでいます。また、これらの出店を迅速かつ低コストで実現するため、建装事業の強化を図るとともに、人的資本への投資を通じて優秀な人材の確保と育成を最重要課題として取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最も重要な経営資源と位置づけ、多様性を尊重した人材採用と育成を推進しています。各地域の特性や顧客ニーズに対応するため、現地採用の従業員を前面に立てた店舗運営を行っています。また、「働きたくなる店づくり」を重点方針に掲げ、性別や国籍、年齢等に関わらず個々人の能力を発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.1歳 8.2年 5,727,000円

※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 28.6%
男女の賃金の差異(全労働者) 70.8%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 80.8%
男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 97.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(13.1%)、全労働者の女性社員比率(62.4%)、外国籍の正社員比率(13.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新規出店計画の遅延リスク


同社グループの成長には継続的な出店が不可欠ですが、条件に合致する物件が確保できない場合や、計画通りの収益を確保できない可能性があります。これらの要因により新規出店計画が遅延した際、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材採用・育成の困難化


店舗の運営とサービス水準の維持には優秀な従業員の確保が不可欠です。しかし、外食産業における人材獲得競争の激化により、有能な経験者の採用や求めるレベルへの育成が計画通りに進まない場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 食の安全性に関する問題


飲食業を主力とする同社グループにとって、食品の安全性確保は最大の責務です。取引先を含めた衛生管理を徹底していますが、予期せぬ食中毒等の発生や食材の汚染問題が起きた場合、信用低下や損害賠償等により、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ヨシックスホールディングスの転職研究 2026年3月期決算に見るキャリア機会

ヨシックスホールディングスの2026年3月期決算は、全利益項目で過去最高を達成。独自の「田舎戦略」による低コスト出店と、2025年7月の「海老どて食堂」の事業譲受をはじめとする新業態の獲得により事業を拡大しています。転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのかを整理します。