フィード・ワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィード・ワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の配合飼料メーカーです。畜産・水産飼料の製造・販売を中核に、食肉や鶏卵などの食品事業までを一貫して手掛けています。直近の決算では、販売数量の減少や飼料価格安定基金負担金の増加等の影響により、売上高2,960億円(前期比5.7%減)、経常利益68億円(同12.3%減)の減収減益となりました。


※本記事は、フィード・ワン株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フィード・ワンってどんな会社?


同社グループは、畜産・水産用配合飼料の製造・販売から、食肉・鶏卵などの食品事業まで、「食のバリューチェーン」を一貫して展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2014年、協同飼料と日本配合飼料が共同株式移転により設立され、2015年に両社を吸収合併して現在の商号となりました。2017年以降、北九州などの重要拠点に工場を開設し生産体制を強化しています。2022年には東証の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。直近では2025年4月に製造子会社2社を吸収合併し、自社工場化を進めています。

連結従業員数は925名、単体では522名が在籍しています。筆頭株主は総合商社の三井物産で25.57%を保有しており、同社とは原料購入や製品販売において取引関係があります。第2位、第3位は信託銀行の信託口となっており、機関投資家による保有が上位を占めています。

氏名 持株比率
三井物産 25.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.61%
日本カストディ銀行(信託口) 3.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名(久保田紀久枝氏)の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は庄司英洋氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
庄司 英洋 代表取締役社長 三井物産に入社し、食料本部食糧事業部長などを歴任。2020年に同社へ入社し、経営企画部長、常務執行役員を経て2022年6月より現職。
窪田 和男 取締役常務執行役員 横浜銀行に入行し、執行役員南部地域本部長などを歴任。2021年に同社へ入社し、財務経理部長を経て、現在は管理本部長などを担当。
田代 義尚 取締役常務執行役員 協同飼料(現フィード・ワン)に入社。執行役員などを経て、現在は畜産事業本部長として研究所を管掌。


社外取締役は、久保田紀久枝(お茶の水女子大学名誉教授)、辻孝夫(元日商エレクトロニクス代表取締役社長)、半田靖史(元福岡高等裁判所部総括判事)、吉里格(三井物産理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「畜産飼料事業」、「水産飼料事業」、「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

畜産飼料事業


養鶏、養豚、養牛などの家畜向け配合飼料の製造・販売を行っています。また、一部の子会社では豚や鶏卵の生産・販売も手掛けています。顧客は主に全国の畜産生産者です。

収益は、配合飼料の製品販売代金や、生産した豚・鶏卵の販売代金から得ています。製品の製造は同社および連結子会社の志布志飼料などのほか、関連会社や他社への委託により行われています。販売は同社が直接行うほか、北海道フィードワン販売などの連結販売子会社や特約店を通じて行われています。

水産飼料事業


養殖魚向けの配合飼料の製造・販売を行っています。また、水産物の仕入・販売や、研究目的での養殖事業も展開しています。顧客は主に水産養殖業者です。

収益は、水産用配合飼料の販売および水産物の販売から得ています。配合飼料の製造は同社が行うほか、他社への製造委託も行っています。販売は同社が直接、または特約店を通じて行っています。運営は主に同社が担っており、一部の研究目的の養殖事業は連結子会社の南洋漁業が行っています。

食品事業


食肉および鶏卵の仕入・加工・販売を行っています。畜産飼料事業で培った知見を活かし、安全で高品質な畜水産物を消費者に届ける役割を担っています。

収益は、加工・製造した食肉製品や鶏卵製品の販売代金から得ています。運営は、食肉分野では連結子会社のフィード・ワンフーズや横浜ミート、鶏卵分野ではマジックパールやゴールドエッグが担っています。

その他


不動産の賃貸・管理事業や海外での飼料製造・販売事業などを含みます。海外事業ではベトナムやインドにおいて関連会社を通じて事業を展開しています。

収益は、不動産賃貸料や海外関連会社からの投資収益等が該当します。国内の不動産賃貸・管理は連結子会社の空知管理サービス(清算手続中)等が担っていましたが、同社自体も不動産賃貸等の事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第9期、第10期と3,000億円台で推移しましたが、当期は2,960億円と減少しました。経常利益は原材料価格の高騰等の影響を受け変動があり、第9期に大きく落ち込んだ後、第10期に回復しましたが、当期は再び減益となりました。一方、当期利益(親会社株主に帰属)は第9期の減少から回復基調にあり、当期は54億円となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,141億円 2,432億円 3,079億円 3,139億円 2,960億円
経常利益 61億円 51億円 17億円 77億円 68億円
利益率(%) 2.8% 2.1% 0.6% 2.5% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 44億円 37億円 10億円 51億円 54億円

(2) 損益計算書


売上高は減少しましたが、売上総利益は微増し、売上総利益率は改善傾向にあります。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,139億円 2,960億円
売上総利益 307億円 319億円
売上総利益率(%) 9.8% 10.8%
営業利益 77億円 63億円
営業利益率(%) 2.5% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、運賃積込賃が75億円(構成比29%)、飼料価格安定基金負担金が66億円(同26%)、人件費が47億円(同19%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が大部分を占めています。

(3) セグメント収益


畜産飼料事業は販売数量が増加したものの、販売価格の低下やコスト増により減収減益となりました。水産飼料事業は販売数量減による減収となった一方、販売価格の上昇等で増益を確保しました。食品事業は相場変動の影響を受け、減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
畜産飼料事業 2,471億円 2,323億円 91億円 85億円 3.7%
水産飼料事業 268億円 256億円 9億円 12億円 4.5%
食品事業 400億円 381億円 7億円 3億円 0.7%
その他 0.1億円 0.1億円 -1億円 1億円 735.7%
調整額 -53億円 -50億円 -28億円 -33億円 -
連結(合計) 3,139億円 2,960億円 77億円 68億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フィード・ワン社のキャッシュ・フローの状況について解説します。

同社は、営業活動により資金を獲得し、その一部を設備投資に充て、残りを借入金の返済や配当金の支払いに充てています。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益の計上等によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得等によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済及び配当金の支払いに伴うものです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 111億円 86億円
投資CF -22億円 -31億円
財務CF -55億円 -60億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「飼料で食の未来を創り、命を支え、笑顔を届ける」をPurpose(存在意義)として掲げています。また、Vision(目指す姿)として「人・社会・環境と調和し、食のバリューチェーンを支えるリーディングカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社はサステナビリティ経営を重視し、事業を通じて「マテリアリティ(重点課題)」の解決に取り組む文化があります。具体的には「おいしさのみなもと」から食のサプライチェーンを支えることや、飼料を通じて環境と社会の調和を図ることなどを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2026~1st STAGE for NEXT 10 YEARS~」を策定し、2027年3月期に向けた以下の目標を掲げています。

* EBITDA:115億円
* ROE:8%以上
* ROIC:6%以上
* 販売数量:3,900千トン
* 総投資額:600億円(2025年3月期~2030年3月期の累計)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、今後10年間の土台づくりとして、コア事業である畜産・水産飼料事業の強化と食品事業との連携を進めます。具体的には、工場の刷新・増強や環境配慮型製品の開発、海外展開の強化に注力します。

* 製造体制の刷新:老朽化設備の更新と製造能力の増強を行い、効率化と物流合理化を進めます。
* 環境対応製品:メタン低減飼料や無魚粉飼料などの開発・販売を強化します。
* 海外展開:ベトナムでの増産体制構築や販売エリア拡大、インドでの製造効率改善に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はPurposeを体現し、社会課題を解決できる人材の育成を目指しています。次世代リーダーやエキスパート人材の育成のため、階層別研修や職種別教育体系の整備を進めるとともに、ダイバーシティ推進や健康経営を通じて、社員のエンゲージメント向上と生産性向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 16.3年 7,647,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 53.6%
男女賃金差異(正規) 55.1%
男女賃金差異(非正規) 53.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.4%)、年間平均有給休暇取得日数(13.7日)、中途・女性・外国人管理職比率(11.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料価格の変動リスク


配合飼料の主原料であるとうもろこし等は多くを輸入に頼っており、穀物相場、為替、海上運賃、地政学的リスク等の影響を受けます。価格の急激な変動を製品価格に転嫁できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、配合飼料価格安定制度に基づく負担金の増減も業績に影響します。

(2) 家畜家禽等の疾病リスク


鳥インフルエンザや豚熱などの疾病が発生した場合、グループ農場での生産物の廃棄や販売停止のリスクがあります。また、顧客である生産者での疾病発生による飼料需要の減少や、販売先の経営悪化に伴う債権回収リスクが生じる可能性があります。

(3) 気候変動によるリスク


気候変動や自然災害により原材料価格の高騰や工場の被災、環境規制強化によるコスト増などの影響を受ける可能性があります。特に海水温の上昇は水産飼料の需要減少に直結するほか、原材料調達の不安定化を招く恐れがあります。これに対し、同社は代替原料の研究開発などを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。