フィード・ワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィード・ワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フィード・ワンは東京証券取引所プライム市場に上場し、畜産飼料、水産飼料、食品の各事業を展開しています。主力は配合飼料の製造・販売で、畜水産物の生産から食品加工までを担います。直近の連結業績は販売数量減等で減収となったものの、採算改善により営業利益・経常利益は大幅な増益を達成しました。


※本記事は、フィード・ワンの有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フィード・ワンってどんな会社?


配合飼料の製造・販売を中核に、畜水産物の生産から食品加工まで食のバリューチェーンを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は、2014年に協同飼料と日本配合飼料の経営統合により設立され、東京証券取引所に上場しました。2015年に両社を吸収合併して事業基盤を統合し、その後、2017年に北九州水産工場、2020年に北九州畜産工場を新設して生産体制を強化しています。2025年には子会社の苫小牧飼料と東北飼料を吸収合併し自社工場化しました。

現在の従業員数は連結で935名、単体で586名です。筆頭株主は事業会社である三井物産で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には大和興業が名を連ねています。

氏名 持株比率
三井物産 25.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.11%
大和興業 3.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は庄司英洋氏が務めており、社外取締役比率は40.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
庄司英洋 代表取締役社長 1988年三井物産入社、同社食糧本部穀物物流部長などを経て、2020年フィード・ワン上席執行役員に就任。2022年より現職。
窪田和男 取締役専務執行役員 1987年横浜銀行入行、同行執行役員などを経て、2021年フィード・ワン上席執行役員財務経理部長に就任。2026年より現職。
田代義尚 取締役専務執行役員 1988年協同飼料入社、同社南九州支店長などを経て、2017年フィード・ワン執行役員に就任。2026年より現職。


社外取締役は、久保田紀久枝(元お茶の水女子大学理事・副学長)、辻孝夫(元日商エレクトロニクス社長・筆頭独立社外取締役)、半田靖史(元福岡高等裁判所部総括判事)、吉里格(元Multigrain S.A. Officer,President&CEO)、後藤敬三(元名古屋国税局長)、近田直裕(元近田公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「畜産飼料事業」「水産飼料事業」「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 畜産飼料事業


牛、豚、鶏向けの配合飼料の製造・販売や、豚肉・鶏卵の生産・販売を行っています。生産者の課題解決に向けた新素材の採用や、環境負荷を低減するメタン発生抑制飼料の開発にも取り組んでいます。

収益は、畜産生産者等からの配合飼料の販売代金や、畜産物の販売代金から得ています。事業の運営は同社を中心に、志布志飼料などの子会社や関連会社が担っています。

(2) 水産飼料事業


養殖魚向けの配合飼料の製造・販売や、水産物の仕入・販売を行っています。海洋資源保護の観点から、魚粉への依存度を下げた無魚粉飼料・低魚粉飼料の開発や、高水温対策を施した製品の提供に注力しています。

収益は、養殖業者からの飼料販売代金や水産物の販売代金から得ています。運営は同社が主体となり、南洋漁業などの関連会社が研究目的の養殖事業等で連携しています。

(3) 食品事業


食肉および鶏卵の仕入・加工・販売を手がけ、飼料製造から食品販売までの食のバリューチェーンを構成しています。老朽化設備の更新や衛生管理の強化を通じ、安全・安心な食品の供給体制を構築しています。

収益は、小売店や外食産業等からの食肉・鶏卵加工品の販売代金から得ています。運営はフィード・ワンフーズ、横浜ミート、マジックパール、ゴールドエッグなどの子会社が行っています。

(4) その他


国内外における事業展開や不動産賃貸等を行っています。海外では、ベトナムやインドにおいて飼料の製造・販売を展開し、日本の技術導入による差別化や製造効率の改善を進めています。

収益は、不動産の賃貸料などから得ています。事業の運営は同社のほか、持分法適用関連会社であるベトナムおよびインドの法人が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は原材料価格の変動等により増減がありますが、概ね3000億円前後で推移しています。経常利益は一時的に落ち込んだ時期もありましたが、販売価格の改定や採算管理の徹底により回復傾向にあり、利益率も改善しています。継続的な収益力強化への取り組みが成果として表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2432億円 3079億円 3139億円 2960億円 2907億円
経常利益 51億円 17億円 77億円 68億円 86億円
利益率(%) 2.1% 0.6% 2.5% 2.3% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 32億円 13億円 41億円 43億円 66億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で減少しましたが、売上総利益は増加しており、採算性が向上していることが伺えます。原材料価格の変動に応じた適切な価格転嫁やコスト管理の徹底が寄与し、営業利益および営業利益率ともに前年を上回る堅調な結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2960億円 2907億円
売上総利益 319億円 338億円
売上総利益率(%) 10.8% 11.6%
営業利益 63億円 81億円
営業利益率(%) 2.1% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、運賃積込賃が74億円(構成比29%)、飼料価格安定基金負担金が65億円(同25%)、人件費が48億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


畜産および水産飼料事業は販売数量の減少などにより減収となりましたが、価格改定や採算管理の徹底により大幅な増益を達成しました。一方、食品事業は鶏卵相場の高騰等で増収となったものの、仕入コストの上昇や新工場稼働による減価償却費の増加が影響し、減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
畜産飼料事業 2323億円 2237億円 85億円 102億円 4.6%
水産飼料事業 256億円 249億円 12億円 14億円 5.6%
食品事業 381億円 421億円 3億円 2億円 0.5%
その他 0.1億円 0.1億円 1億円 0.4億円 307.7%
調整額 - - -33億円 -33億円 -
連結(合計) 2960億円 2907億円 68億円 86億円 3.0%


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 86億円 171億円
投資CF -31億円 -116億円
財務CF -60億円 -47億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「飼料で食の未来を創り、命を支え、笑顔を届ける」をPurpose(存在意義)として掲げています。穀物や魚粉を主原料とした飼料の製造・販売から畜水産物の販売まで「食のバリューチェーン」を担う企業として、自然の恵みと社会基盤の上に成り立つ事業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、人・社会・環境との調和を図ることを重視し、すべてのステークホルダーから期待と信頼を得られるよう行動することをサステナビリティ方針として定めています。社員一人ひとりが高い倫理観を持ち、ガバナンスを強化するとともに、多様な人材の活躍推進や健康経営を通じた働きやすい環境づくりに注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期的な企業価値向上の土台づくりとして「中期経営計画2026~1st STAGE for NEXT 10 YEARS~」を推進しており、2027年3月期に向けて以下の数値目標を掲げています。
・EBITDA:115億円
・ROE:8.0%以上
・ROIC:6.0%以上
・販売数量:3,900千トン
・総投資額:600億円(2025年3月期~2030年3月期までの6年間累計)

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業である畜産飼料事業を軸に、事業間の連携強化や海外技術の導入を進めています。既存工場の老朽化や国内の人口減少を見据えた製造体制の刷新・増強のほか、IoT技術の積極的な導入による生産性向上を図っています。また、環境負荷低減に寄与する無魚粉飼料やメタン発生低減飼料の開発にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本への投資を長期的な企業価値向上に不可欠と位置づけ、「多様な人材の活躍推進」「次世代リーダーとエキスパート人材の育成」に焦点を当てています。階層別研修や専門研修を通じたスキル向上のほか、ライフイベントに応じた働き方の選択肢拡充や健康経営の推進により、社員のエンゲージメント向上に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 15.9年 7,723,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金等を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 125.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.9%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 56.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(20.0%)、月間平均法定外労働時間(6.4時間)、年間平均有給休暇取得日数(13.7日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料価格や為替の変動


配合飼料の主原料であるとうもろこし等の多くを輸入に頼っており、穀物相場、為替、海上運賃、地政学的リスク等により調達コストが大きく変動します。急激なコスト上昇を販売価格に転嫁できない場合、利益率が悪化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 疾病発生による事業への影響


豚熱や鳥インフルエンザ等の疾病が発生した場合、自社グループ農場における生産物の大量廃棄や販売停止のリスクがあります。また、販売先である生産者の経営悪化による債権回収問題や、飼料の販売減少につながる恐れがあるため、防疫体制の強化に努めています。

(3) 気候変動と自然災害リスク


気候変動に伴う原材料価格の上昇や、猛暑による家畜の生産性低下、海水温上昇による養殖魚のへい死増加などが懸念されます。また、沿岸部に位置する工場が地震や津波等で被災した場合、操業停止に陥るリスクがあるため、事業継続計画の整備等を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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