※本記事は、ポバール興業株式会社 の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ポバール興業ってどんな会社?
樹脂加工技術と機械設計を核に、産業用ベルトや精密研磨材などを提供するニッチトップ企業です。
■(1) 会社概要
1957年に工業用ベルトの製造を目的に名古屋で創業し、1964年に現社名へ改組しました。2014年に名証二部へ上場し、その後、日新製作所、ユニカー工業、アールエスティ電機工業を相次いで子会社化して機械事業を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダードおよび名証メイン市場に上場しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は203名(単体113名)です。大株主構成は、筆頭株主が本社と同一所在地にある株式会社KAY、第2位が投資・事業会社の光通信、第3位が個人株主となっており、創業家や関連資産管理会社による安定的な保有比率が高いことが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KAY | 33.34% |
| 光通信 | 7.48% |
| 神田亜希 | 3.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は松井孝敏氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松井孝敏 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。営業部長、取締役を経て2015年より現職。タイ・韓国子会社の役員も兼任し、グローバル展開を牽引。 |
| 樅山政道 | 取締役製造部・技術部・営業部管掌 | 帝人を経て1993年同社入社。技術部長、製造部長を歴任し、2021年より現職。製造・技術・営業の主要部門を管掌。 |
社外取締役は、大島幸一(大島公認会計士事務所代表)、横井良栄(よこいよしえ社会保険労務士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「総合接着・樹脂加工」「特殊設計機械」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 総合接着・樹脂加工事業
自動車、鉄鋼、食品業界向けの特殊コンベアベルトや、半導体・液晶ガラス製造工程で使用される超精密研磨用パッドなどを製造・販売しています。独自の素材選定・接着・樹脂加工技術を活かし、特殊環境下や高精度が求められるニッチな用途に対応しています。
収益は主に、製品の販売代金として顧客企業から受け取ります。運営は、国内ではポバール興業が担い、海外ではタイ、韓国、中国の現地子会社が製造・販売を行っています。
■(2) 特殊設計機械事業
搬送機、食品加工用の回転式熱交換器、ケミカルプロセス分野向けのメカニカルシールなど、産業用機械の設計・製造・販売を行っています。顧客の仕様に合わせたオーダーメイド設計や、特殊条件下で使用される密封シール技術に強みを持ちます。
収益は、産業用機械や部品の販売およびメンテナンス等により顧客から得ています。運営は主に、子会社である日新製作所、ユニカー工業、アールエスティ電機工業が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台半ばで安定的に推移していますが、利益面では原材料価格高騰や先行投資の影響により、利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 35億円 | 36億円 | 36億円 | 34億円 |
| 経常利益 | 3.5億円 | 3.8億円 | 3.8億円 | 3.5億円 | 2.7億円 |
| 利益率(%) | 10.8% | 11.0% | 10.7% | 9.6% | 7.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.1億円 | 2.8億円 | 2.6億円 | 1.9億円 | 0.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、原価低減に努めたものの減収影響をカバーしきれず、売上総利益・営業利益ともに減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 34億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.2% | 35.1% |
| 営業利益 | 3.2億円 | 2.4億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.4億円(構成比36.2%)、役員報酬が0.8億円(同8.0%)を占めています。売上原価においては、原材料費や外注費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
「総合接着・樹脂加工」は自動車・鉄鋼向けが底堅いものの、研磨部材の需要調整により減収減益となりました。「特殊設計機械」はメカニカルシールが増加しましたが、食品向け加工機の谷間により大幅な減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総合接着・樹脂加工 | 29億円 | 28億円 | 3.7億円 | 2.7億円 | 9.4% |
| 特殊設計機械 | 6.6億円 | 5.4億円 | 0.1億円 | 0.3億円 | 5.7% |
| 連結(合計) | 36億円 | 34億円 | 3.2億円 | 2.4億円 | 7.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.6億円 | 4.8億円 |
| 投資CF | -7.7億円 | -3.9億円 |
| 財務CF | -1.0億円 | 1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業は永遠なり、企業は魅力なり」を社是とし、「常に新しいサムシングを求め、現場視点でものづくりを発想し、チャレンジし続けることで進化していきます」という経営理念を掲げています。独自の接着加工、素材加工、機械設計技術を駆使し、顧客の真のニーズに応えるソリューションビジネスをグローバルに展開することを目指しています。
■(2) 企業文化
「深い共感力」を重視し、顧客の課題に対して独自のコア技術を組み合わせて解決策を提示する姿勢を大切にしています。また、従業員エンゲージメントの向上を図るため、企業理念の社内浸透や、上司と部下の対話機会の拡充、教育体系の整備などに注力しており、現場視点での発想と挑戦を推奨する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画において、ソリューションビジネスモデルの深化、グローバル展開、新規事業の強化、生産効率の向上などを重点課題として掲げています。また、環境目標として以下の数値を設定しています。
* 2030年度のCO2排出量を2013年度比で32%削減
* 2030年度の廃棄物重量を2023年度比で30%削減
■(4) 成長戦略と重点施策
独自のコア技術(素材選定、接着加工、樹脂加工、機械設計)を活かしたソリューションビジネスを推進しています。具体的には、ベルト製品のニッチトップ分野開拓、半導体ウエハ用研磨パッドの市場開拓、水系接着剤などの環境配慮型製品の開発に注力しています。また、新工場での製造DX導入による生産効率向上や、アジア地域を中心としたグローバル展開の強化も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を重要な資本と位置づけ、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。個人のキャリアパスを共有するための対話機会の制度化、資格取得支援や階層別研修の実施、人事評価・賃金制度の見直しなどを推進しています。また、女性や高齢者、外国人実習生なども活躍できる多様で柔軟な職場環境の整備を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.8歳 | 16.8年 | 5,250,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下であり公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内市場への依存
同社製品の需要は自動車、鉄鋼、食品等の国内主要顧客の設備投資動向に大きく影響を受けます。国内市場の低迷は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があるため、海外販路の拡大や事業ポートフォリオの見直しを進めています。
■(2) 原材料価格の高騰
主要原料である樹脂などの価格は市況や経済情勢により変動します。価格転嫁や歩留まり改善で吸収できない場合、収益を圧迫するリスクがあります。これに対し、原料備蓄や調達方法の改善、代替品の開発等で対策を講じています。
■(3) 海外カントリーリスク
タイ、韓国、中国に生産拠点を有しており、現地の政治・経済・社会情勢の変化が事業活動に支障をきたす可能性があります。現地情報の早期収集・分析に努めるとともに、リスク管理体制を強化しています。



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